デカンタ(デキャンタ)でワインの魅力はどう変わる? デカンタージュの目的や効果を知ろう
デカンタ(デキャンタ)とは、ワインに使う食卓用のガラス容器のこと。ボトルからデカンタに移し替える「デカンタージュ(デキャンタージュ)」をすると、ワインがさらにおいしくなるといわれています。今回はその方法や目的、効果などを紹介します。
- 更新日:
デカンタ(デキャンタ)とは?
HUIZENG/ Shutterstock.com
デカンタはワインをデカンタージュするための容器
デカンタとは、ワインに使う食卓用のガラス容器のこと。デカンタには、ピッチャーやポットのように、あらかじめボトルから移しておいたワインをグラスに注ぐ役割もありますが、通常の容器との決定的な違いは、ワインをおいしくする効果が期待できる点にあります。それが、ワインをボトルからデカンタに移し替える、デカンタージュという方法です。
デカンタの形状と種類
デカンタの魅力はなんといってもフォルムの美しさ。シンプルなものもあればデコレーションを施したものもあります。ユニークなデザインのデカンタは、食卓をスタイリッシュに彩ります。
デカンタの形状は、胴体部分が細いものと広いものに分けられます。細口のタイプはワインが空気に触れにくく、広口のタイプはワインが空気に触れやすいのが特徴です。デカンタはサイズも豊富で、小さいものは200ミリリットル程度、大きいものになると1,500ミリリットルほどのものまであります。
また、素材はガラスが一般的ですが、耐熱ガラスからソーダガラス、クリスタルガラスまでじつにさまざま。形状やサイズはもちろんですが、用途や耐久性、材質、デザイン性など、セレクトする際のポイントは多岐にわたります。
デカンタとカラフェの違い
デカンタに似たものに、カラフェというガラス容器があります。カラフェはフランス語で「水差し」という意味です。デカンタと同じくワインを供するときに使われますが、デカンタとの違いはその用途にあります。
ボトルからカラフェにワインを移し替えることを「カラファージュ(キャラファージュ)」といい、これにはワインの香りを開かせる役割があります。これに対して、ボトルからデカンタにワインを移すデカンタージュには、香りを開かせるだけでなく、ワインをおいしくするための別の目的が存在します。以下で詳しく見ていきましょう。
ワインはカラフェで毎日の食卓に
デカンタージュ(デキャンタージュ)の2つの目的
luckyraccoon/ Shutterstock.com
デカンタージュの目的1:ワインを開かせる
デカンタージュのひとつめの目的は、カラファージュと同様にワインの香りを開かせることにあります。デカンタージュは、熟成が進んでいない、いわゆる若い赤ワインに効果的といわれる方法です。熟成が不十分で香りが抑制されているワインの状態を「閉じている」といいますが、デカンタージュをして空気に触れさせ、酸化を促進させることで、味わいや香りを開かせることができます。
とくに若いワインをデキャンタージュする場合には、より空気に触れさせることのできる、胴体が広いタイプのデカンタを選ぶとよいといわれています。
デカンタージュの目的2:ワインの澱(おり)を取り除く
デカンタージュのふたつめの目的は、ボトルの底に沈殿している澱(おり)と呼ばれる堆積物を除去することにあります。澱とは、赤ワインの成分であるポリフェノールやタンパク質、タンニンなどが熟成の過程で結合したもの。古いヴィンテージワインなどによく見られるもので、とても渋い味がします。
この澱を上手に取り除くことが、デカンタージュの重要な役割。ワインをデカンタに移すときは、沈殿した澱がボトルの中で舞わないよう、上澄みだけをゆっくりと注ぐのがポイントです。
なお、ヴィンテージもののワインをデカンタージュする場合は、すでに熟成が進んでいて空気に触れさせる必要がないので、細身のデカンタが用いられます。
ワインの「澱(おり)」とは?知って得する澱との付き合い方
デカンタージュの方法を知っておこう
Africa Studio/ Shutterstock.com
デカンタージュの基本的なやり方
デカンタージュには手順があります。正しい方法を覚えておきましょう。
まずはワインの栓を抜きます。その際、澱が舞わないようそっと行うのがポイント。横置きにして保存している場合は、事前にボトルを立てて澱を沈めておくことも大切です。開栓したら、ボトルの口を清潔な布で拭きます。
次に、ボトル内に沈殿している澱を見やすいよう、ボトルの首のあたりに光が当たるように照明器具をセットして、傾けたボトルの口を、同じく傾けたデカンタの口の内側に近づけます。
あとは、ワインがデカンタの側面に沿って流れ落ちるようにしながら、一定の速度で静かに注ぐだけ。この動作をゆっくり行うことで、沈殿物がデカンタに移るのを防げるだけでなく、ワインがより空気に触れて、香りや味わいが開きやすくなる効果も期待できます。
デカンタージュしたワインの飲みごろは?
