格別な味わい“昼酒”のススメ 昼から飲める店〜秋葉原・御徒町編〜
お酒を愛する人にとって、晩酌の時間を待たずして昼間からお酒を嗜む“昼飲み”は最高のひと時。おいしい料理と選りすぐりのお酒が揃う飲食店は「夜間の営業のみ」が多いですが、昼間から贅沢に料理とお酒をたのしみたい人たちの期待に応えてくれる、知る人ぞ知る名店をご紹介します。今回は秋葉原・御徒町編。
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大人の“蕎麦屋呑み“を昼からたのしめる「和楽庵 はなれ」
JR御徒町駅から徒歩3分。「和楽庵 はなれ」は、毎朝打ちたての新鮮な蕎麦が味わえることで人気のお店。
充実した日本酒の品揃えのなかには入手困難といわれる人気銘柄も揃っていて、日本酒好きが足繁く通うことでも知られています。
昼の営業時間のメニューには、一品料理が充実。粋な大人の嗜みといわれる“蕎麦屋呑み”ができるお店です。
春日通りに面しているお店。
カウンター、テーブル席のほか、個室もある店内。
日本酒は約30銘柄を常備。
お酒のアテにぴったりな料理をお昼の営業からオーダーできます。
旬の魚介を毎日豊洲市場から仕入れていると聞き、まずは刺身の盛り合わせをオーダーしました。
お造り季節盛り 2,700円 (税別)
日本酒は三重県の「作(ZAKU)」。新酒のフレッシュさがお刺身に合いました。
作 純米大吟醸 1,180円(税別)
続いて、自家製さつま揚げ。外側のカリッとした香ばしさと、中のふわふわとした食感の絶妙さに感動しました。
鯛と鱈のすり身にメレンゲを加えた生地は、お店で毎日丁寧に練りあげているそうで、揚げたてのおいしさのとりこになった常連客が、必ず頼む人気のメニューとお聞きして納得です。
自家製さつま揚げ 860円(税別)
季節の野菜を味わえる天ぷらの盛り合わせは、菜の花、ふきのとう、うるい、行者にんにく、タラの芽、れんこん。
サクッと揚がった天ぷらに塩をつけて、山の息吹を感じる香りと味わいを堪能しました。
季節の野菜の天ぷら盛り合わせ 1,400円(税別)
福島県の「飛露喜(ひろき)」は貴重な初しぼりの生酒。旨味とキレが揚げ物ととてもよい相性。
飛露喜 特別純米かすみざけ 初しぼり生酒 1,100円(税別)
料理を作るのは店主の竹村航児さん。調理はお一人でされています。
ご両親が長野・山形の出身とあって、子供のころから蕎麦やうどんに馴染みが深く、日本の食材や調味料を使用した料理を志してこの世界へ。
日本酒には20歳のときに目覚めたそうです。
「もともとお米が好きだったので、日本酒は自然と口にするようになりました。飲んだ瞬間からおいしさが広がるのは、ほかのお酒にはない素晴らしい味わいだと思います。飲用温度の幅も広いですし、香りや余韻があるところも好きですね」。(竹村さん)
竹村さんが自らセレクトする日本酒。中にはかなりレアなお酒も。
メニューには2時間の飲み放題とセットになったコース料理もありますが、なんとお昼からのオーダーが可能だそう。
刺身や揚げ物、焼き物に手打ち蕎麦まで食べられて、日本酒をはじめビールや焼酎などが飲み放題なのは嬉しいですね。
「日本酒が好きな人に、気軽に立ち寄ってもらえるお店になりたいですね。季節によって食材が変わるので、その時の旬の味覚を味わってもらいたいです」。(竹村さん)
大人の“蕎麦屋呑み“を昼からたのしめる貴重なお店、日本酒ファンは要チェックです。
和楽庵 はなれ
東京都台東区東4-31-6 松田ビル1階
TEL 03-5688-3030
営業時間
月〜土 11:30〜14:30
16:00〜21:00(lo.20:30)
