焼酎の熱燗について知ろう! おいしい飲み方を徹底解説
「日本酒の熱燗」は定番の飲み方ですが、「焼酎の熱燗」を飲んだことがありますか? 熱燗は焼酎でもたのしめる飲み方です。寒い季節にアツアツの熱燗を飲めば体の芯から温まるはず。今回は熱燗の特徴やお湯割りとの違い、おいしい作り方などを紹介します。
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焼酎の熱燗とは?
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「熱燗」とは?
「熱燗」とは、約50度に熱したお酒のこと。おもに日本酒で使われる温度表現のひとつで、ほかにも温度帯によって以下のような表現が使われています。
◇55~60度:飛び切り燗(とびきりかん)
◇50度:熱燗(あつかん)
◇45度:上燗(じょうかん)
◇40度:ぬる燗(ぬるかん)
◇35度:人肌燗(ひとはだかん)
◇30度:日向燗(ひなたかん)
なお、お酒に加熱することを「お燗する」「燗をつける」などといい、加熱したお酒のことを「燗酒(かんざけ)」といいます。
「熱燗」などの燗酒は焼酎でもたのしめる飲み方
燗酒は、焼酎でもたのしめる飲み方です。たとえば、鹿児島や宮崎、熊本など焼酎造りが盛んで消費量が多い地域では、伝統的に焼酎をお燗して飲む習慣が根づいています。
焼酎をお燗して飲むときは、30~50度程度で飲まれることが多いようです。約50度の熱燗ではキレのよい味わいを、約40度のぬる燗では豊かな香りを、約30度の日向燗ではほんのり立ち上る香りをたのしめるといわれています。
なお、温めすぎるとせっかくの風味が飛んでしまうことがあるので、基本的には50度程度以下に温めて飲むのがおすすめです。
「焼酎の熱燗」と「焼酎のお湯割り」との違い
熱燗などの燗酒とお湯割りの違いは、飲み方にあります。
燗酒は、焼酎を入れた酒器を湯煎や直火などで温め、おちょこなどに注いで飲むたのしみ方です。一方、お湯割りは、お湯を注いだぐい吞みなどに、好みの割合で焼酎を加えて飲むたのしみ方です。焼酎をホットで飲む場合、手軽に作れる「お湯割り」のほうが、なじみのある人が多いかもしれません。
焼酎をお湯割りにすると、立ち上る香りや焼酎の甘味、やわらかな飲み心地をたのしめますが、燗酒ではさらに原料の個性が際立って感じられるといわれています。燗酒は準備にやや手間がかかるものの、お湯割りよりも原料由来の香りや味わいをしっかりとたのしめるのが魅力といえるでしょう。
焼酎の熱燗の作り方
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焼酎の熱燗の基本的な作り方
熱燗の作り方はいくつかありますが、一般的な方法は湯煎です。湯煎の手順とコツを紹介しましょう。
1:焼酎を徳利に入れる
徳利などの酒器を用意して、9分目くらいを目安に焼酎を注ぎ入れます。徳利の注ぎ口をラップやアルミホイルなどで覆うと、焼酎の香り成分が飛びにくくなります。
2:沸騰させたお湯に浸ける
鍋などに、徳利の7~8分目くらいまで浸かるほどの水を入れて火にかけます。沸騰したら火を止め、徳利を入れます。なお、火にかけたままお燗する方法もありますが、温めすぎると風味が損なわれるので注意しましょう。
3:約5分で徳利を取り出す
4~5分ほどで取り出します。酒器にもよりますが、約3分で40~45度程度の「ぬる燗」、約4分で45~50度程度の「上燗」、約5分で50~55度程度の「熱燗」が作れます。なお、取り出すときは、やけどに注意してください。
焼酎の熱燗には「前割り」した焼酎がおすすめ
「前割り」とは、焼酎ならではの飲み方で、前もって焼酎を水で割っておくことを指します。この「前割り」した焼酎を冷蔵庫などで一晩から数日間ほど寝かせたものを、「前割り焼酎」といいます。
焼酎を「前割り」すると、焼酎と水が分子レベルでなじんでまろやかになり、通常の水割りよりもおいしくなるといわれています。そのため、「前割り焼酎」を燗につければ、燗をつける直前に割ったものよりも、さらに焼酎の豊かな風味をたのしむことができます。
なお、前割りするときは、焼酎と水を6:4くらいの割合にするのが目安です。これを基準に、濃いめが好きな人は焼酎の量を増やしたり、お酒にあまり強くない人は薄めたりと、好みの比率を見つけてみてください。
焼酎の熱燗をよりおいしくたのしめる伝統的な酒器とは?
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芋焼酎の熱燗には「黒千代香(くろぢょか)」がおすすめ
焼酎を熱燗で飲むときは、各地の伝統的な酒器で作ると、よりおいしくたのしめます。ここでは芋焼酎におすすめの「黒千代香」を紹介しましょう。
「黒千代香」は、鹿児島で古くから燗をつけるときに使われてきた専用酒器です。黒い釉薬(ゆうやく)で仕上げた陶磁器製の土瓶で、漆黒の光沢を持つ平べったいボディに、半円状の取っ手と細い注ぎ口がついているのが特徴です。
お燗するときは、黒千代香に焼酎を入れ、弱めの直火にかけ、じわじわと温めてたのしみます。この、焼酎を直火にかけて燗をつける方法を「直燗(じきかん)」といいます。
黒千代香に焼酎を入れると、原料の火山性の土に含まれる遠赤外線効果で酒質がまろやかになり、よりおいしくなるといわれています。また、趣のある見た目なので、ぐい呑みや徳利とセットで揃えて、焼酎気分を演出してもよいでしょう。
米焼酎の熱燗には「ガラ」がおすすめ
米焼酎にも熱燗用の伝統的な酒器があります。
米焼酎のなかでも、熊本県の人吉・球磨地方の名産「球磨(くま)焼酎」をたのしむときは、「ガラ」と呼ばれる酒器を使うのがおすすめです。直火にかけられる陶磁器製の美しい酒器で、フラスコのようなボディに細長い注ぎ口がついた形をしています。
「ガラ」は、「チョク」と呼ばれる杯とセットで使われるのが一般的。また、球磨焼酎は伝統的にストレートでたのしまれるお酒なので、「チョク」は、ちびちびと飲めるように小さめに造られているのが特徴です。
「ガラ」と「チョク」も焼酎気分を味わうのにうってつけの酒器です。球磨焼酎とともに揃えれば、よりおいしい熱燗をたのしめるでしょう。
なお、人吉・球磨地方には「ソラキュウ」と呼ばれるユニークな形の杯もあります。円錐形をしていてテーブルに置くことができず、注がれたら飲み干さなければなりませんが、宴席などで重宝されてきた伝統的な酒器です。こちらも用意しておくと、たのしみが広がるでしょう。
50度程度に温めて飲む「熱燗」は、焼酎の風味とともにキレのある飲み口をたのしめる飲み方です。いつもは水割りやお湯割りで飲むという人も、きっと違った魅力を発見できるはずなので、ぜひ試してみてくださいね。