ビールの原料「麦」を徹底解説!麦の種類による違いや麦芽について紹介
ビールの原料「麦」の種類や使い方でビールはどう変わるのでしょうか? 大麦や小麦といった麦の種類による違いや、麦と麦芽の関係など、今回はビールと麦の関係に迫りながら、ビールのおいしさの秘密を探っていきます。
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ビールは「ビール大麦」から造られる
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ビールに多く使われる「大麦」
「麦」は、イネ科の植物である大麦・小麦・ライ麦・エン麦などの総称です。古来より人類は麦を栽培し、食用・飼料として利用してきました。その麦のなかで、ビールに多く使われているのが「大麦」です。大麦は1万年ほど前に西アジアで栽培が始められたといわれています。
そもそも、なぜ大麦がビール造りに使われるようになったのでしょう? その理由には、粒が大きく均一で加工しやすい、でんぷんの含有量が多く、たんぱく質の量がビール造りに適している、発酵に必要な酵素の質と量が優れている、といったことが挙げられます。もちろん、ビールの味わいがよくなるのも大きな理由です。
厳しい基準をクリアした大麦がビールに
大麦にはいくつか種類がありますが、なかでも「二条大麦」と「六条大麦」が代表的です。穂の列が、茎を挟んで2列に並んで見えるのが二条大麦、6列に並んで見えるのが六条大麦です。
このうち、ビール造りに使われるのは「二条大麦」で、ビール用に作られた「二条大麦」のことを「ビール大麦」とも呼びます。粒の大きい「二条大麦(ビール大麦)」には、ビール造りに必要なでんぷんが多く含まれています。また、粒の大きさや形にばらつきが少なく、発芽力が旺盛で酵素の力が強いことなどから、ビールの原料として選ばれました。
小麦を使った“白ビール”の魅力とは?
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白ビールは泡もちのよさと独特の酸味が魅力
ビールのなかには、大麦だけでなく小麦を原料としたものがあります。それらは、「白ビール」または「ホワイトビール」「ウィートビール」などと呼ばれます。
小麦には「グルテン」というたんぱく質が多く含まれていて、ホワイトビールはグルテンの働きで泡もちがよいのが特徴です。また、独特の酸味があり、のどの渇きを癒やす効果もあります。
ビールの製造において、小麦は大麦と比べて扱いがやや難しいことから、小麦だけを原料にビールが造られることはありません。そのため、一定の比率で大麦と混ぜ合わせて造られます。
白ビールは酸味と独特の風味を味わいたい
小麦を使った代表的なビアスタイル(ビールの種類)とその魅力を紹介していきましょう。
【ホワイトエール】
ベルギー発祥のビアスタイル。乳白色の不透明な色合いをしています。クリーミーな味わいとさわやかな酸味が特徴。コリアンダーやオレンジピールなどで風味づけが行われることもあります。
【ヴァイツェン】
「ヴァイツェン」はドイツ語で「小麦」の意。小麦麦芽を50%以上使用することが決められているビールです。苦味が少なく、フルーティーでスパイシーな味わいが特徴。バナナやクローブ、バニラの香りも漂います。ほのかに酸味があり炭酸が強いことから清涼感も感じられます。
麦は麦芽とどう違う?
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麦を発芽させないとビールは造れない
ここまで「麦」にスポットを当てて説明してきました。一方で、ビール造りには「麦芽」と呼ばれる原料が欠かせないことでもよく知られています。「麦」と「麦芽」では、何が違うのでしょうか。
「麦芽」とは、「麦」を発芽させたもののこと。麦は発芽させないとビールの原料として使えません。麦を発芽させると、内部の酵素が活発化します。酵素は麦のでんぷんを糖に変換。この糖は、ビール製造に欠かせない酵母のエサとなって、アルコールと二酸化炭素に分解されます。
つまり、麦を発芽させないと、ビールというお酒を造るための「アルコール」と、ビールの泡に関係する「二酸化炭素」が生まれないわけです。
麦芽によってビールの個性が変わる
焙燥した麦芽から根を取り除くと、ビールに使用する「淡色麦芽」ができあがります。この淡色麦芽は、ピルスナーなど淡色ビールに用いられています。
さらに、「焙煎(ばいせん)」と呼ばれる工程を経て、「濃色麦芽」が造られる場合もあります。濃色麦芽は、スタウトなど濃色ビールの風味や色合いを決めるのに大きく関わっています。
どんな麦芽をどのくらい使うかでビールの個性が変わるのです。
ビールと麦の関係がわかると、ビールの味わい方も変わる気がしてきませんか? 今晩もぜひ“麦”の味わいをおたのしみください。