辛口の日本酒がよくわかるようになる! 辛口の日本酒を徹底解剖!

辛口の日本酒がよくわかるようになる! 辛口の日本酒を徹底解剖!
出典 : Khun Ta/Shutterstock.com

辛口の日本酒とは、甘味の少ない日本酒のこと。「辛口」に対して「甘口」という言葉も存在しますが、辛口かどうかは日本酒の比重を表す「日本酒度」が目安になります。今回は、辛口の日本酒の特徴や製法、おいしい飲み方、おすすめ銘柄などを紹介します。

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日本酒の「辛口」ってズバリどんな日本酒なの?

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「辛口の日本酒」とよくいいますが、「辛口」とはどんな味なのか、どんな日本酒を指すのか、詳しくみていきましょう。

日本酒の辛口と甘口

日本酒やワインなどで飲み口を表現するときに、大きく分けて「辛口」「甘口」といいます。口当たりの印象で区別できるものではありますが、料理の「辛い」「甘い」とは違うので、ある程度飲み慣れていく必要があります。

この「辛口」「甘口」という区分に、さっぱりした感じなら「淡麗」、しっかりした感じなら「濃醇」などが加わり、味わいの表現はさらに複雑なものになっていきますが、日本酒にはそれだけ多様な味わいがあるということ。日本酒の味わいを言語化できるようになるには、まず「辛口」「甘口」の違いを理解することから始まります。

日本酒が辛口かどうかの目安になる「日本酒度」

日本酒の辛口と甘口を区別する際、判断材料となるもののひとつに「日本酒度」があります。

多くの日本酒のラベルには、原材料のほかに「+3」や「-5」などのプラスマイナスの数値で表現される「日本酒度」というものが表示されています。プラスの数値が大きくなるほど「辛口」の度合いが上がり、マイナスの数値が大きくなるほど「甘口」の度合いが上がります。

この数値は日本酒の比重のことで、水を「±0」の基準値として水より重いか軽いかを表します。日本酒度計は、日本酒に含まれる糖分などが少ない場合は水よりも軽くて浮上するため「+(プラス)」に傾き、糖分などが多い場合は水より重くて沈むため「-(マイナス)」に傾きます。

日本酒を辛口に感じるかは「酸度」がカギ

日本酒が「辛口」かどうかは、「日本酒度」だけで決まるものではありません。じつは「酸度」も重要なカギを握っています。

「酸度」というと、「酸っぱさ」を示すように思えますが、日本酒においては少し違います。「酸度」とは日本酒の製造過程で造られる「乳酸」「コハク酸」「リンゴ酸」などの有機酸が製品にどれだけ含まれているかを示す数値です。これらの酸は日本酒の味わいを引き締め、キレをもたらすといわれています。

そのため、糖分量が多く日本酒度が低めであっても、「酸度」が高ければ甘味は抑えられてすっきりとした印象になる傾向があり、人によっては「辛口」に感じることもあるようです。

辛口の日本酒の味わいに影響するアミノ酸度

日本酒の味わいには、糖分や有機酸の量のほか、アミノ酸の量も大きく影響しています。

日本酒に含まれるアミノ酸は約20種類にもおよび、旨味やコクのもとになっています。アミノ酸の量は「アミノ酸度」という数値で表され、一般に、「アミノ酸度」が高いと濃醇に、「アミノ酸度」が低いと淡麗に感じやすいといわれています。ただし、アミノ酸量が多すぎると雑味が出やすい傾向にあるようです。

辛口の日本酒と地域性

ひとくちに「辛口の日本酒」といっても、その味わいはさまざま。「辛口」のなかでも、さっぱりとしてキレのよい「淡麗辛口」、しっかりとしてコクのある「濃醇辛口」という大きく2つのベクトルがあり、味わいの印象は大きく変わります。

日本酒は、生産地の水や米、風土に根差した「地酒」で、その生産地によって味わいに一定の傾向が出やすいといわれています。

【「淡麗辛口」の日本酒が多い地域】
「淡麗辛口」は、新潟県や福井県に多く見られます。とくに新潟は1980~90年代に淡麗辛口の地酒ブームをけん引し、「新潟淡麗」と称するほど淡麗辛口の酒造りが盛ん。新潟の代表的な酒造好適米「五百万石」と軟水の雪解け水を使い、雑味のないきれいな酒質の日本酒が生産されています。

【「濃醇辛口」の日本酒が多い地域】
「濃醇辛口」の代表的なのが、「灘五郷」(なだごごう)と呼ばれる兵庫県の灘を中心とした地域で造られる日本酒。酒米の王様「山田錦」と硬水、生酛(きもと)造りによる「旨辛口」のお酒は、その力強く飲みごたえのある味わいから「灘の男酒」とも呼ばれています。

「超辛口」とは?

