富山に行って飲んでみたい! おすすめ日本酒(地酒)【北陸編】

富山に行って飲んでみたい! おすすめ日本酒(地酒)【北陸編】
出典 : C_Atta/ Shutterstock.com

富山県は、日本有数の穀倉地帯である富山平野をはじめ、県内各地で米作りが盛んな土地。良質な米に恵まれた地域では、その米を原料とした日本酒造りも盛んになることから、富山県内の蔵元は約20を数えます。県内産の酒米を中心に、米の旨味を引き出した富山県の日本酒を紹介します。

  • 更新日:

富山の酒造りを支える米作り

富山の酒造りを支える米作り

fotohunter/ Shutterstock.com

富山県の酒造りの特徴のひとつは、原料に酒造好適米を使用する比率が8割以上もあること。全国平均が約2割ですから、その比率の高さは、そのまま酒造りにおける米へのこだわりの強さを示しています。

こうした蔵元のこだわりは、富山県の米作りにも影響しており、県西部に位置する南砺(なんと)市では、米の作付面積の約4割を酒造好適米が占めるほど。その品質にも定評があり、富山県内はもちろん、他県の酒蔵でも「南砺産の米を使用」とアピールしていることも。

酒造好適米としては、兵庫県生まれの「山田錦」、新潟県生まれの「五百万石」などが有名です。富山県でもこれら品種を栽培していますが、注目すべきは「雄山錦(おやまにしき)」「富の香(とみのかおり)」など、富山ならではの酒米として開発された品種です。どちらも「心白」と呼ばれるデンプンを多く含んだ中心部が大きく、吟醸酒や大吟醸酒に適しています。

富山湾の魚に合う淡麗旨口の酒

富山湾の魚に合う淡麗旨口の酒

norikko /shutterstock.com

富山県の酒造りの中心地である富山平野は、立山連峰をはじめ、標高3,000メートル級の山々に囲まれた土地。冬に降り積もった雪が雪解け水となって、真夏でも冷たい水に恵まれています。急流の多い河川が酸素を豊富に取り込み、花崗岩質を多く含んだ扇状地がミネラル豊富な水質を保つ、全国でも有数の「名水の地」です。

水に恵まれた富山の環境は、酒造りに適しているだけでなく、漁業にも適しています。とくに富山湾は、表層を流れる対馬暖流と、日本海の深層水が入り混じった海水に、豊富な酸素と栄養分を含んだ雪解け水が流れ込む絶好の漁場。年間を通じて約500種もの魚が水揚げでき、「天然の生け簀(いけす)」とも呼ばれています。

富山で捕れた新鮮な魚介類には、やはり富山で醸された日本酒が合うというもの。富山の日本酒をひとことで表せば、切れのよい「淡麗」といえますが、蔵元や銘柄ごとの個性はじつに多彩。魚の種類や料理法に応じて、ベストな組み合わせを探し出すのもたのしいものです。

富山の人気銘柄

富山の人気銘柄

Osaze Cuomo/ Shutterstock.com

富山湾の魚介類の味わいを引き立てる、自慢の米と水でできた富山県の人気銘柄を紹介します。

北陸屈指の銘醸【立山(たてやま)】

「立山」を醸す立山酒造は、江戸時代後期にあたる1830年創業以来の歴史と伝統を今に受け継ぎ、全国新酒鑑評会でも金賞常連となっている北陸屈指の蔵元です。
富山県が誇る日本三名山のひとつ、立山連峰の名を冠したその酒は、仕込み水には花崗岩にろ過された伏流水を、原料米には「山田錦」や「五百万石」など良質の酒造好適米を用いて仕込まれます。
「立山」を生んだのは、「辛い酒でなく、甘くない酒」を提唱する山岸誠一杜氏。「ひとりでに喉へスッと通る酒が一番」を信念に、副杜氏を務める良美氏との父子鷹で、酒造りの技術に磨きをかけています。

