「粕取り焼酎(酒粕焼酎)」とは?造り方や味わい、米焼酎との違い、おいしい飲み方、おすすめ銘柄を紹介

「粕取り焼酎(酒粕焼酎)」とは?造り方や味わい、米焼酎との違い、おいしい飲み方、おすすめ銘柄を紹介
出典 : マーボー / PIXTA(ピクスタ)

「粕取り焼酎(かすとりしょうちゅう)」とは、日本酒造りの副産物である酒粕を原料とした本格焼酎。「酒粕焼酎」とも呼ばれ、おもに九州北部などの米どころや日本酒の蔵元が多い地域で造られています。今回は、粕取り焼酎の特徴や米焼酎との違い、おいしい飲み方、おすすめ銘柄などを紹介します。

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「粕取り焼酎(酒粕焼酎)」は、九州北部などの米どころを名産地とする本格焼酎。まずはその基本情報からみていきましょう。

「粕取り焼酎」は日本酒作りの副産物「酒粕」を原料にした焼酎

粕取り焼酎は酒粕を原料にした焼酎

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「粕取り焼酎」とは、酒粕を原料にした焼酎。酒税法上は芋焼酎や麦焼酎、米焼酎などと同じ「単式蒸留焼酎」に分類され、原料名をつけて「酒粕焼酎(さけかすしょうちゅう)」と呼ばれることもあります。

「粕取り焼酎」の原料となる酒粕は「清酒粕」とも呼ばれる日本酒造りの副産物です。その正体は、発酵を終えた日本酒のもろみ(醪)を濾(こ)したあとに残る固形物。「酒粕」自体は、おもにお米と米麹、水から造られています。

「粕取り焼酎」の名産地としては、九州北部や会津若松、島根県などが有名。おもに日本酒の蔵元が手がけていますが、焼酎の蔵元が造るケースもあります。

ちなみに、「粕取り焼酎」の読み方は「かすとりしょうちゅう」。戦後の混乱期に闇市で流通した粗悪な密造酒も「カストリ」の名で語り継がれていますが、ここで紹介する「粕取り焼酎」とは別物です。

「粕取り焼酎」には味わいを左右する2つの製法がある

粕取り焼酎の原料「酒粕」

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「粕取り焼酎」はどのようにして造られているのでしょうか。

「芋焼酎」や「米焼酎」、「麦焼酎」のように、芋類や穀類を主原料とする焼酎は、アルコールを生み出すために、主原料に含まれるデンプンを糖に変える必要があります。この役割を担うのが「麹(こうじ)」ですが、「粕取り焼酎」の製造工程では、ほかの焼酎のように麹を使用しません。

日本酒のもろみを濾して得られる酒粕には、8パーセント程度のアルコール分が含まれています。平たくいうと、これを蒸溜したものが「粕取り焼酎」です。

「粕取り焼酎」は、その造り方の違いから、「正調粕取り焼酎」と「吟醸酒粕焼酎」の2タイプにわけられます。それぞれの製法を味わいの特徴とともにみていきましょう。

粕取り焼酎は2タイプ

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正調粕取り焼酎|香ばしさと凝縮された米や酵母の味わい

「正調(せいちょう)粕取り焼酎」は「粕取り」という昔ながらの伝統的な製法で造られる粕取り焼酎で、酒粕にもみ殻を加えて、セイロ式の蒸溜機で蒸溜するというもの。もみ殻を混ぜる理由は、蒸溜の際、酒粕に蒸気が均一に当たるようにするためです。

なお、酒粕に少量の水を加え、酒粕に残った酵母のはたらきで再発酵させてから蒸溜するという方法もあります。

現在「正調粕取り焼酎」と呼ばれている伝統的な粕取り焼酎は、江戸時代前期(17世紀ごろ)から造られているといわれています。古くは日本酒の副産物である酒粕を稲作の肥料に活用していた地域がありましたが、アルコールを抜く段階で、偶然生まれたのが粕取り焼酎という説もあります。

その特長は、もみ殻の香ばしさと凝縮された米や酵母由来の味わいにあり。木製のセイロで蒸溜したものは、木の香りもたのしめます。ややクセがありますが、飲みごたえは抜群。そのインパクトのある味わいにハマる人も多いようです。

粕取り焼酎にはもみ殻を使用することがある

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吟醸酒粕焼酎|吟醸香とスッキリとした味わいが魅力

「粕取り焼酎」の製法に「粕醪(もろみ)取り」という造り方があります。これは、新鮮な酒粕に水を加えて2週間ほど発酵させ、蒸溜を行う方法。この際、「大吟醸酒」や「吟醸酒」の酒粕を使用し、おもに減圧蒸溜で蒸溜したものを「吟醸酒粕焼酎」といいます。

「粕醪取り」の製法で造った焼酎は、伝統的な製法の酒粕焼酎よりもおだやかな味わいに仕上がります。なかでも「吟醸酒粕焼酎」は、華やかな吟醸香とスッキリとした味わいが魅力です。

