愛媛のおすすめ地酒10選【愛媛の日本酒】
愛媛県の日本酒は「全国新酒鑑評会」で金賞を獲得する銘柄が多く、そのレベルの高さに定評があります。瀬戸内海や宇和島の淡泊な魚介料理に合う繊細な味わが特徴で、理想の食中酒と評される銘柄も少なくありません。愛媛の日本酒のおいしさの秘密と、人気銘柄を紹介します。
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愛媛は全国的にもレベルの高い酒処で、著名な杜氏集団を輩出
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愛媛の日本酒造りの起源は、戦国時代後期にまでさかのぼるといわれています。そうした酒造りの伝統は、高い技術を保持したまま現在も受け継がれ、「全国新酒鑑評会」でも数多くの蔵元が受賞酒を輩出。全国レベルで人気を博す銘柄がそろっています。
よい日本酒造りには、よい水との出会いが欠かせませんが、愛媛は西日本最高峰・石鎚(いしづち)山からの伏流水に恵まれ、日本酒造りの環境が整っている土地だといえます。
愛媛の日本酒造りが高い技術を有していることを証明するのが、越智杜氏と伊方杜氏という2つの杜氏集団の存在です。
越智杜氏は今治市宮窪町を拠点とし、「現代の名工」にも選ばれる優れた技能をもつ杜氏集団として知られています。一方、伊方町(佐田岬半島)を拠点とするのが伊方杜氏です。江戸時代を起源とし、全国でも有数の歴史を誇ります。
愛媛独自の酒造好適米「しずく媛」
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愛媛県の日本酒造りは、戦国以来の伝統を大切にしながら、新たな取り組みにも積極的です。
たとえば1998年には、県の研究機関の協力によって、県独自の酵母である「EK-1」の開発に成功。現在、県内の多くの蔵元で使用されています。
また、愛媛で古くから酒造りに用いられてきた食用米「松山三井」を品種改良して、愛媛県初の酒造好適米を誕生させています。1999年に栽培がスタートしたこの品種には、“愛媛の米からおいしい日本酒のしずくが生まれるように”という願いを込めて、2007年に「しずく媛」という名前がつけられました。
「しずく媛」で醸した日本酒は、瀬戸内海や宇和島の海が生む魚介を中心とした淡泊な食文化によく合うと評判です。こうした評価の高さから、「しずく媛」を使用した日本酒造りは、愛媛県のみならず高知県にも広がりを見せています。
愛媛の日本酒、人気銘柄
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愛媛県の豊かな自然環境が生み出す日本酒は、全国の地酒マニアから注目されています。そのなかでも、とくに人気を集めている銘柄を紹介しましょう。
「全国新酒鑑評会」で幾度も金賞を獲得する安定感が持ち味の【石鎚(いしづち)】
「石鎚」を造る石鎚酒造は、その名のとおり石鎚山のふもとにある蔵元です。大正9年(1920年)より杜氏制を廃止し、蔵元家族を中心とした酒造りに邁進。「全国新酒鑑評会」では3年連続金賞受賞を果たすなど、安定した酒質を生み出す技術は高く評価されています。近年では花から抽出した「花酵母」を用いた日本酒造りのプロジェクトにも参加するなど、新たな挑戦にも積極的な蔵元です。
蔵元の名を冠した代表銘柄「石鎚」は、舌触りのよいまろやかな口当たりが特徴の日本酒です。甘味がありながらも、芯の通ったスッキリとした味わいがやみつきになると評判です。
製造元:石鎚酒造株式会社
杜氏の力を存分に発揮し全国から注目を集める【梅錦(うめにしき)】
「梅錦」を醸すのは、明治5年(1872年)創業の蔵元、梅錦山川です。長きにわたり同社の酒造りの中核を担い「現代の名工」にも選ばれた山根福平杜氏の引退後は、その補佐を務めていた中村博杜氏が技を継承し、伝統の味を守り続けています。
「梅錦」は、深みがありながらも雑味のない味わいに定評があり、「全国新酒鑑評会」では、なんと30回以上も金賞を獲得した実力派。メディア露出に加え、「梅錦 つうの酒」がANA国際線ビジネスクラスにも採用されるなど、その実力は広く全国に知られています。
製造元:梅錦山川株式会社
早くから淡麗辛口の純米酒造りに取り組んだ蔵元が醸す【一刀両断(いっとうりょうだん)】
「一刀両断」を造る酒六酒造は、昭和16年(1941年)に前身である喜多酒造を買い取り、現在の社名に変更したことから歴史がスタートします。昭和52年(1977年)には、伊方杜氏を迎え入れ、当時の愛媛の日本酒としては珍しい、淡麗辛口の純米酒や大吟醸酒造りに挑戦したことで注目を集めました。
小田深(おだみ)山の伏流水を仕込み水に、「山田錦」と「松山三井」を原料米に造られる「一刀両断」は、やさしさがありながら強さも味わえるという絶妙なバランスが秀逸。辛口好きの日本酒ファンに広く愛されているお酒です。
製造元:酒六酒造株式会社
小規模ならではのていねいな仕事が生み出す愛媛の地酒【城川郷(しろかわごう)】
「城川郷」を造るのは、明治31年(1898年)創業の中城本家酒造。蔵元家族が地域の人々との連携のもとに、小規模ながら基本を徹底した、ていねいな酒造りを行っています。
