WAKAZE三軒茶屋醸造所/アクセス抜群の都心の酒蔵は、直営バルでペアリングもたのしめる

WAKAZE三軒茶屋醸造所/アクセス抜群の都心の酒蔵は、直営バルでペアリングもたのしめる

日本酒の枠を超え、世界で浸透できる“SAKE”造りを目指している『WAKAZE』。現在はパリと東京という大都会で酒造りを行っています。2018年夏に開設した『三軒茶屋醸造所』は、4.5坪とコンパクトな酒蔵ですが、バルも併設。造りたてのSAKEと多国籍料理とのペアリングもたのしめます。

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パリと東京でSAKEを醸すWAKAZEとは?

2019年11月、パリ近郊フレンヌ市に立ち上げた醸造所。

2019年11月、パリ近郊フレンヌ市に立ち上げた醸造所。

三軒茶屋醸造所のレポートの前に、まずWAKAZE についてのご説明を。“日本酒を世界酒に”を掲げ、既存の枠組みにとらわれない酒造りに挑戦してきた日本酒ベンチャー企業で、その生い立ちや取り組みについては、以前このサイトでも大々的に取り上げさせていただきましたので、参照してください。
「日本酒を世界酒へ!」今秋、フランスに醸造所を設立、 〜WAKAZEのチャレンジ〜

ちなみにこの記事は2019年8月に公開したもの。その3カ月後にフランスのパリ近郊に念願の醸造所『KURA GRAND PARIS(クラ グラン パリ』をオープンさせています。
「米と水や酵母など100%フランス産の原材料で造った清酒を、2020年2月に現地で初リリースし、同年5月に日本でも販売を開始しました」と営業広報の関早希(せき・さき)さん。その様子も2020年6月に紹介しています。
フランス・パリ現地の素材にこだわった清酒 「C'est la vie」の一般販売を開始!

喜びの表情を見せる現地のスタッフたち。向かって左から2人目が杜氏の今井翔也(いまい・しょうや)さん、4人目が代表の稲川琢磨(いながわ・たくま)さん(撮影時のみマスクを外しています)。

喜びの表情を見せる現地のスタッフたち。向かって左から2人目が杜氏の今井翔也(いまい・しょうや)さん、4人目が代表の稲川琢磨(いながわ・たくま)さん(撮影時のみマスクを外しています)。

フランス南部のカマルグで栽培された米を使用。

フランス南部のカマルグで栽培された米を使用。

米麹につかう米ももちろんカマルグ産です。

米麹につかう米ももちろんカマルグ産です。

気になるフランスの清酒の試飲コメントは後ほど。それでは本題に入ることにしましょう。訪問した三軒茶屋醸造所は、フランスの醸造所ができた前年(2018年)の夏に開業しました。

需要と供給の調整から「清酒の製造免許」の新規取得が原則厳しいこともあり、同じお米の酒でありながら、より小スペースでも実現可能な「その他の醸造酒の製造免許」を取得。わずか4.5坪の醸造スペースでは、どぶろくなど清酒以外の酒を製造しています。

WAKAZEでは、こうした「その他の醸造酒」も含めてSAKEと表現しています。ちなみに創業時の杜氏は現在フランスで活躍中の今井翔也さん。ここからは今井さんの後を受け継いだ2代目杜氏・戸田京介(とだ・きょうすけ)さんを中心に、三軒茶屋醸造所とそのSAKE造りについて話を聞いていきます。

三軒茶屋の湧き水で仕込む“どぶろく”

今回取材させていただいたWAKAZEのみなさん。向かって左から三軒茶屋醸造所杜氏の戸田京介(とだ・きょうすけ)さん、営業広報の関早希さん、三軒茶屋醸造所併設バル・Whim SAKE & TAPAS(ウィム サケ&タパス)シェフの小林弘明(こばやし・ひろあき)さん(撮影時のみマスクを外しています)。

今回取材させていただいたWAKAZEのみなさん。向かって左から三軒茶屋醸造所杜氏の戸田京介(とだ・きょうすけ)さん、営業広報の関早希さん、三軒茶屋醸造所併設バル・Whim SAKE & TAPAS(ウィム サケ&タパス)シェフの小林弘明(こばやし・ひろあき)さん(撮影時のみマスクを外しています)。

まず気になるのが、なぜ都内も都内、住みたい街のアンケートでも必ず上位に挙がる三軒茶屋で酒蔵を立ち上げようとしたのか? です。

「そもそも当社は食文化や酒文化が発展していて、郷土色も豊かな地である山形県鶴岡市で創業しています。次に国内で拠点を持とうと考えたとき、東京都内で文化の発信地にふさわしい場所を探しました。その結果、人の流通が多く文化を根づかせる土壌があるとして、三軒茶屋に白羽の矢が立ったのです」と関さん。