製造元:立山酒造株式会社

すべての酒に大吟醸と同じ手間【羽根屋(はねや)】

「羽根屋」は、地元・富山では「富美菊」で長く愛されてきた富美菊酒造の銘柄です。「飲む人の心が浮き立つような酒に」という願いが込められたこの酒の魅力は、立山水系の名水と、自社酵母が織りなすピュアな味わいです。
その味を支えているのが、この蔵独自のこだわり。原料米をザルに小分けし、秒刻みで細やかに吸水具合を調整する「限定吸水」をはじめ、麹の扱いから瓶詰めに至るまで、すべての酒に大吟醸と同じだけの手間暇をかけているのだとか。発売当初は期間限定流通でしたが、2012年度からは四季醸造の設備を整え、年間を通じてフレッシュな生酒を出荷しています。

製造元:富美菊酒造株式会社

伝統と先端技術の融合が生んだ芳醇な美酒【銀盤(ぎんばん)】

銀盤酒造は、杜氏を中心とした蔵人集団による伝統的な酒造りを守りながら、近代設備を導入してオートメーション化を推進。酒造りが盛んな富山県下において第2位の生産量を実現するとともに、高品質と低価格を両立しています。
看板銘柄の「銀盤 純米大吟醸 米の芯」は精米歩合35%まで磨いて“米の芯”だけを使用した贅沢な造り。黒部川の清水を仕込み水に使用した芳醇な味わいは全国的な知名度をもち、贈答品としても重宝されています。

製造元:銀盤酒造株式会社

きれいさと米の旨味の妙【満寿泉(ますいずみ)】

「満寿泉」の蔵元、桝田酒造店は、富山県を代表する吟醸蔵のひとつ。昭和40年代、父の急逝を受けて22歳の若さで蔵元を継いだ四代目当主・舛田敬次郎氏が、当時はまだ一般的ではなかった「吟醸酒」に注目し、のちに「能登杜氏四天王」の一人となる三盃幸一杜氏と二人三脚で理想の味を追求した結果、日本酒鑑評会において金賞の常連蔵となりました。
桝田酒造店の酒造りの理念は「美味求眞(びみきゅうしん)」。時流の「淡麗辛口」にとらわれず、きれいでいて、旨味がしっかりとした理想の酒を、現在は六代目当主の桝田啓太郎氏を中心に追求しています。

製造元:株式会社桝田酒造店

少量造りのきめ細かい味わい【若駒(わかこま)】

若駒酒造場は、酒造好適米の産地として名高い南砺において、明治22年(1889年)に創業。小規模な蔵ながら、その規模ならではの、きめ細かな酒造りに定評があり、地元のファンから長く愛されてきました。
その名を全国区にした代表銘柄の「若駒」は、天まで駈けのぼる天駒のように広く親しまれるようにと命名されたもの。庄川上流の伏流水と地元産の酒米を原料とした逸品で、さっぱりとした口どけに加えて、米の旨味がしっかりと味わえるのが特徴です。

製造元:合名会社若駒酒造場

富山のそのほか注目銘柄

山形のそのほか注目銘柄

mariyaermolaeva/shutterstock

富山県には、これまで紹介した日本酒以外にも、全国の地酒ファンから注目される人気銘柄があります。そのいくつかを紹介します。

入手困難な超人気酒【勝駒(かちこま)】

「勝駒」を醸すのは、明治39年(1906年)に高岡市に創業した清都酒造場です。日露戦争の戦勝を記念して名付けられたという勝駒は、長きにわたって地元高岡の銘酒として親しまれてきました。その実直でていねいな造りゆえに、流通量は非常に少なく、全国の地酒マニア垂涎の“幻の酒”です。
代表的アイテムの「勝駒 純米酒」は地元南砺産の「五百万石」を原料に、純米酒ならではの香り、甘味、旨味、そして辛味と酸味がバランスよく調和し、料理の味を引き立てます。ラベルは芸術家・池田満寿夫によるもので、そこにはこう書かれています。「小さな手造り酒やですから、年に、そう、こっぽり(沢山)とはできません」。

