富山の日本酒【満寿泉(ますいずみ)】能登杜氏四天王が生んだ吟醸酒
吟醸酒「満寿泉」は、“能登杜氏四天王”に数えられた故・三盃幸一元杜氏と、桝田酒造店4代目当主の桝田敬二郎氏により生み出された地酒銘柄。吟醸酒がまだ普及していなかった昭和40年代に市販開始された、革新的な日本酒として知られています。
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「満寿泉」は富山グルメにマッチする酒
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「満寿泉」の特徴は、富山の海の幸・山の幸に負けないしっかりとした味わい。新鮮な甘エビや白エビ、ホタルイカにズワイガニ、深い雪の下から芽吹いた山菜など、富山グルメとともに味わうことで、さらにそのおいしさが引き立ちます。
「満寿泉」が産まれた背景には、造り手である桝田酒造店の掲げる“美味求眞”の精神があります。「おいしいものを食べている舌が肥えた人にしか本物の日本酒は造れない」という考えは、美食の宝庫といわれる富山県ならではのもの。この精神のもと、肥えた舌で日本酒に適した米を選び、良質な水を使って初めて、「満寿泉」が成り立っているのです。
桝田酒造は明治26年(1893年)に北海道で創業し、明治の終わりに郷里である富山市東岩瀬に拠点を移しました。蔵の名にちなんだ「満寿泉」という銘柄が誕生したのは昭和初期でしたが、現在のような吟醸酒主体の銘柄となったのは昭和40年代のこと。
当時、4代目を継いだばかり桝田敬次郎氏は、日本酒業界が曲がり角を迎えるなか、蔵の生き残りを賭けて、まだ広く認知されていなかった吟醸酒造りに挑みました。その片腕となったのが、後に“能登杜氏四天王”の一人に数えられた故・三盃幸一杜氏。二人の挑戦は、やがて大きな成果を上げ、富山を代表する吟醸蔵へと成長していったのです。
「満寿泉 濃醇原酒 酔」は通好みの味わい
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「満寿泉」は、日本酒好きのあいだで“吟醸の満寿泉”と称されるように、全生産量の4割を吟醸酒が占めます。
吟醸香と旨味が溶け合った上品な味わいは、日本酒初心者にもおすすめできますが、吟醸酒以外にもさまざまな挑戦の成果がラインナップされています。
なかでも「満寿泉 濃醇原酒 酔」は、シリーズのなかでももっとも個性派のお酒。あえて香りをおさえることで、口に含んで初めて感じる濃厚な甘味と旨味、追いかけるように出てくるアルコールのインパクトが印象的です。
通好みの味わいだけに、飲み手を選ぶ日本酒といえるかもしれませんが、深い旨味、力強い飲み口を好み、チビチビと時間をかけて日本酒をたのしみたい人にはしっくりくるはずです。
「満寿泉」は富山文化を体現する酒
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「満寿泉」を造る桝田酒造店の現当主・桝田隆一郎氏は、「酒は文化とともにある」と語ります。歴史ある酒造店を継ぎ、その伝統を守るだけでなく、郷里である東岩瀬のまち作りもサポートするなど、地域文化の継承に尽力している人物です。
交易で栄えた廻船問屋の町屋や、料亭のたたずまいを残した東岩瀬は、日本の「粋」が感じられる風景が魅力。飲食店や陶芸家、ガラス職人など才能あふれる人々が集い、富山の美食と文化を伝えるエリアとして知られています。
「満寿泉」の酒造がある通りには、廻船問屋の「森家」、ガラス工房や陶芸工房が入った「森家土蔵群」、料亭の「松月」など魅力的な店舗が建ち並び、見どころは豊富です。
森家土蔵群にある酒屋さんの店頭には、もちろん「満寿泉」が並んでいて、プレミアム級の大吟醸も置いているのだとか。希少品だけにお値段も相応ですが、深みのある味わいには、それだけの価値があります。
「満寿泉」は、その故郷である富山市東岩瀬で飲むことで、よりおいしさを増す日本酒。現地に行く機会があれば、富山グルメとのマリアージュを堪能してみてください。
製造元:株式会社桝田酒造店
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