「日本酒度」が示す数値でいえば、「辛口」の日本酒のなかでもより辛いものを、日本酒度+6以上で「大辛口」、+10以上で「超辛口」という分類もあります。その「辛さ」を特徴としている製品もあります。

「辛口」といっても、「すっきりとしたのどごし」「シャープなキレ」「アルコールの刺激感」など、いろいろな「辛さ」の感じ方があり、「超辛口」もひとつの目安。日本酒度の数値の大きさはあくまでも参考までにとどめておき、自分の感覚で好みの「辛さ」の方向性を探してみてはいかがでしょうか。

辛口の日本酒はどのように造られる?

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「辛口の日本酒」はどのようにして造られているのでしょうか。ここでは基本的な日本酒造りの工程をおさらいしながら、「辛口」の日本酒ができるポイントを紹介します。

◇精米
玄米に含まれる脂肪、ミネラル、タンパク質は、そのまま発酵させると日本酒の風味を損ないます。雑味の出やすい米の外側取り除く工程が「精米」です。このとき、もともとの米粒をどれくらいの割合で削り、白米の部分を残すのかを示す数字が「精米歩合」。精米歩合が低い(%の数値が小さい)ほど雑味の少ないすっきりとした味わいになります。


◇蒸米~麹造り~酒母造り

精米後の米は洗ってぬかを除いてから浸水させ、水を切って蒸し上げます。蒸米は手でほぐして冷まし、その後の「麹用」「酒母用」「仕込み用」に分けられます。

「麹造り」は、日本酒の製造工程のなかでも重要なポイントです。菌が繁殖しやすい35℃前後に保たれた「麹室(こうじむろ)」で蒸米を広げ、発酵のもととなる種麹をふりかけます。麹ができあがるまで約48時間。この間、蔵人たちがつきっきりで、ほぐしたり布をかけたりと、麹の成長を見守ります。

次に「酒母(しゅぼ)造り」。蒸米に麹と水、酵母を加えて発酵させていきます。このとき、雑菌の繁殖を防ぎ、純粋な酵母を培養するためには乳酸によって酸性にする必要があります。乳酸の使い方によって「速醸酛(そくじょうもと)」「生酛(きもと)」「山廃酛(やまはいもと)」など製法が分かれ、仕上がりの味わいが変わります。辛口の日本酒には「生酛造り」「山廃造り」が多いようです。

◇仕込み~発酵
「酒母」ができると、いよいよ本格的な発酵に向けた「仕込み」が始まります。一般的な「三段仕込み」では、「酒母」に対して、蒸米と水を3回に分けて加え、4日間かけて仕込みます。

こうしてできあがった「醪(もろみ)」を、2週間から1カ月ほどかけて米の糖化と発酵を進めていきます。このときの発酵が活発で糖分が十分にアルコール化されていれば辛口に、逆に発酵期間が短かったり発酵を抑制させたりすれば甘口に仕上がります。

◇上槽
発酵が終わった醪を搾り、原酒と酒粕に分けるのが「搾り」とも呼ばれる「上槽(じょうそう)」という工程。このときの搾り方や、搾りの段階によって、それまでの製法が同じでも仕上がりの味は変わってきます。

◇澱引き(おりびき)、ろ過、火入れ、割り水、出荷

ここまでの過程で、ほぼ日本酒として飲める状態になっていますが、出荷の前にはさらに細やかな調整があります。

細かくなった米や酵母などの小さな固形物を除く「澱引き」と「ろ過」。これ以上の発酵を抑え、酒質を保つために酵母を加熱殺菌する「火入れ」やアルコール度数や香味の調整のための加水「割り水」。割り水をせず「原酒」として出荷する製品もあり、「辛口」ファンには強く濃厚な味わいが好まれています。

辛口の日本酒のたのしみ方

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「辛口の日本酒」といっても、「淡麗辛口」と「濃醇辛口」では味わいも違えば、たのしみ方も違います。ここでは、それぞれの特徴に合わせたたのしみ方を紹介します。

辛口の日本酒に合わせたいお酒のつまみ

すっきりとクセのない味わいの「淡麗辛口」には、淡白な白身魚や魚介類のお刺身、冷ややっこ、酢の物など、シンプルでさっぱりとした味つけの料理やつまみが合います。それぞれの味を引き立て合い、おいしくたのしめます。

一方、しっかりとした骨太の味わいの「濃醇辛口」の日本酒には、濃い味つけの料理や脂質成分の多い料理でも受け止める力強さがあります。甘辛い魚の煮つけ、すきやき、筑前煮などもよく合います

辛口の日本酒は、冷やして飲む? 燗で飲む?

