ビールの個性を決める原材料を知って、ビールをより深く味わおう!

ビールの個性を決める原材料を知って、ビールをより深く味わおう!
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ビールは麦やホップ、水といった原材料から造られていますが、それぞれについてどのくらい詳しく知っていますか? 今回は、ビールのおいしさを造る3つの原材料のほか、ビールに個性をもたらす副原料にも注目して、基本的な情報をまとめて紹介します。

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ビールの主原料「麦芽」とは?

ビールの主原料「麦芽」とは?

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「ビール大麦」はビール造りに最適な原材料

ビール造りに必要な原材料のひとつに「麦」があります。麦とは、イネ科の植物である大麦・小麦・ライ麦・エン麦などの総称で、これらの麦のなかでもビールの醸造に多く用いられるのは「大麦」です。

大麦にもいくつか種類があり、代表的なものには「二条大麦」と「六条大麦」があります。このうち、ビール造りに使われるのは前者で、ビールの醸造用に作られた「二条大麦」を「ビール大麦」と呼ぶこともあります。

「二条大麦」は粒が大きく、ビール造りに必要なでんぷんが多く含まれているのが特徴。粒の大きさや形にばらつきが少なく、発芽力が旺盛で酵素の力も強いことなどから、ビールの原材料として最適なのです。

日本のビールに使用されている大麦は、ほとんどがヨーロッパやカナダ、オーストラリアなどで生産されたものです。ただ、近年は国産大麦にも注目が集まっていて、1割程度ではありますが、栃木県や佐賀県、福岡県、北海道、岡山県など国内で栽培された大麦も使用されています。

麦芽の種類はビールの色合いなどに影響する

ビールは、大きく「淡色ビール」と「濃色ビール」に分けることができます。ビール造りでは大麦をそのまま使用することはなく、発芽させて麦芽にしてから使いますが、ビールの濃淡の違いは、この麦芽の違いによってもたらされます。

以下で、おもな麦芽の種類を確認しましょう。

【淡色麦芽】

大麦を発芽させ、焙燥(ばいそう)と呼ばれるプロセスを経て、芽が取り除かれたものが「淡色麦芽」です。「淡色ビール」には、この淡色麦芽が使われています。

【濃色麦芽】

淡色麦芽に、焙煎(ばいせん)と呼ばれる工程を加えて作られたものが「濃色麦芽」です。濃色麦芽にはおもに以下のような種類があり、使用する種類によって、濃色ビールの色合いなどが変わってきます。

◇カラメル麦芽
甘くカラメル香の漂う麦芽。液体は金色または赤色を帯びた見た目になります。
◇クリスタル麦芽
でんぷんがカラメル状になった麦芽。ビールに甘味をつけます。
◇チョコレート麦芽
ビターチョコレートのような香りのする麦芽。ダークな茶色の色合いになります。
◇黒麦芽
ビールを真っ黒な見た目にする麦芽。濃厚な味わいをもたらします。

小麦麦芽で造られるビールもある

「白ビール」や「ホワイトビール」、「ウィート(小麦)ビール」というジャンルのビールには、大麦だけでなく小麦も原材料として用いられています。小麦を使ったビアスタイル(ビールの種類)でよく知られているのは、「ホワイトエール」や「ヴァイツェン」などです。

小麦には「グルテン」というたんぱく質が含まれているため、小麦を原材料とした白ビールは、グルテンの働きで泡持ちがよいのが特徴。また、小麦由来の独特の酸味も感じられます。

なお、小麦は大麦と比べると扱いが難しいため、小麦だけを使ったビールは造られておらず、一定の比率で大麦を混ぜて造るのが一般的です。

ビールの苦味や香りのもととなる「ホップ」とは?

ビールの苦味や香りのもととなる「ホップ」とは?

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ホップにはさまざまな薬理作用がある

ホップとは、アサ科のつる性多年性植物の一種です。雄株と雌株があり、受精していない雌株の花のみがビールの原材料として使われます。

ホップには、催眠鎮静作用や利尿作用、食欲増進、消化促進作用などが期待できるといわれていて、ほかにもさまざまな薬理作用の研究が行われています。カビなどの微生物を防ぐ抗菌作用を持っているとも考えられています。

ホップがビールに用いられる前は、数種類のハーブを混ぜ合わせた「グルート」と呼ばれるものが原材料とされていました。やがてホップの効能が知られるようになり、ビール造りに使われるようになっていきました。

ビールの原材料にホップを用いる効果

ホップがビールの原材料に用いられているのは、ビールならではの苦味と爽快な香りを生み出すためです。ホップの種類や投入のタイミングなどによって、ビールに多様な風味がもたらされます。

ほかにも、ホップには、麦芽由来のたんぱく質と結合して泡立ちをよくしたり、ビールが濁るのを防いだりする働きもあります。また、ホップの殺菌作用には、ビールの中で雑菌が繁殖するのを抑える作用もあるといわれています。ホップを用いることで、さまざまな効果が期待されているのです。