「造りたてのどぶろくを、すぐに飲んでいただきたいとなるとこうした都心の立地になりますよね」と戸田さん。さらに「この醸造所は建材に極力ガラスを採用していて、酒蔵の内と外はもちろん、内部のバルの席から醸造の様子がしっかり見えるんですよ」。

確かに「三茶栄通り」をぶらりと歩いていてもこの建物は何か気になるし、バルで食事をしていたら醸造スペースに興味が湧かずにはいられません。そう狭小ながらも、革新的なSAKEの情報を発信するのにふさわしい立地と造りになっているのです。

スケルトンな店構えはスイーツショップやカフェのようですが、ガラス越しに見えるのは醸造設備。

スケルトンな店構えはスイーツショップやカフェのようですが、ガラス越しに見えるのは醸造設備。

でも軒先には、酒蔵の証しである杉玉がしっかりとぶら下がっています。

でも軒先には、酒蔵の証しである杉玉がしっかりとぶら下がっています。

先ほど戸田さんは、パリへ赴いた今井さんの後を継がれたと記しましたが、WAKAZEとはどのようなご縁があったのでしょう?
「そもそも日本酒が好きで、飲むのはもちろん醸造の勉強もしていました。大学在学中にこの醸造所が立ち上がるというニュースを見て興味を抱き、アルバイトとして勤めたんです。私がアルバイト第1号なんですよ」。

アルバイトを始めたのが2018年9月で、翌19年6月には大学を休学して、WAKAZEに入社。3カ月後には今井さんの渡仏にあわせて酒蔵業務を任されて、20年4月には2代目杜氏に就任というスピード出世ぶり。会社との相性が抜群によかったのでしょう。

4.5坪の醸造所はコンパクトながらも、温度管理に優れたサーマルタンクⓇ(200ℓサイズ)4本に圧搾機、分析用機器までも備えています。ふと気になったのは、そんなハイテクな什器の間に並んだいくつものプラスチック製タンク。中に入っているのは水のようです。

「三軒茶屋の湧き水ですよ」とほほ笑む戸田さん。
「硬度でいえば、やや軟水というところでしょうか。後味に清らかさを感じる水で、どぶろくの余韻がスッキリするような仕上がりになるんですよ」。

冷却中の酒瓶の奥には地元の湧き水を運んできたプラスチック製タンクが。

冷却中の酒瓶の奥には地元の湧き水を運んできたプラスチック製タンクが。

小さいながらも頭上には神棚。飾られているのは、もちろん“お酒の神様”松尾大社のお札です。

小さいながらも頭上には神棚。飾られているのは、もちろん“お酒の神様”松尾大社のお札です。

ここで造っているのは大きく「どぶろく」と「ボタニカルSAKE」の2種類。
どぶろくの魅力を尋ねると
「日本酒がよりピュアを目指す“引き算”の酒なら、濾過をせず酒粕などがそのまま入っているどぶろくは“足し算”の酒。甘味や酸味など複雑な味わいが持ち味なんです」。

聞き慣れないボタニカルSAKEとは、造り方はほぼ日本酒と同じですが、茶葉や柑橘類などのボタニカルを発酵中の醪に投入、新たな発酵過程を創り出すというもの。
「完成した酒に果実や果汁を添加するリキュールと違い、より複雑で調和された味と香りを引き出すことができるんですよ」。

取材時の三軒茶屋醸造所のラインナップ。向かって右から2番目のデフォルトのどぶろくほか、ボタニカルSAKE『FONIA』(左から3本)など、バリエーション豊か。

取材時の三軒茶屋醸造所のラインナップ。向かって右から2番目のデフォルトのどぶろくほか、ボタニカルSAKE『FONIA』(左から3本)など、バリエーション豊か。

ショップで販売している酒。三軒茶屋醸造所のSAKEのほか、フランスの清酒や山形で委託醸造している日本酒なども購入できます。

ショップで販売している酒。三軒茶屋醸造所のSAKEのほか、フランスの清酒や山形で委託醸造している日本酒なども購入できます。

多国籍料理とのペアリングをたのしめる併設バル

杉玉と対称な位置にはバルの看板。“whim”とは「ちょっとした思いつき」の意。

杉玉と対称な位置にはバルの看板。“whim”とは「ちょっとした思いつき」の意。

ここからは、WAKAZEの酒と料理とのペアリングを検証。舞台は醸造スペースを見ながら食事と酒がたのしめる併設バル『Whim SAKE & TAPAS(ウィム サケ&タパス)』です。

シェフの小林さんに料理のコンセプトをお聞きすると、
「酒が主体なので、酒を引き立てるような料理を心がけています。また酒粕や麹、甘酒などの酒の副産物もほぼすべてのメニューに取り入れているのが特徴ですね」。

バルで飲める酒は、三軒茶屋醸造所で醸しているどぶろくやSAKEはもちろん、パリ産や山形で委託醸造している清酒などバリエーションも豊か。組み合わせの自由度が大きいので、和洋中にエスニックなどジャンルを固定せず、多国籍な料理を供しています。

それでは、おすすめのペアリングを検証しましょう!

