焼酎の「甲乙」とは?甲類と乙類の違いを分かりやすく解説!

焼酎の「甲乙」とは?甲類と乙類の違いを分かりやすく解説!
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焼酎のボトルに書かれた「甲類」や「乙類」の文字。この「甲乙」は、焼酎造りの蒸溜方法による分類を指します。この記事では焼酎の甲乙の違いを、蒸溜方法・味わい・原料の視点から解説します。さらに甲類乙類をブレンドした「混和焼酎」についても紹介します。

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「甲類焼酎」と「乙類焼酎」の違いは、日本の「酒税法」による分類の違い

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焼酎は製法の違いで「甲類焼酎」と「乙類焼酎」の2種類に大別されますが、両者の違いを知ることで、たのしみの幅が広がります。今回は、酒税法で規定されている焼酎の製法による分類に着目し、「甲類焼酎」と「乙類焼酎」それぞれの特徴や魅力を深掘りしていきます。

「甲類焼酎」と「乙類焼酎」は日本の酒税法上の分類

焼酎は「もろみ」と呼ばれる発酵液を蒸溜して造られますが、一般に、連続式蒸溜機で造られたものを「甲類焼酎」、単式蒸溜機で造られたものを「乙類焼酎」といいます。「甲類焼酎」と「乙類焼酎」は異なる蒸溜方法に着目した分類方法で、酒類の製造・販売免許や酒税などを定めた法律「酒税法」上の分類でもあります。

なお、2006年の酒税法改正によってそれぞれの正式名称が変更になり、前者を「連続式蒸溜焼酎」、後者を「単式蒸溜焼酎」と呼ぶようになりましたが、ラベルなどの表示には、現在も「甲類焼酎」「乙類焼酎」の表示が認められています。

また、「甲類焼酎」は「焼酎甲類」、「乙類焼酎」は「焼酎乙類」と呼ばれることもあります。

両者の違いをチェックする前に、それぞれの蒸溜方法を見ていきましょう。

連続式蒸溜

「甲類焼酎」は、連続的に蒸溜操作を行う連続式蒸溜で蒸溜された焼酎です。

蒸溜酒の製造に使われる蒸溜機の歴史は紀元前まで遡りますが、連続式蒸溜機の誕生は19世紀と比較的新しく、伝統的な乙類焼酎に対して「新式焼酎」と呼ばれることもあります。

連続式蒸溜という蒸溜方法が英国を経由して日本に伝来したのは、明治の終わりのこと。もともとはウイスキー造りなどに使われていた製造法で、その名のとおり、原料となるもろみを連続して投入しながら繰り返し蒸溜を行います。

以下に紹介する伝統的な蒸溜方法、単式蒸溜に比べて効率的に不純物を取り除き、純度の高いアルコールを効率的に抽出できることから、蒸溜酒の製造以外にもさまざまな用途に使われています。

単式蒸溜

「乙類焼酎」は、昔ながらの蒸溜方法である単式蒸溜で蒸溜された焼酎です。旧式の製法で造られることから、「旧式焼酎」と呼ばれることもあります。

単式蒸溜とは、一度のもろみの投入につき一度だけ蒸溜を行う蒸溜方法。19世紀に連続式蒸溜機が誕生する以前に行われていた蒸溜方法は、すべて単式蒸溜にあたります。

蒸溜は元来、香料の抽出技術や錬金術の発展とともに進化してきたもので、その歴史は紀元前まで遡ります。メソポタミアのテペ・ガウラ遺跡(現在のイラク北西部)では、紀元前3500年ごろの香料用蒸溜機が発見されているというから驚きです。

蒸溜の技術が蒸溜酒の製造に用いられるようになったのは、紀元前750年ごろのこと。以来、改良を重ねながら東から西へと伝播し、日本へと伝わります。

香料用の蒸溜機は8世紀ごろには日本に伝わっていましたが、お酒の製造に使われる蒸溜機が伝来したのは15世紀中ごろといわれています。

江戸時代に使われた陶器製の蒸溜機「らんびき(蘭引)」の名を聞いたことがある人も多いのでは。これはアラビアの錬金術師ジャービル・ブン・ハイヤーンが9世紀に発明し、現在もウイスキーやブランデーの製造に使われている「アランビック」という蒸溜機の名前が転じたものだそう。

「らんびき」で蒸溜酒が造られていた時代から、明治末期に連続式蒸溜という新技術が導入されるまで、「焼酎」は「単式蒸溜焼酎」を指す言葉でした。

「甲類焼酎」とは?

