「モルト(大麦麦芽)」はモルトウイスキーの主原料!製麦工程やグレーンとの違い、飲み方まで確認

「モルト(Malt)」とは大麦を発芽させた大麦麦芽のことで、ウイスキーをはじめ、ビールやパンなどの原料として使われています。今回は、モルトの概要やモルトを作る製麦工程、大麦を発芽させる理由、モルトの風味をたのしめるウイスキーの種類などについて紹介します。
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ウイスキーの原料モルト(大麦麦芽)の製法や、モルトが使われるウイスキーの種類、モルトの風味が魅力の穀物系ウイスキーのたのしみ方なども見ていきます。
ウイスキーの原料「モルト」とは?

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モルトは、大麦を発芽させて乾燥させた大麦麦芽のことで、ウイスキーの主要な原料のひとつです。「製麦」という工程で大麦を発芽させる理由は、アルコール発酵に必要な糖を作る準備をするため。発芽の過程で大麦のなかに糖化酵素が作られ、その後の発酵段階で、発酵が進みやすくなります。
「モルト」は大麦麦芽の意味
「モルト」とは、大麦を発芽させ乾燥させた麦芽(大麦麦芽)のことです。ウイスキーの世界ではとくに重要な原料で、ウイスキー原酒「モルトウイスキー」は、モルトのみを単式蒸溜機(ポットスチル)で蒸溜して造られます。
モルトウイスキーは、穀類を原料とした「グレーンウイスキー」とともに、スコッチをルーツとするウイスキー造りに欠かせない原酒で、香味の骨格を形づくります。
銘柄ごとの個性を生むのが、その原料となるモルト。各蒸溜所では、モルトの種類や製麦条件にこだわりながら、多彩なウイスキーを造り出しています。なお、モルトが使われたウイスキーのボトルラベルには、「モルト」または「麦芽」と表記されます。
モルトはウイスキーだけでなく、さまざまな食品や飲料にも利用されています。代表例がビールで、モルトはその主原料のひとつです。また、モルトから作られるモルトパウダーやモルトエキス(モルトシロップ)はパンや焼き菓子作りに使われ、発酵を助けたり、焼き色をよくしたりする役割を担っています。

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「モルト」を作る工程モルティング(製麦)
モルトを作る工程は「製麦(モルティング)」と呼ばれ、一般的には「浸麦(しんばく)」「発芽」「乾燥」という流れで行われます。
まず浸麦の工程では、大麦に十分な水分を含ませて、発芽しやすい状態に整えます。具体的には、収穫した大麦を水に浸し、一定時間後に水を抜いて空気にさらし、再び水に浸す作業を数日繰り返します。
発芽が始まった大麦は、適切な段階で乾燥させて発芽を止めます。必要に応じて、ピート(泥炭)を焚き込み、スモーキーな香りをモルトにつけることもあります。
現在のスコットランドでは、品質の安定や大量生産、設備、コストの観点から、専門の製麦業者(モルトスター)からモルトを仕入れるのが一般的です。日本の蒸溜所でも、専門業者から調達するケースが主流となっています。ただし、外注とはいっても、蒸溜所ごとに乾燥時間やピート量などの細かいレシピを渡して、個性を保っています。

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一方で、少ないながら自社製麦を行う蒸溜所もあります。伝統的な「フロアモルティング」という手法では、大麦を床に広げ、職人がたえずシャベルで攪拌しながら発芽を促します。また乾燥には、「キルン」と呼ばれる乾燥塔が用いられます。
手間や時間、コストがかかり、設備も必要ですが、独自の香味を生み出す要素となるため、あえて採用し続けている造り手もいます。
なお、近年は日本でもクラフト系蒸溜所を中心に、自社製麦への取り組みが広がっています。

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大麦を発芽させてモルトにする理由
大麦を発芽させてモルトにする目的は、アルコール発酵に必要な「糖」を生み出す準備のためです。発酵工程では、酵母が糖をエサとして、アルコール発酵が進みます。
大麦の主成分はデンプンですが、糖は十分に含まれていないため、そのままでは酵母による発酵に利用できません。発芽が進むと、大麦のなかでアミラーゼなどの糖化酵素が生成され、デンプンを糖に分解できる状態になります。
その後の糖化工程では、粉砕した麦芽を温かい水と混ぜることで酵素が働き、デンプンが糖に変わって発酵に使われる麦汁が作られます。続く発酵工程では、この麦汁に酵母を加えることで糖が分解され、アルコールや二酸化炭素、ウイスキーの香味につながる香気成分が生まれます。つまり製麦は、ウイスキー造りの重要な出発点といえるのです。
モルトが活躍するウイスキーの種類

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ウイスキーは原料や製造方法の違いによって、いくつかの種類に分類されます。それぞれの個性を生み出す、「モルト」の役割に注目しながら見ていきます。
シングルモルトウイスキーとは、モルトが主役のウイスキー
単一の蒸溜所で造られたモルトウイスキーのみを瓶詰めしたものを、「シングルモルトウイスキー」と呼びます。その土地の水や気候、蒸溜所のこだわりがダイレクトに反映されるため、個性の強い風味をたのしめるのが特徴です。
また、複数の蒸溜所のモルトウイスキーをブレンドしたものは「ブレンデッドモルトウイスキー(ヴァッテッドモルトウイスキー)」と呼ばれます。日本ではこれらを総称して、「ピュアモルト」と表現することもあります。

