「日本酒には賞味期限がない」は本当? 保存のポイントも解説

「日本酒には賞味期限がない」は本当? 保存のポイントも解説
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日本酒には明確な賞味期限がありません。そのため、ほかの飲料や食品などでよく見かける賞味期限の表示がないものがほとんどです。今回は、日本酒の賞味期限や製造年月の表示について解説するほか、飲みごろの目安や保存方法、熟成などについても紹介します。

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日本酒には賞味期限の表示がほとんどない一方、すべての日本酒には製造年月が表示されています。それぞれの理由などをみていきましょう。

日本酒に賞味期限の表示がないのはなぜ?

日本酒に表示するのは賞味期限ではなく製造年月

fujisawa / PIXTA(ピクスタ)

日本酒には賞味期限ではなく製造年月が表示されている場合がほとんどです。どういう理由があるのでしょう。

日本酒に製造年月だけが表示されている理由

日本酒の賞味期限を知ろうとして、ラベルや容器を探してみたけど見つからなかった、といった経験はありませんか?

食品や飲料には、食品表示法に定められた「食品表示基準」で、賞味期限(品質が保たれる期限)や消費期限(安全に食べられる期限)の表示が義務づけられています。

一方、日本酒をはじめとする酒類には、殺菌作用のあるアルコールが含まれているので、一部をのぞき未開封のものは基本的に腐敗することがなく、長期間の保存に耐えられるため、さらには「熟成」の概念もあることから、例外的に賞味期限や消費期限の表示を省略することが認められているのです。

日本酒に必ず表示されているのは、賞味期限ではなく製造年月です。

製造年月の表示は「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(酒類業組合法)」に基づくもので、瓶などの容器にお酒を詰めた時期の表示が義務づけられています。

「製造」という言葉のイメージとは異なり、お酒を仕込んだ時期や搾った時期を示すものではないのがポイント。搾った時期が同じお酒でも、瓶詰めの時期によって製造年月が違ってくる場合があるのです。

また、吟醸酒や純米酒、本醸造酒などの「特定名称酒」のうち、容器に詰めてから冷蔵などの特別な貯蔵をしたうえで販売するものについては、貯蔵を終えて製品化した年月を表示します。

日本酒の製造年月には瓶詰めの時期を表示

Tomoaki Umino / PIXTA(ピクスタ)

日本酒は未開封ならいつまで飲める? 製造年月からわかる飲みごろの目安

日本酒には賞味期限はありませんが、飲みごろはあります。

とはいえ、日本酒の飲みごろは千差万別。種類の違いや開封・未開封の違い、保管・保存方法の違いなどで、それぞれおいしく飲める期間は異なってきます。

あくまでも参考程度ですが、未開封のお酒を適切に保管した場合の飲みごろは、「火入れ」という加熱処理を2回行っている一般的な日本酒の場合、製造年月から10カ月~1年程度、「火入れ」をまったく行わない「生酒」の場合は一部の例外をのぞき冷蔵保管必須で半年程度が目安とされているようです。

例えば「月桂冠株式会社」の公式HPでは次のように表記されています。

抜粋して引用
”月桂冠の商品については、以下の期間をおすすめしています。
本醸造酒・普通酒⇒製造年月から約1年間
吟醸酒・純米酒・生貯蔵酒⇒製造年月から約10カ月間
生酒(常温流通可能な商品)⇒製造年月から約8カ月間”
引用ここまで

出典 https://www.gekkeikan.co.jp/

日本酒の飲みごろの目安

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日本酒には、製造年月から間を置かずに飲むことでフレッシュな味わいがたのしめるものもあれば、時間をかけて熟成させることで旨味が増すものもあります。

購入する際には蔵元や酒販店などに、そのお酒ならではの飲みごろを尋ねてみてくださいね。

日本酒に賞味期限はなくとも、知っておきたい保管・保存方法

日本酒の保存方法

Tokkuri / PIXTA(ピクスタ)

紫外線・高温・酸化などから日本酒を守る、保管・保存方法のポイントをみていきましょう。

日本酒の保管・保存に適した場所は?

賞味期限表示の省略が認められていることからもわかるように、日本酒は未開封であれば腐ることはほとんどありません。しかし味わいは時間とともに変化していきます。

お酒の味わいの変化は保管・保存状態にも左右されます。とりわけ紫外線や高温、空気接触(酸化)などは劣化を招くため、日本酒の保管・保存場所の基本は「冷暗所」とされています。

しかし家庭では、冷暗所の代表格である床下収納がない場合も考えられ、あったとしても近年続いている猛暑の影響を受ける可能性があることから、日本酒を保管・保存する際には、冷蔵庫を活用するのがより現実的かもしれません。