辛口の日本酒のうち、「淡麗辛口」は比較的冷やして飲むのに向いています。とくに、フルーティーな味わいの多い純米吟醸酒は冷たくして飲むのにおすすめ。さわやかな飲み口と華やかな香りを両方たのしむことができます。
コクのある「濃醇辛口」の日本酒は、本来の旨味を味わうには常温または体温程度のぬる燗がおすすめ。とくに、糖分量の少ない「大辛口」タイプは、温度を上げることによって味にふくらみが出てまろやかな口当たりになります。

辛口の日本酒のおすすめ銘柄

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「辛口の日本酒」には大きく分けて「淡麗辛口」と「濃醇辛口」があり、同じ「辛口」でも飲み比べるとはっきりと味わいが違います。ここでは、それぞれの代表的な銘柄を紹介します。

「雨後の月」透明感のある情景浮かぶ淡麗辛口の日本酒

相原酒造公式オンラインショップ

「雨後(うご)の月」の相模原酒造は、広島県では西条市に並ぶ酒処、呉市にある吟醸蔵で、澄み切ったきれいな酒質の日本酒を数多く醸しています。

その代表的銘柄が、文豪・徳富蘆花(とくとみろか)の随筆に由来する「雨後の月」。なかでも吟醸純米酒は、雑味がなく、やさしい吟醸香と繊細でシャープな味わいで。全国区の人気を博しています。日本酒度+2.0、酸度1.4。辛口のなかでは「やや辛口」のゾーンに位置するやわらかで飲みやすいお酒です。

製造元:相原酒造株式会社
公式サイトはこちら

「日置桜」力強い大地を思わせる濃醇辛口の日本酒

kai keisuke/ Shutterstock.com

「濃醇辛口」の日本酒でおすすめするのは、しっかりとした力強さを感じさせる「日置桜(ひおきざくら)」です。
その代表的銘柄「日置桜」の定番酒である純米酒は、日本酒度+13.0、酸度2.1。
コクを感じるふくよかな味わいに、辛口ならではのキレ。食中酒としても人気の高い「日置桜」のおいしさは常温でもたのしめますが、燗酒にすることによってまろやかさが増し、ふくらみのある味わいを堪能できます。

製造元:有限会社山根酒造場
公式サイトはこちら

「麒麟山 伝統辛口」飲み飽きないすっきりとした淡麗辛口

麒麟山酒造株式会社公式サイト

「麒麟山(きりんざん)」は、「淡麗辛口」の本場、新潟県の老舗蔵元、麒麟山酒造の看板商品。「デンカラ」の愛称で親しまれる「麒麟山 伝統辛口」は、地元で古くから日常の晩酌酒として親しまれてきた普通酒です。日本酒度+6.0、酸度1.2の、さらっとしていながら飲みごたえのある、飲み飽きないバランスのよさが人気です。

製造元:麒麟山酒造株式会社
公式サイトはこちら

「刈穂 気魄の辛口」重厚な味わいと力強いキレの超辛口の日本酒

秋田清酒株式会社公式サイト

辛口の日本酒のなかでも「超辛口」に分類される「刈穂(かりほ) 山廃生原酒 超弩級 気魄(きはく)の辛口」は、日本酒度+25、酸度1.7、アルコール度数18.0~18.9%という気迫の1本。辛さだけでなく重厚な味わいと力強いキレを持つ特別純米酒です。「刈穂」は、「出羽鶴」で有名な秋田県の秋田清酒株式会社による銘柄のひとつで、百人一首で有名な天智天皇が詠んだ「秋の田の~」という和歌を由来にした銘酒です。

製造元:秋田清酒株式会社
公式サイトはこちら

ひとくくりに「辛口」といっても、日本酒の「辛口」の世界はさまざまな要素があって複雑です。まずは「日本酒度」を参考にしながら好みの辛口を探すのも、日本酒のたのしみ方のひとつです。

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