香り華やかでフルーティーな味わいが人気。各地の銘蔵から届く『蔵しぼり生酒』
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最近とあるジャンルの日本酒が人気になっているのを知っていますか? それはずばり、「生酒(なまざけ)」。「ああ。冷酒のことね」とか思った人は、おいしいお酒との出合いを逃してきたかも知れません。今回はとびきりの生酒を紹介しますが、その前に「生酒とは?」をカンタンに。
火入れしないから、フレッシュ&フルーティー
じつは「生」という漢字が付くお酒は、生酒のほかにも「生詰酒」と「生貯蔵酒」というのがあり、「冷酒」として飲まれることが多いです。これらの違いは「火入れ(ひいれ)」と呼ばれる加熱処理を行うか行わないかと、そのタイミング。そう下図で分かるように醸造からお店に並ぶまで、一切火入れを行っていないのは、生酒だけなのです。
そのため、生酒は華やかな香りとフレッシュな味わいを持ち、飲み心地もさらりと軽快。これまであまり日本酒に親しんでなかった人でも、スイスイといけてしまいます。「そんなにおいしかったら、どんどん生酒を造ればいいのに…」――いえいえ、そんなカンタンな話ではありません。
火入れの大きな目的は、お酒を殺菌すること。放っておくと新酒に含まれる微生物や酵素の働きで、お酒は腐ってしまいます。生酒が火入れせずに腐らないのは、特別なフィルターでこうした腐敗の原因を除去したり、常に低温で保管したりと手間のかかる工程があるがゆえ。扱いがとてもデリケートだから、いくら人気があってもたくさん生産して出荷するのが困難なので、希少なものとなっていました。
そこで蔵しぼり生酒の登場です。現地でしか飲めなかった生酒が、家庭や飲食店でも気軽に楽しめるようになったのは、チルド輸送・保管のノウハウがある三菱食品と志の高い蔵元がコラボしたおかげ。こだわりの地酒を醸してきた造り手が、女性も楽しく飲めるような生酒を開発。その爽やかな飲み心地はもちろん、名前やラベルまでこだわったとびっきりの生酒が誕生しました。
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おいしくいただくには、酒器も大事な要素です。蔵しぼり生酒にはワイングラスがオススメ。まず持ち上げて、光輝くような色を楽しみましょう。時にはやや発泡している姿が観られることもありますよ。続いてボウル部分に溜まったフレッシュな香りが、ゆっくり立ち昇ってくるのを待ちましょう。ガラスが薄いため、含んだ際の口当たりが優しいのもワイングラスの長所です。
今回は、12銘柄のなかから、4銘柄を紹介しましょう。
<新潟県>星灯籠(ほしとうろう)純米吟醸
使用している新潟県産の酒米・五百万石は、すっきりキレの良い味わいに仕上がるのが特徴で、星灯籠も透明感のあるまろやかな口当たり。レモンやライムのような親しみのある柑橘系のフレーバーで、日本酒ビギナーにもオススメです。さっぱりとした白身魚のお刺身や、レモンをしぼったサーモンのマリネなどと合わせ、ディナーのスタートに。
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新潟の豪雪地帯の雪まつりでは、幻想的に空に浮かび上がっていくスカイランタンが有名。星灯籠とは、スカイランタンのように昇華していくような味わいがあることを表現したネーミングで、ラベルにもその姿がチャーミングに描き込まれています。
1,580円(720ml・税抜)
■朝日酒造㈱
天保元年(1830)創業。新潟の水と米と人による品質本位の酒造りをモットーし、多くの日本酒愛好家に評価されてきました。花火の町として知られる長岡市を代表する造り手のひとつです。
代表ブランド名/朝日山、越のかぎろい
※商品価格は記事執筆時点のものとなります。ご購入の際には価格が異なる場合がありますのでご注意ください。
