愛媛の日本酒【虎の尾(とらのお):西本酒造】蔵元杜氏の先駆者が醸す宇和島三間町の歴史ある酒

愛媛の日本酒【虎の尾(とらのお):西本酒造】蔵元杜氏の先駆者が醸す宇和島三間町の歴史ある酒
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「虎の尾」は、愛媛県の蔵元、西本酒造の日本酒銘柄です。「虎の尾」には、一揆を起こした土地の人々に振る舞われたという、江戸時代から今に伝わる逸話が遺されています。小さな蔵でていねいに仕込まれる、由緒ある酒「虎の尾」の魅力を紹介します。

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「虎の尾」は江戸時代創業の蔵元が造る歴史のある酒

「虎の尾」は江戸時代創業の蔵元が造る歴史のある酒

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「虎の尾」の蔵元、西本酒造の歴史

「虎の尾」は、愛媛県宇和島市の北東部、三間町宮ノ下に蔵を構える小さな蔵元、西本酒造の日本酒です。

西本酒造は、江戸時代の後期、寛政5年(1793年)に宮ノ下で創業した「桑名屋」を前身とする歴史のある蔵元です。桑名屋はのちに「虎の尾醸造」と名を改め、昭和16年(1941年)に経営者が交代。「西本酒造」となって現在に至ります。

「虎の尾」は、桑名屋が創業当時から造っていた日本酒です。自然豊かな三間町宮ノ下で、220年以上にもわたって大切に醸されてきた酒なのです。

「虎の尾」に伝わる江戸時代のエピソード

「虎の尾」には、江戸時代から今に伝わるエピソードがあります。

寛政5年(1793年)、現在の三間町宮ノ下も含まれる吉田藩で、一揆が起きました。藩と癒着していた御用商人のみを優遇する紙の専売制が打ち出されたためです。

重税を課すなど横暴な政治を長年行ってきた藩に対する一揆は、大規模なものとなりました。結果は農民たちの勝利で終わっています。

「虎の尾」は、この一揆に参加した農民たちをねぎらうため、当時の蔵元「桑名屋」が振る舞った日本酒なのです。

西本酒造は、「虎の尾」の伝統と桑名屋の心意気を今に受け継ぎ、良酒を世に送り出しています。

「虎の尾」を醸す蔵元杜氏とは  

「虎の尾」を醸す蔵元杜氏とは  

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「虎の尾」の蔵元の当主は杜氏も務める

「虎の尾」を醸造する西本酒造の当主、西本勝氏は、昭和40年(1965年)に父である前当主から、蔵元の経営を引き継ぎました。

それから10年後となる昭和50年(1975年)、西本氏は蔵元の経営者と、製造責任者である「杜氏(とうじ)」を兼ねることになり、「虎の尾」をはじめとする西本酒造の日本酒を造り始めます。

愛媛県最高齢の杜氏、西本氏が心を込めて醸す「虎の尾」は、兵庫県産「山田錦」の特等米を38%まで精米して使用した極上の1本。蔵元杜氏としての西本氏の酒造りは高く評価され、全国新酒鑑評会の金賞を、これまでに5回も受賞しています。

「虎の尾」を醸す「蔵元杜氏」とは

「虎の尾」を自ら醸す西本氏のように、杜氏として酒造りも行う蔵元の経営者を「蔵元杜氏」といいます。

近年、日本酒の全体的な出荷量が減少傾向にあるなか、経営規模を縮小する蔵元が増えたこと、杜氏の高齢化や減少、従来の慣習にとらわれない若い世代の台頭などで、蔵元杜氏が増えています。

西本氏が蔵元杜氏となった昭和50年(1975年)ごろには、優れた醸造技術と統率力を持つ杜氏を、全国各地の「杜氏集団」から迎え入れて、日本酒造りを行う蔵元がほとんどでした。

西本氏は蔵元杜氏の先駆者として、45年もの間、銘酒「虎の尾」を造り続けてきたのです。

「虎の尾」の蔵元が仕込む酒

「虎の尾」の蔵元が仕込む酒

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「虎の尾」とともに造られるもうひとつの日本酒銘柄

「虎の尾」の蔵元、西本酒造には、もうひとつ日本酒銘柄があります。それが「大番(おおばん)」です。

「大番」は、昭和のなかごろに生まれました。その名は、獅子文六(ししぶんろく)の小説『大番』に由来します。

『大番』は痛快人情小説で、愛媛の宇和島地方に生まれ、相場師となった男の波乱万丈な人生が描かれています。のちに映画化された際には、宇和島ロケも行われました。

その名がつけられた日本酒「大番」には、兵庫県産「山田錦」を使う「虎の尾」とは異なり、おもに「しずく媛(ひめ)」や「松山三井(まつやまみい)」といった、愛媛生まれの米が使われています。

「虎の尾」を醸す西本酒造のラインナップ

「虎の尾」の蔵元、西本酒造が手掛ける日本酒は、糖類を一切入れずに造られています。仕込み水には「虎の尾」「大番」ともに、愛媛の名水のひとつ「観音水」と同じ水脈の伏流水を使用。また、精米歩合は普通酒でも58%以下で、すべての商品が吟醸酒の精米歩合の基準である60%以下を満たしているのが特徴です。

それでは、西本酒造のラインナップのなかから、いくつか紹介しましょう。

【大吟醸 虎の尾】

兵庫県産「山田錦」の特等米を38%まで磨いて使用した、米の旨味と香りが存分にたのしめる辛口酒。冷蔵庫で冷やすか、ぬる燗で飲むのがおすすめです。

【純米大吟醸 虎の尾】

こちらも、兵庫県産「山田錦」の特等米を38%まで磨いて使用し、水と米だけで造った1本です。甘味のあるまろやかな味わいと華やかな香りが特徴的。

【純米吟醸 大番 しずく媛】

愛媛県生まれの酒造好適米「しずく媛」を55%精米で使用。フルーティーな香りと旨味が味わえる甘口の酒で、生ハムに合うお酒としても知られています。

【番外:粕漬】

西本酒造では、初夏から秋にかけて、契約栽培農家が栽培した「白ウリ」と「キュウリ」を酒粕に漬けた粕漬も販売しています。酒粕は再利用可能で、魚類や鶏肉、豚肉を漬けるのもおすすめ。

「虎の尾」「大番」ともに、少量生産で地元を中心に販売されていることから、入手困難な知る人ぞ知る逸品となっています。見かけたらチャンスです。ぜひ手に取って味わってみてくださいね。


製造元:西本酒造株式会社
公式サイトはこちら

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