世界に誇るジャパニーズウイスキーの魅力に迫る

世界に誇るジャパニーズウイスキーの魅力に迫る
出典 : Evgeny Karandaev/ Shutterstock.com

「ジャパニーズウイスキー」とは、日本洋酒酒造組合が制定した基準を満たす日本国内産のウイスキーです。スコッチウイスキーやアイリッシュウイスキー、アメリカンウイスキー、カナディアンウイスキーと並ぶ「世界5大ウイスキー」のひとつとして注目されるジャパニーズウイスキーの定義や歴史、選び方などを紹介します。

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ジャパニーズウイスキーってどんなウイスキー?

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繊細な風味が魅力の「ジャパニーズウイスキー」。まずはその定義を紹介します。

ジャパニーズウイスキーの定義

「ジャパニーズウイスキー」は、スコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアンと並ぶ「世界5大ウイスキー」のひとつで、その名のとおり日本で造られるウイスキーで、 海外でも高い評価を受けていますが、その明確な定義づけがされたのは 2021年のこと。基準を制定した日本洋酒酒造組合によると、事業者は原材料・製法について以下の要件をすべて満たす必要があります。

◇原材料は、麦芽、穀類、日本国内で採水された水に限ること。 なお、麦芽は必ず使用しなければならない。
◇糖化、発酵、蒸留は、日本国内の蒸留所で行うこと。なお、蒸留の際の留出時のアルコール分は95度未満とする。
◇内容量 700 リットル以下の木製樽に詰め、当該詰めた日の翌日 から起算して 3 年以上日本国内において貯蔵すること。
◇日本国内において容器詰めし、充填時のアルコール分は 40 度 以上であること。
◇色調の微調整のためのカラメルの使用を認める。

上記以外にも、用語表記などにさまざまな基準がありますので、くわしくは下記、日本洋酒酒造組合のホームページをご参照ください。

ウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準(2021年制定、日本洋酒酒造組合ホームページ)

ジャパニーズウイスキーの表示に関する基準施行にあたって

ウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準(日本洋酒酒造組合)

この定義に基づく大手メーカーの「ジャパニーズウイスキー」は、以下のような銘柄が対象となります。

【サントリーホールディングス】
◇響
◇山崎
◇白州
◇知多
◇ローヤル
◇スペシャルリザーブ
◇オールド
◇季(TOKI) ※海外市場向けの専用商品

【アサヒグループホールディングス傘下のニッカウヰスキー】
◇竹鶴
◇余市
◇宮城峡
◇カフェグレーン

【キリンホールディングス】
◇「富士」と、蒸溜所限定販売のウイスキー

甘い香りが特徴のジャパニーズウイスキー

従来、「ジャパニーズウイスキー」とされてきたウイスキーは、甘味が特徴といわれてきました。とはいえ、そもそもウイスキーは糖分を含まないお酒。「ジャパニーズウイスキー」が甘く感じられるのは、「味」ではなく「香り」の要素が大きいのです。
この甘い香りは、熟成に使われる樽材や原料に含まれている成分が、ウイスキーに溶け出すことで付与されるといわれています。

樽材のなかでもとくにミズナラ樽は「ジャパニーズウイスキー」を象徴する存在。この樽で醸造すると、ウイスキーに伽羅(キャラ)や白檀(ビャクダン)、ハチミツを思わせる香味が加えられ、世界中からの高い評価につながっています。

また、「ジャパニーズウイスキー」の甘さの秘密は、アルコールの一種「エタノール」にもあるといわれています。このエタノールが口の粘膜を刺激し、脳がそれを心地よいものとして認識することで「甘い」と感じるといわれ、そこに先に紹介した樽材由来の甘味を連想させる香りが加わることで、甘い「ジャパニーズウイスキー」ができあがるのです。

日本におけるウイスキーの歴史

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日本のウイスキーの歴史を、始まりからたどっていきましょう。

鎖国時代にペリーのアメリカ艦隊がウイスキーを持ち込む

ウイスキーが日本に運び込まれたのは鎖国時代の1853年。ペリー率いるアメリカの艦隊がもたらしたといわれており、13代将軍・徳川家定にアメリカンウイスキー1樽が献上されたという記録も残されています。

その後、明治維新を経た1871年に、日本在住の外国人向けにウイスキーの輸入が開始。当初その消費量はけっして多いものではありませんでしたが、1902年に日英同盟が締結後、英国からスコッチウイスキーが大量に輸入されるようになると、日本にも少しずつ浸透していきました。

