「アイラ島」が“スコッチの聖地”と呼ばれる理由は?【ウイスキー用語集】《シニアソムリエ監修》

「アイラ島」が“スコッチの聖地”と呼ばれる理由は?【ウイスキー用語集】《シニアソムリエ監修》
出典 : Jhon Douglas Arthur/ Shutterstock.com

「アイラ島」は“スコッチの聖地”と呼ばれていますが、そもそもアイラ島はどこにある島で、なぜ“スコッチの聖地”と呼ばれているのでしょうか? アイラ島についての基礎知識から、アイラ島で造られるアイラモルトの特徴まで、わかりやすく紹介しましょう。

  • 更新日:

アイラ島は個性あふれるスコッチウイスキーの宝庫

アイラ島は個性あふれるスコッチウイスキーの宝庫

Rebecca Schochenmaier/ Shutterstock.com

アイラ島は世界でも珍しいウイスキー島

アイラ島は、スコットランドの北西の海上に連なるヘブリディーズ諸島の最南端に位置しています。
面積は約600平方キロメートルと淡路島よりやや大きい程度で、人口も約3,500人。そんな小さな島にもかかわらず、現在、9つの蒸溜所が稼働中(※)で、いずれも地名度の高いものばかり。
スコットランドで最初にウイスキー造りが行われた地とも言われていて、世界でも珍しいウイスキー島と言えるでしょう。
また2019年10月現在、閉鎖されていたポートエレン蒸溜所の再稼働の準備が進められており、蒸溜再開は2021年頃と伝わってきています。アードナッホーに続きポートエレンが再開されると、アイラ島の蒸溜所は10か所になります。

※2018年末に、9番目の蒸溜所として「アードナッホー蒸溜所」が操業を開始しました。樽詰めから3年以上経たないと出荷できないため、市場に出るのは2022年頃になりそうです。

アイラ島はスコッチウイスキーの6大生産地のひとつ

アイラ島は、ハイランドやローランド、スペイサイド、キャンベルタウン、アイランズと並ぶスコッチウイスキー6大産地のひとつです。
スコットランド北西の多くの島々のなかで、アイラ島だけが「アイランズ」として括られることなく、「アイラ」という独立した分類となっています。それだけアイラ島で造られるウイスキーの個性が強いことを物語っています。

アイラ島で生まれのモルトウイスキー「アイラモルト」の特徴

アイラ島で生まれのモルトウイスキー「アイラモルト」の特徴

Martin M303/ Shutterstock.com

アイラ島で生まれるアイラモルト最大の特徴は「ヨード香」

アイラ島で造られるモルトウイスキー、アイラモルトに多く見られる特徴が、「ヨードチンキの匂い」とも言われる強烈なヨードの香り。
スコッチウイスキーでは、よくモルト(大麦麦芽)の乾燥にピート(泥炭)が使われますが、アイラ島のピートには海風が運んだ海産物が多く含まれます。このピートが「潮風が香るヨード臭、クレゾールのような薬品臭」と呼ばれる強烈な香りをもたらします。

アイラ島で生まれるアイラモルトの強烈な香りは癖になる?

ピートの香りや強さは、蒸溜所の立地条件やピートの採取地によって変化するため、すべてのアイラモルトが「ピーティー(強いピートの香り)」というわけではありません。
とはいえ、強烈な個性を持つウイスキーは、好き嫌いが分かれるだけに、熱狂的な愛好家を生むもの。いちどピーティーなアイラモルトにハマってしまうと、これなしでは生きられない「ピートフリーク(ピート中毒)」になってしまうのだとか。

アイラ島のウイスキー代表的銘柄

アイラ島のウイスキー代表的銘柄

Matteo Provendola/ Shutterstock.com

アイラモルトを代表する銘柄から3つを紹介

アイラ島に現存する蒸溜所は、アードベッグやボウモア、ブルックラディ、ラガヴーリン、ラフロイグ、ブナハーブン、カリラ、キルホーマン、アードナッホーの9つ(2019年10月現在)。このなかから、南部、中部、北部に分けて代表的な銘柄を紹介します。

【ラフロイグ】

アイラ島南部海岸に建つラフロイグ蒸溜所。ここで生まれる「ラフロイグ」は、アイラモルトのなかでも格段に強烈なヨード香が特徴です。「消毒液のよう」とも言われる強烈なフレーバーと、シングルモルトウイスキーとして初めて英国王室御用達の認定を受けた伝統が、「アイラの王」と称させる理由でしょう。

【ボウモア】

アイラ島の中央部、インダール湾に面した海岸に建つボウモア蒸溜所。創業は日本の江戸時代中期にあたる1779年で、アイラ島で最古の蒸溜所です。ここから生まれるシングルモルト「ボウモア」は、ドライなスモーキー感と、ほのかなフルーティー感の調和が魅力。気品と力強さを兼ね備えた味わいと、英国女王との縁の深さとがあいまって「アイラモルトの女王」と呼ばれています。

【ブナハーブン】

1883年創業のブナハーブン蒸溜所は、アイラ島では比較的新しく、島の最北に位置しています。後発組となることから、あえて「アイラモルト=スモーキー」という図式の逆を行き、ノンスモーキー(ピートを麦芽の乾燥に使用しない)で、ライトな香りと味をめざしました。フルーツのような芳醇な香りと、ほのかな潮風を感じる上品な味わいは、ウイスキー初心者にもおすすめです。

スコッチウイスキー6大産地のひとつ「アイラ島」を紹介しました。アイラ島は、独特の個性あふれるモルトを生み出すスコッチの聖地。初心者にはとっつきにくい“クサイ”ウイスキーが多いのですが、いちどハマるとクセになってしまうようです。

監修者

工藤貴祥

工藤貴祥

(一社)日本ソムリエ協会認定ソムリエ・エクセレンス、同SAKE DIPLOMA、きき酒師、焼酎きき酒師、日本ビール検定2級。29年以上お酒業界にいて、特に日本酒愛、ワイン愛、ビール愛が止まらない。もちろんこれ以外のお酒も(笑)。料理やアウトドア、古典酒場巡りが趣味。

おすすめ情報

関連情報

ウイスキーの基礎知識

ビア検(日本ビール検定)情報

イベント情報

おすすめ情報

Ranking ランキング

おすすめの記事