熊澤(くまざわ)酒造は地ビールやレストランも手掛ける湘南に唯一現存する日本酒蔵

熊澤(くまざわ)酒造は地ビールやレストランも手掛ける湘南に唯一現存する日本酒蔵
出典 : 熊澤酒造株式会社サイト

熊澤酒造は神奈川県の湘南エリア・茅ヶ崎唯一の日本酒蔵です。今回は熊澤酒造の魅力、ユニークな社是や歴史、こだわりの酒造り、主要ブランド「天青(てんせい)」の特徴のほか、「天青」以外の日本酒銘柄、「湘南ビール」やレストラン事業なども紹介します。

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観光スポットとしても知られる熊澤酒造の魅力に迫ります。

熊澤酒造は多くの人々が集う湘南文化の中心地をめざす蔵元

熊澤酒造は湘南文化の中心地をめざす蔵元

出典:熊澤酒造株式会社サイト

熊澤酒造は、神奈川県南部の湘南エリアにある茅ヶ崎市唯一の蔵元です。

温暖な気候、海をはじめする自然、ヒットソングにも登場する地元のシンボル「えぼし岩(烏帽子岩/正式名称:姥島〈うばじま〉)」などの景観にも恵まれた茅ヶ崎の地で、明治5年(1872年)の創業以来150年以上もの間、酒造りを行ってきました。

現社長で6代目蔵元の熊澤茂吉(襲名/くまざわもきち)氏の代になってからは、新たに日本酒ブランド「天青」や地ビールブランド「湘南ビール」を立ち上げるなど一大改革。
広大な敷地内に開いた「MOKICHI TRATTORIA(モキチトラットリア)」などの古民家レストランやカフェ、ベーカリーやギャラリーなども評判を呼び、茅ヶ崎の観光スポットともなっています。

地元の誇りとなるような良質のお酒を造り、多くの人々が集う湘南文化の中心地なることをめざす熊澤酒造。魅力あふれる数々の取り組みの出発点からみていきましょう。

熊澤酒造のユニークな社是(社訓)と現蔵元が行った大改革とは

熊澤酒造の社是は「よっぱらいは日本を豊かにする」

出典:熊澤酒造株式会社公式Instagram

「よっぱらいは日本を豊かにする。」。

このユニークな社是(社訓)は、6代目蔵元の熊澤茂吉氏が入社時に掲げたもの。酒蔵があることで地域が豊かになったと地元の人たちに感じてもらえる存在でありたい、という想いが込められています。

熊澤氏は24歳のとき、廃業の危機に陥っていた蔵に入り、家業を継ぎました。

歴史のある熊澤酒造ですが、当時は下請けに甘んじていて、お酒の評判もよくありませんでした。熊澤氏は全国で通用する質の高い独自ブランドの立ち上げを決意し大改革に挑みます。

まずは昔ながらの杜氏制度を撤廃。求人募集で入社した若い社員たちと5年かけて「天青」を造り上げ、熊澤酒造の新たな歴史をスタートさせました。

その後は営業部門も廃止。現在も杜氏をはじめとする製造部門の社員たちが、自ら手掛けたお酒を手に特約店を訪ねています。

お酒の造り手は、売上のためではなく本当に信頼できる人に売ろうとするもの。熊澤氏は将来を見据え、目先の売上より、末長く続くであろう「信頼」を築くための経営判断を下したのです。

熊澤酒造の日本酒造りと主要ブランド「天青(てんせい)」とは

熊澤酒造の日本酒造り

出典:熊澤酒造株式会社公式Instagram

熊澤酒造の日本酒造りへのこだわりと、主要ブランド「天青」の特徴をみていきましょう。

熊澤酒造の酒造りへのこだわり

熊澤酒造は、手造りの少量生産にこだわった良質な日本酒を造っています。また、湘南・茅ヶ崎の唯一の蔵元として、湘南の食文化を象徴するようなお酒を造ることをめざしています。

茅ヶ崎を含む湘南エリアには、都会的なライフスタイルを求める人も多く、さまざまな料理をたのしむ食文化があるといいます。

そのため熊澤酒造の日本酒は、地元の新鮮な魚介類はもちろん、多彩な料理に合うよう、お米の味をしっかり感じさせながらすっとキレる、さわやかな余韻のある味わいをコンセプトとして造られています。

