ブランデーの「V.S.O.P.」とは何の略?熟成年数を表すコントの数え方、代表的な等級、飲み方を解説

ブランデーの「V.S.O.P.」とは何の略?熟成年数を表すコントの数え方、代表的な等級、飲み方を解説
出典 : nomad / PIXTA(ピクスタ)

「V.S.O.P.(VSOP)」とは、ブランデーの等級表示のひとつで、「Very Superior Old Pale」の頭文字を取った略称。フランスのコニャック・アルマニャックでは、A.O.C(原産地呼称統制)にのっとり、厳格にランク付けされています。今回は「V.S.O.P.」の概要や魅力、飲み方について紹介します。

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フランスで使用される等級(ランク)は、熟成年数を示す「コント」という単位で分類されます。ブランデーにブレンドする原酒のうち、もっとも若い原酒のコント数が基準となり等級が決まります。等級分けに欠かせないコントの数え方の仕組みや、コニャック・アルマニャックのおもな等級についても解説し

なお、A.O.C.の管理を国から委託されているフランスの全国コニャック事務局「BNIC」(Bureau National Interprofessionnel du Cognac)の公式サイトでは「VSOP」を使用していますが、ラベルや商品名には正式名称の略称であることを示すために「V.S.O.P.」や「V.S.O.P」と表記するのが一般的。「V.S.O.P」としている銘柄もありますが、この記事では、「日本ソムリエ協会教本」に準じて「V.S.O.P.」と表記しています。

(参考)
BNICの公式サイト

「V.S.O.P.」とは?

VSOPとは

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「V.S.O.P.(ブイエスオーピー)」は、ブランデーの等級表示のひとつで、「Very Superior Old Pale」の頭文字を取った略称です。フランスの高級ブランデー、コニャックとアルマニャックでは、フランスの法律に基づく「A.O.C.(原産地呼称統制)」に従い、業界団体の規定によってランク分けの条件が厳格に定められています。

V.S.O.Pは「Very Superior Old Pale」の略、読み方はブイエスオーピー

ブランデーのラベルなどでよく見る「V.S.O.P.」は、「Very Superior Old Pale」の頭文字を取った略称です。読み方は、「ブイ・エス・オー・ピー」。

それぞれの単語には、以下のような意味があります。

◇V(Very):非常に、とても
◇S(Superior):優良な、優れた
◇O(Old):古い、熟成された
◇P(Pale):透きとおった、澄んだ(琥珀色)

つまり、「V.S.O.P.」は「とても素晴らしく、熟成された、色合いも美しいブランデー」という意味合い。時間をかけて熟成することで生まれる豊かな風味や、琥珀色の深まりが、この略称に反映されています。

コニャック地方

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V.S.O.P.は等級(ランク)表示のひとつ

「V.S.O.P.」は、ブランデーの等級表示のひとつで、銘柄名ではありません。フランスのブランデー(フレンチブランデー)のなかでも、コニャックとアルマニャックに用いられるもので、等級は原酒の熟成年数によってクラス分けされています。

コニャック、アルマニャックは、フランスの法律に基づく制度「A.O.C.(原産地呼称統制)」によって、産地やブドウ品種、蒸溜法などが厳格に定められています。A.O.C.はフランス語の「Appellation d'Origine Contrôlée」の略。(A.O.C.は「AOC」と表記される場合もあります)。

A.O.C.の基準に従った生産が徹底され、品質の一貫性が守られているからこそ、消費者は等級表示を目安に、安心して製品を選ぶことができます。

等級も同じくA.O.C.の規定にのっとり、コニャックではBNIC(全国コニャック事務局)、アルマニャックではBNIA(全国アルマニャック事務局)が監督を担い、等級表示が適正に行われるよう管理されています。

ちなみに、コニャックとアルマニャックは、フランスが世界に誇る卓越した品質の高級ブランデーです。コニャックはフランス西部のコニャック地方、アルマニャックはフランス南西部のアルマニャック地方で、厳格なルールと管理下で生産されています。

ブランデーの最上級ランクは

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V.S.O.P.とVO、XOの違い、ブランデーの最上級ランクは?

「V.S.O.P.」と、「VO」や「XO」の大きな違いは、熟成年数の長さにあります。一般的に、「V.S.O.P.」は「VO」より熟成年数が長く、「XO」より短いという位置づけです。

ちなみに、「VO(ブイ・オー)」は「Very Old(とても古い)」の略。「Very Superior Old(非常に優れた古酒)」を略した「VSO(ブイ・エス・オー)」とともに、日本のブランデーで見かけることのある表記です。いずれも、一般的にV.S.O.P.よりも熟成年数は若いものの、価格も手ごろで、デイリーにたのしまれています。

一方、「XO(エックス・オー)」は「Extra Old(極めて古い)」の略で、フランスの等級表示のひとつです。数あるブランデー(コニャック・アルマニャック)のなかでも熟成期間が長く、上位にランクされます。

ブランデーの等級

ブランデーの等級

この「XO」よりさらに上位に位置づけられているのが、「Hors d’âge(オルダージュ)」。「年齢がわからないほど古い」という意味を持ち、特別な日の一杯として選ばれる、最上級クラスの存在です。

「オルダージュ」は、一般に「XO」よりもさらに長期熟成の原酒が使われていて、法的な定義はないものの、実質的に「XO」を超える品質といわれています。たとえば、コニャックのオルダージュでは、熟成35年超の原酒が使われることもあり、香り・味・余韻すべてにおいて圧倒的な深みを感じられます

なお、これら等級表記には世界的な基準はありません。
日本でも、フランスのコニャックやアルマニャックのように、法的な等級規制は存在しないため、メーカーが独自の基準で設けたランクを使用しています。

