ミズナラウイスキーはオリエンタルな香りが魅力! 日本産ミズナラ樽の特徴や飲み方、代表的銘柄も紹介

ミズナラウイスキーは、おもに日本原産のミズナラ樽で熟成したウイスキーで、オリエンタルな香りが魅力です。ミズナラ樽を使ったウイスキーは世界的にも評価が高く、愛飲家に支持されています。今回はミズナラウイスキーの特徴や飲み方、代表的銘柄などを紹介します。
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希少な日本産ミズナラ樽で熟成させたミズナラウイスキー。その魅力や、ミズナラ樽の特徴、高価な理由などもみていきます。
ミズナラウイスキーはミズナラ樽で熟成したウイスキー

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ミズナラウイスキーとは、おもに日本原産のミズナラ樽で熟成したウイスキーの呼称。
「ミズナラウイスキー」という名のブランドや商品があるわけではなく、またはっきりとした定義も存在しませんが、ここではミズナラ樽で熟成したウイスキーを便宜的に「ミズナラウイスキー」と表現します。
「ミズナラウイスキー」と呼ばれるものには、いくつか種類があります。たとえば、ミズナラ樽熟成の原酒を使った、シングルモルトウイスキーやブレンデッドウイスキーなどです。バーボン樽やワイン樽など、さまざまな樽で熟成したウイスキーと絶妙にブレンドすることで、ミズナラの風味をまとった独自の味わいが生み出されています。
ミズナラ樽で長期熟成したジャパニーズウイスキーは、とくに評価が高く、国内外の愛飲家に支持されています。
ほかにも、通常の熟成後にミズナラ樽に詰め替え、後熟(ウッドフィニッシュ)した原酒を使ったウイスキーや、ミズナラ樽で熟成した1樽の原酒のみを瓶詰めしたシングルカスクウイスキーなどもあります。また、熟成樽だけでなく、製造過程で使う発酵槽にミズナラを使用しているこだわりの蒸溜所もあります。
ミズナラ樽やミズナラ材を使うことで、ほかのウイスキーとの差別化を図り、おいしさを追求する造り手の熱意がみえますね。
ミズナラウイスキーはオリエンタルな香りが特徴

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長期熟成のミズナラウイスキーは、香木の白檀(ビャクダン)や伽羅(キャラ)を想わせる、オリエンタルな香りが魅力です。この香りが、ウイスキーの風味に独特の個性をもたらします。
お線香やお線香にも使われる白檀や伽羅は、日本人にとってはなじみのある香りですが、ミズナラの華やかな香りは日本人だけでなく、海外のウイスキー通をも魅了しています。
近年は、アメリカなど海外のクラフト蒸溜所などでも、日本産のミズナラ樽を活かしたウイスキー造りが行われるようになってきました。なかには、世界的な品評会で受賞しているウイスキーもあります。
ちなみに、白檀はインドなどの熱帯各地で、伽羅はベトナムなど東南アジアで採れ、なかでもインド産の白檀とベトナムの一部地域で産出された伽羅は、質も希少性も高く、高級品として重宝されています。そのような香りをウイスキーでたのしめるなんて、不思議ですね。
ウイスキーの熟成に使うミズナラの特徴は?

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ミズナラはオークの一種で、日本全土に自生しています。漢字では「水楢」と書き、水を多く含み燃えにくいことから、そう名づけられました。水を吸収しやすく原酒が漏れやすいため、本来樽材には向いていませんが、独特の香味を生むため、ウイスキーの熟成に使われています。英語では「ジャパニーズオーク」と呼ばれ、珍重されています。
ミズナラはブナ科の樹木でオークの一種
ミズナラは、日本全土や千島列島、サハリンなどに分布している、ブナ科の落葉高木です。ミズナラは漢字で「水楢」と書き、その名は水分を多く含み燃えにくいことに由来します。秋にはどんぐりを実らせ、クマやシカ、リス、ネズミなどのエサとなります。
オークの一種であるミズナラは、丈夫で木目が美しいため、かつては家具材としてヨーロッパに輸出されていました。近年は供給量が減りましたが、日本国内で高級家具材としての需要が高まっています。

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ミズナラは割れにくい特性を持ちますが、加工がやや難しく、熟練の技術や知識が求められます。それに加えて、水分を吸収しやすく原酒が漏れやすいため、本来は貯蔵樽には向いていません。新樽では木香が強すぎて、当初は造り手からあまり好まれていませんでした。ところが、ミズナラ樽で長期熟成すると独特の香味に変化し、国内外で評価されるようになったのです。
いまや、ミズナラ(樽)は英語で「ジャパニーズオーク(Japanese oak)」と呼ばれ、ブレンダーやウイスキー通などに珍重されています。
なお、オークは北半球の温帯地方に広く自生している樹木の種類で、洋酒の樽や家具などに用いられています。ウイスキーの熟成樽としては、アメリカのホワイトオークやヨーロッパのセシルオークなどがポピュラーです。