<秋田県>風の奏鳴曲(ソナタ)純米吟醸
美山錦100%らしい軽快な味わいのなかに、じっくり低温で発酵させた米の旨みを表現。白桃や洋梨のような香りのある、とてもフルーティーなお酒です。口に含むと乳酸飲料のような丸みを帯びた酸味があるのも特徴。一緒にいただくなら、アナゴやウナギの白焼きや白身魚のハーブ焼きのような、味付けが薄めで温かい料理がオススメです。
蔵元のある秋田県大曲は湧水に恵まれているエリアで、蔵の正面には仕込み水の井戸が鎮座しています。代表銘柄の『出羽鶴』に使用されてきたこの名水が、風の奏鳴曲にも。含んだ時に鼻からすっと風が抜けるような印象は、この水の清々しさから来ているようです。
1,580円(720ml・税抜)
■秋田清酒㈱
慶応元年(1865)創業。秋田県南部の米どころ仙北平野にあり、雄物川水系の地下水で醸したお酒は、香りとキレの良さが特徴。『出羽鶴』『刈穂』という日本を代表するブランドで有名です。
代表ブランド名/出羽鶴、刈穂、やまとしずく
※商品価格は記事執筆時点のものとなります。ご購入の際には価格が異なる場合がありますのでご注意ください。
<京都府>風・沙夜香(さやか)純米吟醸
現在、12蔵が参加している蔵しぼり生酒。風・沙夜香は今年の6月20日に発売したばかりのニューフェイス。日本の酒どころ京都・伏見の老舗、玉乃光酒造が醸しています。香りは上品で控えめ、酸味がきれいで後味もさっぱり。スレンダーボディのキレがいいお酒なので、ふくよかな味わいを持つ出汁巻き玉子やグラタンなどの料理と合わせてください。
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京都で生まれた酒米・祝(いわい)を使用している風・沙夜香。340年以上の歴史を誇る蔵元は米にこだわり、祝いのほかかつて幻の酒米と言われた備前雄町(びぜんおまち)、酒米の横綱と称される山田錦などを扱っています。例年社員が生産農家に赴いて長靴に履き替え、苗の間隔を確かめるために田植えに立ち合うという徹底ぶりです。
1,380円(720ml・税抜)
■玉乃光酒造㈱
延宝元(1673)年創業。飽きのこない食事を引き立てるお酒造りを信条としています。米の品種はもちろん米の育て方にもこだわり、1964年に業界に先駆けて純米酒を復活させたことでも有名です。
代表ブランド名/玉乃光
※商品価格は記事執筆時点のものとなります。ご購入の際には価格が異なる場合がありますのでご注意ください。
<茨城県>風流人(ふうりゅうびと)特別純米
今回紹介した4本でいちばん辛口。食事中に飲むことを意識し、穏やかな香りとともに米の旨みを表現したタイプなので、まるで主食の白飯のように料理を選びません。この味わいを創り出したのは、五百万石と美山錦をブレンドした酒米から醸すという発想。揚げ物、フォワグラなど味のしっかりした料理に合わせられる生酒です。
寛政年間の創業と歴史は古いのですが、最年長の杜氏が40歳前半。社長も30歳後半で20歳代前半のスタッフもいるなど、とても若々しいチームで醸造に取り組んでいます。伝統を重んじながらも、データを重視した最新技術も導入、風流人のような味わいを持つお酒を産み出している蔵元です。
1,480円(720ml・税抜)
■吉久保酒造㈱
寛政2(1790)年創業。水戸徳川家が茶の湯の水として用いた『龍の水』を仕込み水に、伝統と革新の技を用いて、米と米麹のみで造る純米酒を醸しています。旨みのある辛口タイプが多いのも特徴。
代表ブランド名/一品
※商品価格は記事執筆時点のものとなります。ご購入の際には価格が異なる場合がありますのでご注意ください。
今回の4本でも、それぞれがオリジナリティ豊かな味わいやストーリーを持っていることが分かるはず。1本をじっくり楽しむのもよし、ワイワイと仲間で飲み比べるのもよし…。生酒ワールドの奥の深さを、ぜひ蔵しぼり生酒で体験してみませんか。