このように、ホップはビールの品質に大きく関わっていることから、「ビールの魂」とも呼ばれています。

ホップの種類は100以上

ビール造りに使われるホップは、100種類以上ともいわれていますが、大きく以下の3つに分類することができます。ここでは、それぞれの特徴と代表的な品種を紹介します。

【ファインアロマホップ】

ほかのホップに比べてやさしい香りを放ち、苦味が穏やかで上品な味わいのビールに仕上がるのが特徴です。

◇ザーツ
チェコ原産の、気品ある香りとクリーンな苦味が特徴のホップです。
◇テトナング
ドイツ原産の、上品な香りとマイルドな苦味をもたらすホップです。
◇ヘルスブッカー
ドイツ原産の、ハーブやスパイスを思わせる香りのホップです。

【アロマホップ】

ファインアロマに比べて香りが強いホップで、アロマホップを使うと香りが際立つビールに仕上がります。

◇カスケード
アメリカの代表的な品種で、グレープフルーツのような柑橘系と松やにのような香りを持つホップです。
◇シトラ
アメリカ原産のホップで、強いシトラスの香りとともにトロピカルフルーツを思わせる香りをもたらします。
◇ソラチエース
北海道空知でサッポロビールが開発した、個性的な香りを持つホップです。

【ビターホップ】

ファインアロマやアロマに比べて苦味が強いのが特徴です。

◇ネルソン・ソーヴィン
ニュージーランドを代表するホップで、白ブドウや白ワインを思わせる香りが漂います。
◇シムコー
アメリカ原産で、強い苦味があり、パッションフルーツなどのアロマが香るホップです。
◇マグナム
ドイツ原産で、苦味だけでなく高貴な香りも持つホップです。

メーカーのこだわりがわかる「水」と「副原料」の役割とは?

メーカーのこだわりがわかる「水」と「副原料」の役割とは?

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ビールの品質を大きく左右する「水」

一般的なビールの90%は水でできています。そのため、水質はビールの味わいに深く関係しています。とくに、水の硬度はビール造りに大きな影響を与えます。

硬度とは、水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル量のことで、ミネラル量が少なく硬度の低い「軟水」は、ピルスナーなど淡色系のビール造りに適しているといわれています。一方、ミネラル量が多く硬度の高い「硬水」は、黒ビールなど味の濃い濃色系ビールに向いているといわれています。

「水」はビールの原材料以外にも使われている

水はビールの原材料となるだけでなく、さまざまな場面で重要な役割を果たしています。大麦を浸して麦芽を造るための「浸麦用水」や麦汁を造る「仕込み水」、機械や容器などの洗浄用や冷却用など、ビール造りには大量の水が必要です。

水の大切さを知る各メーカーでは、水の保全活動にも積極的です。たとえば、サントリーは、地下深くから汲み上げた良質な天然水を使用するとともに、水を育む自然を守る活動を続けています。キリンビールでも、100年後も良質なビール造りが行えるよう、森林保全や海岸・河川のクリーンアップなどの活動を全国各地で行っています。

ビールの味わいを広げる「副原料」

ビールは、主原料である麦芽、ホップ、水、そして酵母があれば造ることができます。しかし、このほかの原材料(副原料)も使って、独特の風味を持つ個性的なビールも多く造られています。

なお、副原料として使える原材料の種類は、2018年に酒税法が改正されたことで大幅に増えました。2021年1月時点では、以下に挙げる原材料の使用が認められています。

◇麦
◇米
◇とうもろこし
◇こうりゃん
◇ばれいしょ
◇でんぷん粉
◇糖類又は一定の苦味料若しくは着色料
◇果実(果実を乾燥させ、若しくは煮つめたもの又は凝縮した果汁を含む。)
◇コリアンダーまたはその種
◇こしょう、シナモン、クローブ、さんしょうその他の香辛料又はその原料
◇カモミール、セージ、バジル、レモングラスその他の香辛料又はその原料
◇かんしょ、かぼちゃその他の野菜(野菜を乾燥させ、又は煮つめたものを含む。)
◇そば又はごま
◇蜂蜜その他の含糖質物、食塩又はみそ
◇花又は茶、コーヒー、ココア若しくはこれらの調整品
◇かき、こんぶ、わかめ又はかつお節

原材料として「副原料」を用いたビールの銘柄

最後に、副原料を使用したビールの銘柄を2つ紹介しましょう。

【ヒューガルデン・ ホワイト】

ベルギー発祥のビアスタイル、ベルジャン・ホワイトエールの代表的な銘柄「ヒューガルデン・ ホワイト」には、オレンジピールやコリアンダーが使われています。これらを副原料とすることで、柑橘系の香りや、やわらかな酸味を味わえる、軽快なビールに仕上がっています。

【常陸野ネストビールホワイトエール】

木内酒造の「常陸野ネストビールホワイトエール」には、副原料としてオレンジピール、コリアンダー、ナツメグなどが使われていて、スパイシーな味わいのビールとして人気を集めています。

これらの銘柄は、2018年の法改正以前は「発泡酒」でしたが、法定副原料の範囲が広がったことで、それ以降は正式な「ビール」として販売されています。

さまざまな副原料を用いることで味わいが広がっていくのは、お酒のなかでもビールならではの特長といえるかもしれません。

ビールの原材料について深く知ると、風味も変わってくる気がしませんか? 次からは原材料にも注目して、しっかりビールを味わいたいですね。

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