ウイスキーの造り方をわかりやすく紹介! 製造工程に詳しくなればおいしい世界がもっと広がる

ウイスキーの造り方をわかりやすく紹介! 製造工程に詳しくなればおいしい世界がもっと広がる
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ウイスキーの造り方は種類によって異なります。今回はモルトウイスキーの製造工程を、製麦から糖化、発酵、蒸溜、熟成、ブレンド、瓶詰めまで順を追って詳しく解説。さらに、グレーンウイスキーやその他のウイスキーの造りについても、かんたんに紹介します。

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スコッチのモルトウイスキーの製造工程を中心に、グレーンウイスキーやアメリカのバーボンウイスキー、アイルランドのポットスチルウイスキー、カナダのカナディアンウイスキーについて製法の特徴をわかりやすく紹介していきます。

そもそもウイスキーとは? 定義や基本情報をおさらい

ウイスキーとは

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一般的にウイスキーとは、穀物を原料に糖化・発酵させたものを蒸溜して、木樽で熟成させたものを指します。ウイスキーの原料はおもに、穀物、酵母、水の3つ。使われる穀物の種類は、大麦麦芽(モルト)やトウモロコシ、ライ麦、小麦などです。

ウイスキーの定義は国によって異なり、基本的には各国の法に定められた原料や製法、熟成年数などの定義に従って造られます。

例外は日本のウイスキー。日本ではウイスキーの品質を保証するための規定は法に定められておらず、酒税法上の定義しかありません。「ジャパニーズウイスキー」については、日本洋酒酒造組合が自主基準を設けていますが、法的拘束力はなく、違反しても罰則はありません。

なお、日本のウイスキーは、スコットランドのスコッチウイスキーの製法をお手本にしつつ、日本人の味覚に合う香味を追求して造られています。なので、スコッチウイスキーの造り方をみれば、日本のウイスキーの造り方の特徴もつかむことができます。

造りの基本はモルトウイスキーとグレーンウイスキー

造りの基本はモルト&グレーンウイスキー

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スコットランドの「スコッチウイスキー」をはじめ、アイルランドの「アイリッシュウイスキー」、アメリカの「アメリカンウイスキー」、カナダの「カナディアンウイスキー」、日本の「ジャパニーズウイスキー」は、まとめて「世界五大ウイスキー」と呼ばれています。

それぞれの産地で、各国の定義に基づき多種多様なウイスキーが造られていますが、ウイスキー造りの基本はモルトウイスキーグレーンウイスキーの造りにあります。

モルトウイスキーとグレーンウイスキーの2種類の原酒を用いるのは、おもにスコッチウイスキーと日本のウイスキーです。アイルランドなどでも造られていますが、少数派となっています。

以下では、モルトウイスキーの造り方を、順を追ってわかりやすく紹介。グレーンウイスキーや、アイルランド、アメリカ、カナダのウイスキーについても、工程の特徴をかんたんに紹介します。

モルトウイスキーの造り方をわかりやすく紹介

モルトウイスキーの造り方

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モルトウイスキーは大麦麦芽を原料に造られるウイスキーです。ここではモルトウイスキーの製造工程について、製麦、糖化、発酵、蒸溜、熟成、ブレンディング、瓶詰めまで詳しく紹介していきます。

製麦:大麦麦芽(モルト)を作る

製麦工程では、収穫した大麦を仕込み水に浸し、発芽したものを乾燥させて大麦麦芽を作ります。

発芽させる手法には、伝統的なフロアモルティングと近代的手法の2種類があります。

前者のフロアモルティングでは、コンクリート床に大麦を広げて、人力で何度も攪拌(かくはん)して発芽させます。かなりの重労働なため、現在フロアモルティングを行っているのは、スコットランドのなかでも7~8蒸溜所のみとなっています。後者の近代的手法には、自動的に攪拌を行うサラディンボックス式やドラム式などがあります。

伝統的フロアモルティング

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大麦の芽が規定の長さになったら、発芽を止めて保存性を高めるために乾燥を行います。乾燥も近代的手法を用いるのが一般的ですが、フロアモルティングを採用している蒸溜所の一部では、「キルン」と呼ばれる乾燥塔でピート(泥炭)や無煙炭を焚いて乾燥させています。ボウモアやラフロイグ、ハイランドパーク、スプリングバンク、バルヴェニーなどの蒸溜所では、今でもキルンから立ち上る煙をみることができます。

なお、近年、大麦麦芽は「モルトスター」と呼ばれる製麦業者から仕入れるのが一般的です。モルトスターは、蒸溜所から依頼されたスペック(レシピ)に合わせて製麦を行っています。

ピートで大麦を乾燥

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【豆知識】ピートの役割

スコットランドでは伝統的に、大麦の乾燥時にピート(泥炭)が焚かれてきました。ピートとは、ツツジ科エリカ属の低木ヒース(ヘザー)や灌木、草、シダ、コケ類などが堆積してできた泥炭のこと。4~5月ごろに「ピートボグ」と呼ばれる湿原から切り出し、乾燥させたものを熱源として使用します。

