エールにも種類がある! イギリスのビール事情あれこれ

エールにも種類がある! イギリスのビール事情あれこれ
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イギリス(英国)のビールは上面発酵のエールビールが主流ですが、一言でエールビールといってもさまざまなビアスタイル(ビールの種類)があります。ここではイギリスのビールの特徴や歴史とともに、イギリスで親しまれているおもなビアスタイルを紹介します。

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イギリスのビールの特徴

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ビールは製法によって上面発酵ビールと下面発酵ビールの2つに大別されますが、イギリスのビールのほとんどは上面発酵ビールです。

上面発酵ビールとは、上面発酵酵母(エール酵母)を使い、約15~20度くらいの温度で発酵させて造られるビールのことで「エールビール」とも呼ばれます。ビアスタイルでは、ペールエールやヴァイツェン、スタウト、アルトなどがエールビールにあたります。

エールビールは一般的に、フルーティーで豊かな香りとコク深い味わいに特徴があり、芳醇な風味をじっくりと時間をかけてたのしまれることが多いようです。パブで語らい合いながら、少しずつビールを味わう姿を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

一方、「ラガービール」とも呼ばれる下面発酵ビールでは、下面発酵酵母(ラガー酵母)を使用して、5度くらいの低温でゆっくりと発酵させて造られます。日本のビールに多いラガービールはすっきりしていて飲みやすく、ゴクゴク飲んでのど越しをたのしめるのが特徴で、エールビールとはまた違う魅力を持っています。

イギリスのビールの歴史

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イギリスにビールが伝来したのは「ブリタニア」と呼ばれた古代ローマ帝国統治下の時代、紀元前1世紀ころではないかと考えられています。

英国内にビールが広まったのは、6世紀の終わりころにローマ教皇グレゴリウス1世が修道院に醸造所を併設させたことがきっかけだったようです。当時のビールの多くは、香味づけされた上面発酵のエールが主流だったことから、上面発酵のビアスタイルを総称して「エール」と呼ぶようになったといわれています。

9世紀ころには、現在のパブの原型ともいえる「エールハウス」という居酒屋が盛況になる一方で、主婦が自家醸造を盛んに行うようになります。なかにはエールハウスを経営する主婦も現れ、「エールワイフ」と呼ばれて親しまれていたそう。またエールは祝い酒としても重宝されていて、花嫁のビール=ブライド・エールが「ブライダル」の語源になったともいわれています。

12世紀ころになると修道院で盛んにビールが造られるようになり、専業のビール醸造業者も現れて、イギリスにエールビール文化が根づきます。

15世紀には防腐効果に優れたホップ入りのビールがドイツのフランダースより輸入されますが、グルートというハーブが使われた伝統の味を好むイギリスの人たちにはあまり受け入れられなかったようです。

しばらくは、ホップなしを「エール」、ホップ入りを「ビール」と呼び別物とされていましたが、1630年ころにホップを入れたペールエールが登場。1697年に麦芽への課税が始まると、麦芽量を減らしホップをふんだんに使用したペールエールが多く造られるようになりました。

それから1722年にホップが3倍以上使われているポーターが大ヒットし、1778年にはギネス社が開発した、どっしり濃厚な味わいのスタウト・ポーター(のちのスタウト)が登場します。

19世紀以降はペールエールがイギリスのビールの主流となり、ポーターは衰退したもののスタウトが定番のビアスタイルとして定着して、今に至ります。

イギリスのビールの種類を知ろう

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イングリッシュ・ペールエール

バートン・オン・トレントで生まれたイギリスの伝統的ビアスタイル。黄金色から銅色の中濃色ビールですが、「ペール(淡い)」と呼ばれている理由は、このビアスタイルが生まれた当時の一般的なビールが濃色だったためです。ほかのビールと比べて淡い色合いだったことから、「ペールエール」と呼ばれるようになったといわれています。イングリッシュ・ペールエールは、フルーティーな香りと苦味、すっきりとしたドライな味わいが特徴です。アルコール度数は約4.5%~5.5%。

インディア・ペールエール(IPA)

18世紀末ころ、イギリスからインドにビールを輸送する際に生まれたビアスタイル。暑く長い船旅となるため、劣化しないように大量のホップを入れアルコール度数を高めた結果、ホップの香りや苦味が際立ったビールが生まれたそうです。アルコール度数は約4.5%~7.0%で、力強い苦味とすっきりドライな味わいをたのしめます。

ポーター

18世紀初頭ころにロンドンで流行していた「スリースレッド」を手本に造られた銘柄「エンタイア」を原型とするビアスタイル。諸説ありますが、荷運びする人(ポーター)に人気だったことから、「ポーター」と呼ばれるようになったといわれています。やや濃い茶色でコクのある味わいのブラウンポーターと、黒色でシャープな苦味をたのしめるロブストポーターがあります。

スコッチ・エール

スコットランドのエディンバラで誕生したビアスタイル。ベルギーへの輸出用に造られたといわれています。麦芽の風味と強い甘味により、苦味が弱く香りがほとんどないものが主流ですが、なかにはカラメルのようなニュアンスのあるものや、スパイスを加えたものもあります。アルコール度数は約6.2~8.0%と高め。

スコティッシュ・エール

スコットランドで伝統的に造られているビアスタイル。濃い琥珀色や銅色で、ホップの苦味は弱く、やわらかくまったりとした味わいが特徴です。ピート(泥炭)を炊いたモルトで醸造したものでは、スモーキーさも感じられます。アルコール度数は約3.0~3.5%と低めです。

