「雄町(おまち)」って知ってる? 読めば日本酒通への第一歩【日本酒用語集】

「雄町(おまち)」って知ってる? 読めば日本酒通への第一歩【日本酒用語集】
出典 : kazoka/ Shutterstock.com

「雄町(おまち)」は、日本酒通の間で圧倒的な人気を誇る米の品種。日本酒の原料に適した「酒造好適米」の1種で、栽培が難しいことから、かつては“幻の酒米”とも呼ばれたことも。日本酒を語るうえで欠かせない「雄町」について、基本的な知識を紹介していきます。

  • 更新日:

「雄町」は日本酒造りのためのお米

「雄町」は日本酒造りのためのお米

okimo / Shutterstock.com

「雄町」は酒造好適米の一品種

「雄町」は、酒造好適米の品種のひとつ。酒造好適米とは、日本酒造りに適するように品種改良されたお米のこと。食用米に比べて粒が大きく、吸水性がよく、また粒の中心にある「心白(しんぱく)」と呼ばれる白くて不透明な部分が大きいのも特徴です。心白は醪(もろみ)に溶けやすく、麹菌が入り込んで発酵を促進するため、日本酒造りに向いているのです。
なお、酒造好適米は略して「酒米(さかまい)」とも呼ばれますが、酒造好適米かどうかに関わらず、日本酒造りの原料米を「酒米」と総称するケースも見られるため、当サイトでは基本的に「酒米」と略さず「酒造好適米」で統一しています。

「雄町」は岡山県を代表する酒造好適米

現在、酒造好適米として栽培が奨励されている品種は、都道府県ごとに決められ、農林水産大臣により公示されます。
「雄町」は広島や福岡、香川などでも生産されていますが、もっとも栽培が盛んなのは、発祥地である岡山で、その生産量の9割までを占めています。
「雄町」は成長が遅い晩生(おくて)の米で、稲の背が高く倒れやすいうえに、病気にも弱いなど、栽培が難しいとされています。このため、他県ではあまり栽培が広がらず、近年になって酒造好適米としての人気の高さから、ようやく広がりを見せています。

「雄町」が熱狂的なファン「オマチスト」を生んだ理由

「雄町」が熱狂的なファン「オマチスト」を生んだ理由

siro46/ Shutterstock.com

「雄町」は酒造好適米のルーツとされる品種

「雄町」は、「山田錦(やまだにしき)」「五百万石(ごひゃくまんごく)」「美山錦(みやまにしき)」とともに4大酒造好適米のひとつに数えられます。これらのなかで、もっとも歴史が古いのが「雄町」で、多くの酒造好適米のルーツと言われています。
たとえば、“酒米の王様”と呼ばれる「山田錦」は、「雄町」の系統である「短稈渡船(たんかんわたりぶね)」と「山田穂」を掛け合わせて開発されたものです。

「山田錦(やまだにしき)」っていったい何? 初心者向けに解説!【日本酒用語集】

「雄町」の歴史を紐とく

「雄町」の歴史は、幕末の安政6年(1859年)にまでさかのぼります。現在の岡山市にあたる備前国(びぜんのくに)雄町で育てられたこの品種は、慶応2年(1866年)に新種「二本草(にほんぐさ)」と命名されましたが、雄町周辺で栽培が広がるなか、いつしか地域の名前が定着して「雄町」と呼ばれるようになりました。

「雄町」が“幻の酒米”と呼ばれた時代

「雄町」は、酒造好適米としての優れた特性から全国の蔵元から人気を集め、昭和初期には「鑑評会で賞を取るなら雄町」とまで言われたほどでした。
しかし、前述したような栽培の難しさから、戦中・戦後にかけて生産量が激減。一時はほぼ生産が途絶え、“幻の酒米”と呼ばれるような状況でした。
そうしたなか、発祥地である岡山県の蔵元を中心に「雄町」の栽培を拡大する動きが活発になり、再び日本酒界の中心で脚光を浴びるようになりました。

「雄町」に魅了される「オマチスト」が増殖中

「雄町」で造る日本酒は、芳醇でコクがあり、味わいのしっかりしたお酒に仕上がります。蔵元ごとの個性を出しやすいのも魅力で、2008年からは、全国の蔵元が「雄町」で造った日本酒を持ち寄る「雄町サミット」が開催。11回目を迎えた2019年には215点がエントリーされました。
こうした「雄町」の魅力から、近年では「オマチスト」と呼ばれるファンも出現。「お待ちしています」を「雄町しています」とユーモアを交えてやりとりすることもあるのだとか。

「備前(びぜん)雄町」と「○○雄町」は何が違う?

「備前(びぜん)雄町」と「○○雄町」は何が違う?

sasaken/ Shutterstock.com

「雄町」に多くのバリエーションが登場

「雄町」のなかでも、発祥地の岡山県で栽培されたものが「備前雄町」と呼ばれます。しかし、多くの日本酒のラベルや紹介記事を見ていると「雄町」「備前雄町」以外にも「○○雄町」と銘打たれた銘柄を見かけることがあるでしょう。
こうした「雄町」のバリエーションは、大きく2つのグループに分けられます。ひとつは、「雄町」に別の品種を混ぜることなく、栽培地の気候風土に合わせて進化させた「純雄町系」と呼ばれるもの。同じ岡山県の「赤磐(あかいわ)雄町」、広島県の「比婆(ひば)雄町」や「船木(ふなき)雄町」などがこれにあたります。
もうひとつは、「雄町」と他の品種を掛け合わせて品種改良したもので、「広島雄町」「こいおまち」「改良雄町」などが挙げられます。

「雄町」のブランド米「赤磐雄町」

「雄町」のなかでも特別な存在が「赤磐雄町」。岡山県赤磐市の軽部産雄町のことを指し、この地に蔵を構える慶応4年創業の老舗、利守(としもり)酒造が商標登録しています。
四代目当主の利守忠義(ただよし)氏は、「雄町」が“幻の酒米”と呼ばれていた1970年頃、この地で「雄町」を復活させようと心血を注いだ人物として知られています。今日の「雄町」の復権は、岡山県の蔵元や米の生産者の並々ならぬ情熱にたまものなのです。

製造元:利守酒造株式会社
公式サイトはこちら

「雄町」は、近年の日本酒の品質向上に大きな影響を与えた酒造好適米のひとつ。「雄町」で造った日本酒を見かけたときには、ここで紹介したことを思い出してみてください。きっとたのしみが広がると思います。

おすすめ情報

関連情報

日本酒の基礎知識