ビールの原料「ホップ」とは? ビールの苦さとおいしさの秘密を探る

ビールの原料「ホップ」とは? ビールの苦さとおいしさの秘密を探る
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ビールの原料のひとつに「ホップ」という植物があります。よく耳にする原料名ですが、そもそもホップとはどんな植物で、なぜビールを造るうえで必要なのでしょうか。今回は、ビールの香りや味わいを左右する、ホップの特徴や種類などを紹介します。

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ホップとはどんな植物?

ホップとはどんな植物?

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ビールの原料として使われるホップとは?

ホップは、アサ科のつる性多年性植物の一種です。時計回りにつるを巻きつけながら伸びていき、7〜8メートルほどの高さまで成長します。ホップ畑にホップ棚が広がる光景は圧巻です。

ホップには、雄株と雌株があり、ビールに使われるのは受精していない雌株の果実のみで、一般的に「球花(きゅうか)」といい、「毬花(まりはな)」と呼ばれることもあります。ホップを収穫するときは、つるごとトラクターなどで摘み取って、球花のみを選別します。球花の芯には、「ルプリン」と呼ばれる小さくて黄色い粒がたくさんついています。

ホップには、睡眠鎮静作用や利尿作用、食欲増進、消化促進作用などがあるとされ、さまざまな薬理作用の研究が行われています。また、カビなどの微生物を防ぐ抗菌作用を持っているともいわれています。

ホップがビール造りに使われ始めたのは12世紀ごろ

ビールにホップを用いたとする記録は、12世紀ごろのドイツに残っています。ライン河湖畔にあるルプレヒトベルグ修道院において、ドイツ薬草学の祖であるヒルデガルドが、ホップについての詳細な記録を残したのです。当初は雑菌の繁殖を抑えることが目的だったそう。

ホップがビールに使われる前は、数種類のハーブを混ぜ合わせた「グルート」と呼ばれるものが原料とされていました。やがてホップの効能が知られ、ビールに用いられるようになりますが、じつはいつごろからホップが使われるようになったのかはっきりしていません。

ホップは日本や世界の涼しい地域で栽培されている

ホップの栽培に適しているのは冷涼な気候です。おもな栽培地として挙げられるのは、北半球ではドイツやチェコ、アメリカ、中国、南半球ではオーストラリアやニュージーランドなど。

日本でもホップが栽培されていて、現在は約150軒の農家があります。国内でもっともホップの生産量が多いのは岩手県。ほかに北海道、青森県、秋田県、山形県でも生産されています。

ただ、農家の高齢化や後継者不足などでホップの生産量は減りつつあります。その一方で、国産ホップを復活させようとする動きも見られます。たとえば、メーカーと農家が協力してホップの栽培を行う事例や、ホップを自社栽培する醸造所などが増えています。

ホップはビールの苦味と香りに作用する

ホップはビールの苦味と香りに作用する

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ホップはビールに苦味と香りを付与する

ホップを用いるおもな理由は、ビールならではの苦味と爽快な香りを生み出すためです。

ホップに含まれる成分「アルファ酸」は、製造工程で「イソアルファ酸」に変化します。アルファ酸にはあまり苦味はありませんが、イソアルファ酸に変化すると、ビール特有の苦味を持つようになります。この苦味がビールに付与されるのです。

またホップ由来のビールの香りには、前述のルプリンの中の精油成分が関係しています。投入する量やタイミングなどによって、香りが変わってくるのが特徴です。

ビールにホップ由来の苦味や香りが付与される工程

ビールの製造工程では、麦芽を糖化させて麦汁を作り、その麦汁を煮沸する工程でホップが加えられます。

煮沸の序盤にホップを投入すると、長時間にわたって煮込むことになるので、苦味が多く抽出されます。また、ホップの香りは熱によって飛んでしまうため、序盤に投入したホップの香りはビールにほとんどつきません。

一方、煮沸の終了間際のタイミングでホップを入れると、苦味はあまり出ず、香りが強く残るようになります。このように、ホップの投入のタイミングを変えることで、個性の異なるビールを造ることができます。

ちなみに、ホップはかつて、乾燥させたあとプレスしたものがビールの醸造に使われていましたが、輸送の際にかさばったり、保存中に成分が失われたりするため、現在は乾燥後に粉砕し、ペレット状に加工したものが使われています。

ホップには苦味と香りを付与する以外にも役割がある

苦味と香り以外にも、ホップには重要な働きがあります。苦味成分のイソアルファ酸は麦芽由来のたんぱく質と結合することで、ビールの泡立ちに影響します。また、ホップに含有されているポリフェノールには、ビールが濁るのを防ぐ働きがあります。さらに、ホップの殺菌作用により、雑菌の繁殖を抑える効果も期待できます。

このように、ホップはビールの品質に大きく関わっていることから、「ビールの魂」とも呼ばれています。

代表的なホップの種類を紹介

代表的なホップの種類を紹介

Vaclav Mach / Shutterstock.com

穏やかな香りと苦味の「ファインアロマホップ」

ビールに使われるホップは世界に200種類以上あるといわれていて、大きく3つに分類できます。そのうちのひとつが、「ファインアロマホップ」。ほかのホップに比べてやさしい香りを放つのが特徴で、苦味が穏やかで上品な味わいのビールに仕上がります。おもに「ピルスナー」といったビアスタイル(ビールの種類)に使われています。

代表的な品種には、以下のようなものがあります。

【ザーツ】

原産地はチェコのザーツ。穏やかで気品のある香りとクリーンな苦味が特徴です。

【テトナング】

ドイツ原産。上品な香りとマイルドな苦味をもたらします。「テトナンガー」と呼ばれることもあります。

【ヘルスブッカー】

ドイツ原産。ハーブやスパイスを思わせる香りが口に広がります。

豊かな香りづけに使われる「アロマホップ」

ファインアロマに比べて香りが強いのが特徴。「ジャーマン・ピルスナー」「ペールエール」「IPA」などのビアスタイルに用いられています。

【カスケード】

アメリカを代表するホップ。グレープフルーツのような柑橘系と松やにの香りを持ちます。

【シトラ】

原産地はアメリカ。強いシトラスの香りとともに、トロピカルフルーツを思わせる香りをもたらします。

【ソラチエース】

北海道空知でサッポロビールが開発したアロマホップ。海外のクラフトビールによく使われています。

苦味の強いビールを造る「ビターホップ」

ファインアロマやアロマに比べて苦味が強いのが特徴。おもにエール系のビールや「スタウト」などのビアスタイルに使われます。

【ネルソン・ソーヴィン】

ニュージーランドを代表するホップで、白ブドウや白ワインを思わせる香りが漂います。

【シムコー】

強い苦味のあるホップで、パッションフルーツなどのアロマも香ります。

【マグナム】

原産地はドイツ。苦味だけでなく、高貴な香りを持つのが特徴です。

ビールの苦味や香りに大きく関係しているホップ。今度ビールを飲むときは、ぜひホップの種類にも注目して、風味の違いを感じてみてはいかがでしょうか。

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