日本酒の保管・保存ポイント:紫外線をカット

日本酒は紫外線を浴びると、短期間で黄色味や茶色味を帯びた色合いに変色し、「日光臭」などといわれる焦げた木のような劣化臭が発生します。

日本酒の瓶に緑色や茶色が多い理由は、紫外線を通しにくくするためです。

紫外線は、日光はもちろん蛍光灯などにも含まれているので、日本酒を家庭で保管・保存するときには、容器を新聞紙で包み、冷暗所、または冷蔵庫に置きましょう。

日本酒は冷暗所または冷蔵庫で保存

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日本酒の保管・保存ポイント:高温はNG

日本酒にとっては、20~25度以上の「高温」も大敵です。黄色や茶色に色合いが変化するとともに、「老香(ひねか)」と呼ばれる傷んだ穀物のような劣化臭が生じます。

また、急激な温度変化もお酒を劣化させる原因になることから、可能であれば5~10度、最高でも15度以下の一定の温度に保たれている冷暗所や冷蔵庫で保管・保存します。

日本酒の保管・保存ポイント:酸化を防ぐ

日本酒が空気中の酸素に触れると、酸化が始まります。香味に変化が生じ、保管・保存状態などによっては劣化してしまいます。

開栓後の日本酒はなるべく早く飲み切りましょう。空気に触れる面積が小さい小瓶に移し替えるのもおすすめです。

また、開栓の前後にかかわらず、日本酒をワインのように横置きにすると空気に触れる範囲が広くなり、酸化しやすくなるといわれています。

ワインの場合、コルクが乾燥して縮むと空気が瓶のなかに入り、酸化が進んでしまうため、横置きにしてつねにワインとコルクを触れさせておく必要があります。

日本酒はもとより、コルク栓を使っていないワインも横置きにすることはありません。できれば立てて保存しましょう。

日本酒の保管・保存ポイント:揺らさない

炭酸ガスを含むタイプの日本酒に振動や衝撃を与えると、炭酸ガスが噴出したり容器が壊れたりすることがあります。

振動に気をつけ、できるだけ安定した場所で保管・保存するのがおすすめです。

古くなった日本酒の見分け方

古い日本酒の見分け方

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古い日本酒はいつまで飲めるのでしょう。

日本酒に賞味期限はありませんが、種類や保管状態などによって、おいしく飲める期間が異なるため、一概に「いつまでなら飲める」とはいいにくいものです。その一方で、劣化してしまった日本酒を見分けることはできます。

ここでは見分け方のポイントに加えて、古くなった日本酒の活用方法についてもみていきます。

日本酒は腐らないけれど変化する、時には劣化することも

日本酒は腐ることがほとんどありませんが、どんな種類のものでも味わいや香りは刻一刻と変化していきます。

保管状態によっては劣化することもあります。劣化した日本酒にはどんな特徴があるのでしょう。

劣化した日本酒は色味やにおいで見分けよう

劣化した日本酒は、色味や香り、味わいに特徴があります。

◇色味
黄色味や茶色味を帯びていきます。

◇香り
日光臭、老香などの劣化臭が生じます。

◇味わい
苦味が増したり、キレが減少したりするなど、本来の味わいから変化していきます。

古くなった日本酒を飲んでも健康上の問題が起きることはないといわれていますが、気になる場合は無理に飲むことはありません。とりわけ、酸っぱいにおいがしたり、白く濁っていたりする場合は、劣化がかなり進んでいるので処分しましょう。

劣化した日本酒の特徴

Takasah / PIXTA(ピクスタ)

古くなった日本酒は料理に使える場合も

そのまま飲むにはやや味わいや香りが落ちてしまった古い日本酒のうち、色や香り、味が気にならないものは料理に使うのがおすすめです。

旨味がプラスされるほか、魚介類の臭みを消したり、素材をやわらかくしたりするなど多くのメリットがあります。

賞味期限のない日本酒には、熟成というたのしみ方もある

賞味期限のない日本酒の熟成というたのしみ方

kitsune05 / Shutterstock.com

賞味期限がない日本酒には「熟成」というたのしみ方もあります。

日本酒の場合、一般に前酒造年度内に造られたお酒を「古酒」、それより前に造られたお酒を「大古酒」と呼んでいます。

また、日本酒の熟成古酒の普及と製造技術の向上を目的とする団体である「長期熟成酒研究会」では、「満3年以上蔵元で熟成させた、糖類添加酒を除く清酒」を「熟成古酒」と定義しています。

熟成古酒の魅力は、製造方法や熟成年数によって淡い黄金色から琥珀色、ルビー色などに変化する色合いと、「熟成香」と呼ばれる独特の香り、深みのある味わいにあります。

ぜひ一度味わってみてくださいね。

日本酒の色や香り、味わいは日々変化していきます。飲みごろにおいしく飲むためにも、また熟成をたのしむためにも、紫外線や高温を避けるなどのポイントを守って正しい保管・保存に心がけましょう。

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