“水”の質がビールの仕上がりを左右する

“水”の質がビールの仕上がりを左右する
出典 : Mike Pellinni/Shutterstock.com

ビールの成分の約9割は「水」でできていますが、大麦麦芽(モルト)やホップに比べると、ビール造りにおける水の重要性は、あまり語られることがないようです。そこで今回は、ビール造りにとっていかに“水”が重要かについて、さまざまな角度から紹介します。

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水はビールの主成分、その違いが味わいを左右する

水はビールの主成分、その違いが味わいを左右する

Brian Goodman/Shutterstock.com

ビールの成分の約9割は水

ビールの主成分といえば「大麦麦芽(モルト)」や「ホップ」を思い浮かべる人が多いと思いますが、「水」もまた、ビール造りに欠かせない重要な主成分のひとつです。
じつは、ビールの全成分の約9割までが水。当然ながら、水の質がビールの仕上がりを大きく左右します。

ビール造りには大量の水が必要

水はビールの主成分となるだけではありません。大麦を浸して麦芽を造るための「浸麦用水」や、麦汁を造る「仕込み水」など、ビールの醸造工程では大量の水を使用します。
その多くは煮沸などの過程で蒸発してしまいますが、すべての工程で使用する水の量は、ビール1リットルあたり5~10リットルにもなるのだとか。ビール造りには、思った以上に大量の水が必要なのです。

ビールメーカーの水へのこだわり

ビールの根幹をなすともいえる水の重要性は、ビールメーカーの活動を見てもわかります。
たとえば、サントリーでは、「水と生きるSUNTORY」をキャッチフレーズに、地下深くから汲み上げた良質な天然水をビール造りの仕込み水として使用するとともに、こうした水を育む「天然水の森」を守る活動を続けています。
また、キリンビールでも、100年後も良質なビール造りが行えるよう、森林保全や海岸・河川のクリーンアップなど「水の恵みを守る活動」を全国各地で積極的に行っています。
このように、各社ともビール造りに欠かせない良質な水を得るために、さまざまな取り組みを続けています。

どんな水がビール造りに適しているのか?

どんな水がビール造りに適しているのか?

Singkham/Shutterstock.com

ビール造りに適した水とは

ビールの品質に直接影響をおよぼす水は、衛生的で、飲料水としてもおいしく飲めることはもちろん、どんなビールを造りたいのかによって、それに適した水質が問われます。
そこで重要になるのが、水の「硬度」です。硬度とは、水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル量を指しています。この硬度の違いによって、どんなビールにどんな水が適しているのかが決まってきます。

硬度が低い軟水は「淡色系ビール」

ミネラル量が少ない水は「軟水」と呼ばれ、スッキリとしてなめらかな味わいは、ピルスナーなど淡色系のビール造りに適しているといわれています。
ちなみに日本でピルスナースタイルの淡色系ビールが主流となった要因のひとつに、日本の水は軟水が多いことがあるようです。

硬度が高い硬水は「濃色系ビール」

ミネラル量が多い水は「硬水」と呼ばれ、比較的味が濃く、ハッキリした飲み口になる傾向があることから、黒ビールなど味の濃い濃色系ビールに適しているといわれています。
ヨーロッパでは、日本とは異なり硬水の地域が多いことから、現在でも濃色系ビールが盛んに造られているようです。

水の違いが生み出したビール「ピルスナー」

水の違いが生み出したビール「ピルスナー」

Brett Downen/Shutterstock.com

淡色系ビールの代表格「ピルスナー」とは

「ピルスナー」とは、1842年に現在のチェコのピルゼンという町で誕生したビールで、下面発酵のラガービールに分類される淡色系のビールです。
「ピルスナー」は、今では世界中のビールの約7割がこのスタイルだといわれるほどポピュラーとなってて、日本でも大手メーカーが造るビールの約9割以上がこのスタイルなのだとか。

ビールの歴史を変えた「水の違い」

「ピルスナー」が誕生した19世紀後半、ビールはまだ濃色系ビールが中心でした。なぜならドイツのミュンヘンなどビールの生産地として知られる地域の水は、ほぼ硬水のため、色が濃いビールしか造れなかったのだそうです。
そんななか、ピルゼンのビール職人たちが、ミュンヘンで造られていたラガービールを真似てビールを造ったところ、完成したビールは淡い黄金色のビール。これは、たまたまピルゼンがヨーロッパでは珍しい軟水の地域だったことが原因だと考えられています。
今では定番の「ピルスナー」は、じつは偶然の産物。もしピルゼンの水が硬水だったら、ビールの歴史は大きく変わっていたかもしれませんね。

普段は見過ごされがちな、ビール造りにおける水の重要性をわかってもらえたでしょうか。これからは、そのビールがどんな水で造られているのかに着目してビールをたのしむのもよいかもしれませんね。

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