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モルトはグレーンウイスキーにも! モルトとグレーンの違いは?
「グレーン」とは穀類全般を指します。モルト(大麦麦芽)のみを使うモルトウイスキーに対し、グレーンウイスキーはトウモロコシやライ麦、小麦などの穀類を主原料とします。さらに、グレーンウイスキーの製造にもモルトは欠かせません。糖化を助けるため、少量のモルトを加えて造られます。
グレーンウイスキーの製造には、短時間に効率よく大量生産できる、連続蒸溜機がおもに用いられます。高純度で雑味が取り除かれるため、軽やかで穏やかな風味に仕上がるのが特徴です。

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ブレンデッドウイスキーはモルト&グレーン原酒で成り立つ
「ブレンデッドウイスキー」は、個性の強いモルトウイスキーと、穏やかなグレーンウイスキーをブレンドしたウイスキーです。ブレンダーと呼ばれる職人が、多彩な原酒を絶妙に配合し、ブランドごとの香味を組み立てます。
その際、香味の核となるのがモルトウイスキーです。そこに複数のグレーンウイスキーを加え、全体のバランスを整えることで、複雑でありながら飲みやすい味わいに仕上げられます。
シングルモルトは個性的な味わいのものが多く、好みが分かれることもありますが、ブレンデッドウイスキーは調和のとれた味わいで、比較的初心者にも親しみやすいのが魅力です。
ウイスキーだけじゃない!ビールもモルトが原料のお酒

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先述したように、モルトはウイスキーだけでなく、ビールの原料としても使われています。大麦を発芽させる工程は同じですが、それぞれで使用するモルトの種類や乾燥方法などは異なります。
ここでは、ビールに使われるモルトの種類や、もうひとつの原料「ホップ」との違いについてみていきます。
モルトはビールの主原料でもある
ビールもウイスキーと同様に、モルトを主原料とするお酒です。発芽によって酵素を引き出す工程も共通していますが、ウイスキーとビールでは、使用されるモルトの種類や乾燥方法などに違いがあります。
ウイスキーのモルトには、おもに二条大麦が使われます。スコッチなどでは、麦芽の乾燥時にピート(泥炭)を焚くことで、スモーキーな香りを付与することもあります。
一方、ビールでは「ビール麦」と呼ばれる二条大麦のほか、小麦やライ麦、オーツ麦など、めざすスタイルに合わせて多様な穀物のモルトが使われます。これらは役割によって、ビールの土台となる「ベースモルト」と、色や香味にアクセントを加える「スペシャルモルト」の2つに大別されます。
とくにスペシャルモルトの種類は多彩で、ペールモルトやカラメルモルト、ブラックモルトなど、焙煎(ロースト)度合いの違うさまざまなモルトがあります。その組み合わせによって、黄金色から漆黒まで、個性豊かなビールが生み出されています。

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モルトとホップの違い
ビール造りに欠かせない、もうひとつの重要な原料が「ホップ」です。モルトは穀類由来の原料に対し、ホップはアサ科のつる性植物で、雌(め)株につく「毬花(まりばな・きゅうか)」を使用します。
おもな役割は、ビール特有の華やかな香りと、さわやかな苦味をつけることです。また、泡立ちをよくしたり、雑菌の繁殖を抑える殺菌効果を高めたりと、ビールの品質維持にも役立ちます。
ホップの種類は世界に200種以上。300種を超えるという説もあるほど多様化しています。ビターなものからフルーティーなものまで、ブリーダーや造り手によって巧みに使い分けられています。
ウイスキーでモルトの風味をたのしむ

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モルトがもたらす香りや味わいは、ウイスキーの香味を形づくる要素のひとつです。その特徴を表現する言葉を知ることで、テイスティングのたのしみはさらに広がります。モルトを感じる穀物系ウイスキーの飲み方とともに、紹介します。
モルト由来の香りや味わいの表現
ウイスキーの香りを表現する際、麦芽のニュアンスが強いものは「モルティー(Malty/麦芽のような)」と表現されます。モルト由来のやわらかな甘味や、乾燥工程で生まれる香ばしさを示す言葉です。
「モルティー」の具体的な香りの例としては、焼きたてのパンやトースト、コーンフレーク、ビスケット、全粒粉クラッカーなど、温かみのある香りが挙げられます。こうした香りは、とくに穀物感が強めの、シリアル系シングルモルトウイスキーで感じられることがあります。なかには、乾いた紙や段ボールのようなニュアンス(穀物臭)として捉えられることもあります。
さらに、モルトの甘味が、熟成樽から生まれるオーク香と調和すると、アーモンドやヘーゼルナッツを想わせる「ナッティ(Nutty/ナッツのような)」な香りとして感じられることもあります。
モルト由来の個性は、樽熟成や発酵由来の香りと重なり合うことで、より複雑で魅力的な香味へと広がっていきます。

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モルトの風味をダイレクトに味わうなら、テイスティンググラスに注ぎ、ストレートで飲むのが最適です。グラスから立ち上る香りをじっくり嗅ぐことで、「モルティー」なニュアンスを感じとれます。
ストレートに常温の水を加水する飲み方もおすすめです。加水によってアルコールの刺激が和らぎ、閉じ込められていた香りの成分が開きます。麦の甘味や香ばしさを、よりハッキリと感じられるはずです。
食中・食後にペアリングをたのしむなら、モルトの風味に近いパンやクラッカー、全粒粉のビスケットなどを使ったおつまみがぴったり。似たもの同士を合わせることで、調和したハーモニーをたのしめます。もちろん、定番のナッツや生ハム、チーズなども合わせやすいので、好みのおつまみを選んでみてはいかがでしょう。
麦芽を発芽させたモルトは、ウイスキーの重要な原料のひとつです。モルトが使われているウイスキーはたくさんあるので、各ボトルのテイスティングノートを参考にしつつ、モルト由来の香味を探るのもたのしいですよ。
























