「日本酒」「焼酎」「泡盛」の特徴を、原料や製法、酒税法上の分類、ルーツ、飲み方から解説
日本酒や焼酎、泡盛はどれも日本を代表する酒類ですが、お酒を定期的に飲んでいても、その違いや特徴を正しく認識している人は少ないもの。今回は日本酒と焼酎、泡盛にフォーカスして、原料や製法、酒税法上の分類、ルーツ、一般的な飲み方などを解説していきます。
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「日本酒」「焼酎」「泡盛」の原料・製法と酒税法上の分類
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日本酒はワインやビールと同じ醸造酒
世界のお酒を大きく分類すると、発酵したものをそのまま飲む「醸造酒」と、「醸造酒」を加熱し、蒸留してつくる「蒸留酒」、これらをもとにし造られる「混成酒」に大別されます。代表的な醸造酒はビール、ワイン、日本酒です。蒸留酒はこれらのお酒を蒸留して造るウィスキー、ブランデー、焼酎などが代表例です。
ワインは原料そのものに糖分が合まれているので、酵母を加えるだけでアルコール発酵(単発酵)し、基本的なワインを醸造することができます。
日本酒やビールの原料は米や麦などで、ブドウのように糖分が含まれておらず、デンプン質です。日本酒は麹(こうじ)、ビールは麦芽の酵素の働きでデンプンを糖に分解させてから、その糖を酵母によって発酵させるという手間暇が必要になります。
日本酒は「清酒」とも呼ばれますが、清酒は酒税法で、「米、米麹、水を原料として発酵させて濾したもの」、または「米、米麹、水および清酒かすやその他政令で定める物品を原料として発酵させて濾したもの」(両者ともアルコール分が22度未満のもの)などと定義されています。
また「日本酒」に関して、国税庁は2015年(平成27年)に「地理的表示における日本酒」について指定しました。地理的表示での「日本酒」は、「原料である米、米こうじに日本国内産米のみを使い、かつ、日本国内で製造された清酒のみが、日本酒を独占的に名乗ることができる」としています。つまり、外国産米を使ったものや日本以外で造られた清酒は、「日本酒」と名乗ることができないのです。
焼酎はジンやウォッカと同じ蒸溜酒
焼酎は、「4大スピリッツ」と呼ばれるジン、ウォッカ、ラム、テキーラと同じ蒸溜酒の一種です。蒸溜酒は世界的に見るとスピリッツと同義ですが、日本の酒税法では焼酎とスピリッツは別々に分類されています。なお、蒸溜酒とは、もろみを蒸溜機で蒸溜して造るアルコール度数の高いお酒のことを指します。
焼酎は、麦や米などの穀類や芋類などの主原料に含まれるデンプンを、麹を用いた酵素の糖化作用により糖に分解、酵母によってアルコール発酵させた醪(もろみ)を蒸溜して造ります。
なお、穀類や芋類の代わりに清酒かすや砂糖を用いたり、お茶、牛乳、栗、ごま、しそ、にんじん、またたびといった「国税庁長官の指定する物品」を原料に加えたりすることもあります。
酒税法で焼酎は、連続式蒸溜機で蒸溜したアルコール分36度未満の「連続式蒸溜焼酎(甲類焼酎)」と、単式蒸溜機で蒸溜したアルコール分45度以下の「単式蒸溜焼酎(乙類焼酎・本格焼酎)」(そのなかでウイスキー、ブランデー、ウオッカ、ラム、ジンなどに該当しないもの)の2つに大分されています。
泡盛も蒸溜酒で酒税法上は焼酎に含まれる
泡盛は沖縄県の伝統的なお酒で、酒税法上の定義では「蒸溜酒類」のなかの「単式蒸溜焼酎」に分類されます。米を原料とした単式蒸溜焼酎なので、本格焼酎(米焼酎)に似ているようですが、一般的な米焼酎とは原料や作り方に大きな違いがあります。
泡盛に使われる米はおもにタイ米。黒麹菌を使って造った米麹に水と酵母を加え、もろみにしてアルコール発酵させます。
泡盛以外の焼酎は、この仕込み工程を2度に分けて行いますが、泡盛はこれを1度におこなう「全麹仕込み」という、泡盛独特の製法を用いているのも大きな特徴で、香味成分が多く濃醇な味わいになります。また、長期貯蔵(3年以上)したものは、クース(古酒)と呼ばれ、甘い香りと熟成されたまろやかな味で多くの人に愛されています。
「日本酒」「焼酎」「泡盛」のルーツを知ろう
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日本酒誕生の背景には稲作の歴史あり
日本酒の起源は明らかになっていませんが、縄文時代末期から弥生時代初期にかけて稲作が日本に伝わり、収穫量が安定してきたころから酒造りが始まったといわれています。
奈良・平安時代には、宮内省に「造酒司(さけのつかさ)」と呼ばれる役所が設けられ、朝廷で飲まれる酒が造られていたそうです。鎌倉時代には寺院や酒造業社を中心とした酒造りが盛んになり、室町時代には清酒が重要な税収に。日本酒の需要が高まり出したのもこのころで、製法も次第に磨かれていきました。
なお、現在のように精米した米を使用したり、火入れを行ったりするようになったのは、戦国時代のことです。
焼酎の起源は諸説あり! 最初に生まれたのは米焼酎!?