「松山三井」や「しずく媛」といった愛媛県の米と愛媛酵母、そして蔵元の裏山からの湧水を使用した「城川郷」は、やさしく品のある香りと、なめらかな口当たりが特徴です。この土地でしかできない酒造りによって生まれる味わいは、愛媛の魚介料理との相性も抜群。日本酒が苦手という人でも飲みやすい1本に仕上がっています。
製造元:中城本家酒造合名会社
愛媛最高齢杜氏が醸す素材のよさを堪能できるお酒【虎の尾(とらのお)】
「虎の尾」を造る西本酒造は、寛政5年(1793年)創業という長い歴史を誇る蔵元です。現在、愛媛県内でも最高齢の杜氏が活躍する蔵元としても知られていて、長年にわたり培われた技術を活かした日本酒造りが身上です。
「虎の尾」は、創業当時、一揆を起こした土地の百姓をねぎらうために、初代当主がふるまった酒との伝承が残されています。糖類は一切加えず、一般酒でも吟醸酒クラスの精米歩合で醸すため、口のなかでスッと切れるようなサッパリ感が絶妙。多くの日本酒好きを虜にしています。
製造元:西本酒造株式会社
愛媛の日本酒、そのほかの注目銘柄
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愛媛県にはほかにも多くの個性豊かな蔵元や銘柄があります。注目の5銘柄をピックアップしました。
愛媛の日本酒らしい上品な香りとやさしさを感じる【京ひな(きょうひな)】
「京ひな」は「一刀両断」と同じ酒六酒造の銘柄です。酒六酒造が蔵を構える喜多郡内子町は、もともと京都仏教との結びつきが強い地域。そうした歴史ある地域で醸される、京都の雅な雰囲気を受け継ぐ酒として命名されたのが「京ひな」です。
「酒造りは毎年、一年生」という謙虚な気持ちを胸に、木造りの古い蔵で醸される「京ひな」は、上品な香りと、キレのなかにやわらかさを感じるやさしいお酒。愛媛の日本酒らしい味わいがたのしめます。
製造元:酒六酒造株式会社
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品質を追求する杜氏の実直な姿勢が見える日本酒【雪雀(ゆきすずめ)】
「現代の名工」に選ばれた総杜氏、田窪幸次郎氏が指揮を執る雪雀酒造は、大正4年(1915年)創業の中予地方にある蔵元です。当初は「雀正宗」の銘柄でしたが、初代当主と親交のあった当時の首相、犬飼毅氏のすすめから「雪雀」へと名称を変更しました。
「雪雀」は、「品質第一に、うまい酒を造る」をモットーとする杜氏のもと、厳選した素材で造られる酒。なかでも麹造りへのこだわりは強く、すべての麹米に酒造好適米を使用するという徹底ぶり。酒名にある「雪」のイメージそのままに、スッキリとした透明感とコシを感じられる1本です。
製造元:雪雀酒造株式会社
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手間を惜しまぬ伝統製法で造られる酒【日本心(やまとごころ)】
「日本心」を造るのは、東予地方において明治37年(1904年)に創業した武田酒造。「人の五感を満たす酒造り」をめざし、時代の食文化に合う日本酒造りを行っています。
石鎚山系から湧き出る伏流水を仕込み水に使う「日本心」は、米の甘味を上手に活かしつつ、ほどよい酸味を感じるバランスのとれた日本酒です。その技術をもとに、山廃仕込みの純米吟醸や、袋搾りの無ろ過商品など、手間のかかる高付加価値な日本酒造りに取り組んでいます。
製造元:武田酒造株式会社
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歴史と新しさが融合する革新的なお酒【千代の亀(ちよのかめ)】
「千代の亀」は、享保元年(1716年)創業という、300年以上の歴史を紡ぐ千代の亀酒造の代表銘柄です。戦後から大量生産のスタイルをやめ、「本物の酒を造る」という想いのもと手作業に回帰。現在は地域に貢献したいとの想いから、米からラベルの和紙にいたるまで、すべて地元愛媛から仕入れるという徹底ぶりです。
クラッシックを聞かせて育てた醪(もろみ)や、大学と連携した商品開発、カンヌ国際映画祭公式レセプション酒への提供など、歴史に甘んじない革新的な活動が魅力。その根本には、日本酒の文化そのものを広げようという、老舗蔵だからこその願いが込められています。
製造元:千代の亀酒造株式会社
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挑戦心と手造りにこだわった食中酒【七星剣(しちせいけん)】
「七星剣」は、先に説明した「一刀両断」「京ひな」と同じ、酒六酒造が醸す日本酒です。いくつもの人気銘柄を輩出する酒六酒造は、昔ながらの手作業にこだわりながらも、新しいチャレンジを忘れない個性的な蔵元として知られています。
「七星剣」は、兵庫県で栽培された「山田錦」を使用し、食事に寄り添う主張しすぎない味わいが特徴。丸みのある香りとスッキリとしたあと味が、食中酒にピッタリです。
製造元:酒六酒造株式会社
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豊かな自然に恵まれた愛媛県は、素材のよさと、それを引き出す杜氏や蔵人たちの技術が融合し、独自の日本酒文化が発達しています。ひと口含めばきっと、和食を引き立てる日本酒のよさを再認識するはずです。
愛媛県酒造協同組合