「ピルスナー」はチェコ発祥のビールスタイル
ビールの種類として有名な「ピルスナー」は、今から177年前にチェコで誕生したビール。その後、世界中へと普及し、今ではもっともポピュラーなビアスタイルになっています。今回は、そんな「ピルスナー」の歴史や魅力について紹介します。
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「ピルスナー」は世界初の金色のラガービール
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チェコ発祥の「ピルスナー」とは?
「ピルスナー」は、1842年に現在のチェコのピルゼンという町で誕生したビールです。おもに淡色麦芽、ノーブルホップ、軟水を用いて造られます。ホップの苦味がきいた爽快で香り豊かな淡色系ビールで、アルコール度数は3~5パーセントが一般的です。
世界初の黄金色のラガービール
「ピルスナー」は、低温で発酵させる下面発酵の「ラガービール」に分類されるビールです。上面発酵による「エールビール」に比べてスッキリとした味わいが特徴で、その淡い黄金色の外観から「世界初の金色のラガービール」とも呼ばれています。
「ピルスナー」の元祖「ピルスナーウルケル」
かつて、ピルゼンの市民醸造所で造られていた、ピルスナーの元祖とも言えるビールが「ピルスナーウルケル」です。
当時、ドイツ・ミュンヘンで人気のあったラガービール(ミュンヘナー)を参考に造られ、世界で最初の「ピルスナー」となった「ピルスナーウルケル」。現在でも、「ボヘミアン・ピルスナー」とも呼ばれ、その伝統的な製法を受け継いで造られ続けています。
「ピルスナー」は世界でもっともポピュラーなビアスタイル
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誕生後、またたくまに世界を席巻した「ピルスナー」
「ピルスナー」は現在、ヨーロッパはもちろん、世界中で飲まれているビール。一説によれば、世界のビールの約7割がこのスタイルだと言われています。
このように急速に普及した大きな理由は、低温下で下面発酵によって造る「ピルスナー」は品質のばらつきが少なく、大量生産に向いていたからだとか。加えて、冷蔵技術が発達するなかで「冷やして飲むピルスナーはおいしい」との評価が広まったことも、その普及を後押ししたと言われています。
日本のビールのほとんどは「ピルスナー」
今では、世界でもっともポピュラーなスタイルとなった「ピルスナー」ですが、日本も例外ではなく、大手メーカーが造るビールの約9割以上がこのスタイルだと言われています。
実際、サッポロの「黒ラベル」やアサヒの「スーパードライ」、サントリーの「プレミアムモルツ」、キリンの「一番搾り」など、私たちにも馴染みのあるこれらの銘柄は、すべてこの「ピルスナー」という種類のビールです(「プレミアムモルツ 香るエール」は例外)。
アルコール度数が比較的低く、さわやかなのどごしで、冷やしてゴクゴクと飲むことができる「ピルスナー」は、高温多湿な風土を持つ日本の環境に合ったビールだと言えるでしょう。
「ピルスナー」がクラフトビール業界で再注目
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エールビール中心だったクラフトビール業界
クラフトビール人気の高まりとともに、近年、日本でも小規模なブルワリーが数多く誕生し、それぞれ独自のビール造りに取り組んでいますが、そのスタイルはペールエールやIPA(インディア・ペールエール)など上面発酵による「エールビール」が目立っています。
というのも、そもそもクラフトビールの本場アメリカでは、大手メーカーの手による「ラガービール」へのアンチテーゼとして発展してきた歴史があります。日本のクラフトブルワリーも「エールビール」にこだわることで、大手メーカーとの差別化を図っているという一面があるのかもしれません。
クラフトビール業界でも「ピルスナー」に熱い視線
「ラガービールは大手メーカーのもの」「クラフトと言えばエール」といったイメージが強かったように思えるクラフトビール業界ですが、最近は改めて「ピルスナー」への注目度が高まっているようです。
もともと「ピルスナー」が世界中に広まったのは、味わいが魅力的だったからこそ。
現在では、「田沢湖ビール」「横浜ベイブルーイング」「富士桜高原麦酒」「箕面ビール」などの有名ブルワリーが手掛ける「ピルスナー」が世界でも高評価を受け、改めてその素晴らしさに熱い視線が注がれています。
世界中で愛されている「ピルスナー」ですが、シンプルで繊細なので、造り手ごとの考えや技術の違いが如実に出るビールです。皆さんもぜひ、いろいろな「ピルスナー」を飲み比べて、その奥深さを味わってみてください。