富山の日本酒【若駒(わかこま)】井波の地元民から愛される酒
「若駒」は、信仰と木彫りの里、富山県南砺市の井波(いなみ)の地酒。木彫りに使う「のみ」の音を聞きながら、地元とともに育ってきた日本酒です。著名な文豪にも愛されてきた「若駒」の魅力と味わい、旨さの秘密を探ってきました。
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「若駒」はさっぱりとした辛口の酒
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「若駒」はさっぱりとして飲みやすく、スッキリ辛口の日本酒。「日本酒は苦手だけど若駒は好き」という人もいるほど、すっと体に染み込んでいくクリアな味わいが魅力です。常温や冷やでもおいしいですが、冬場は温めて燗酒にするのがおすすめ。冷えたカラダを芯からじっくりと癒やしてくれます。
「若駒」を造る若駒酒造場は、明治22年(1889年)の創業以来、小規模ながら、ていねいな酒造りを続ける酒蔵として、地元の人々から愛されてきました。地元産の米を使うことにもこだわりがあり、酒造好適米「五百万石」を中心に、富山の農家が手塩にかけて育てた米を、心を込めて醸しています。
富山県の酒屋さんのなかには、「若駒」を家庭用の一升瓶に詰めて販売しているお店もあるほど、地域の人々の生活に根づいています。
米の造り手と酒の造り手、そして地元の消費者。飲んだ人の心をつかんで放さない「若駒」の旨さは、この3者の結びつきのなかで育まれたものなのです。
「若駒」の由来は「天までかけのぼる天駒」
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「若駒」という銘柄の由来は、「天までかけのぼる天駒のように、広く世に知られて、愛される日本酒になるように」との願いが込められたものだとか。
この願いはラベルにも反映されており、背中に羽が生えた子馬を描いた、躍動感あふれるデザインが目を引くでしょう。
「若駒」には、純米酒と本醸造酒がラインナップされており、純米吟醸酒は「八乙女」という別銘柄で製造されています。いずれも、しっかりとした味があり、引き立つ米の旨味が特徴的な日本酒です。
「若駒」は前述したように、地元、井波の人々の愛されて育ってきた地酒ですが、地元での評判を聞きつけた地酒マニアが注目し、しだいに国内全土に存在が知られるようになりました。
「若駒」に込められた当主の願いはみごとに成就し、今では富山を代表する地酒として、日本全国にファンがいるまでになっています。
「若駒」は著名な小説家も愛した酒
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「若駒」を愛した一人として、時代小説・歴史小説作家の池波正太郎氏が有名です。池波氏の父親が井波の生まれであったことから若駒酒造場へもたびたび足を運び、晩酌にたのしみたいと「若駒」を買って帰ったという逸話が残っています。
池波氏の作中には「人生の苦難に直面した男が求めるものは、酒と女に決まっている」という名言があります。また、自身の生活を記したエッセイで「独りで呑みたくなったら、蕎麦屋で日本酒」と語っているほど、酒を愛した文豪です。
食通として知られる文豪のお気に入りとあれば、その旨さは保証されたというもの。粋な大人がゆっくりとたしなむ姿もしっくり来る、味わい深い日本酒です。
瑞泉寺の門前町でときを刻み、地元民や著名人に愛されてきた「若駒」。透明感があり、潔いほどすっと溶け込む辛口を探している人にはぴったりです。
製造元:合名会社若駒酒造場
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