群馬の日本酒【聖(ひじり)】「現代の名工」から技術を受け継ぐ酒造り

群馬の日本酒【聖(ひじり)】「現代の名工」から技術を受け継ぐ酒造り
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「聖」は群馬県渋川市に蔵を構える老舗蔵、聖酒造の代表銘柄です。南部杜氏による酒造りが特徴で、聖酒造の日本酒を数々の受賞に導いた先代蔵元は、2009年に「現代の名工」に選ばれました。その伝統の技を継承する「聖」の酒造りを紹介します。

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「聖」の蔵元は、天保12年創業の老舗

「聖」の蔵元は、天保12年創業の老舗

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「聖」は群馬県渋川市に蔵を構える老舗、聖酒造の代表銘柄です。聖酒造の創立は、江戸時代後期の天保12年(1841年)のこと。この地で名主を務めていた今井家から分家独立した今井傳兵衛氏が、生糸商や質商のかたわら、酒造りを始めたと伝わっています。

当時は「上州(じょうしゅう)」と呼ばれたこの地は、よく「上州名物はかかあ天下と空っ風」と言われるように、気候の厳しさで知られています。
「空っ風」は「赤城おろし」とも呼ばれ、秋から春先にかけて吹きすさぶ乾燥した寒冷な風のこと。この地に住む人にとっては厳しい寒さを表しますが、「寒造り」と呼ばれる冬場の酒造りには最適な環境。聖酒造の初代、今井傳兵衛氏が、さまざまな事業を営むなかで、次第に酒造りを主力としていったのも、こうした風土を活かした良質な酒造りに可能性を見出したからでしょう。

以来、明治から大正、昭和へと時代が変遷するなかでも、蔵元としての歴史を守り続け、第二次大戦後には法人組織に改組。当初は今井酒造を名乗ってきましたが、2006年になって現在の聖酒造に社名を変更。180年を越える歴史に新たなページを刻んでいます。

「聖」は「現代の名工」に選ばれた南部杜氏の技を受け継ぐ蔵元杜氏が造る酒

「聖」は「現代の名工」に選ばれた南部杜氏の技を受け継ぐ蔵元杜氏が造る酒

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聖酒造の名を全国区の存在に押し上げる大きな原動力となったのが、1998年から2010年まで、12年にわたって杜氏を務めた故・小原喜六氏です。
小原氏は、岩手県紫波町の出身で、「越後杜氏」「丹波杜氏」とともに三大杜氏集団とされる「南部杜氏」として、17歳から酒造りに携わり、2009年には「現代の名工」に選ばれ、81歳を迎えた2011年には「黄綬褒章」にも輝いています。

聖酒造の杜氏に就任してからは、「“無冠の帝王”ではダメ、賞を獲得するような蔵の看板になる酒造りを」と、酒質の向上に注力。その甲斐あって、主力銘柄である「関東の華(かんとうのはな)」が、「全国新酒鑑評会」において7年連続金賞獲得という快挙を成し遂げています。

小原氏が高齢のため現場を退くにあたり、聖酒造では蔵元自らが杜氏を務める「蔵元杜氏」体制に移行。小原氏の技を受け継いだ7代目当主の今井健介氏が南部杜氏の資格を得て、8代目当主を継いだ息子の健夫氏とともに、新たなブランドとして「聖」を立ち上げました。

数量限定で造られ、特約店限定で販売される「聖(ひじり)」は、上州の寒冷な風土のもと、南部杜氏の技で醸された日本酒として全国的な評価を獲得し、新たなファンを獲得しています。

「聖」はバランスのよさが魅力の純米酒

「聖」はバランスのよさが魅力の純米酒

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「聖」をはじめとした聖酒造の日本酒は、赤城山麓から流れる清冽な伏流水が豊富に湧き出る「赤城蔵」で造られています。
主力銘柄である「関東の華」は、地元産の食用米「ひとめぼれ」を用いていますが、特約店向けの限定流通酒「聖」は、地元・群馬産の「若水」をはじめ、兵庫産「山田錦」や滋賀県産「渡船」など、さらに厳選した酒造好適米を使用しています。

「聖」は原料米や調整法などを調整して、少量ずつ多彩な商品を造り分けています。たとえば、2017年の「Sake Competition」において純米吟醸部門の「GOLD10」に輝いた「聖 山田錦50純米吟醸」は、精米歩合50%まで磨いた山田錦を、緻密な温度管理が可能なサーマルタンクで仕込んだもの。米本来の甘味と、酵母由来の酸味の絶妙なバランスが、他の酒にはない魅力となっています。

「聖」は、歴史ある老舗蔵が、南部杜氏の技術を継承し、蔵元杜氏となって新たに生み出した銘柄です。群馬を代表する地酒として、今後も多くの日本酒ファンを魅了し続けるでしょう。

製造元:聖酒造株式会社
公式サイトはこちら

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