麦芽発酵 って何? ビール造りの発酵工程を学ぼう

麦芽発酵 って何? ビール造りの発酵工程を学ぼう
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ビールは麦芽の発酵工程を経て造られます。なぜ、ビールを造る工程で「麦芽」を「発酵」させる必要があるのでしょうか? 今回はビールの製造工程のなかでも、麦芽の発酵にフォーカスして紹介します。また麦芽がビールに与える影響についても解説します。

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麦芽発酵とは? ビールの製造工程を紹介

麦芽発酵とは? ビールの製造工程を紹介

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麦芽発酵は、ビール造りに欠かせない工程

ビールの製造工程のひとつに、原料の「麦芽」を作り、「発酵」させる工程があります。どの段階で麦芽を作り発酵させるのかを知るために、まずはビール造りの流れをかんたんに紹介します。

【1.製麦工程】

大麦を発芽させて、ビールの原料である「麦芽」を作ります。

【2.仕込工程】

麦芽を仕込み、「麦汁」を作ります。この麦汁にホップを加えて煮沸します。

【3.発酵・貯酒工程(主発酵または前発酵)】

麦汁にビール酵母を加えて発酵させ、アルコールと炭酸ガスを作り出します。この発酵によって「若ビール」ができます。

【4.発酵・貯酒工程(後発酵)】

主発酵(前発酵ともいう)でできた若ビールを貯蔵し、低温熟成させます。炭酸ガスを溶解させるなど熟成によって味を調えます。

【5.ろ過工程】

熟成の終わったビールから酵母やたんぱく質などの固形物を取り除き、濁りのない透き通ったビールに仕上げます。

【6.パッケージング・出荷工程】

ビールが樽や瓶、缶に詰められ、出荷されます。

麦芽を発酵させる工程で、ビールらしさが造られる

発酵工程は、「主発酵」と「後発酵」の2段階に分けられます。
「主発酵」は、発酵に適した温度まで冷ました麦汁に酸素とビール酵母を加えて発酵させることをいいます。酵母の働きによって発酵が進むと、糖がアルコールと炭酸ガスに分解されてビールらしくなっていきます。この状態のビールは、味と香りは未熟な状態のため「若ビール」といいます。
この若ビールを熟成させておいしいビールを造るのが「後発酵」です。この段階でゆっくりとアルコール発酵させることで、発生した炭酸ガスがビールに溶け込んで発泡性を増し、よりビールらしくなって完成に近づきます。

麦は「麦芽」にすると発酵しやすくなる

麦は「麦芽」にすると発酵しやすくなる

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ビールの主原料である麦を麦芽にする理由とは

麦を発芽させて麦芽にする理由は「糖」にあります。ビールに欠かせないアルコールと炭酸ガスは、酵母が糖を分解することで生じますが、発芽前の麦には糖が十分に含まれていないのです。
しかし麦を発芽させると、酵素の働きで麦の主成分であるデンプンが糖に変わります。つまり、酵母のエサとなる糖を多く含む「麦芽」の状態にしなければ、うまく発酵させることができないのです。

麦芽を乾燥させてモルトを作る

発芽した麦をそのままにしておくと、どんどん成長し、やがてビール造りに必要な成分が失われていきます。これを防ぐために、発芽後に成長を止め乾燥させる工程「焙燥(ばいそう)」を行います。
焙燥は、麦の成長を止める目的のほか、麦の長期保存を可能にし、麦にビール特有の色や香りをつけるためにも行われます。焙燥した麦から根を取り除くことで、ビールに使用する麦芽(モルト)が誕生します。

麦芽はビールの味・香り・色に影響する

麦芽はビールの味・香り・色に影響する

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さまざまな「モルト」がビールのバリエーションを作り出す

麦芽を乾燥させたものを「モルト」と呼びます。モルトは、ビールの味や香り、色を決める重要な要素のひとつ。使用するモルトによって、さまざまな個性のビールが生まれます。
そのため、造り出すビールのバリエーションを広げる目的で、焙燥や焙煎の度合いを変えてたくさんの種類の「色麦芽(濃色麦芽)」が作られます。色麦芽には、カラメル麦芽やチョコレート麦芽、黒麦芽などがあり、琥珀色や黒いビールなどに使われています。

モルトによって変わるビールの種類

モルトにはどんな種類があり、それぞれどのようなビールに使われているのでしょうか。 代表的な3つのモルトを紹介します。

【ペールモルト】

低温で時間をかけて乾燥させた、基本のモルト。色は淡色で、「ピルスナー」など、多くのビールに使われています。ペールモルトを使うと、ボディの軽いビールができあがります。

【ウィートモルト】

小麦(=ウィート)から作られるモルト。たんぱく質が多いため、ビールを白濁させます。「ホワイトエール」など白色ビールに使用されます。

【ブラックモルト】

高温で焦がしながら焙煎したモルト。スモークの香りがつくものもあります。「ポーター」などの黒色ビールに使用されます。

原料の組み合わせ方によって、ビールの個性が決まる

もちろん、ビールの原料にはモルトのほかにも、ホップや水、酵母などがあり、それぞれに多くの種類が存在します。たとえば、麦の種類は大麦や小麦、ライ麦などさまざまですし、ホップにも複数の産地や種類があり、水の硬度も取水地ごとに異なります。
これら原料の量や組み合わせ、投入するタイミングなどを変えることで、ビールの個性が決まるのです。

ビールを造るうえで、麦芽の発酵工程は欠かせないもの。そして、麦芽の種類は、ビールの色や味に大きく影響します。ビールをよりおいしくするために、あらゆる工程においてさまざまな工夫がほどこされているのです。

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