イギリスのビール事情|リアルエールへの回帰

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独自のパブ文化が育むリアルエール

イギリス独自のビール文化といえば、まず挙げられるのが「パブ」の存在。パブとは、「パブリックハウス」の略で、ロンドンには約8,000軒のパブがあるといわれるほど、イギリス人にとっての身近で大切な社交の場となっています。
このパブに欠かせないビールとして人気なのが「リアルエール」と呼ばれるビール。イギリスの伝統的なパブでは、「カスク」と呼ばれる樽で貯蔵し、二次発酵(カスクコンディション)させたビールが主流となっていて、パブオーナーは、自身でビールの熟成具合を見極めるため、パブごとに味わいの異なるビールが販売されています。

ビール造りにおける伝統回帰

イギリスのビール文化における近年の大きなトピックが、「CAMRA」と呼ばれる市民運動。これは、「Campaign for Real Ale」の略で、大企業が大量生産する画一的なビールではなく、古くからある伝統的なビール「リアルエール」を飲もうという活動です。
1970年代にスタートしたこの運動により、昔ながらの製法で自然発酵させた「ビターエール」と呼ばれるビアスタイルが復活するなど、イギリス各地で伝統的なビール造りが見直されています。

イギリスでビールを注文するときには「パイント」で

イギリスのビール文化のひとつに、その独特の計り方があります。
イギリスでビールを注文するときは「1パイント」か「ハーフパイント」という単位で注文するのが基本。「パイント」とは伝統的な「ヤード・ポンド法」における体積の単位で、イギリスの1パイントは568ミリリットル(UKパイント)になります(アメリカのUSパイントは473ミリリットル)。
メートル法が主流となった現在も、いまだに昔ながらの単位を使っているイギリスらしいこだわりといえます。

1pint(パイント)って何ml? ビールの単位と容量を知ろう!

イギリスを代表するビール銘柄を紹介

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イングリッシュ・ペールエール編

【フラーズ ロンドンプライド】
フラー・スミス・アンド・ターナー社が造る、イギリスで人気のプレミアムエールのひとつ。3種のホップによるフルーツやキャラメルのような甘い香りが特徴で、口当たりはなめらか。ローストされた麦の風味や複雑な味わいとともに、後味にほどよい苦味が感じられます。

【シェパード・ニーム スピットファイアー】
第二次世界大戦中にドイツ空軍機と戦った、英国空軍の有名な戦闘機・スピットファイアーの名を冠するビール。戦闘から50年を記念し、1990年に英国空軍共済基金の募金を集めるために発売されました。フローラルな香りとモルトの風味が特徴で、甘味は控えめ。ホップの苦味が余韻としてたのしめます。製造は、シェパード・ニーム醸造所が手掛けています。

インディア・ペールエール(IPA)編

【ブリュードッグ パンク IPA】
2007年創業のブリュードッグが手掛けるIPA。大量のホップを贅沢に使い、グレープフルーツやトロピカルフルーツのような香りが存分に引き出されています。さわやかな苦味と、スコットランド産の麦芽由来の甘味も特徴です。東京・六本木のオフィシャルバー「ブリュードッグ六本木」でも味わえます。

【ウィアード・ビアード ファイブオクロック シャドー アメリカンIPA】
伝統的なブリティッシュスタイルとアメリカンスタイルが融合したIPA。麦芽とホップのバランスがよく、マーマレードのような甘味やピンクグレープフルーツのような苦味、南国フルーツのようなニュアンスを感じられます。社名のウィアード・ビアードは「変なヒゲ」という意味。

ブラウンエール編

【ニューキャッスル ブラウンエール】
ブラウンビールの正統派で、イギリスでトップクラスの人気を誇るビールのひとつ。ペールエールに対抗して造られたといわれています。ローストモルトによるキャラメルのような風味や、すっきりとした口当たりが特徴で、とても飲みやすいビールです。

ポーター編

【サミエル・スミス タディー・ポーター】
有名ビール評論家が高く評価したビールとして知られています。キャラメルのようなロースト香と軽い酸味、深い味わいが特徴で、キレのよい後味も魅力。常温でじっくりと味わいたいビールです。

【フラーズ ロンドンポーター】
複数種類のモルトとファグルホップで醸造した、芳醇な味わいのポーター。コーヒーのようなロースト香やビターチョコレートのような甘味がほのかに感じられます。

スコッチ・エール編

【トラクエア ハウスエール瓶】
スコットランドのトラクエア醸造所で造られているスコッチ・エール。発酵や熟成を伝統的な木樽で行っているため、樽由来のオーク材やナッツのほのかな香りが感じられます。キャラメルやレーズンのような甘い香りと、穏やかな苦味がたのしめます。

【マックイーワンズ スコッチ・エール】
スコットランドの人気銘柄、マックイーワンズのスコッチ・エール。アルコール度数は8%と高めですが、まろやかで飲みやすいのが特徴です。ドライフルーツのような甘酸っぱさや、キャラメルのようなほろ苦さ、後味にマイルドなコーヒーのような甘さが感じられます。

スコティッシュ・エール編

【ベルヘイブン(ベルヘブン) 80シリング】
麦芽由来の甘い風味やフルーツのような香りが特徴で、軽やかで飲みやすい味わいのエールです。なお「シリング」はイギリスの古い通貨単位のことですが、スコティッシュ・エールではビールの濃さを表すのに使われています。

【セントアンドリュース】
世界中のゴルファーが憧れるゴルフ発祥の地、セントアンドリュースのクラブハウスで提供されているスコティッシュ・エール。ホップ由来の紅茶のような香りと、麦のような風味を味わえます。


エールビールが主流のイギリスのビールには、多彩なビアスタイルがあります。今回紹介した銘柄を飲み比べて、ビアスタイルの違いをたのしんでみてはいかがでしょう。

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