「粕取り焼酎」と「米焼酎」の違い

粕取り焼酎と米焼酎の違い

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「粕取り焼酎」としばしば比較されるのが、お米と米麹を原料とした「米焼酎」です。
両者のおもな違いをみていきましょう。

◆主原料の違い
粕取り焼酎:酒粕
米焼酎:米

◆製法上の違い
粕取り焼酎:麹を使わない
米焼酎:麹を使用する

◆風味の違い
粕取り焼酎:酒粕由来の香りや甘味、旨味。個性が強いものから、スッキリとして飲みやすいものまで、味わいの幅が広い。
米焼酎:お米本来のふくよかな甘味と旨味。スッキリとして飲みやすく、料理との相性がよい。

「粕取り焼酎」の原料である酒粕もお米と米麹から造られていますが、日本酒造りの副産物というだけあり、そこから育まれる焼酎には日本酒を思わせる風味も感じられます。

「粕取り焼酎」が出荷される季節は?

緑の杉玉は新酒の季節のサイン

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本格焼酎の出荷のピークは、11月1日の「本格焼酎・泡盛の日」の前後にあたる10月下旬から11月上旬ごろといわれていますが、「粕取り焼酎」の場合は、これより少し遅い時期に出荷されるケースが多いようです。

「粕取り焼酎」はおもに新酒の酒粕から造られますが、原料となる酒粕の旬は、日本酒造りのスケジュールと密接な関係があります。日本酒の醸造がさかんに行われるのは、12〜翌3月の寒い季節。新鮮な酒粕が出回るのもほぼ同時期といわれています。酒粕が旬を迎えたころに蒸溜を行った場合は、冬の間に出荷することも可能です。

といっても、焼酎は貯蔵・熟成期間によっても出荷時期が変わってくるうえ、「粕取り焼酎」のなかには原料の酒粕自体を熟成させてから造り始めるケースもあるため、出荷の季節は特定しにくいといえるでしょう。実際、夏や秋ごろに出荷される「粕取り焼酎」もあります。

ちなみに「粕取り焼酎」の多くは通年商品ですが、「吟醸酒酒粕焼酎」などは季節限定で発売される場合もあります。

「粕取り焼酎」のおすすめ銘柄

「粕取り焼酎」のおすすめ銘柄を紹介します。

大亀(光酒造)|昔ながらの製法で造る粕取り焼酎

大亀

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造り手は、麦焼酎「博多小女郎」で名高い福岡県の光酒造。博多焼酎造りの伝統的な製法と研鑽を積んだ貯蔵法で、本格焼酎を中心に手がけるこだわりの蔵元です。

「粕取焼酎 大亀」は、酒粕を再発酵させて醸造した昔ながらの粕取り焼酎。強い香りと芳醇な味わいは、多くのファンを魅了して離しません。

アルコール度数:25度
通年商品

製造元:光酒造株式会社
公式サイトはこちら
商品詳細はこちら

吟香露(杜の蔵)|フルーティーな吟醸香とスッキリとした味わい

杜の蔵「吟香露(ぎんこうろ)」

出典:株式会社杜の蔵サイト

麦焼酎「豪気(ごうき)」で知られる福岡県の杜の蔵(もりのくら)は、全国でも珍しい粕取り焼酎の専門蔵として明治31年(1898年)に創業。現在は日本酒の製造も手がけています。

「吟香露(ぎんこうろ)」は吟醸酒の酒粕のみを使った、上品でフルーティーな吟醸粕取り焼酎。日本酒ファンもうならせる人気商品です。

アルコール度数:20度
通年商品

製造元:株式会社杜の蔵
公式サイトはこちら
商品詳細はこちら

「粕取り焼酎」のおいしい飲み方

粕取り焼酎のおいしい飲み方

jazzman / PIXTA(ピクスタ)

「粕取り焼酎」をおいしく味わうなら、まずはストレートやロックで銘柄独特の個性を確認したうえで、水割りやお湯割りなど定番の飲み方を試してみてください。そのままストレートやロックで味わうもよし。フルーティーな吟醸香が魅力の「吟醸酒粕焼酎」ならソーダ割りもおすすめです。

「粕取り焼酎」の原料、酒粕はお米から造られているだけに、ご飯に合うさまざまな料理と抜群の相性を発揮します。個性の強い「正調粕取り焼酎」なら、味の濃い料理や、燻製、ブルーチーズといったクセのあるおつまみともよく合います。「吟醸酒粕焼酎」は、あっさりとした味つけの料理とも絶妙なマリアージュを奏でます。

いろいろ試しながら好みの飲み方やペアリングを探して、「粕取り焼酎」の魅力を堪能してみてください。

日本酒造りの副産物を有効活用した「粕取り焼酎」。地方によっては、稲作に関わる神事の御神酒として、また田植え後にいただくお祝いのお酒として親しまれてきました。自然の恵みを大切にする日本人の精神の象徴ともいえる味わいを、ぜひ一度味わってみてください。

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