醸造用水を大切にするとおいしいビールが生まれる…の法則
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醸造用水とはどんなものを使うのか?
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ビールの主な原料の基本は「麦芽」「水」「ホップ」の3つ。シンプルなこの3つの原料で作られた飲料は、世界で数えきれないほどの種類が販売されています。どの原料も香りや味に深いかかわりがありますが、ここではビールの9割を占める「水」についてお話します。
ビール醸造に用いる水のことを「醸造用水」といいます。ビール醸造の現場では、飲用に適した水をさらに適切な処理によって処置することで「醸造用水」とし、この作業を「水を磨く」といいます。
ビール造りに欠かせない水は、様々な場面で使われます。まず、大麦を発芽させて麦芽を作る製麦工程では、水を十分に吸収させて大麦を発芽させる浸麦(しんばく)で水を使用します。次に、乾燥させて発芽を止める工程を焙燥(ばいそう)といいますが、この焙燥の温度や時間を調整することで、さまざまなキャラクターの麦芽を作ります。麦芽を作る工程は、ビールの香りや色を決めるベースとなります。
その後、麦汁を造るための仕込みでも水を使います。麦汁に、ホップを加えて煮沸することで、ビール特有の苦味と香りが生まれます。この後、冷却して発酵タンクへ入れ、ビールの素が出来上がります。
このほか味わいには直接関係しませんが、設備や容器類の洗浄、ボイラー用、冷却用などビール製造には大量な水を使います。ビール1リットルを醸造するのに、およそ5~10リットルの水が使用されるといわれています。
大手はもちろん、マイクロブルワリーでも水への強いこだわりを持つところが多いのは、水が醸造工程で大切な役割を果たすためです。
水の硬度とビールの味わい
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では、ビール醸造に適した水とはどんな水なのでしょうか? ビール醸造に使用される水は、無色透明、無味無臭で汚染されていない水が大前提となります。また、ビール醸造では水の硬度を重要視します。
水の硬度とは水に含まれるカルシウムやマグネシウムの総濃度を表したもの。硬水は、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分が多く、一般的にビールの色を濃く、味わいを深くする作用があるといわれています。ミュンヘンの地では、硬水が多いため、濃色でコクのあるミュンヘナーが醸造されています。
反対に軟水は、ビールの色を薄くし、シャープな味わいにします。日本の水はほぼ軟水なため、日本で多く販売されているピルスナーに向いています。
製造するビールの種類によって水の硬度を調節する場合もあります。
水ひとつとっても、味わいが大きく変化するビール醸造。こだわりの詰まった一杯のビールの味を「ありがたく」しっかり確かめたいですね。