愛媛の日本酒【石鎚(いしづち):石鎚酒造】家族で醸す「食中に活きる酒」

愛媛の日本酒【石鎚(いしづち):石鎚酒造】家族で醸す「食中に活きる酒」
出典 : 石鎚酒造サイト

「石鎚」は、愛媛県西条市の蔵元、石鎚酒造の銘柄です。地元の名水と、おもに酒造好適米を原料とする日本酒「石鎚」は、「食中に活きる酒造り」を目標に蔵元家族が力を合わせて醸しています。名の由来や蔵元の歩みなども含め、その魅力を紹介します。

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「石鎚」は蔵元家族がていねいに造る酒

「石鎚」は蔵元家族がていねいに造る酒

出典:石鎚酒造サイト

「石鎚」の名の由来とは

「石鎚」は、愛媛県西条市の石鎚酒造が醸す日本酒です。「石鎚」という名前は、西条市の南部に位置する「石鎚山」に由来しています。

石鎚山は、標高1,982メートルを誇る西日本の最高峰で、日本百名山のひとつです。周辺の山々を従えて、鋭角にそびえるその姿は、神々しさにあふれ、古くから信仰の対象とされてきました。

石鎚酒造は、石鎚山のふもとに蔵を構えています。「石鎚」の名には、「日々仰ぎ見る霊峰・石鎚山のように、清らかな高い理想を持って日本酒造りを行っていく」という、蔵元の熱意が込められているのです。

「石鎚」の蔵元の歩み

石鎚酒造は、大正9年(1920年)に創業して以来、約100年にわたって日本酒造りを行ってきた老舗蔵です。蔵元の越智(おち)家は代々庄屋を営んできた家柄ですが、隣町から現在の西条市氷見(ひみ)に移った後、回船問屋に転身。そして、現当主である越智浩氏の曽祖父、恒次郎氏の代になって、新たに酒造業を開始しました。

石鎚酒造は昔から高品質な日本酒を造ってきた蔵元で、昭和初期には「黒松」という名の吟醸酒が好評を博します。「せめて黒松飲ませてやりたや…」と、詠まれた歌も伝わっていることから、当時の人気の高さをうかがい知ることができます。

「石鎚」は蔵元家族による分担制で造られる

石鎚酒造に転機が訪れたのは、平成11年(1999年)のこと。この年、当主の浩氏は、杜氏の引退をきっかけに杜氏制を廃止して、当時としては珍しい蔵元一家で日本酒造りを行うことを決意したのです。以来、石鎚酒造では分担制を取り、家族で協力し合って酒造りを行っています。

確実かつていねいな仕事を信条に酒造りを行う石鎚酒造は、今や全国新酒鑑評会をはじめさまざまなコンテストで最高賞を幾度も受賞する名蔵元として、広くその名を知られています。

「石鎚」を造り出す水と米と技

「石鎚」を造り出す水と米と技

出典:石鎚酒造サイト

「石鎚」の特徴を生み出す超軟水

石鎚酒造の蔵がある愛媛県西条市は、石鎚山系を源とする伏流水がそこかしこで湧き出す、「名水の町」として知られています。これらの自噴水は「うちぬき」と呼ばれ、安全でおいしい水であることから、環境省選定の「名水百選」にも選ばれています。

「石鎚」の仕込み水にも、「うちぬき」と同じ石鎚山系の伏流水を使用。蔵の敷地の井戸に湧き出る超軟水の水は、日本酒「石鎚」の特徴である澄んだ香りと、すっきりとした口当たり、ビロードのようなやわらかさを生み出しています。

「石鎚」は原料米の持ち味を引き出す酒造りから生まれる

「石鎚」の原料米に使用されているのは、地元愛媛県産の「しずく媛(ひめ)」、兵庫県産をはじめとする「山田錦」、岡山県産「雄町(おまち)」、福井県産「五百万石」といった酒造好適米が中心です。このほか、食用の分類ながら日本酒造りに適した「松山三井(まつやまみい)」や、貴重な在来品種である岡山県産の「朝日」なども使われています。

蔵元は、仕込みごとに計測するさまざまなデータや、その年ごとの米の作柄および性質などから、原料米の品種特性を把握し、それぞれの米の持ち味を引き出す酒造りに活かしています。そうして、米の旨味を豊かに感じられる「石鎚」を醸しているのです。