ピートはスモーキーな香味を生む要素のひとつで、ピートを焚くことで、大麦麦芽にスモーキーフレーバーが付与されます。堆積物の内容によってフレーバーが異なるため、ラフロイグやハイランドパークなどの伝統にこだわる蒸溜所では、独自のピートボグを所有しています。

なかでも、力強いピート香や独特のスモーキーフレーバーが特徴的なのは、アイラ島のシングルモルトウイスキー。海に囲まれたアイラ島のピートには海藻も含まれているため、磯や潮っぽさも感じられます。

なお、ピートを一切焚かないノンピートモルトを使ったスコッチウイスキーもあります。

麦汁を抽出

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糖化:麦芽から麦汁を抽出

「仕込み」とも呼ばれる糖化工程では、麦芽を糖化(マッシング)させて麦汁を抽出・冷却します。

この工程では、発芽した麦芽をモルトミルで粉砕し、仕込み水と混ぜておかゆ状にしたら、「マッシュタン」と呼ばれる糖化槽に投入します。65度程度に温度を調整し、機械でゆっくりと攪拌して糖化を促します。

糖化を終えたら、麦汁(ワート/ウォート)をマッシュタンの底部から濾(こ)し出して、20度前後に冷却します。それから、75度程度の仕込み水を注いで、ワートを採取する工程を繰り返します。なお、最初に採取したワートは「一番麦汁」と呼ばれます。次いで「二番麦汁」「三番麦汁」と呼ばれ、あとになるにつれて糖度が下がっていきます。

発酵槽(ウォッシュバック)

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発酵:麦汁に酵母を入れ発酵液を造る

発酵工程では、糖化工程で得た麦汁と酵母を「ウォッシュバック」と呼ばれる発酵槽に投入し、発酵液(もろみ)を造ります。

発酵工程では、麦汁に含まれる糖類が、酵母の働きによってアルコールと二酸化炭素に分解されます。またこの段階では、主成分のエチルアルコール以外に、エステル類などの香気成分も生成されます。こうした成分はウイスキーの香味に影響するため、各蒸溜所では発酵槽の材質や酵母の種類にこだわるなどして、個性豊かな発酵液を造り分けています。

ウイスキーの発酵工程

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蒸溜:もろみからニューポットへ

蒸溜工程では、アルコール度数7~9%程度のもろみを蒸溜機に投入して、「ニューポット(ニュースピリッツ)」と呼ばれる度数の高いお酒へと変えます。

蒸溜とは、水とアルコールの沸点の違いを利用して、アルコール分を分離・濃縮する手法。液体を加熱して蒸発させ、冷やして再び液体に戻す作業を繰り返すと、アルコール分をより濃縮することができます。

蒸溜に使う蒸溜機は、大きく単式蒸溜機と連続式蒸溜機の2種類に分けられます。一般的にモルトウイスキーに使われるのは、銅製の単式蒸溜機(ポットスチル)。スコッチウイスキーでは通常2回蒸溜を行いますが、例外的に3回蒸溜を採用している蒸溜所もあります。

単式蒸溜機は、サイズや形状、ネックの高さ、アームの取りつけ角度などによって酒質が変わってくるため、蒸溜所ごとに細部にまでこだわった蒸溜機が導入されていいます。

加熱方法は、直火炊きと間接加熱の2種類に大別され、後者が主流。直火炊きでは香ばしいフレーバーと複雑な香味が生まれるといわれ、間接加熱では軽くすっきりとしたフレーバーになるといわれています。現在、石炭による直火炊きを採用しているのは日本の余市蒸溜所だけ。ガスによる直火炊きもごく限られた蒸溜所のみとなっています。

なお、連続式蒸溜機はグレーンウイスキーなどに用いられています。

樽詰めしたウイスキーを熟成

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熟成:ニューポットに加水、樽詰めして熟成

蒸溜で得たニューポットは加水してアルコール度数を調整し、樽に詰めて熟成させます。熟成により、酒質はまろやかになり、液体の色は琥珀色に色づいていきます。熟成期間は数年~10数年、ときには20~30年以上長期熟成することもあります。

熟成に用いる樽の種類は、スコッチウイスキーではホワイトオーク製のバーボンの古樽やコモンオーク製のシェリーの古樽を使うのが一般的です。

原酒をブレンドして調整

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ブレンド:味や度数を調整

熟成を終えたモルトウイスキー原酒はそのまま瓶詰めされるのではなく、ブレンダーが品質を均一化するためにブレンディング(ヴァッティング)を行います。ブレンドに使われるのは、熟成年数の異なる50~数百樽のモルトウイスキー原酒。ウイスキーの味わいに関わる重要な工程で、ブレンダーの力量が問われます。

ブレンド後に再度樽に詰めて、後熟(マリッジ)を行うこともあります。ブレンデッドウイスキーでよく使われていましたが、現在はシングルモルトウイスキーの製造工程でも用いられています。

