「ビールの本場」はひとつではない? さまざまなビアスタイルの本場を知ろう
「ビールの本場」と聞いて思い浮かべるのは、どの国や地域でしょう? ひとくちに「本場」と言っても、ビールが盛んな国は数多くあり、ビアスタイルによって「本場」は異なります。今回は、ビールの本場として知られる代表的な地域を取り上げ、それぞれを象徴するビアスタイルや銘柄を紹介します。
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ビールの本場(1)ドイツ編
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世界をリードするビール大国ドイツ
「ビールの本場」と聞いて、誰もが真っ先に思い浮かべるのはドイツでしょう。
ドイツは、1516年に発令された「ビール純粋令」によって、近代ビールの礎を築くなど、ビール造りの長い歴史と伝統を有しています。世界最大のビールの祭りとして知られる「オクトーバーフェスト」も開催され、ビールの個人年間消費量も世界トップクラスであるなど、名実ともにビール大国として、その名を馳せています。
ドイツが誇る、多種多様なビアスタイル
ドイツのビール造りでは、日本のように大手ビールメーカーが占める割合は大きくありません。小・中規模のブルワリーがドイツ全土に点在し、上面発酵(エール)から下面発酵(ラガー)まで、じつに多彩なビールが造られています。
なかでも、ドイツならではのビアスタイルと言えるのが、小麦を使った「ヴァイツェン」や、濃厚な黒ビール「ボック」や「アルト」、淡色麦芽を使った「ケルシュ」などです。
また、代表的な銘柄も数多くありますが、国王やドイツ初代首相も愛したとされる「ラーデベルガー・ピルスナー」や、世界的に有名なビール評論家、故マイケル・ジャクソン氏も称賛した「ヴェルテンブルガー・ヴァイスビア・ドゥンケル」などが有名です。
ビールの本場(2)イギリス編
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イギリスで独自に育まれてきたパブ文化
イギリスでは独自のパブ文化が根づいており、ビールが日常的に飲まれています。
なかでも醸造が盛んなのが、イギリスが発祥とされる上面発酵のエールビール。「ペールエール」や「ポーター」「スタウト」と呼ばれるビアスタイルが人気を集めています。
こうしたビールは、キンキンに冷やして飲むよりも、少しぬるめの温度で、香りをたのしみながら飲むスタイルが一般的です。
イギリスを代表するビール銘柄
イギリスのパブで飲まれているビールも一様ではなく、かなりのバリエーションがあります。
その特徴は地域によっても異なりますが、代表的な銘柄としては、優雅な飲み心地が特徴の「ロンドン・プライド」や、英国王室御用達の「バス・ペールエール」などが有名です。その他にも「ホブゴブリン」や「ニューキャッスル ブラウンエール」など、数多くの銘柄があるので、イギリスを訪れる機会があれば、ぜひ、いろいろと試してみてください。
ビールの本場(3)チェコ編
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日本でもおなじみのピルスナービールの本場
チェコは、下面発酵(ラガー)のなかでも主流となっているビアスタイル、ピルスナービールの発祥の地として知られています。「ピルスナー」の語源は、チェコのボヘミア地方にあるピルゼン市が語源とされているように、まさに“ピルスナーの本場”と言えます。
ピルスナーは世界的にも人気のビアスタイルで、日本で「ラガービール」として発売されているビールの多くが、このピルスナースタイルです。
また、チェコは一人当たりのビール消費量が年間で183リットルと、2位に大差をつけてダントツの1位です。(※)
※キリンビール調べ(2017年度)
キリンビール大学 ビール消費量/生産量2010~2017
チェコを代表するビール銘柄
チェコを代表ビール銘柄として、まず挙げられるのは「ピルスナーウルケル」。ピルスナーが誕生したピルゼン市にある市民醸造所で、今もなお当時の製法を守って造られています。
その他にも、アメリカの代表的なビールブランド「バドワイザー」の名前の由来となったとされる「ブドヴァイザル・ブドヴァル(ブデヨビツキ ブドバー)」なども有名です。
ビールの本場(4)ベルギー編
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ベルギーはドイツと並び称されるビール大国
ベルギーは、決して大きくはない国土に、500以上ものビール醸造所を有しています。ドイツと並んでビールの一大生産国として知られ、輸出ではドイツをしのぐほどのビール大国です。
ベルギーのビールで特徴的なのが、古くから伝わる製法で修道院でのみ造られる「トラピスト」と呼ばれるビールや、培養酵母を用いず、自然発酵で造る「ランビック」と呼ばれるビール。歴史と伝統を大切にしたビールが多く造られています。
ベルギーを代表するビール銘柄
ベルギーを代表するビールの銘柄としては、世界的な人気を集めるホワイトビールの「ヒューガルデン」や、さわやかな飲みごこちが人気のラガービール「ステラアルトワ」などが有名で、その他にも現地には800を超える銘柄が存在します。
また、近年では若者を中心に、さまざまなフレーバーが人気のフルーツビールの生産国としても有名で、数多くのフルーツビールが造られています。
ビールの本場(5)アメリカ編
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アメリカのビールとして、まず名前が挙がるのが「バドワイザー」や「クアーズ」といった銘柄。これらを手掛ける大手ビールメーカーが大きなシェアを占めてきたのは日本と同様です。
このため一般的に「アメリカンビール」と言えば、大手ビールメーカーの手による軽いピルスナースタイルの「アメリカンラガー」。トウモロコシなどの副原料を多く用い、またホップの苦味を抑えた、清涼感のあるビールが主流でした。
クラフトビール王国への変貌
大手ビールメーカーの独壇場だったアメリカにも、近年、大きな変化が訪れています。各地で小規模なクラフトビールのブルワリーが立ち上げられ、世界をリードする「クラフトビール大国」となっています。
クラフトビールの特徴と言えば、造り手ごとの個性やこだわりです。このため、従来の主流だったアメリカンラガーから、エールビールも含めた多様なスタイルのビール造りへと大きくシフト。そうしたなかから、「サミュエルアダムス」や「ブルックリンラガー」「アンカー」といった世界的に有名なクラフトビールブランドが数多く誕生しています。
「ビールの本場」とひとくちに言っても、国や地域によって多くのビアスタイルが造られているため、決してひとつではありません。自分の好きなビアスタイルの本場を知って、実際に訪れて“本場の味”をたのしむのも、ビールファンのたのしみのひとつではないでしょうか。