<“Urban”ワインを巡る⑦> 東京・渋谷/渋谷ワイナリー東京「赤身肉と合わせるフレッシュワイン」

<“Urban”ワインを巡る⑦> 東京・渋谷/渋谷ワイナリー東京「赤身肉と合わせるフレッシュワイン」

生産者と語らいながら、その醸したワインを試飲する――通常なら遠出をしないと叶わなかったことが、都会の=Urban(アーバン)ワイナリーなら身近で実現。連載7軒目に訪れたのは『渋谷ワイナリー東京』。2020年8月に誕生したばかりのレストラン併設のワイナリーです。

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話題のホットスポットに昨夏オープン!

洒落たカフェやレストランが並ぶフロアに位置。樽はテラス席のテーブルとしても活躍。

東京や横浜、大阪でワイナリーを訪問してきた<“Urban”ワインを巡る>。今回もっとも注目なのがその立地です。これまでは下町や工場、倉庫のある街が多かったのですが、この『渋谷ワイナリー東京』は、2020年8月にオープンしたばかりの東京・渋谷の宮下公園にある大型商業施設『RAYARD MIYASHITA PARK(レイヤード ミヤシタ パーク』にあるのです。

「都市型ワイナリーとして、若い世代などを中心にこれまであまりワインに馴染みがなかった方々にワインの素晴らしさをお伝えしたいと考え、この施設でオープンしました」とスタッフの平光隼士(ひらみつ・はやと)さん。じつはこのワイナリー、第2回で訪れた『深川ワイナリー東京』が運営。こちらは下町情緒ただよう門前仲町にあるので、雰囲気は真逆。でも新たなワインファンを増やしたいからと聞いて納得です。

対応していただいたのは、お店を切り盛りする平光隼士さん(左)とソムリエの宮田貴子(みやた・たかこ)さん(撮影時のみマスクを外しています)。

『RAYARD MIYASHITA PARK』はとても巨大。サウスエリアとノースエリアに大別されますが、ワイナリーがあるのはファッションブランドが数多く入ったスノッブでセレブ感漂うノースエリア。何となく「横丁などがあるカジュアルでフレンドリーなサウスエリアかな?」と考えていたのを良い意味で裏切られ、さらに3階にあると聞けば、「ブドウを運び込まなければならい醸造所があるのに」とさらにびっくりです。

インターナショナルな人々でにぎわうカフェやダイニングの続きにその姿が。先にレストラン併設と書いてしまいましたが、“ワイン醸造所併設の赤身肉バル”“ワイン醸造所併設レストラン『渋谷ワイナリー東京』”といったフレーズで紹介されているように、ここはまずレストランがありきなのです。

公園とショッピングモール、ホテルからなる新しい渋谷のランドマーク。

店内はゆったりとした造り。落ち着いてワインと食事をたのしめる雰囲気です。入店するとカウンターの前には、ピカピカに輝くステンレスタンクがずらり。自称 “Micro Craft Winery”というフレーズがしっくりとくる光景でした。

醸造所を眺めるなら、カウンターが特等席。

ソファーのテーブル席なら、ゆっくりと寛げます。

奥には個室も。10名までのプライベートパーティーが可能。

いつでもできたてワインがたのしめる

60cc以下ならテイスティンググラスで。気分はソムリエ!

さて気になるワインですが、自社醸造でメインに使用しているブドウは外国産。近年の日本ワインブームでなぜ? と思う方もいるでしょう。それには主に2つの理由がありました。ひとつは
「開業時の8月につくりたてのワインをお出しするには、国産のブドウでは時期が合わないんです」と平光さん。

ふたつ目の理由が、店の看板メニューに使用する赤身肉がニュージーランド産なので、同じ国で育てられたブドウのワインでのペアリングを目指したから。そう遠く離れたニュージーランドの“地産地消”を東京の渋谷で実現させているのです。

ニュージーランドから白ワイン・赤ワイン用の2種のブドウを輸入していると聞き、頭に浮かんだのは、代表品種ソーヴィニョン・ブランとピノ・ノワールで、もちろん正解! 北島の銘醸地ホークスベイ産で、育てているのは『大沢ワインズ』。安全で美味しいブドウ栽培とワイン造りを実践している注目度の高いワイナリーです。

ちなみにオープン当時はこの2品種でしたが、秋も深まり国内でもブドウが収穫され始めたため、取材時には長野県産のナイアガラも醸造。この後にはやはり長野県産のカベルネ・ソーヴィニヨンも登場する予定だそう。

手入れの行き届いた清潔感あふれる醸造所。

特別に許可をいただき、カウンターの裏側へ。コンパクトだけど機能的に配置された醸造所で、ブドウの下処理から発酵、醸しまですべての工程が行われています。醸造責任者の村上学(むらかみ・まなぶ)さんの醸造スタイルは、
「できるだけブドウの自然な発酵にまかせて、個性を引き出すこと」で、ワインの仕上がりはビギナーでも親しみやすい「フレッシュでクリーンな味わいです」と宮田さん。

ちなみに村上さんは、『深川ワイナリー東京』の醸造責任者・上野浩輔(うえの・こうすけ)さんに師事。ワインリストに書かれた「ライバルは、深川ワイナリー東京」のコメントに、思わず笑みがこぼれてしまいました。

製薬会社勤めからワイン造りに転身したという村上さん(撮影時のみマスクを外しています)。

ユニークなのがワインの提供スタイル。自社製造ワインはボトルに詰められているのではなく、ビールに用いるようなサーバーで造りたてを注ぎます。こうした“タップワイン”は『渋谷ワイナリー東京』醸造の3種はじめ、『深川ワイナリー東京』などグループで醸したものを合わせて7種。