日・祝 定休
https://tabelog.com/tokyo/A1311/A131101/13223767/
本格的なフランス料理をカジュアルに「ワイン食堂パパン」
JR御徒町駅南口から徒歩4分。「御徒町ワイン食堂 パパン」は、昼の14時から休憩時間を挟まず、夜まで営業しているカジュアルフレンチのレストラン。
オープンキッチンの店内は活気があり、お店の皆さんが笑顔で気さくに対応してくれる、アットホームな雰囲気です。
パリのビストロのような外観。
キッチンに面したカウンター席と、テーブル席、BOX席があり、お一人から大人数まで対応可能です。
お昼は、泡・白・赤・生ビール・カクテルなどが税込500円で飲める「昼ベロドリンクメニュー」があり、さらにオススメは「パパンの昼ベロセット」。
前菜3品とお好きなドリンク1杯で税込1,000円と、一番の人気メニュー。早速こちらをお願いしました。
パパンの昼ベロセット 1,000円(税込)
バブリー ブリュット オーストラリア
前菜は左から、コールスロー、フィッシュケーキ、パテドカンパーニュ。
グラスワインはすべて1杯につき180ml。通常のレストランに比べて1.5倍ほど多い量なのは嬉しい限り。
お店では、神奈川と千葉の契約農家が無農薬栽培で育てた野菜を仕入れているので、野菜のメニューも多く、さらに昼の時間帯はピクルスが無料のサービスも。
新鮮な無農薬野菜が産地から直送されてきます。
テーブルに運ばれたピクルスは食べ放題。
続いて、お店の名物「アリゴ」。フランス・オーヴェルニュ地方の郷土料理で、マッシュポテトにグリュイエールチーズがたっぷり入った熱々のお料理。
常連のお客さんに人気のメニューで、ワインが止まらないおいしさです。
お店名物のアリゴ 680円(税別)
お一人の方にはハーフサイズも。
続いて、「ホタテのウニソース焼き」。バターをベースにウニのコクがしっかりと生きたソースに、プリプリのホタテが旨味たっぷり。
ソムリエの資格を持つ店長の岩坂清文さんに、ワインのペアリングをお願いしたところ、山梨県の古代甲州を合わせてくれました。魚介に負けないしっかりとしたコクを感じ、飲み応えが。
古代甲州 1,000円(税別)
ホタテのウニソース焼き 500円(税別)
黒板に書かれたメニューは、冷菜や温かいおつまみ、メイン料理やパスタ、デザートまでさまざま。
季節ごとに食材も変わり、何を食べてもおいしいと、飽きずに通い続ける常連のお客さんも多いそう。
ワインは世界各国140種類以上を揃え、グラスワインも常時15〜18種類たのしめるので、ワインバー として利用される方も。
時間を気にせずにゆっくりと食事をたのしめる雰囲気の店内。
「カジュアルながらもシェフが作る本格的な料理と選りすぐりのワインが味わえるお店なので、気軽に普段使いしてもらえる、お客さんにとって、家の近所に欲しくなるようなお店になりたいですね」。(岩坂さん)
休憩がなく夜までノンストップの営業には「慣れました(笑)」。
1日に2回来てくれるお客さんもいるので嬉しいです」と岩坂さん。
テイクアウトメニューも充実しているので、ワインが好きな方にぜひオススメしたいお店です。
御徒町ワイン食堂 パパン
東京都台東区上野3-18-2 フルカワビル1F
TEL 03-5826-4439
通常営業時間
14:00〜24:00
営業時間短縮要請期間中
11:30〜21:00(lo.20:00)
日・祝 営業
https://okachimachi-papan.gorp.jp
多くの文豪に親しまれ、明治時代から愛され続けるカクテルで人気の 浅草「神谷バー」
