群馬に行って飲んでみたい! おすすめの日本酒(地酒)【関東編】
群馬県は、豊かな水源に恵まれ稲作も盛んなど、日本酒造りに適した環境があります。軟水で仕込まれた群馬の酒は、ソフトな口当たりが特徴。水源である上毛三山の裾野には草津や伊香保などの温泉地が広がり、酒とともに人々から愛されています。
- 更新日:
群馬の自然が織りなす酒造り
yoko_ken_chan / Shutterstock.com
群馬県は、赤城山、榛名山、妙義山からなる上毛(じょうもう)三山に抱かれた自然豊かな土地。その地域風土には、「清冽な水」「澄んだ空気」「冬場の低温環境」と良質な日本酒造りに最適な条件がそろっています。
まず注目したいのが、上毛三山や谷川岳の雪解け水を水源とする豊富で良質な水。その水質は口当たりのよい軟水で、日本酒の仕込みはもちろん稲作にも使用されます。この水が、群馬の地酒の特徴である、やわらかな飲み口とふくよかな味わいを生み出します。
また、群馬県の空気は、山間の雪雲の層で浄化されているのも大きな特徴。思わず深呼吸したくなるようなこの澄んだ空気が、日本酒を醸す微生物をしっかりと育み、発酵を促します。
さらに酒造期間中の低温環境も、微生物の活動を促すポイントのひとつ。厳寒地である群馬県は、冬場に吹きつける冷たい風が「上州のからっ風」として有名です。この寒い気候が、おいしい酒造りに一役買っています。
群馬を代表する酒造好適米「若水」
Kelly Marken / Shutterstock.com
群馬県の豊かな水は、酒造りの原料となる米の栽培にも適しています。酒造りに適した酒造好適米としては、伊勢崎や東毛地区を中心に「若水(わかみず)」の栽培が盛んです。
若水の特徴は、粒が大きくて割れにくいこと、そして「心白(しんぱく)」が多いことです。心白とは、米の中心部にあるデンプン質の固まりことで、白色不透明に見えることから、こう呼ばれています。心白が多いと麹菌が入り込みやすく、良質な麹ができるうえに、粘度が高くて醪(もろみ)にも溶けやすいという利点があります。
じつは若水が開発されたのは愛知県ですが、生産は群馬県の方が盛んなのだとか。「上毛」や「毛野国」など、群馬県の地名に使われている「毛」という文字は、一説によると稲や麦をあらわしており、それほどに稲作が盛んな土地であった証といえるでしょう。
その実力を示すように、群馬県産の若水は、1991年に関東地方では初めて酒造好適米の認定を受けました。
群馬の人気銘柄
Nishihama / Shutterstock.com
群馬県では、老舗酒蔵の伝統を継ぎながらも、挑戦を欠かさない若き杜氏たちが活躍しています。ここでは、昔ながらの酒から新たな風を吹き込む酒まで、人気の5銘柄を紹介します。
世界を見据えたエレガントなブランド【水芭蕉(みずばしょう)】
永井酒造は群馬の最北部・川場村において明治19年(1886年)に創業した、尾瀬の雄大な自然を酒で表現する蔵元です。代表銘柄である「水芭蕉」は最高級の酒米「山田錦」と、尾瀬の大地でゆっくりとろ過された天然水を使った逸品。川場村で汲み上げられるミネラル豊富な尾瀬の水は、ふくよかでほんのり甘く、まさに水芭蕉のような気品のある味わいを醸します。
米の旨味を引き出した純米吟醸のほか、ワインと同じ発酵製法による上品なスパークリング、デザート酒やヴィンテージなど、種類も豊富。冷やしてワイングラスで飲むのもおすすめです。
製造元:永井酒造株式会社
詳細はこちら
井戸水で仕込む伝統の逸品【龍神(りゅうじん)】
「龍神」という名は、「龍神の井戸」という名泉から取ったもの。文政8年(1825年)に龍神の井戸を見つけてその周りに土蔵酒蔵を作ったのが、酒造りの始まりとされていて、現在でも酒蔵内の井戸水を地下180メートルから汲み上げて仕込み水に使用しています。ちなみに蔵元の龍神酒造がある館林は、『ぶんぶく茶釜』の舞台となった茂林寺があることでも有名です。
龍神酒造は、吟醸酒に力を入れている蔵元。「龍神大吟醸」は酒造好適米「山田錦」を4割まで磨き抜いて仕込んでいて、全国新酒鑑評会でも受賞の常連。クリアでキレがよく、上品な香りをたのしめます。
製造元:龍神酒造株式会社
公式サイトはこちら
大自然の息吹を感じられる辛口の酒【谷川岳(たにがわだけ)】
利根川の源流に位置する谷川岳は、日本百名山にも数えられた群馬を代表する名峰。その名を冠した日本酒「谷川岳」は、雄大な自然を表現したキレのよい辛口ながらも天然水のやさしい甘味を感じられる味わいです。
蔵元は水芭蕉と同じく永井酒造。尾瀬の大地によってろ過された天然水に惚れ込んだ初代蔵元以来、大自然を表現した「美しく」「キレイな」酒が身上ですが、谷川岳はまさにその代表格といえるでしょう。
製造元:永井酒造株式会社
詳細はこちら
基本に忠実な「地酒らしさ」が魅力【巖(いわお)】
「巖」の蔵元、高井は享保14年(1729)創業の老舗蔵。近江の商人だった初代が、水と空気の澄んだ藤岡の地に酒蔵を作ったのが始まりです。