分量を30cc刻みで指定してオーダーできるため、いろんなワインを少しずつたのしめます。料理ごとにワインを変えるという贅沢もリーズナブルにできますね。

「量を決めるといっても分かりにくい」という方向けに、こんなシートも。

ピノ・ノワールとソーヴィニョン・ブランは、30cc当たり255円。

10月からボトルの持ち帰り販売もスタート。ソーヴィニョン・ブラン、ピノ・ノワールともに3960円(税込み)。

グラスワインの他には、東京都内で営むワイナリーのアイテムも提供。過去にレポートした『清澄白河 フジマル醸造所』や『葡蔵人~BookRoad~』のワインも味わえます。さらにエノログとシニアソムリエが厳選した世界のワイン約100種類も用意されているので、必ず飲みたいワインに出合えることでしょう。

入口近くのセラーには、世界のワインがずらり。

左上に寄ると、『深川ワイナリー東京』や『葡蔵人~BookRoad~』のボトルが。

自社醸造ワインとのおすすめペアリング!

ワインと料理の絶妙なマリアージュを紹介します。

ここからは実際にワインと自慢の料理をいただきます。加わっていただいたのは、シェフの前島康佑(まえじま・こうすけ)さん。
「素材のよさを引き出すのはもちろん、ワインと合わせることを意識した味付けや調理方法を追求しています」とのこと。

ソムリエの宮田さんとともに、白のソーヴィニョン・ブランで1種、赤のピノ・ノワールで2種の組み合わせを教えていただきました。

「ワインとの相性を考えて調理しています」と前島さん(撮影時のみマスクを外しています)。

白×まぐろのタプナード

『タップワイン/ソーヴィニョン・ブラン』と『たっぷりタップナード 漬けマグロ』(500円)。

まずはワインのテイスティングコメントから。輝くようなレモンイエローで、
「グレープフルーツやハーブの香り、塩味(えんみ)もほどよい感じです」(宮田さん)。アルコールは12度前後ぐらいで、清々しくフレッシュという感想です。

タプナードとは、南フランスのオリーブやアンチョビ、ニンニクなどを用いたペースト状のソースのこと。
「赤身肉の店なので、魚もマグロの赤身を選びました。レモン汁などで酸味を強めにして、ワインと合うようにしています」(前島さん)。

透明感のあるオリーブやケッパーの味わいが、ワインのクリーンなところと重なるマリアージュ。料理を食べた後にワインを含むと、アンチョビとワインの塩味が融合したような心地よいミネラルも感じました。

赤×レバームース

『タップワイン/ピノ・ノワール』と『フランス仕込みのレバームース』(650円)。

「バラのようなフローラルな香りに、ピノ・ノワールらしい紅茶のニュアンスも感じていただけると思います」と宮田さん。チャーミングですが、酸味もしっかりしているワインです。

ムースはひと口食べて、驚くのほどの軽さにびっくり。
「白レバーに生クリームと牛乳、そこに全卵を入れて滑らかに仕上げているんですよ。ソースはキャラメリゼして甘味があります」とほほ笑む前島さん。

タンニンが控え目のワインと料理が“滑らかさ”でつながるマリアージュ。イチゴキャンディーのようなワインの香りも、ソースの甘味を引き立てているようです。

赤×牛フィレ肉のステーキ

『タップワイン/ピノ・ノワール』と『ニュージーランド産牧草牛フィレのビステッカ(ステーキ)』(200g4580円~)。

引き続きピノ・ノワールとのペアリングは、看板の赤身肉料理と。ニュージーランドで牧草を食べて育った牛のフィレ肉のステーキの登場です。

「赤身肉は火入れ時間が長いと、パサパサになってしまいます。オーブンに入れる時間を短めにして、ホイルで包んで長く寝かし余熱でジューシーに仕上げました」(前島さん)。まずは塩。続いてフレッシュな味わいのグリーンペッパーのソースでいただきます(ソースは季節などによって変わるそう)。

この骨太な料理に、先ほどは華奢に思えたピノ・ノワールで合わせて大丈夫? 実践して杞憂だったことに気づきます。
「このワインは外観からとてもライトな印象なんですが、意外にボディはしっかりあるんですよ」と宮田さん。確かにアルコール度数も13度ぐらいと厚め。がっつりしたステーキとも美味しくいただくことができました。

連載7軒目のレポートはいかがでしたか? 今回は初めての大型商業施設内にあるワイナリーゆえ、ワインはもちろん観光やショッピングなども一緒にたのしめるのもポイント。ワインの魅力にまだ気づいていない知人も気軽に誘って、ワイン仲間を増やしましょう!
※価格は取材時。特に表記していない限り、税抜き価格です。

渋谷ワイナリー東京
東京都渋谷区神宮前6-20-10 MIYASHITA PARK North 3F
TEL/03-6712-5778
営業時間/11:00~23:00
定休日/不定休
アクセス/ JR、東京メトロ半蔵門線・銀座線・副都心線、東急東横線・田園都市線、京王井の頭線「渋谷」駅より徒歩3分ほか

※営業時間などは新型コロナウイルス感染症対策で変更になる場合もあるので、事前に確認を。
渋谷ワイナリー東京の詳細はこちら

<“Urban”ワインを巡る①>はこちら
<“Urban”ワインを巡る②>はこちら
<“Urban”ワインを巡る③>はこちら
<“Urban”ワインを巡る④>はこちら
<“Urban”ワインを巡る⑤>はこちら
<“Urban”ワインを巡る⑥>はこちら

ライタープロフィール

とがみ淳志

(一社)日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート/SAKE DIPLOMA。温泉ソムリエ。温泉観光実践士。日本旅のペンクラブ理事。日本旅行記者クラブ会員。国内外を旅して回る自称「酒仙ライター」。

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