日が傾くと、一転して“バル”モードに変身します。

日が傾くと、一転して“バル”モードに変身します。

フランス生まれの清酒×クリームチーズ

『THE CLASSIC(ザ・クラシック)』(800円/100㎖)。

『THE CLASSIC(ザ・クラシック)』(800円/100㎖)。

まずはパリ醸造所発の清酒『THE CLASSIC』。精米歩合はなんと92%!かなりボディが太いのかなという先入観を覆す爽やかな果実感。焼酎に用いることが多い白麹由来のスッキリとした酸味もあり、どこか白ワインを感じさせます。

ワインの印象に合わせてのクリームチーズは鉄板の組み合わせ。酒粕味噌漬けでまろやかに仕上がっているため、酒のキレのある後味をより引き立てています。

『クリームチーズの酒粕味噌漬け』(500円)。

『クリームチーズの酒粕味噌漬け』(500円)。

どぶろく×グラタン

『三軒茶屋のどぶろく~生酛~』(850円/100㎖)。

『三軒茶屋のどぶろく~生酛~』(850円/100㎖)。

続いては三軒茶屋醸造所の看板のどぶろくですが、こちらは日本酒の伝統製法「生酛(きもと)造り」を取り入れたもの。口に含むとまず優しい甘さ、やがて複雑な酸味が現れてきます。生酛らしい乳酸のニュアンスのある濃醇な味わいも特徴的です。

牛すね肉のグラタンのベシャメルソースに用いた牛乳と甘酒が、生酛の乳酸に重なるのと同時に、
「グラタンもどぶろくも“とろっ”としたテクスチャーを持っているので、お口の中でもスムーズに溶け合うと思いますよ」。

『牛すね肉の甘酒グラタン』(850円)。

『牛すね肉の甘酒グラタン』(850円)。

ボタニカルSAKE×チョコスイーツ

『酒粕ガトーショコラ』(600円)と『FONIA tea ∼Whisky Black tea∼』(950円/100㎖)。

『酒粕ガトーショコラ』(600円)と『FONIA tea ∼Whisky Black tea∼』(950円/100㎖)。

最後はやはりボタニカルSAKEで。こちらは、ウィスキーの樽で熟成させた紅茶の茶葉を副原料に使用。バニラのような樽香と紅茶の穏やかな香りを楽しめます。

締めのスイーツのガトーショコラは酒粕入りでマイルドな口当たり。チョコレートの甘みと、SAKEの紅茶のまろやかな渋みが心地よいバランスです。さらに添えられたラズベリージャムをあわせるとフルーツティーのような深い香りと味わいの相乗効果を楽しむことができました。

インターナショナルで革新的な酒造りに取り組むWAKAZE。その東京・三軒茶屋の酒蔵で産する独創的なSAKEのレポートはいかがだったでしょうか? アクセスも便利なのでぜひ現地を訪れてできたてを飲み、SAKEに合わせるために考案された料理との絶妙なペアリングも体験してみてください。

※価格やメニューは取材時のもの。すべて税込み価格です。

WAKAZE三軒茶屋醸造所/Whim SAKE & TAPAS(ウィム サケ&タパス)
東京都世田谷区太子堂1-15-12
TEL/ 03-6336-1361(バル予約専用)
醸造所(ショップ)営業時間/月~金10:00~15:00 ※バル営業時間も営業中  定休日/土日
バ営業時間/金17:00~23:00(L.O. 22:00)、土15:00~23:00(L.O. 22:00)、日祝15:00~21:00(L.O. 20:30) 定休日/月火水木
アクセス/ 東急田園都市線三軒茶屋駅より徒歩4分ほか
※醸造所(ショップ)営業時間外でも、バル営業時間中にはお酒のボトル販売も可能です。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、営業日・時間などが変更になる可能性があります。お出かけの際は公式HPやSNS等のご確認をおすすめします。

WAKAZE三軒茶屋醸造所の詳細はこちら

ライタープロフィール

とがみ淳志

(一社)日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート/SAKE DIPLOMA。温泉ソムリエ。温泉観光実践士。日本旅のペンクラブ会員。日本旅行記者クラブ会員。国内外を旅して回る自称「酒仙ライター」。

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