製造元:有限会社清都酒造場
公式サイトはありません

極上の米と水のハーモニー【幻の瀧(まぼろしのたき)】

「幻の瀧」を生んだ皇国晴(みくにはれ)酒造は、明治20年(1887年)に岩瀬酒造として創業しましたが、その後、日清・日露戦争の勝利にあやかって改名。蔵内に湧き出す水は、北アルプスの雪解け水が100年かけて地下でろ過されたもので、環境省選定の「日本の名水百選」にも選ばれています。この名水を、仕込み水としてだけでなく、すべての工程で使用し、地元産の「雄山錦」をはじめ「山田錦」「五百万石」といった酒造好適米(100%富山県産)を醸しています。のどごしを重視し、香りは控えめにした「幻の瀧」は、富山湾で捕れる繊細な海の幸とも好相性です。

製造元:皇国晴(みくにはれ)酒造株式会社
公式サイトはこちら

親子で醸す個性的な酒【太刀山(たちやま)】

「太刀山」を生んだ吉江酒造は、昭和23年(1948年)創業と、富山県内でも比較的新しい酒蔵です。近年では、経営者である蔵元自らが杜氏を務めるスタイルが増えていますが、吉江酒造の社長・吉江美一氏はそうした「蔵元杜氏」のはしりでもあります。
「太刀山」という銘柄は、富山県の象徴である霊峰太刀山にちなんで命名されたもの。地元栃波産の「五百万石」を原料に、庄川の伏流水を仕込み水にして、ゆっくりと醸した酒は、酸味が強くてどっしりと骨太な味わい。それでいてキレもあり、いわゆる「淡麗辛口」とは一線を画しています。

製造元:吉江酒造株式会社
公式サイトはありません

400年の伝統と若き杜氏の感性【林(はやし)】

創業は寛永3年(1626年)と富山県内でもっとも古く、約400年の歴史をもつ林酒造場。伝統的な寒造りにこだわる代表銘柄「黒部峡」が有名ですが、近年、注目を集めているが、この蔵の若き杜氏・林秀樹氏がこだわりぬいて造った新しい銘柄「林」です。
大学卒業後、山形の吟醸蔵で酒造りを学び、実家に帰り蔵元杜氏となった秀樹氏が、手間暇を惜しまず妥協しない酒造りによって生み出した「林」は、自身の名字をそのまま銘柄にしたもの。南砺産の「五百万石」「雄山錦」を使った純米吟醸酒は、華やかな香りと甘味から入ったのち、それぞれの米の旨味を引き出しながら酸味が追いかけてくる、さわやかな旨口です。

製造元:有限会社林酒造場
公式サイトはこちら

人気急上昇中で品切れ続出【千代鶴(ちよづる)】

千代鶴酒造は明治7年(1874年)の創業以来、全国有数の名水と地元産の酒造好適米を使って、この地ならではの酒造りをめざしてきた小さな酒蔵です。「千代鶴」という風流な名前は、酒蔵裏の田んぼにタンチョウヅルが舞い降りるようになったことから命名されたものだとか。
伝統的な酒造りにこだわりながらも、酒質向上の努力は欠かさず、2009年には限定の純米酒「千代菊 恵田(エデン)」を発表。原料となる酒米は、蔵はもとより、取引のある酒販店も一緒になって、地元の農家とともに無農薬栽培で育てたもの。納得のいく米ができない年は予約があっても醸造を中止するなど、誠意ある姿勢が県内外から多くの支持を集めています。

製造元:千代鶴酒造合資会社
公式サイトはこちら

富山県には、これらのほかにも、「成政(なりまさ)」「三笑楽(さんしょうらく)」「若鶴(わかづる)」「北一(ほくいち)」「勝鬨(かちどき)」など、富山ならではの米と水のおいしさを活かした日本酒がたのしめます。

豊かな自然と米作り・酒造りに適した環境に恵まれた地で、魂を込めた酒造りを追求する富山県の酒蔵。北アルプスの山々や富山湾を思いながら、じっくり味わってみるのはいかがでしょうか。

富山県酒造組合
公式サイトはこちら

おすすめ情報

関連情報

日本酒の基礎知識

ビア検(日本ビール検定)情報

イベント情報

おすすめ情報

Ranking ランキング

おすすめの記事