ワインを自宅で熟成するとおいしくなる? 熟成の秘密と道具について
ワインのなかには熟成することで香りや味わいが変化するタイプがあり、デキャンタージュという作業を行うことで風味を高める効果が期待できます。今回は熟成によるワインの変化やデキャンタージュのポイント、抜栓後にワインの熟成を促進できる便利な道具について紹介します。
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熟成による変化はワインの大きなたのしみ
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ワインの「熟成」とは
ワインにおける「熟成」とは、穏やかな酸化が進み、香りや味わいなどによい変化が生じることを指します。ワインを熟成させる方法には以下のようなものがあります。
◇樽熟成
発酵のあとにワインを熟成させる工程で用いられます。樽熟成を行うことでワイン中の成分を安定させるほか、複雑な風味を引き出したり、樽香と呼ばれる香りをつけたりすることができます。白ワインなどは、樽ではなくステンレスタンクなどを使用することもあります。
◇出荷前の瓶熟成
出荷前に瓶の中で熟成させる瓶熟成を行うこともあります。瓶熟成はフルーティーな香りを生むのに適していて、白ワインやロゼワインの製造工程でよく用いられます。
◇出荷後の瓶内で、保管庫などで寝かせて熟成
ワインは出荷されたあとにもゆるやかに熟成が進みます。高級なヴィンテージワインなどでは数十年にわたり熟成されるものもありますが、熟成は長ければ長いほどよい、とは限らないのが難しいところです。
ワインがもっともおいしく感じられる飲みごろは、ワインの産地や品種のほか、保存状態などによっても異なります。熟成による変化を考慮して飲みごろを見極めるのは、ワインならではの難しさでもあり、たのしみであるといえるでしょう。
熟成でワインはどう変わる?
熟成が進むと、ワインにはさまざまな変化が生じ、香りや味わいの魅力が増していきます。ここでは赤・白ワインの熟成によるおもな変化を確認しましょう。
【赤ワインの熟成による変化】
赤ワインは、ワイン中に含まれるアントシアニンやタンニンなどが適度な酸化をすることで、以下のような変化が現れます。
◇色
赤ワインに含まれるアントシアニンなどの色素が年月をかけて徐々に酸化することによって、紫がかった濃い色味から、段階を経てレンガ色~オレンジ色に近い淡い色味へと変化します。
◇香り
ワイン中のアルコールや有機酸類が適度な酸化をすることで「熟成香」と呼ばれる香りが発生します。フランボワーズ(ラズベリー)やカシス(ブラックカラント)、イチゴなどの果実や植物中心の香りから、ドライフルーツや腐葉土、葉巻、キノコ、革製品などの香りが加わるなど、徐々に変化していきます。
◇味わい
渋味のもととなるタンニンがゆっくりと酸化していくことで、瓶に「澱(おり)」が沈殿するとともに、ワインの渋味がやわらぎマイルドな味わいに変化していきます。
【白ワインの熟成による変化】
フレッシュな味わいを特徴とする白ワインは長期の熟成は行わないのが一般的ですが、貴腐ワインや一部の高級ワインでは、長期間の熟成を必要とするものもあります。
◇色
熟成によって透明に近い状態からレモン色、黄金色、アンバーへと濃い色味に変化していきます。
◇香り
ワインによりますが、トロピカルフルーツ、柑橘などフレッシュな果物や植物的な香りから、ドライフルーツ、ハチミツ、干し草のような熟成香が強くなっていきます。
◇味わい
フレッシュな果実味に代わり、ドライアプリコットやトーストのような風味が生じたり、酸味が穏やかに感じられるようになるなど、やさしい味わいになる傾向があります。
ただし、飲みごろのピークを過ぎるとその魅力は下降線をたどることになるため、見極めが大切です。
長期熟成に適したワインとは
長期間の熟成に適したワインは、一般的にワインの熟成に必要なアントシアニンやタンニン、有機酸などの成分を多く含む高品質なワインといわれています。このようなワインは複雑な風味を持っていて、熟成させることでよりバランスのよい味わいに変化させることができます。
とはいえ、すべてのワインが長期熟成に適しているわけではありません。
フレッシュさが魅力の白ワインはもちろん、赤ワインのなかにも長期熟成させずに早めに飲むことが望ましいとされる「早飲みタイプ」もあります。手ごろな価格のテーブルワインなどの多くは「早飲みタイプ」で、店頭に並ぶころには飲みごろを迎えているため、早めに飲んだほうがおいしく味わえるでしょう。
ワインを開かせる方法(飲む前の熟成方法)とは
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ワインを開かせる方法「デキャンタージュ」とは
飲みごろであると判断したワインでも、栓を抜いてみると、渋味を強く感じたり、熟成が十分でないのではと感じる場合もあるでしょう。
ワインの熟成が十分ではなく、香りが引き出されていない状態を「ワインが閉じている」といいます。抜栓後に「閉じている」ワインを開かせ、香りや味わいを高めるための有効な方法がデキャンタージュです。
