そば焼酎とは? そばの実から造る本格焼酎の魅力を解説。おすすめ銘柄も紹介
そば焼酎(蕎麦焼酎)は、そばを原料とした本格焼酎で、ほのかなそばの香りとクセのない飲みやすさが魅力です。宮崎県や長野県をはじめ、各地で造られています。今回は、そば焼酎の特徴や味わい、歴史、製造方法、選び方、飲み方、おすすめの銘柄などについて紹介します。
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そば焼酎とは?
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そば焼酎は、日本を代表する麺類「そば(蕎麦)」の原料で、近年スーパーフードとして話題を集めている「そばの実」から造られる本格焼酎です。
おもな生産地は、宮崎県高千穂地方や長野県、北海道をはじめとする、そばの名所や名産地。芋焼酎や麦焼酎、米焼酎などと比べると銘柄数は少ないものの、独特の香味と飲みやすさで多くのファンを魅了しています。
そば焼酎の特徴・味わい
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そば焼酎の人気の秘密は、日本で暮らす人には馴染み深いそばの香りと独特のコク。そのすっきりとした飲みやすさは、愛飲家はもちろん、焼酎初心者にも支持されています。また、そばと同じく幅広い料理と合うことから、食中酒としても親しまれています。
食品としての「そば」と同様に、そば焼酎の主原料となる「そば」にもさまざまな種類があります。製法によっても個性が異なり、そば独特の香りやコクを存分に引き出したものから、さわやかな香りのものまで豊富なバリエーションがたのしめます。
そば焼酎の歴史
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そば焼酎は、1973年、宮崎県五ヶ瀬(ごかせ)地方山間部の特産品であるそばを原料に、五ヶ瀬に蔵を持つ雲海酒造が「そば焼酎雲海」として開発・販売したのが始まりです。クセのない飲みやすさとほのかなそばの香りが人気を集め、全国に広がりました。
日本でそばの栽培が始まったのは9300年以上前といわれています。縄文時代の人々がどのように利用していたのかはわかりませんが、中国から挽き臼が伝来した鎌倉時代以降はそば粉をこねて餅状にした「そばがき」や「つみれ」として食されるようになり、江戸時代初期に麺状の「そば切り」が定着。ほかの穀物と比べて生育が早く、やせた土地でも栽培できることから、全国各地に広がり、それぞれの地域で独自の進化をとげました。
昭和後期に誕生したそば焼酎は、九州から北海道まで広い範囲で生産されていますが、そばの主要産地のなかでもとくに長野県は佐久市を中心にそば焼酎に力を入れている蔵元が多数あります。おもしろいのは、独自に進化してきた地域ごとのそばの特徴が、そば焼酎にも少なからず反映されていること。ご当地そばを味わう感覚で、各地のそば焼酎を飲み比べてみてはいかがでしょう。
そば焼酎の製造方法
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そば焼酎の主原料であるそばの実は、熱処理後、外皮を完全に取り除いて使用します。そのまま仕込みに使われることもあれば、粗く割ったり、粉にしたりと使い方は造り手によってさまざまですが、サツマイモや麦、米など、ほかの焼酎の原料に比べて、そばは発酵力が弱く、扱いづらい素材です。そのため、麹に米や麦などを使用してそばを発酵させます。
そばを限界まで増やして米や麦を掛け合わせ、香り高いそば焼酎を造るのが、蔵元の腕の見せどころ。そのバリエーションの豊富さが蔵元の個性を浮き上がらせ、そば焼酎ファンを増やすひとつの要因にもなっています。
近年では、宝酒造がそば100%で造る全量そば焼酎「十割(とわり)」を販売。これが話題となり、ますます愛飲家を増やしているようです。
そば焼酎の選び方
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そば焼酎の選び方を、産地、麹の種類、蒸溜方法の3つの観点から解説します。
産地
そば焼酎は日本各地で生産されていますが、銘柄選びに迷ったときは、そば焼酎旋風の中心地である宮崎県と長野県のものから選ぶことをおすすめします。
そば焼酎発祥の地である宮崎県では、草分け的存在の雲海酒造をはじめ多数の蔵元が切磋琢磨しながらそば焼酎の製法を磨いてきました。また、宮崎県といえば本格焼酎の出荷量日本一を誇る土地。お酒の味わいを左右する天然水の質や気候的にも申し分ないといえるでしょう。
蔵元によって個性は異なりますが、一般に宮崎県産のそば焼酎は、すっきり飲みやすいといわれています。
長野県は、日本屈指のそばの名産地。信州そばといえばあまりにも有名です。冷涼な気候がそばをおいしくするといわれていますが、昼夜の寒暖差が大きい長野県では味わい深いそばが育ちます。
