バーボンだけじゃない! アメリカンウイスキーの味わい
アメリカンウイスキーは、アメリカで生産されているウイスキーの総称です。アメリカではバーボンをはじめ、さまざまな種類のウイスキーが造られています。今回はアメリカンウイスキーの定義や歴史、種類、特徴、代表的な銘柄などについて紹介します。
- 更新日:
アメリカンウイスキーとは?
5PH/ Shutterstock.com
アメリカンウイスキーの定義と歴史について、見ていきましょう。
アメリカンウイスキーの定義
「アメリカンウイスキー」とは、アメリカ国内で造られているウイスキーの総称です。アメリカの連邦アルコール法では、「穀物を砕いて発酵させたものをアルコール度数95度以下で蒸溜し、オーク樽で貯蔵・熟成させ、40度以上で瓶詰めしたもの」などと定義されています。
アメリカンウイスキーには以下のような種類があり、法律でそれぞれの製法も規定されています。
◇バーボンウイスキー(主原料:トウモロコシ)
◇ライウイスキー(主原料:ライ麦)
◇ホイートウイスキー(主原料:小麦)
◇モルトウイスキー(主原料:大麦麦芽)
◇ライモルトウイスキー(主原料:ライ麦麦芽)
◇コーンウイスキー(主原料:トウモロコシ)
◇ブレンデッドウイスキー(複数のウイスキーをブレンド)
ブレンデッドウイスキーの代表的な銘柄
アメリカンウイスキーの歴史
アメリカンウイスキーの歴史は、17世紀にヨーロッパからやってきた移民が、ペンシルベニア州やメリーランド州あたりでウイスキー造りを始めたといわれています。
ウイスキー造りが盛んに行われ始めたのは18世紀に入ってからのこと。その中心となったのは、スコットランドやアイルランドからの移民だったようです。しかし、アメリカ合衆国建国から2年後の1791年、初代大統領ジョージ・ワシントン率いる政府が、独立戦争で疲弊した財政を立て直すためにウイスキー税を導入します。これに反発した造り手たちは「ウイスキー税反乱」と呼ばれる暴動を起こし、政府軍との激しい対立が起こりました。
反乱後、数万人にも上るスコットランドやアイルランドの移民たちは、課税から逃れるために、アメリカ13州に属していないケンタッキーやテネシーに移住し、現地の特産品であるトウモロコシを原料としたウイスキー造りを再開しました。このことが、今やアメリカンウイスキーの代名詞となっている「バーボンウイスキー」の誕生につながることになります。
なお、19世紀ころまでは、ライ麦を原料としたライウイスキーが主流で、ペンシルベニアやメリーランドのほかバージニアなどでも盛んに造られていました。しかしライ麦の高騰などの影響を受けてライウイスキーは衰退。代わりにバーボンウイスキー文化が花開いていきました。
アメリカンウイスキーの種類と代表的な銘柄
Cavan-Images/ Shutterstock.com
アメリカには、穀物が豊かに実る国らしく、多彩なウイスキーが揃っています。アメリカンウイスキーの種類ごとに、おもな特徴と代表的な銘柄を紹介します。
バーボンウイスキー
バーボンウイスキーはトウモロコシを主原料としたウイスキーで、その約9割はケンタッキー州で造られています。
連邦アルコール法でバーボンウイスキーは、以下のように定義されています。
(1)アメリカ国内で製造
(2)主原料であるトウモロコシの使用比率が51%以上
(3)アルコール度数80度未満で蒸溜、62.5度以上で瓶詰め
(4)内側を焦がした新品のホワイトオーク樽で貯蔵・熟成
これらの条件を守れば、ケンタッキー州以外で造られたものでもバーボンウイスキーと名乗ることができます。なお、2年以上熟成させたものは、ストレートバーボンウイスキーと呼ばれます。
バーボンウイスキーの代表的な銘柄には、「I.W.ハーパー」「ワイルドターキー」「フォアローゼズ」「メーカーズマーク」などがあります。
テネシーウイスキー
テネシーウイスキーは、テネシー州で造られているトウモロコシを主原料としたウイスキーです。法律上の規定はバーボンウイスキーと同じですが、テネシーウイスキーの定義には、バーボンウイスキーの定義に以下の2つの条件が加わります。
(5)テネシー州内で製造
(6)「チャコール・メローイング製法」で造られている
「チャコール・メローイング製法」とは、蒸溜した原酒をサトウカエデの炭でろ過する製法のことです。これによって、雑味が取り除かれるとともに、サトウカエデ由来のまろやかな風味が加わり、テネシーウイスキー独自の個性が生み出されます。
テネシーウイスキーの代表的な銘柄には、「ジャックダニエル」「ジョージ・ディッケル」「ロリンズ・テネシーウイスキー」などがあります。
ライウイスキー
ライウイスキーはライ麦を原料としたウイスキーです。前述のとおり、アメリカではもともとライウイスキーが主流でした。
ライウイスキーの定義は以下のとおりです。
(1)アメリカ国内で製造
(2)主原料であるライ麦の使用比率が51%以上
(3)アルコール度数80度未満で蒸溜、62.5度以上で瓶詰め
(4)内側を焦がした新品のホワイトオーク樽で貯蔵・熟成