浅草駅を出てすぐ、雷門通り沿い、吾妻橋交差点角にある「神谷バー」は、知る人ぞ知る、日本で最初のバー。
明治13年に「みかはや銘酒店」として酒の一杯売りを始めたのが始まりで、その後店舗を西洋風にし「神谷バー」に屋号を変更。
140年にわたり、下町の社交場として愛され続けています。
2011年には登録有形文化財に登録された神谷ビル。
建物の1階にある「神谷バー」。
店内はビアホールのような雰囲気で、立ち飲みコーナーもあり、一人でも入りやすいお店。
下町の情緒を感じる店内。
オーダーは、入口で食券を買うシステム。戦後から続いているそうです。
入口で食券を購入してオーダーします。
神谷バーといえば、なんといっても「デンキブラン」。
浅草は文学との繋がりが深く、多くの文豪が神谷バーを訪れ、数々の小説に描かれてきましたが、明治15年に誕生したこのお酒は、文豪たちが愛飲したカクテルとして知られ、浅草を代表する銘酒。
電気が珍しかった当時、目新しいものを“電気◯◯◯”と呼び関心を集めていたそうで、ベースとなるブランデーの“ブラン”が命名の由来だそう。
デンキブラン 300円(税込)
ブランデーのほか、ジンやワイン、キュラソー、薬草などがブレンドされていますが、配合や比率は秘伝。当時、アルコールは45度だったそうですが、現在は30度。
口に含むと、フルーティーな香りと甘みがやさしく広がり、最後にキリッとしたドライさを感じます。アルコール度数の高さが気にならない飲みやすさです。
ふと見ると、“生ビールとデンキブラン、相思相愛“と書かれたポップが。
生ビールをチェイサーにデンキブランを飲むのが神谷バーの伝統的な飲み方だそう。
常連のお客さんのほとんどはセットでオーダーするそう。
デンキブランと味わうビールはとても爽やかでグイグイ進みます。
お互いにないものを補い合うようなベストな組み合わせ。
2階には「レストランカミヤ」、3階は「割烹神谷」があり、神谷バーの食事メニューはかなり充実しています。
なかでも人気なのは、「煮込」と「かにコロッケ」。
煮込 600円(税込)
白味噌をベースに、やわらかく煮込まれた牛モツ。
かにコロッケ 800円(税込)
ズワイガニの身とホワイトソースがたっぷりで絶品のコロッケ。
社長の神谷直彌さんにお話を伺うと、平日の昼間も神谷バーを訪れるお客さんは多く、とくに年配の男性がよく来られていて、長く通われている方も多くいらっしゃるそうです。
また、一人で来られて食事と一緒にたのしむ方も見かけるとのこと。
コロナ禍で外国人観光客は激減しましたが、以前は欧米の観光客もよく来店されていたそう。
「浅草は東京のなかでもかなり特殊な街ですので、東京に住んでいる人にこそ、ぜひ足を運んでもらいたいですね。今まで知らなかった、“東京の意外な一面”を発見できると思います」。(神谷社長)
5代目の神谷社長。大手ビールメーカー勤務を経て家業を継がれました。
「デンキブランはかつて、祖父の代まで経営していた「神谷酒造」で製造していましたが、今は外部に委託醸造をしています。レシピは私も知らず、秘伝中の秘伝です」。(神谷社長)
下町の風情あふれる浅草の老舗バーで、140年愛され続ける銘酒を昼下がりにゆっくりと味わってみてはいかがでしょうか。
神谷バー
東京都台東区浅草1丁目1番1号
TEL 03-3841-5400
営業時間 11:00〜22:00
(営業時間自粛要請期間中は21:00まで)
火曜定休
http://www.kamiya-bar.com
※お出かけの際は、各店舗のホームページ等で営業時間をご確認ください。
ライタープロフィール
阿部ちあき
全日本ソムリエ連盟認定 ワインコーディネーター