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ジャパニーズウイスキーで注目の日本産ミズナラ樽
ウイスキーの熟成にミズナラを使うようになったのは、戦時中にシェリー樽の輸入が困難だったことに起因します。最初に取り入れたのがサントリーで、シェリー樽の代用として、日本国内のオークのなかから、より熟成に適したミズナラが選ばれました。
とはいえ、ミズナラを樽に用いるにはいくつか課題がありました。ミズナラには割れにくい特性がありますが、加工がやや難しく、熟練の技術や知識を要します。それに加えて、水分を吸収しやすく原酒が漏れやすいため、本来は貯蔵樽には向いていません。さらに、新樽では木香が強すぎるため、当初は造り手からあまり好まれていませんでした。
ところが、ミズナラ樽で長期熟成すると独特の香味に変化することがわかり、数十年経つと国内外で評価されるようになったのです。
いまや、ミズナラ(ミズナラ樽)は英語で「ジャパニーズオーク(Japanese oak)」と呼ばれ、ミズナラ樽で熟成したウイスキーは世界中で珍重されています。

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ミズナラウイスキーが高級な理由
ミズナラウイスキーが高級になる理由には、ミズナラ樽の需要増や高コストが関係しています。
日本産ウイスキーブームも後押しして、ミズナラ樽のニーズが高まっていますが、質の高いミズナラの流通量が少ないため、ミズナラ丸太の価格は年々上昇しています。サントリーでも、保有する約120万樽のうち、ミズナラ樽は数千樽ほどしかありません。
またミズナラは成長が遅いうえ、樽に適しているのは樹齢200年以上ともいわれています。そのためサントリーでは、貴重なミズナラの保護・育成に力を入れていて、樽に使うミズナラの選定時には、ブレンダーも森に赴くというほど。
ミズナラ樽は前述のとおり加工が難しく、原酒が漏れない樽を作るには熟練の職人の技術が必要です。さらに、白檀や伽羅のような香りをまとわせるためには長期熟成が不可欠で、ブレンダーの繊細で地道な品質管理が求められます。
どうしてもコストが高くなるため、いくら消費者に人気があっても、気軽に取り入れにくいのが実状です。
そのため、ミズナラ樽熟成のウイスキーは高級ウイスキーや地域限定品、数量限定品など、限られたウイスキーに使われる傾向があり、とても希少な存在となっています。リリース後すぐに入手困難になることも珍しくはありません。
代表的なミズナラウイスキーの銘柄とおいしい飲み方
ミズナラ樽熟成のウイスキーが使われているウイスキーには、「シーバスリーガル ミズナラ12年」や「イチローズモルト ミズナラ ウッド リザーブ(Ichiro’s Malt MWR)」、サントリーの「山崎」「響 JAPANESE HARMONY」などがあります。ミズナラウイスキーは、ストレートやロック、水割り、ハイボールなどの飲み方でたのしめます。
シーバスリーガル ミズナラ 12年|バランスのよい味わい

画像提供:ペルノ・リカール・ジャパン株式会社
日本原産のミズナラ樽で一部をフィニッシュした原酒をブレンドした、日本限定のブレンデッドスコッチウイスキー。シーバスリーガルのなめらかで芳醇な味わいに、ほのかでスパイシーな風味と日本的なフローラルなフレーバーが融合したバランスのとれた味わいです。世界的なウイスキーの品評会で賞を獲得している1本で、スコッチの愛好家にも人気があります。
飲み方は、ハイボールがイチオシ。ワンランク上の味わいをたのしめます。
国内販売元:ペルノ・リカール・ジャパン株式会社
「シーバスリーガル」ブランドサイトはこちら
商品詳細はこちら
イチローズモルト ミズナラ ウッド リザーブ|奥深さとピート香

画像提供:株式会社ベンチャーウイスキー
秩父で熟成されている多彩なモルト原酒をブレンドし、自社製ミズナラ樽で再熟成させた、こだわりのブレンデッドモルトウイスキー。スイートでフルーティーなピート香や、奥深く複雑な味わいがたのしめる本格派の1本です。
飲み方は、ミズナラ樽の風味を感じられる、ストレートやロック、お湯割などがおすすめです。
ちなみに、「ミズナラ ウッド リザーブ」をはじめとした、イチローズモルトの「リーフラベルシリーズ」のラベルや外箱には、ミズナラの葉が描かれています。種類によって色が異なり、「ミズナラ ウッド リザーブ」にはゴールドが採用されています。なお、ラベルのMWRはミズナラ ウッド リザーブの頭文字を取ったものです。
製造元:株式会社ベンチャーウイスキー
秩父蒸溜所公式Instagramはこちら
サントリーの「山崎」や「響 JAPANESE HARMONY」|ミズナラ香る味わい

画像提供:サントリーホールディングス株式会社
ミズナラ樽を最初に使用したサントリーにも、ミズナラの風味をたのしめる銘柄があります。
「サントリーシングルモルトウイスキー 山崎」は、山崎の伝統であるミズナラ樽貯蔵モルトを使用した、世界的に人気のジャパニーズウイスキーです。ストレートやロック、ハイボールなど、どんな飲み方にも合います。
製造元:サントリー株式会社
「山崎」ブランドサイトはこちら

画像提供:サントリーホールディングス株式会社
「響JAPANESE HARMONY」は、ミズナラ樽熟成の原酒がブレンドされたブレンデッドウイスキー。華やかで洗練された味わいが魅力で、ほのかなミズナラの余韻が感じられます。飲み方は、ストレートや水割りがおすすめ。お好みでロックやハイボールなども試してみてくださいね。
製造元:サントリー株式会社
「響」ブランドサイトはこちら
貴重な日本原産ミズナラ樽で熟成したミズナラウイスキーは、白檀や伽羅を想わせるオリエンタルな香りで、世界中の愛飲家を魅了しています。高価で入手困難な銘柄もありますが、機会があればぜひ一度味わってみてくださいね。