「石鎚」は手作業の技で醸される「手造りの酒」

「石鎚」を造る工程には、機械化された大量の仕込み方法にはない、手作業の技が活きています。

たとえば、「蒸きょう」の工程では、アルミ製の甑(こしき)にボイラー蒸気を間接噴射するという、手間のかかる方法を採用しています。一般的に蒸米造りは連続蒸米機で行いますが、蒸気を噴射する方法で蒸すと香気よい蒸米に仕上がるのだとか。担当する会長の英明氏は、二級ボイラー技士免許を持っているため、ボイラーの修理やメンテナンスも自らの手で行い、蒸米に情熱を傾けています。

また、麹造りでは、麹菌の生育にムラが出にくいといわれている「タライ麹法」と、少人数でも効率よく作業を行える「箱麹法」を併用。麹菌の菌糸がしっかり伸びている、理想的な「突き破精(はぜ)型」の麹を、じっくりていねいな手仕事で造っています。

「石鎚」は、このような手作業の技を積み重ねて醸される「手造りの酒」なのです。

「石鎚」は「食中に活きる酒」をめざす

「石鎚」は「食中に活きる酒」をめざす

出典:石鎚酒造サイト

「石鎚」の蔵元が「槽(ふね)搾り」を復活させた理由

「石鎚」は、「食中に活きる酒」をめざして造られている日本酒です。料理の味わいを邪魔しない穏やかで澄んだ香りは、「石鎚」の大きな特徴となっています。

蔵元は、この特徴をより活かすため、平成13(2001)酒造年度から、醪(もろみ)を搾る上槽(じょうそう)の工程で、昔ながらの「槽搾り(ふねしぼり)」を復活させています。圧搾機を使ったときに出る特有のにおいが、酒につくのを避けるためです。

また、醪を入れる布製の袋は、専門の業者にクリーニングを依頼。袋のわずかなにおいも酒に移らないよう、細心の注意を払っています。

食中酒としての「石鎚」の絶妙な香りは、こうした細やかな心配りと、手間を惜しまない酒造りから生まれるのです。

「石鎚」は「純米」中心のラインナップ

「石鎚」のラインナップは、純米酒や純米吟醸酒など、「純米酒系」が中心となっています。そのうちのいくつかを紹介します。

【純米吟醸 緑ラベル】

麹米に山田錦、掛米に松山三井を使った、人気の定番商品。穏やかな香味と酸味が特徴の食中酒です。「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2018」でシルバーメダルを受賞。

【無濾過純米】

原料米に松山三井を使用。看板商品のひとつで、米の旨味と透明感のある芳香味が豊かな1本です。「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2019」の最高金賞など、多くの賞を受賞しています。

【純米吟醸 山田錦50】

兵庫県産山田錦を50%磨いて使用。気品のある深い味わいの人気商品です。「インターナショナル・ワイン・チャレンジ2019」でゴールドメダルを受賞するなど、国内外で高く評価されています。

【純米大吟醸 VANQUISH(バンキッシュ)】

地元の名水と、25%まで精米した愛媛県産松山三井を使用し、持てる技術のすべてを注ぎ込んで醸した純愛媛県産の逸品。「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2020」では最高金賞を受賞。

【純米吟醸 プリンセスミチコ】

愛媛県産しずく媛を使用。上皇后美智子さまが皇太子妃時代にイギリスから贈られたバラ「プリンセスミチコ」の花の酵母を、東京農業大学が分離、培養。その「花酵母」を使って醸した純米吟醸酒です。華やかな果実香とやわらかな味わいがたのしめます。

【純米吟醸 粕取り焼酎40度&25度】

「純米吟醸」と「純米大吟醸」の酒粕だけを使った、「石鎚」ブランドならではの焼酎。優雅な吟香とやわらかい口当たりが特徴です。アルコール度数40度の原酒タイプと、仕込み水で割り水した25度タイプの2種類を味わえます。

石鎚酒造は、家族中心の蔵元として再スタートを切ってからも、たゆまぬ努力によって高品質で旨い酒を醸し続けています。食事をたのしみながら、さまざまなタイプの「石鎚」を堪能してみてはいかがでしょう。


製造元:石鎚酒造株式会社
公式サイトはこちら

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