1923年、日本最初の蒸溜所・山崎蒸溜所が誕生

国産ウイスキーの本格的な製造が開始されたのは、関東大震災があった1923年のこと。当時、寿屋という社名だったサントリーが、京都山崎に国内初の蒸溜所・山崎蒸溜所を設立します。ちなみに、現在「ジャパニーズウイスキー」の故郷とも呼ばれる山崎は、古くから名水の里として知られる地。その水質と、一帯の独特の地形が織りなす湿度の高さは、ウイスキーの熟成に最適な環境だったとか。

また、山崎蒸溜所の創業者・鳥井信治郎氏と蒸溜技師・竹鶴政孝氏の両名は、「ジャパニーズウイスキー」の礎を築いたといえる人物です。鳥井氏が本場スコットランドでウイスキー造りを学んだ竹鶴氏を山崎蒸溜所の初代工場長に抜擢し、1929年には国産第一号ウイスキー「白札」が誕生します。その後も試行錯誤が繰り返され、1937年には亀甲ボトルの「角瓶」が発売。日本人の味覚に合う香味豊かな「角瓶」は、今日も広く親しまれています。

戦争後、国民酒として定着していくジャパニーズウイスキー

その後、「ジャパニーズウイスキー」(統一された定義の運用は2021年4月から)は日本の発展とともに国民酒としての地位を築いていきます。

戦前から戦後にかけては、寿屋(現サントリー)退社後の竹鶴氏が創立した大日本果汁株式会社(現ニッカウヰスキー)を筆頭に、東京醸造、東洋醸造、大黒葡萄酒(現メルシャン)、本坊酒造など多くの企業が「ジャパニーズウイスキー」造りに参入。また、高度経済成長期を迎えると大衆的な洋風バーが続々と登場し、日本全国にウイスキーブームが到来します。1971年代前半にはスコッチウイスキーの輸入自由化と関税引き下げにともなう輸入洋酒ブームが、1980年代にはサントリーが発売したオールドが大ヒット。バブル期のピークまで、ブームは続きます。

バブル崩壊後の低迷期からブーム再燃

しかし、「ジャパニーズウイスキー」は、バブル崩壊後に低迷期を迎えます。その背景には、お酒の多様化によって食事に合わせやすい低アルコールのものが好まれるようになったこと、ウイスキーに親しんできた層が定年退職してバーや居酒屋に通わなくなったこと、1984年と1989年の酒税法改正で3級と2級のウイスキーが大幅に値上げされたことなど、さまざまな理由がありました。イメージ的にも、ウイスキーは年配者向けのお酒と思われるようになり、若者にはなじみにくいものになってしまいます。

ブーム再燃のきっかけとなったのは、「角ハイボール」の登場です。「角ハイボール」とは、サントリーの「角瓶」を、ソーダで割って作るカクテルのこと。2008年に「角ハイボール」復活プロジェクトがスタートすると、リーズナブルな価格であることや炭酸のさわやかさ、アルコール度数を抑えた飲みやすさのため、それまでウイスキーと縁遠かった若者を巻き込み大ヒット。翌年には17%のウイスキー市場拡大に貢献します。

また、クラフトディスティラリー(手造りで少量生産を行う蒸溜所)ブームの到来も人気復興の理由のひとつ。ウイスキー醸造を復活させた蒸溜所があらわれたほか、秩父蒸溜所(イチローズモルト)や厚岸蒸溜所、マルス津貫蒸溜所などの新鋭のウイスキー蒸溜所も「ジャパニーズウイスキー」を盛り上げています。

今や「ジャパニーズウイスキー」はワールドワイドなお酒。日本のシングルモルトが世界中で人気になったほか、国際コンペティションにおけるジャパニーズウイスキーのたび重なる受賞など、消費傾向が右肩上がりに回復しています。

ジャパニーズウイスキーの4分類

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「ジャパニーズウイスキー」は、原材料と製法の違いによって、おもに以下の4種に分類されます。

シングルモルトウイスキー

大麦麦芽(モルト)だけを原料に、単式蒸溜機で造られるウイスキーを、「モルトウイスキー」といい、さらに「単一蒸溜所のモルトウイスキーだけ」をボトリングしたものが「シングルモルトウイスキー」になります。他の蒸溜所の原酒とブレンドされないため、はっきりとした個性をたのしめるのが特徴です。代表的な銘柄として、「山崎」や「白州」、「余市」や「宮城峡」などが挙げられます。