なお、単一の蒸溜所のモルトウイスキーのみをブレンドしたものは「シングルモルト」、複数の蒸溜所のウイスキーをブレンドしたものは「ブレンデッドモルト(ヴァッテッドモルト)」と呼ばれます。また、モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしたものがブレンデッドウイスキーで、現在世界でもっとも飲まれているスコッチウイスキーはブレンデッドウイスキーになります。

完成したウイスキーをボトリング

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瓶詰め:ボトリング

瓶詰め工程では、まずブレンドした原酒を瓶詰装置に送り、チルフィルタリング(冷却ろ過)を行って不純物などを取り除きます。その後、精製水を加水してアルコール度数を40~46%程度に調整し、ボトリングします。

ウイスキーによっては、冷却ろ過をせず(ノンチルフィルター)ボトリングされるものもあります。なお、加水せずに樽出しのままボトリングする「カスクストレングス」やひと樽のみをボトリングする「シングルカスク」と呼ばれるタイプのウイスキーには、ノンチルフィルターのものが多くみられます。

グレーンウイスキーの造り方

グレーンウイスキーの造り方

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グレーンウイスキーは、トウモロコシや小麦、ライ麦、未発芽の大麦などの穀類を原料としたウイスキー。モルトウイスキーが大麦麦芽のみで造られるのに対して、さまざまな原料が使用されるのが特徴です。

製造は、一般的に以下の流れで行います。

(1)原料を粉砕
(2)40度のお湯と混ぜて煮沸
(3)もろみを糖化
(4)酵母を加えてモルトウイスキーより長めに発酵
(5)連続式蒸溜機で蒸溜
(6)加水後樽詰め
(7)比較的短期間熟成

モルトウイスキーと大きく異なるのは蒸溜方法です。グレーンウイスキーに使われる連続式蒸溜機では、もろみを連続的に投入して蒸溜できるため、短時間で大量生産が可能。雑味が取り除かれた、アルコール度数90%以上の蒸溜液を連続的に得ることができます。

なお、熟成には一般的に、モルトウイスキーの熟成に繰り返し使った古樽を使用します。

アメリカンウイスキーの一種バーボンウイスキーの造り方の特徴

バーボンウイスキーの造り方

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バーボンウイスキーは、アメリカンウイスキーの代表格。製造にあたっては、アメリカの連邦アルコール法に規定された、トウモロコシを主原料(51%以上)に、160プルーフ(アルコール度数80%)以下で蒸溜、内側を焦がしたオークの新樽に125ブルーフ(62.5%)以下で詰めて熟成させるという条件を満たす必要があります。

製造の流れはモルトウイスキーやグレーンウイスキーとほとんど同じですが、大きく異なるのは熟成に新樽しか使えないこと。これにより、バーボンウイスキー特有の力強さとフレーバーがもたらされます。

このほか、蒸溜には円筒形の「ビアスチル(コラム式連続式蒸溜機)」と「ダブラー(精溜装置)」をセットで使用、糖化の際には、ビアスチルの底に溜まったバックセット(蒸溜廃液)を加える「サワーマッシュ方式」で行うなどの違いがあります。

アイリッシュウイスキーの一種ポットスチルウイスキーの造り方の特徴

ポットスチルウイスキーの造り方

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アイルランドのポットスチルウイスキーは、本来の意味でのアイリッシュウイスキーと称されるアイルランド伝統のウイスキーです。伝統的には、大麦麦芽(モルト)と未発芽の大麦、オート麦など3~4種類の原料を石臼で粉砕、仕込みを行い、大きなポットスチルで3回蒸溜していました。

現在は、蒸溜回数は必ずしも3回ではなく2回の場合もあります。また法改正により、大麦麦芽と未発芽の大麦をそれぞれ30%以上使用することが定められています。

このほかのポットスチルウイスキーの特徴としては、原料の大麦麦芽はノンピートを使用、スコッチより大きめのポットスチルを使う、熟成期間が短い、酒質が比較的軽いことなどが挙げられます。

カナディアンウイスキーの造り方の特徴

カナディアンウイスキーの造り方

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カナディアンウイスキーの原酒は、ベースウイスキーとフレーバリングウイスキーの大きく2種類に分けられ、流通している商品のほとんどが、この2つを合わせたカナディアンブレンデッドウイスキーになります。

ベースウイスキーは、トウモロコシなどを主原料に連続式蒸溜機で蒸溜して造るウイスキーで、マイルドでクセがない味わいが特徴です。フレーバリングウイスキーは、ライ麦やトウモロコシ、ライ麦芽、大麦麦芽などを原料として、1塔式連続式蒸溜機とダブラーで蒸溜します。バーボンウイスキーと似た風味が特徴です。

どちらも樽熟成は3~4年ほどで、ブランドによっては先にブレンドしてから樽詰めして熟成させる場合もあります。

スコッチのモルトウイスキーの造り方を中心に、グレーンウイスキーや、バーボンウイスキー、ポットスチルウイスキー、カナディアンウイスキーの造り方もみてきました。製造工程の流れや特徴を知れば、ウイスキーに対する理解がもっと深まりそうですね。

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