なお、2年以上熟成させたものは、「ストレートライウイスキー」と呼ばれます。
代表的な銘柄には、「ジムビーム ライ」「ジャックダニエル ライ」などがあります。
ホイートウイスキー
ホイートウイスキーは小麦を原料に造られるウイスキーです。ウィートウイスキーと表記されることもあります。
ホイートウイスキーの定義は、小麦の使用比率が51%以上であるほかは、ライウイスキーと同じです。
(1)アメリカ国内で製造
(2)主原料である小麦の使用比率が51%以上
(3)アルコール度数80度未満で蒸溜、62.5度以上で瓶詰め
(4)内側を焦がした新品のホワイトオーク樽で貯蔵・熟成
2年以上熟成させたものは、「ストレートホイートウイスキー」と呼ばれます。
代表的な銘柄には、「トポ オーガニック ホイートウイスキー」「バーンハイム オリジナル(ウィートウイスキー)」などがあります。
モルトウイスキー
モルトウイスキーは大麦麦芽を原料に造られるウイスキーです。モルトウイスキーの条件も、大麦麦芽の使用比率が51%以上であるほかは、ライウイスキーなどと同じです。
(1)アメリカ国内で製造
(2)主原料である大麦麦芽の使用比率が51%以上
(3)アルコール度数80度未満で蒸溜、62.5度以上で瓶詰め
(4)内側を焦がした新品のホワイトオーク樽で貯蔵・熟成
2年以上熟成させたものは、「ストレートモルトウイスキー」と呼ばれます。
代表的な銘柄には、「ウエストランド」などがあります。
ライモルトウイスキー
ライモルトウイスキーは、ライ麦を発芽させて麦芽にした、ライ麦麦芽を原料に造られるウイスキーです。モルトとは麦芽のことを指します。
ライモルトウイスキーの条件は、ライ麦麦芽の使用比率が51%以上であるほかは、ライウイスキーと同じです。
(1)アメリカ国内で製造
(2)主原料であるライ麦麦芽の使用比率が51%以上
(3)アルコール度数80度未満で蒸溜、62.5度以上で瓶詰め
(4)内側を焦がした新品のホワイトオーク樽で貯蔵・熟成
2年以上熟成させたものは、「ストレートライモルトウイスキー」と呼ばれます。
代表的な銘柄には、「ローグ スピリッツ オレゴン ライモルトウイスキー」があります。
コーンウイスキー
コーンウイスキーはトウモロコシを原料に造られるウイスキーで、ケンタッキー州で生まれたといわれています。1920年から始まったアメリカの禁酒法時代には、密造酒として人気があったそう。これには、トウモロコシが安価で育ちやすいことなどが関係していたようです。
コーンウイスキーの規定は、以下のとおりです。
(1)アメリカ国内で製造
(2)主原料であるトウモロコシの使用比率が80%以上
(3)アルコール度数80度未満で蒸溜、62.5度以上で瓶詰め
同じ主原料から造られるバーボンウイスキーでは、トウモロコシの使用比率が51%以上なのに対し、コーンウイスキーでは80%以上使う必要があります。
なお、コーンウイスキーの貯蔵・熟成には、古樽または内側を焦がしていない新品のホワイトオーク樽を使うのが条件で、2年以上熟成させたものは「ストレートコーンウイスキー」と呼ばれます。ただし、ほかのウイスキーとは違って熟成義務はなく、熟成させずに出荷されるものも多くあるようです。
代表的な銘柄には、「ジョージア・ムーン コーンウイスキー」「メロウコーン」「バルコネズ トゥルーブルー」などがあります。
アメリカンウイスキーの魅力を形作るもの
Victor Moussa/ Shutterstock.com
アメリカンウイスキーは種類の多彩さが魅力ですが、アメリカという土地で造られるからこそ享受できる魅力もあります。
多くのウイスキーが寒冷な地域で造られているのに対し、アメリカンウイスキーは寒暖差の激しい気候のなかで造られるため、熟成が早く進むといわれています。たとえば、スコットランドのウイスキーはじっくり10数年ほど熟成させるのもめずらしくない一般的なことですが、バーボンウイスキーでは通常4~6年程度と熟成期間が短めです。短期熟成でも、熟成された奥深い味わいが育まれる環境が、魅力あるアメリカンウイスキーを造り上げているといえるでしょう。
また、アメリカンウイスキーの魅力を語るのに、熟成樽の存在は欠かせません。
コーンウイスキー以外のアメリカンウイスキーは、内側を焦がした北米産ホワイトオークの新樽で熟成させるため、樽の影響を大きく受けたウイスキーに仕上がりやすいのが特徴。バーボンウイスキーを例に挙げると、「赤い色合いや、バニラやカラメルのような強い香りが印象的」「コク深く力強い味わいながらクセがないので飲みやすい」などと評されますが、こうした酒質の形成に熟成樽が一役買っているのです。
アメリカのウイスキー造りの歴史のなかで確立された、独自の樽熟成の手法により、魅力的なアメリカンウイスキーが生み出されています。
アメリカンウイスキーといえばバーボンウイスキーを想起する人が多いかもしれませんが、アメリカではライ麦やトウモロコシなど多彩な原料を用いたウイスキーも造られています。機会があればぜひ、それぞれの魅力をたのしんでみてくださいね。