デキャンタージュとは、「デキャンタ」と呼ばれるガラスの器にワインを移し替え、空気に触れさせることで適度な酸化を促す作業をいいます。これにより、ワインの香りを開花させるとともに、タンニンの渋味をまろやかにするなどの効果が得られます。また、赤ワインの瓶底に沈殿している澱を取り除く(混ざり込まないようにする)こともできます。
デキャンタージュでおいしくなるワインとそうでないワインの特徴
デキャンタージュはすべてのワインに必要なわけではありません。デキャンタージュに向いているワインとそうでないワインの特徴を知っておきましょう。
【デキャンタージュに適したワイン】
デキャンタージュに向いているワインとしては、以下のようなものが挙げられます。
◇「閉じている」状態のワイン
香りが十分に発せられていない、閉じている状態のワインには、デキャンタージュが有効です。
◇渋味の強いワイン
ボルドータイプのワインなど渋味の強いワインは、デキャンタージュによって味わいをまろやかにすることが期待できます。
◇長期熟成したワイン
長期熟成したワインは澱が沈殿している場合が多いですが、デキャンタージュによって取り除くことができます。
【デキャンタージュに適さないワイン】
以下のようなワインは、基本的にはでキャンタージュは不要です。デキャンタージュによって香りや味わいを損なう可能性もあるため注意しましょう。
◇白ワインやスパークリングワイン
酸味やフレッシュさが魅力で、タンニンや澱もあまり含まない白ワインやスパークリングワインは、一般的にはデキャンタージュは必要ありません。ただし、長期熟成した白ワインなどはデキャンタージュを行う場合もあります。
◇ピノ・ノワールなどの繊細な赤ワイン
ピノ・ノワールのように、あまり渋味が強くなく、繊細な香りや味わいを持つ赤ワインは、香りが飛んだり風味が損なわれたりするのを避けるため、デキャンタージュはあまり行われません。
デキャンタージュのコツと注意点
デキャンタージュは、コツを押さえて正しい手順で行いましょう。澱が見られるワインは、あらかじめボトルを立てて澱を沈めておきます。
【デキャンタ―ジュの手順】
1.ワインを開栓し、ボトルの口を布で拭く。(このとき、なるべくボトルを揺らさないようにする)
2.利き手にワインボトル、もう一方の手にデキャンタを持つ。
3.ボトルの首の辺りをライトで照らして澱が入らないよう確認しながら、ボトルとデキャンタを両方傾け、ワインがデキャンタの側面を流れるようにゆっくりと注ぐ。
なお、デキャンタージュしたワインはすぐに飲まず、熟成期間が長いワインで30分~1時間程度、短いワインで2~3時間程度休ませるようにします。
ワインを一瞬で熟成させる!? 注目の道具を紹介
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デキャンティング・ポアラー
デキャンタ―ジュを行うことなく、同様の効果が期待できるアイテムとして、「デキャンティング・ポアラー」があります。「ポアラー(英語でpourer)」は、ワインボトルに装着する注ぎ口を指します。
「デキャンティング・ポアラー」には注ぐときに空気が取り込まれるように側面に小さな穴が開いていて、効率的にワインを酸素に触れさせられる仕組みになっています。
さまざまな種類がありますが、購入する際はワインの口に接着する部分の密閉性が高く、洗浄などの手入れがしやすいものを選ぶとよいでしょう。
クレ・デュ・ヴァン
抜栓後のワインを熟成させるアイテムとして、フランス語で「ワインの鍵」という意味をもつ「クレ・デュ・ヴァン」も挙げられます。「クレ・デュ・ヴァン」は、グラスに注いだワインに接触させることでワインが持つ熟成のポテンシャルを計測できると同時に、飲む直前のワインを開かせるのに役立ちます。
「クレ・デュ・ヴァン」は、ヨーロッパの最優秀ソムリエに輝いた人物と著名な科学・醸造学者が1990年代初頭から研究を開始し、10年がかりで開発しました。画期的で科学的なアイテムで、EUなどの世界的な特許も取得しています。
金属のヘラのような形状をしたツールの先端には「パスティーユ」という銅色の円形部分があり、100ミリリットルのワインにこれを浸すことで、1秒ごとに1年の熟成効果を知ることができるそう。たとえば2秒後においしいと感じられるワインなら、ワインセラーなどの最適な環境で保管することで、2年後に熟成ピークを迎えたようなおいしいワインを味わえることを意味します。
また「開栓してみたら若かった」という場合にも、数秒程度でワインが開いた状態に変化させる効果があります。
デキャンタス
「デキャンタス」も、ワインの熟成におすすめのアイテムです。「デキャンタス」をグラスにセットし、ワインを注ぐ際に通過させることで、効率的に空気に触れさせることが可能です。
「デキャンタス」はスイスの科学者の理論を応用して設計されています。本体についている円錐形のチューブが多量の空気を引き込み、通過後のワインに細かな気泡を発生させることで、熟成が促進される仕組みです。
美しい実験器具にも似た外観をしていて、ワインを飲む際のパフォーマンスとしてもたのしめるでしょう。
ワインのなかには、熟成を進行させることで、さらにおいしくたのしめるものが多くあります。自宅で手軽に熟成の効果が得られる道具もさまざまあるため、導入してみてはいかがでしょうか。