「巖」という銘柄は、日清戦争や日露戦争で活躍した軍人・大山巖元帥に由来するもの。かの西郷隆盛と従兄弟関係にあり、真っ直ぐで潔く、義理堅い性格だったという元帥の名を冠しただけあって、「巖」は流行や時代に流されることのない、基本に忠実な酒。酸が立ったどっしりとしたボディに、キレのある辛口ながらも軽やかな飲み口が特徴です。まさに大山巖元帥のような、男らしい日本酒です。
製造元:高井株式会社
詳細はこちら
「澄んだ」という言葉がふさわしい【聖(ひじり)】
きれいな空気と豊かな自然を誇る、赤城山西南麓の高台に蔵を構える聖酒造。天保12年(1841年)創業の老舗で、木曾三社神社の境内に湧き出る気泡を含んだ湧水と、伝統の技術をもって仕込みを行います。また杜氏である七代目を中心に、社員だけで酒造りを行う点も特徴です。
社名でもあり、銘柄にも冠している「聖」には、「よく澄んだ酒」という意味を込めているのだとか。万葉の歌人・大伴旅人も、「酒の名を 聖とおほせし古の 大き聖の言のよろしさ」と詠っています。その名があらわすように、クリアでバランスのよい味わいの日本酒です。
製造元:聖酒造株式会社
詳細はこちら
群馬のそのほかの注目銘柄
Nutink / Shutterstock.com
酒造りが盛んな群馬県には、まだまだ注目の銘柄がたくさんあります。いろいろ試してみて、好みの日本酒を見つけましょう。
季節限定のレアな味わい【初しぼり(はつしぼり)】
島岡酒造は、伝統的な日本酒製造法「山廃造り」を代々継承する、文久3年(1863年)創業の蔵元です。山廃造りとは、蔵付きの天然乳酸菌と自然の力を巧みに利用して、じっくりと時間をかけて酵母を育てる手法。群馬県産の酒造好適米「若水」と赤城山系の伏流水を使い、骨太で力強く、酸味のある辛口の酒を醸します。
「初しぼり」は、島岡酒造の代表銘柄「群馬泉」のなかでも、毎年12月中旬ごろに発売される季節限定酒。搾りたてのフレッシュな味わいが特徴で、おりがらみによる食感や微発泡感がアクセントになります。苦味や渋味も感じる、通好みの飲み応えのある逸品です。
製造元:島岡酒造株式会社
公式サイトはありません
ぬくもりを感じるきめ細やかな酒造り【町田酒造(まちだしゅぞう)】
明治16年(1883年)、初代町田卯三郎によって前橋で創業された町田酒造は、現在4代目。その長女が女性杜氏として継承する伝統の酒質は、“厳撰一筋”の家宝に則った「きめ細やかで清らかな」酒です。
代表銘柄は「清りょう(「りょう」は口偏に「尞」)」ですが、蔵の名前をそのまま銘柄に冠した「町田酒造」は、その名のとおり、蔵元の理想を体現した酒。酒造好適米「若水」を利根川の伏流水で醸し、低温でていねいに仕込んだきれいな酒で、まろやかでどこか温かみを感じさせる風合いがあります。米本来のどっしり感も手伝い、料理にも合うため食中酒としても人気です。
製造元:株式会社町田酒造店
公式サイトはこちら
老舗酒蔵が醸す実力派【大盃(おおさかずき)】
元禄3年(1690年)創業の牧野酒造は、米を知り尽くした熟練の蔵人たちが集う日本酒蔵。正統派の酒を追求しながらも、時代の流れを踏まえた酒造りに創意工夫をこらしています。
その代表的な銘柄が「大盃」。蔵に湧き出る水を使ったふくよかな味わいとキレのあるのどごしが特徴で、群馬を代表する地酒として、県外のファンからも高い支持を得ています。
また各種の受賞歴も華々しく、全国新酒鑑評会や国税局鑑評会で金賞を獲得した回数はなんと20回以上。圧倒的な実力と実績を見せつける、名実ともに高品質な日本酒といえるでしょう。
製造元:牧野酒造株式会社
公式サイトはこちら
伝統と革新が融合した新しい風【結人(むすびと)】
赤城山の麓に位置する柳澤酒造は、明治10年(1877年)創業の造り酒屋。「お米がもつ本来の旨味・甘味を上手に残すことが酒造り」をモットーに、甘口の日本酒にこだわって醸しています。
「結人」は、5代目である柳澤兄弟が立ち上げた新しい銘柄。開発には数年の月日をかけ、新しい設備や醸造方法、そして情熱と信念によって苦労の末に誕生しました。「結人」の名には、人と人とを結ぶつながりの大切さが込められています。まさに次世代を担う、伝統を継承しつつも革新的な酒といえるでしょう。
製造元:柳澤酒造株式会社
公式サイトはこちら
料理とたのしみたいすっきりした飲み口【浅間山(あさまやま)】
浅間酒造は、群馬県の北西部、浅間山を望む吾妻郡長野原町に蔵を構える酒蔵。名峰の名を冠した「浅間山」をはじめとした酒造りとともに、レストランや観光センターも経営しています。
江戸寛永年間(1624~1644年)に櫻井酒造店として創業したのが始まりで、戦後になって浅間酒造として改めて設立。地域社会に貢献できる企業をめざし、「お客様にたのしんでいただくため」を合言葉に、酒造りを行っています。
奥上州の乾燥した空気とやわらかな水によって醸される「浅間山」は、すっきりとした味わいが魅力。香りが主張しすぎないよう、ほどよく抑えたことで、料理にもよく合います。
製造元:浅間酒造株式会社
公式サイトはこちら
群馬の雄大な自然環境が育む日本酒は、いずれも伝統と杜氏たちの情熱が込められた深い味わいです。訪れた際には、ぜひ好みの銘柄を試してみてください。
群馬県酒造協同組合
公式サイトはこちら