VSOPの魅力

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V.S.O.P.の魅力

コニャックの「V.S.O.P.」は、樽で4年以上熟成させた原酒で構成されています。
香味は、銘柄によって異なりますが、一般的にはフルーティーで華やかな香りや、軽やかでなめらかな口当たり、重厚すぎず初心者でも飲みやすいのが特徴です。ブランデーらしい風格があり、バランスのとれた味わいも魅力です。

位置づけとしては、若々しい印象のある「VS(熟成2年以上を使用)」と、長期熟成による重厚さを備えた「XO(熟成10年以上を使用)」の中間くらい。銘柄によって異なりますが、「VS」より深みがあり、「XO」より軽やかな飲み口をたのしめるのが「V.S.O.P.」といえます。

価格と品質のバランスに優れていて、比較的入手しやすいものもあり、ブランデー初心者にもおすすめです。日常の一杯から贈り物まで幅広く選ばれる「V.S.O.P.」は、食後酒にもカクテルベースにも使いやすく、さまざまなシーンで重宝されています。

なお、アルマニャックの「V.S.O.P.」も同様に、最低でも4年熟成の原酒が使われています。

コント(Compte)は熟成年数を表す単位

コントは熟成年数を表す単位

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コニャック・アルマニャックのランク分けの基準となる、コントについて解説します。

コントの数え方

「コント(Compte)」とは、ブランデーの熟成年数を示す単位で、フランスのコニャックやアルマニャックなどで用いられます。

「コント」の数え方には、決められたルールがあります。
まず、原料のブドウは、毎年9月中旬から10月ごろに収穫され、収穫翌年の3月末までに蒸溜を終えなければなりません。その翌日(収穫翌年)の4月1日から翌年の3月末までを「コント0」とし、そこから熟成のカウントが始まります。以降は、毎年4月1日に、コント1、コント2と数字が増えていきます。

たとえば、2024年秋にブドウを収穫し、2025年3月末までに蒸溜を終えたケースでは、コントは以下のように進みます。

◇コント00:蒸溜日〜2025年3月末
◇コント0:2025年4月1日~2026年3月末
◇コント1:2026年4月1日~2027年3月末
◇コント2:2027年4月1日~2028年3月末

製品として販売できるのは、コニャックではコント2以上(最低貯蔵2年以上)、アルマニャックではコント1以上(最低貯蔵1年以上)と定められています。
つまり、上の例では、アルマニャックは丸1年熟成させた2026年4月1日以降、コニャックは丸2年熟成させた2027年4月1日以降に、出荷条件を満たすことになります。

このように、コントに厳格なルールがあることで、ラベルに記された等級表示が、熟成度と品質の証明として機能しているのです。

コニャックは最低2年熟成が必要

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ブランデーの種類で、V.S.O.P.のコントは違う?

「V.S.O.P.」の表示は、コニャック、アルマニャックともに条件は同じで、コント4(最低貯蔵年数4年)以上の原酒を使ったものに限られます。

ブランデーは、複数の若い原酒と古い原酒をアッサンブラージュ(ブレンド)して造られるのが一般的です。「V.S.O.P.」と名乗るには、使用される原酒のうち、もっとも若いものが最低4年以上樽熟成していることが求められます。

ただ、実際には、奥行きのある風味を引き出すため、基準よりも長く熟成させた原酒が使われることも少なくありません。
平均的に、コニャックで約7〜10年、アルマニャックで約5〜10年熟成の原酒が使われているといわれていますが、なかには、熟成年数10年を超える希少な原酒が用いられている製品もあります。

なお、前述のとおり、フランス以外の国には厳格なルールは存在しないため、ボトルラベルに「V.S.O.P.」と明記されていても、必ずしも熟成度や品質が保証されているわけではありません。

V.S.O.Pの飲み方

VSOPの飲み方

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コニャックやアルマニャックの「V.S.O.P.」は、芳醇な香りとバランスのとれた味わいで、幅広い飲み方がたのしめるのも魅力です。ブランデー本来の風味をじっくり味わえるストレートや、氷が溶けるにつれ味わいの変化をたのしめるロック、やわらかな口当たりが魅力の水割りなど、好みに合わせた飲み方で堪能できます。

また、華やかな香りを活かして、カクテルベースとして使うのも、「V.S.O.P.」ならではの贅沢な選択肢です。

ブランデーと炭酸水を1:3で割る「フレンチハイボール」や、ブランデーとアマレットを2:1から3:1の割合で合わせた「フレンチコネクション」、ブランデーとレモンジュースなどをミックスした「サイドカー」など、たのしみ方は多彩。ネット上でいろいろなカクテルレシピが紹介されているので、試してみてはいかがでしょう。

VSOPの飲み方

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さらに、同じ「V.S.O.P.」でも、メゾン(生産者)ごとに味わいが異なるのもおもしろいところ。それぞれの土地や気候、製法が生む違いを、飲み比べて確かめるのもたのしみ方のひとつです。

また、「V.S.O.P.」を基準に、同じブランドのたとえば「VS」などの若い等級と、長期熟成の「XO」などを並べて味わうことで、熟成による変化や、風味のグラデーションを体感できます。

コニャックとアルマニャックでも個性が違うので、機会があればぜひ飲み比べてみてください。

ブランデーの「V.S.O.P.」は、熟成年数を示す等級表示です。おもにフランスのコニャックとアルマニャックで使われ、ラベルなどに表記する際は厳格な規定に従う必要があります。日本では等級に関する法律は存在しませんが、各メーカーが独自の基準を設けて、質の高いブランデーを生産しています。

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