良質な原料と水で育まれた長野県のそば焼酎は、芳醇な味わいが特徴です。
麹の種類
そば焼酎の味わいを大きく左右するのが、麹の原料の種類です。
一般に、米麹を使用すると自然な甘味とやさしい口当たりが感じられる焼酎に、麦麹を使用すると麦の香ばしさが残る飲みやすい焼酎に仕上がるといわれています。
一方、そば麹を使ったそば100%の焼酎は、そば独特の香りやコクが残る仕上がりに。飲みやすさで選ぶなら米麹や麦麹のものを、そばの個性を堪能したいときは全量そばの銘柄を選ぶとよいでしょう。
そば焼酎の個性は、「白麹」「黒麹」「黄麹」といった麹菌の種類によっても変わってきます。クセの少ないすっきりとした味わいを好む人には「白麹」、原料の個性をしっかりと味わいたい人は「黒麹」、さっぱりとした飲みやすさと華やかな香りをたのしみたい人には「黄麹」で仕込んだものがおすすめです。
蒸溜法
そば焼酎の風味や香りは、蒸溜方法によっても大きく異なります。
本格焼酎の蒸溜方法には「常圧蒸溜」と「減圧蒸溜」の2種類がありますが、両者の違いは蒸溜機内にかかる圧力。一般に、気圧を下げずに行う昔ながらの「常圧蒸溜」では、アルコールと一緒にもろみに含まれる雑味成分も抽出されるため、原料由来の風味や香りが強い焼酎に仕上がるといわれています。
一方、気圧を下げて行う「減圧蒸溜」ではもろみの沸点が下がるため、沸点の高い成分は取り除かれ、雑味の少ないすっきりとした味わいの焼酎に仕上がりやすくなります。
そば焼酎の飲み方
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そば焼酎は、ストレートやロック、水割り、お湯割りなど、どんな飲み方でもたのしむことができますが、とくにおすすめしたいのがお湯割りとそば湯割りです。
お湯割り
そば焼酎の魅力のひとつであるそばの香りを堪能したいときは、お湯割りがおすすめ。お湯の上からそば焼酎を注ぎ、ほどよい温度に仕上げることで、そばの香りがほんのり立ち上がり、コクと旨味が増したまろやかな味わいをたのしむことができます。理想は40〜45度と人肌よりやや高めの温度。熱くするほど香りが強くなるので、ほのかな香りをたのしみたい人は、ややぬるめに作ってみてください。
そば湯割り
そば焼酎ならではの飲み方に、「そば湯割り」があります。そば湯とは、そばを茹でたときの茹で汁のこと。とろみのある白いお湯で、地域によっては、そば屋でそばをいただいたあとに、急須のような器で供されることがあります。
そばつゆで割ったり、ストレートで飲んだりと飲み方は自由ですが、旨味が凝縮されたそば湯をそば焼酎の割り材にすることで、そば焼酎のまろやかさが際立ち、そばならではの風味や香りを堪能することができます。
そば焼酎のおすすめ銘柄
そば焼酎のおすすめ銘柄を紹介します。
そば焼酎 雲海
出典:雲海酒造株式会社サイト
芋焼酎「木挽」シリーズでお馴染みの雲海酒造が造ったそば焼酎の元祖。「雲海」という名前は、仙境・高千穂の足もとから一面に沸き立つ雲の壮大な眺めにちなんだ銘柄です。
スタンダードな「そば雲海」のアルコール度数は25度で、ほのかなそばの香りとすっきりとした味わいが特徴。ストレートやロック、水割り、お湯割りからソーダ割りまで、どんな飲み方でもおいしくたのしめるうえ、食中酒としても魅力を発揮します。
そばの個性を味わいたい人には、黒麹仕込みの「そば雲海 黒麹」(25度)がおすすめです。全量そばで造る「雲海 全麹仕込み」(30度)も一飲の価値あり。
製造元:雲海酒造株式会社
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信州そば焼酎 天山戸隠
出典:芙蓉酒造協同組合サイト
長野県佐久市の清酒蔵、芙蓉酒造が造った本格焼酎。そばと米、麦、米麹を絶妙なバランスで掛け合わせ、常圧蒸溜と減圧蒸溜を駆使して仕上げた、全国酒類コンクールそば焼酎部門で2010~2013年連続優勝の逸品です。ほのかな甘い香りと、1年以上貯蔵・熟成させたまろやかな味わいをたのしめます。アルコール度数は25度。度数30度のプレミアムタイプもあります。
製造元:芙蓉酒造協同組合
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そば焼酎十割
出典:宝酒造株式会社サイト
宝酒造が独自に開発したそば麹により、そば原料のみで造った「そば全量」そば焼酎。そば麹を作る技術は特許も取得しています(特許4371408号)。
原料の個性を存分に引き出した常圧蒸溜原酒と、口当たりがよくフルーティーに仕上げた減圧蒸溜原酒を絶妙なバランスでブレンド。そば本来のさわやかな香りと穏やかな甘味がたのしめます。アルコール度数は25度です。
製造元:宝酒造株式会社
公式サイトはこちら
そば焼酎は、そばアレルギーの人を除いて、焼酎初心者から焼酎通まで幅広い層の支持を集めるお酒。まだ飲んだことがない人はぜひ一度試してみてください。