「酒一筋(さけひとすじ)」利守酒造の“本物の地酒”にこだわった酒造り【岡山の日本酒】
「酒一筋」を造る利守(としもり)酒造は、岡山県赤磐市(あかいわし)で幕末から酒造りを続ける蔵元。「本物の地酒」にこだわり、“幻の米”と呼ばれた「雄町(おまち)」を復活させるなど、さまざまな挑戦を続けてきました。ここでは、利守酒造のこだわりと、「酒一筋」の魅力を紹介します。
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「酒一筋」の蔵元、利守酒造の歴史とこだわり
出典:利守酒造サイト
「酒一筋」を醸すのは岡山県赤磐市にある利守酒造
「酒一筋」の造り手、利守(としもり)酒造は、岡山県赤磐市(あかいわし)で慶応4年(1868年)に創業した老舗蔵です。
地元の米、水、気候風土で醸す「本物の地酒」にこだわり、地元産の酒造好適米「雄町(おまち)」を使用した酒造りが特徴です。
利守酒造の酒造りの鍵となった幻の米・「雄町」
利守酒造が蔵を構える赤磐市軽部地区は、温暖な瀬戸内気候や豊かな水、通気性のよい土壌に恵まれ、昔から最良の雄町が採れる地域として知られていました。
雄町は、“酒造好適米の王様”として知られる「山田錦」などの祖先にあたり、昭和初期には「品評会で上位入賞するには雄町で醸さなければ」とすら言われていたのだとか。ところが、栽培が困難で手間がかかることから、しだいに栽培する農家が減少し、ついには“幻の米”と言われるまでに。この軽部産・雄町を復活させたのが、利守酒造の四代目蔵主・利守忠義氏でした。
「酒一筋」の蔵元、利守酒造が醸す「赤磐雄町」
出典:利守酒造サイト
利守酒造・四代目当主の熱意により幻の米が復活
利守酒造の四代目蔵主・利守忠義氏が「よい米で本当の酒を」という信念のもと、雄町の復活に乗り出したのは昭和40年代後半のことでした。
農家にとっては簡単なことではありませんでしたが、利守氏の熱意に賛同する人々が徐々に増え、利守酒造が所得補償などのリスクを負うことで栽培がスタート。さらに「良質米推進協議会」を発足し、農家、農協、農業試験所、行政とともに雄町の栽培を推進しました。
こうして、地道な努力の末、見事に復活を果たした雄町を使用し醸した純米大吟醸酒は「赤磐雄町(あかいわおまち)」と命名され、今では利守酒造の登録商標となっています。
利守酒造の信念が宿る純米大吟醸酒「酒一筋 赤磐雄町」
利守酒造が復活させた雄町で造る「酒一筋」は、米の旨味を活かした純米酒として人気を獲得。なかでも「純米大吟醸 赤磐雄町」は、全国新酒鑑評会での金賞を皮切りに数々の賞を獲得し、その品質の高さを全国に知らしめました。
“幻の米”を復活させた信念に間違いがなかったことを確信した利守酒造では、その後も雄町の普及拡大に注力し、近年では自社田での栽培も増やしているのだとか。
「酒一筋」の蔵元、利守酒造の次なる挑戦、備前焼の大甕仕込み
出典:利守酒造サイト
利守酒造のこだわりが詰まった備前の大甕による酒造り
雄町を復活させた利守酒造が次に挑戦したのは、備前焼の大甕(かめ)を用いた酒造りでした。
備前伊部(いんべ)の土で作られる大甕は、製造に高度な技術と数カ月もの期間を要し、1個当たり550万円もする貴重なもの。桶での仕込みが普及する15~16世紀ごろまでは、この大甕で酒造りが行われていたのだとか。今では知る人も少ない、昔ながらの大甕仕込みならではの芳醇な味わいを求めて、利守酒造の新たな挑戦がスタートしました。
利守酒造が大甕で醸す純米大吟醸「天下人」
利守酒造が、備前焼の名匠・森陶岳氏から容量500リットルの大甕を譲り受けたのは1994年のこと。経験したことのない大甕仕込みは苦労の連続でしたが、手間を惜しまず、試行錯誤を重ねた末に完成したのが純米大吟醸酒「天下人(てんかびと)」でした。
赤磐雄町の旨味と、甕仕込み・甕熟成によってもたらされる酸味が融合した、豊かな風味を持つ日本酒として、地酒ファンの人気を集めています。
「酒一筋」の蔵元、利守酒造は、“本物の地酒”を追求して、さまざまな挑戦を続けてきました。その情熱に思いをはせながら、こだわりの酒「酒一筋」を味わってみてはいかがでしょうか。
製造元:利守酒造株式会社
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