さらに地域に根差した蔵元として地元産の米にもこだわり、湘南の農家との契約栽培を進めてきました。

コロナ禍ではお酒の出荷量が減ったことで、時間的な余裕が生まれたため、農業部門を設立。酒造好適米「五百万石」の自家栽培もスタートさせました。

地域に残る水田を守るべく、耕作放棄地となった田んぼを引き受け、徐々に広げた自社田は現在約9,000坪。熊澤酒造ではこの先10年ほどかけて原料米のすべてを湘南産に切り替えるという目標を掲げています。

熊澤酒造の主要ブランド「天青」

出典:熊澤酒造株式会社サイト

「天青」の概要と酒名の由来

日本酒銘柄「天青」は、2000年に発売された熊澤酒造の看板ブランドです。通年販売されている一般商品4種のほか、原料米や酵母、製法などに特徴のある限定商品も多数ラインナップされています。

特約店限定流通商品で、仕込み水には丹沢山系の相模川や酒匂川(さかわがわ)の伏流水を使用。原料米には一部を除き「山田錦」や「五百万石」などの酒造好適米が使われています。

「天青」という酒名の由来になっているのは、中国の皇帝の言葉とされる「雨過天青雲破処(うかてんせいうんぱどころ)」。

「雨が上がったあとの雲の切れ目から見える空の青さ」を意味するもので、理想の青磁(せいじ/磁器の一種)の色を表現したとされています。

「天青」は、晴れ渡った湘南の青空をも想い起こさせる「雨過天青雲破処」の言葉のとおり、突き抜けるようなすずやかさと潤いに満ちた味わいをめざして醸されているのです。

名づけ親は中国を舞台とする歴史小説で知られる作家の陳舜臣(ちんしゅんしん)氏。ラベルにも使われている酒名の書も氏が手掛けています。

「天青」ブランドの定番酒を紹介

「天青」ラインナップのなかから、定番の一般商品4種を紹介します。

雨過天青(うかてんせい) 純米大吟醸

神奈川県の熊澤酒造が造る「雨過天青 純米大吟醸」

出典:熊澤酒造株式会社サイト

ブランド名の由来を冠した「天青」銘柄の最高峰。特A地区で栽培された酒造好適米「山田錦」を精米歩合40パーセントで使用。長期低温でじっくりていねいに醸した華やかな香りと洗練された味わいが特長の純米大吟醸酒です。

千峰天青(せんぽうてんせい) 純米吟醸

神奈川県の熊澤酒造が造る「千峰天青 純米吟醸」

出典:熊澤酒造株式会社サイト

「雨上がりの山の頂と交わる青空」という意味を持つ「千峰天青」は、原料米である「山田錦」特有の奥行きのある味わいと上質な甘味が特長の純米吟醸酒。香りが穏やかで酒質がさわやかなため、さまざまな料理に合わせやすいお酒です。

吟望天青(ぎんぼうてんせい) 特別純米

神奈川県の熊澤酒造が造る「吟望天青 特別純米」

出典:熊澤酒造株式会社サイト

「吟望天青」の意味は「木々の緑と交わる青空」。酒造好適米「五百万石」を使った特別純米酒で魚料理によく合います。米の旨味が存分に引き出され、しっかりとした味わい深さとともに「五百万石」らしいキレも感じられる辛口の酒です。

風露天青(ふうろてんせい) 特別本醸造

神奈川県の熊澤酒造が造る「風露天青 特別本醸造」

出典:熊澤酒造株式会社サイト

「風露天青」とは「風そよぐ潤った大地と交わる青空」という意味。「五百万石」を使用した味わいと香りのバランスがよい「天青」のスタンダードともいえる特別本醸造酒。料理を選ばないすっきりとした口当たりのお酒で、幅広い温度帯でたのしめます。

熊澤酒造が手掛ける「天青」以外の銘柄

熊澤酒造の「天青」以外の銘柄

出典:熊澤酒造株式会社オンラインストア

熊澤酒造には「天青」のほかにも、蔵元の家名を冠した日本酒ブランド「熊澤」や、華やかでフルーティーな香りと甘酸っぱさが特長の炭酸入り日本酒&リキュールシリーズ「湘南スパークリング」などの銘柄があります。