デカンタージュをしたワインはすぐには飲まず、しばらく休ませます。飲みごろについては、ワインの熟成具合や醸造過程、原料となるブドウの種類や産地などさまざまな要因が複雑に重なり合っているため、明確な答えを提示することはできません。ただ、一般的には、年代が新しいワインほど長め(2〜3時間程度)に、古いものほど短め(30分〜1時間程度)に置くのがよいといわれています。
ワインによって飲みごろは異なるので、デカンタージュしてから飲むまでの時間を少しずつ変え、味や香りの変化をたのしみながらベターなタイミングを探すのも一興。またグラスの形状や大きさ、注ぐ量によっても印象は変わってくるので、いろいろと試してみるとよいでしょう。
デカンタージュが必要なワインの条件
Alexandr Karpovich/ Shutterstock.com
デカンタージュが必要なワインとは
ワインはデカンタージュでおいしくなるといわれていますが、どんなワインでも効果が現れるわけではありません。
デカンタには、香りを開かせたり澱を取り除いたりする効果のほかに、酸味やタンニンをやわらげ、まろやかな味わいや華やかな香りを引き出す効果が認められています。
したがって、酸味やタンニンが強くなりがちな“閉じている”赤ワインや、澱が生じやすいヴィンテージの赤ワインに対しては、理想的な効果を発揮するといえるでしょう。
デカンタージュを試したいワイン
若い赤ワインや熟成した赤ワインのほかにも、デカンタージュに向いているワインのタイプがあります。たとえば、赤ワインのなかでも渋味が強いボルドータイプ(フランス・ボルドー地方、アメリカ、チリ、オーストラリア産のカベルネ・ソーヴィニヨン種の赤ワインなど)のワインは、デカンタージュすることで味がマイルドになり、香りも華やかに引き立つといわれています。
なお、デカンタージュには冷えすぎたワインの温度を自然に上昇させる効果も期待できますが、その際は、デカンタージュ向きのワインであることを確認してから行うようにしてください。デカンタージュに向かないワインの場合、酸化して味わいを損なうこともあります。
次に、デカンタージュが必要のないワインについて詳しく見ていきましょう。
デカンタージュが必要ないワインもある
stockcreations/ Shutterstock.com
白ワインやスパークリングワインはデカンタージュ不要!?
デカンタに移し替える際、覚えておかなくてはならないのは、デカンタージュに不向きなワインがあるということ。デカンタージュの効果が期待できないばかりか、味わいや香りを損ねてしまう可能性があるため、注意が必要です。
デカンタージュに向かないワインの代表格といえば、白ワインとスパークリングワインです。冷やして飲むタイプのワインなので温度を上昇させる必要がないうえ、タンニンもあまり含まれず、澱も発生しないからです。ワインのおいしさを引き出すはずのデカンタージュでも、これらのワインに用いるとせっかくの香りが飛んでしまうことも。
そのため基本的にはデカンタージュを行いませんが、一部のヴィンテージの白ワインやシャンパーニュなどコンディションによっては、例外的にデカンタージュを行う場合があるようです。
赤ワインにもデカンタージュに向かないものがある
赤ワインであっても、デカンタージュに不向きな種類があります。たとえば、ブルゴーニュタイプのワイン。なかでもピノ・ノワールなどは、繊細な味わいや香りが損なわれてしまう可能性があるため、デカンタージュはめったに行われません。
また、すでに香りが十分に開いている赤ワインや、熟成タイプの赤ワインでも澱が気にならない場合は、デカンタージュ不要です。開栓してそのままたのしみましょう。
デカンタは、目と鼻と舌で味わう、ワインならではのたのしみを広げてくれる魔法のアイテム。視界になじむスタイリッシュなそのフォルムは、デカンタージュの効果と合わせて食卓を優雅に彩ってくれることでしょう。自宅でワインをたのしむときに、ぜひ取り入れてみてください。
デキャンタ(デカンタ)の目的や効果は? デキャンタージュの秘密に迫る