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「甲類焼酎」の定義や特徴、魅力を紹介します。

「甲類焼酎」の定義

「甲類焼酎」は、酒税法では「連続式蒸溜焼酎」に区分され、「アルコール含有物を蒸溜した酒類のうち、連続式蒸溜機で蒸溜したもので、アルコール度数36度未満のもの」と定義されています。

「甲類焼酎」の味わい・風味

「甲類焼酎」の特徴は、クリアでピュアな味わいにあります。連続式蒸溜機で繰り返し蒸溜するうちに雑味が取り除かれるため、すっきりとした飲みやすい焼酎に仕上がるのです。

連続式蒸溜に加えて、純度の高い原酒にたくさんの割り水を加えて度数を調整するため、原料由来の風味や香りはほとんど残りませんが、クセのない味わいは、お茶やソーダ、フレッシュジュース、ホッピーなど、さまざまな割り材とマッチ。幅広い飲み方でたのしむことができます。

「乙類焼酎」とは?

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「乙類焼酎」の定義や特徴、魅力を紹介します。

「乙類焼酎」の定義

「乙類焼酎」は、酒税法では「単式蒸溜焼酎」に区分され、「アルコール含有物を蒸溜した酒類のうち、単式蒸溜機で蒸溜したもの、かつアルコール度数45度以下のもので、ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、ラム、ジンなどに該当しないもの」と定義されています。

「乙類焼酎」の味わい・風味

「乙類焼酎」は、単式蒸溜で造られる昔ながらの焼酎です。焼酎の蒸溜工程では、もろみを熱し、水より沸点の低いアルコールだけを気化させ、この蒸気を冷却して「原酒」と呼ばれる純度の高いアルコールを抽出しますが、このとき、アルコール以外の沸点の低い成分も一緒に抽出されます。単式蒸溜では一度しか蒸溜を行わないため、こうした成分はそのまま残り、原料由来の風味や香りとして焼酎に個性を与えるのです。

「乙類焼酎」は、原料によって「芋焼酎」「麦焼酎」「米焼酎」「黒糖焼酎」「栗焼酎」などさまざまな種類に分けられます。麹の原料や種麹、製法によっても個性は異なりますが、「甲類焼酎」と比べて、味わい深い酒質に仕上がる傾向があります。

「本格焼酎」とは?

「本格焼酎」は、「乙類焼酎」の一種です。正確には、以下の条件を満たす焼酎を指しますが、ほとんどの場合は「乙類焼酎」と同義で用いられます。

【本格焼酎の条件】
◇単式蒸溜機で蒸溜する。
◇「米や麦などの穀類」「芋類」「清酒粕」「黒糖」の4品目、または国税庁長官が定める49品目の原料と麹を使用する。
◇水以外の添加物を一切使わない。

「本格焼酎」という言葉が誕生した背景には、昭和28年(1953年)に定められた「甲類」「乙類」という分類から生じた誤解がありました。「甲乙」という言葉は優劣を表すときに使われるため、「甲類焼酎は乙類焼酎より高級」と考える人も多くいました。このイメージを払拭するべく生まれたのが「本格焼酎」という言葉。製造コストもかかり、原料由来の風味もたのしめる乙類焼酎は、現在では多くの蔵本が焼酎のラベルに「本格焼酎」と記載するようになりました。

「甲類焼酎」と「乙類焼酎」の原料による違いは?

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「甲類焼酎」と「乙類焼酎」の原料の違いは酒税法で定義されていませんが、実際は異なります。それぞれの原料を見ていきましょう。

【甲類焼酎のおもな原料】
「甲類焼酎」の原料はおもに糖蜜。糖蜜とは、サトウキビの搾りかすのことで、「廃糖蜜」「モラセス」とも呼ばれています。(とうもろこしを原料にしている甲類焼酎もあります)
「乙類焼酎」のように、芋や麦、米などを用いても問題はありませんが、「甲類焼酎」の持ち味であるクリアな味わいとコスパの良さを引き出すには、糖蜜が最適といえるでしょう。

【乙類焼酎のおもな原料】
「乙類焼酎」の原料には、おもに芋や麦、米、黒糖、栗、そばなどが使われます。珍しいところでは、ごま、しそ、にんじん、たまねぎ、トマトなどが使われるケースも。使用が認められている原料は酒税法に細かく記載されていて、その類は数十種類にのぼります。

「混和焼酎」とは?

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「混和焼酎」とは、「甲類焼酎」と「乙類焼酎」をブレンドした焼酎のこと。「甲類焼酎」のすっきりした飲みやすさと「乙類焼酎」ならではの豊かな風味や香りがたのしめる、両者の「いいとこ取り」の焼酎として人気を集めています。

「混和焼酎」は、「甲類焼酎」と「乙類焼酎」の割合によって2種類に分けられます。「甲類焼酎」を多く使用したものを「焼酎甲類乙類混和」、「乙類焼酎」を多く使用したものを「焼酎乙類甲類混和」と呼び、ラベル等に明記されます。

「甲類焼酎」はクリアな味わいとコスパの高さ、「乙類焼酎」は原料由来の風味と香りが魅力の焼酎。両者の長所を併せ持つ「混和焼酎」も選択肢として視野に入れつつ、その日の気分や料理、シチュエーションに合わせてお好みの焼酎をチョイスしてくださいね。

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