なかでもひときわ個性を放っているのが、地元に伝わる「かっぱどっくり伝説」に由来する「かっぱシリーズ」。水・米・酵母ともオール湘南地区産で造られたもので、純米吟醸酒とどぶろく、貴醸酒がラインナップされています。

機会があればそれぞれの味わいを、ぜひたのしんでみてくださいね。

地ビールや古民家レストランも!熊澤酒造の個性と意欲にあふれるさまざまな取り組み

熊澤酒造は地ビールも手掛ける蔵元

出典:熊澤酒造株式会社Instagram

熊澤酒造が手掛けている地ビールやクラフトジン、敷地内などで展開するレストラン事業などを紹介します。

「湘南ビール」をよりたのしめるオクトーバーフェストも開催!

熊澤酒造の地ビール事業への取り組みは、現蔵元の熊澤茂吉氏がアメリカで触れたクラフトビールの文化にヒントを得て始められたもの。

ノウハウのない熊澤氏は、ドイツに渡ってビール造りをともに行うパートナーを募集。応募者とともにドイツ中を巡り、コンセプトを固めていきました。そうして無ろ過・非加熱処理で造られるピュアでフレッシュな味わいの「湘南ビール」が誕生します。

「湘南ビール」は1996年の発売後からよく売れ、「天青」が形になるまで蔵の経営を支えました。

「湘南ビール」のラインナップは「ピルスナー」などの通年商品や「IPAシリーズ」、「プレミアムシリーズ」、限定醸造品などバラエティー豊か。

なかでも近隣で栽培された農産物などとコラボレーションした「ローカルプロダクトシリーズ」は地域に根差す熊澤酒造らしい個性的なラインナップです。

10月には蔵の敷地内でビールのお祭り「オクトーバーフェスト」を開催。「湘南ビール」各種や「天青」などの日本酒が大いにたのしめます。

また、熊澤酒造では、吟醸粕を再発酵させて造る粕取り焼酎ベースのクラフトジン「白天狗」も手掛けています。香りづけに使うジュニパーベリー(西洋ネズの実)の自家栽培も始めるなど、蔵元の挑戦はとどまるところを知りません。

熊澤酒造は茅ヶ崎の観光スポット

出典:熊澤酒造株式会社サイト

敷地内にレストランなどを開き、観光スポット化! 地域の人々と手を携えるプロジェクトも展開中

熊澤酒造は敷地内やJR茅ヶ崎駅近くなどでレストランやショップを手掛けている蔵元です。

木々が生い茂り、ベンチも置かれた敷地内には、築450年の古民家を移築したダイニングレストラン「MOKICHI TRATTORIA」や、大正時代の酒蔵を改装した和食レストラン「蔵元料理 天青」があり、料理とともに「湘南ビール」や「天青」がたのしめます。

築100年の土蔵にある「mokichi baker & sweets + wurst(モキチベーカー&スイーツ プラス ヴルスト)」は、酒粕や水の代わりに湘南ビールを使ったパンなどを作るベーカリー。併設されている工房ではソーセージやスイーツも作られています。

そのパンなどが供される「mokichi cafe(モキチ カフェ)」も築200年の古民家を移築したもの。創業当時の倉庫を改修した「okeba(おけば) gallery & shop」では、地元アーティストの作品の展示販売や、ビンテージ家具などの販売も行われています。

また熊澤酒造は、食事以外でも地元の人々が集まる場所でありたいという想いを持つ蔵元。地域で栽培された野菜などを売るマーケットや、学びの場「暮らしの教室」を地域の人たちと手を携えて開催しているほか、保育園を開くなどの活動も行っています。

観光スポットとしてだけでなく、地元の人たちも集う地域の拠点のひとつとなっているのです。

熊澤酒造には、日本酒「天青」や「湘南ビール」を味わうだけでなく、実際に行ってみたくなる魅力があります。近くを訪れた際には、足を運んでみてくださいね。

製造元:熊澤酒造株式会社
公式サイトはこちら
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