グレーンウイスキー

「グレーンウイスキー」はトウモロコシやライ麦、小麦などの穀物(グレーン)を主原料として、連続式蒸溜機で蒸溜されるウイスキーです。蒸溜機のなかで何度も蒸溜されるので、アルコール度数が高く、クリアな味わいが特徴です。代表的な銘柄にはサントリー「知多」、「キリン シングルグレーンウイスキー 富士 」などがあります。

ブレンデッドウイスキー

モルトウイスキーやグレーンウイスキーなど、複数のウイスキー原酒をブレンドしたものが「ブレンデッドウイスキー」です。ブレンダーの卓越したブレンド技術によって、モルトウイスキーの強い個性が、透明感のあるグレーンウイスキーと混ざり合い、マイルドで調和のとれたウイスキーに仕上がります。代表的な銘柄は、サントリー「ローヤル」「スペシャルリザーブ」「オールド」や、キリンウイスキー「富士山麓 Signature Blend(シグニチャーブレンド)」などです。

ピュアモルトウイスキー

「ピュアモルトウイスキー」は日本独特の呼び方で、複数の蒸溜所のモルト原酒をブレンドした100%モルトウイスキーを指します。世界で主流のブレンデッドウイスキーとの対比から、あえてモルト100%を強調するために“ピュア”という言葉をつけているのです。代表銘柄は「竹鶴」など。なお、近年スコットランドでは、100%モルトウイスキーのことを「ブレンデッドモルト」と呼ぶようになってきています。

ジャパニーズウイスキーの選び方

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「ジャパニーズウイスキー」に興味があっても選び方がわからないという人に向けて、4つのポイントを紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

予算に合わせて選ぶ

「ジャパニーズウイスキー」は、コンビニなどで買える小容量で比較的安価なものから数万円単位の高級ウイスキーまでさまざまですが、自宅での晩酌用なら1,500〜3,000円程度、贈答品や自分へのごほうびとしてなら3,000円以上を目安にチョイスしてみては。なおシングルモルトは安くても3,000円以上、熟成期間が長い銘柄や、原酒不足から出荷数が少ない銘柄ほど高額になります。

飲み方から選ぶ

ストレートや水割りなど好きな飲み方がある人は、それに合った「ジャパニーズウイスキー」を選ぶとよいでしょう。たとえば、ストレートやロックで飲みたい場合は、味の個性が強いシングルモルトウイスキーを。水割りで飲む場合は、クセのあるタイプよりもまろやかで飲みやすいものがおすすめです。また、ハイボールは割り材の炭酸水で風味や香りが薄まってしまうので、ウイスキー特有の香りや苦味が感じられる銘柄が最適です。

香りや味の特徴から選ぶ

香りや味の特徴から「ジャパニーズウイスキー」を選ぶ場合は、ピート香と製造に使用される樽に注目。ピート香はウイスキー特有のスモーキーな香りのことで、これが強いほどクセのある味わいになります。ウイスキー初心者は、ピート香が弱く飲みやすい銘柄から段階的に自分の好みに寄せていってはいかがでしょうか。

また、使用されている樽材によって、ウイスキーの味わいがかなり変わります。バニラの香りが好きならバーボン樽、ドライフルーツやレーズンの香りが好きならシェリー樽、ワインの香りが好きならワイン樽で熟成されたウイスキーを選んでみましょう。

蒸溜所やメーカー、銘柄ごとの特徴から選ぶ

蒸溜所に着目して「ジャパニーズウイスキー」を選ぶのも方法のひとつです。とりわけ「ジャパニーズウイスキー」は諸外国と比べて蒸溜所の数が少ないため、個性豊かな「シングルモルトウイスキー」の飲み比べをすることも、選択するぶんにはかんたん。また、「ブレンデッドウイスキー」や「グレーンウイスキー」も、銘柄やメーカーによって味の違いがたのしめます。レビューサイトや身近な人のおすすめを聞いて、自分好みの「ジャパニーズウイスキー」を探してみては?

「ジャパニーズウイスキー」は近年定義が明確化されるなど、日々そのブランド価値が高まっています。今回の記事を参考に、ぜひ世界に誇る「ジャパニーズウイスキー」の魅力に触れてみてください。

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