蒸溜酒に不可欠な蒸溜技術は、紀元前3500年ころにメソポタミアで生まれたといわれている古い技術です。中世アラビアの錬金術の発展とともに蒸溜機の改良が進み、8世紀にアラビア人錬金術師が「アランビック」という蒸溜機を発明。アラビア人たちの手で西洋諸国や東洋へと伝わり、世界各地でさまざまな蒸溜酒が誕生していきました。
日本への伝来ルートには諸説あります。15世紀ころにタイから琉球(沖縄)を経由して伝わったという説。14~15世紀に中国大陸や東シナ海に進出していた「倭寇(わこう)」と呼ばれる海賊が、南海諸国の蒸溜酒を持ち帰ったという説。ほかにも、15世紀ころに朝鮮半島の高麗酒が壱岐や対馬へ伝わったという説があります。いずれにしても、当初日本で飲まれていたのは、おもに米焼酎だったようです。
泡盛は600年以上前に生まれ、独自に進化
泡盛の歴史は一般的な焼酎よりも古く、15世紀ころにはシャム国(現在のタイ)から当時の琉球王国へ伝来し、琉球泡盛が誕生したといわれています。その製造は王府によって徹底的に管理され、15世紀後半には輸出品に加えられるほどに技術が磨かれました。
その後も江戸幕府や中国王朝への献上品として重宝されていましたが、一般に行き渡るようになったのは明治以降のことです。
「日本酒」「焼酎」「泡盛」の飲み方
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日本酒の一般的な飲み方
日本酒のアルコール度数は15度前後のものが主流で、基本的にはそのままストレートで飲みます。
日本酒は、温度の違いによる香りや味の変化をたのしめるお酒で、約5~15度に冷やして飲む「冷酒」、20~25度程度の常温で飲む「冷や(ひや)」、燗をつけて35~55度程度に温めて飲む「燗酒」など、多彩な飲み方があるのが魅力です。ときには、シャーベット状に凍らせた「みぞれ酒」でたのしまれることもあります。
焼酎の一般的な飲み方
焼酎のアルコール度数は、本格焼酎(乙類焼酎)、甲類焼酎ともに、20度や25度のものが主流です。
飲み方は、種類によって異なります。原料由来の風味をたのしめる本格焼酎は、シンプルにストレートやロック、水割りやお湯割りで飲むのが一般的。近年は、ソーダで割る「乙ハイ」も人気です。また、前もって水で割ったものを一晩から数日ほど寝かせた、「前割り焼酎」でたのしむこともあります。
一方、甲類焼酎は、烏龍茶やソーダ、フルーツジュースなどの割材を加えて飲むことが多いですが、本格焼酎のようにシンプルな飲み方でたのしむこともあります。
泡盛の一般的な飲み方
泡盛のアルコール度数は30度前後が主流ですが、クース(古酒)のなかには43度前後の商品もあります。
泡盛は比較的アルコール度数が高めなので、ストレートよりもロックや水割り、お湯割り、ソーダ割りなどで飲むのが一般的です。沖縄では、シークヮーサーやコーヒー、牛乳で割って飲むこともあります。また、泡盛はカクテルにしてもおいしくいただけます。
なお、クースは、熟成された芳醇な香りやまろやかな味わいをじっくりとたのしむために、ストレートで飲むのがおすすめです。
日本酒と焼酎、泡盛は、異なる歴史に育まれてきた日本の至宝です。機会があったら、原料や製法の違いを味覚と嗅覚で確認し、それぞれの歴史に思いを馳せながら、飲み比べてみてください。