東京・銀座『銀座君嶋屋』&『ワインショップ・エノテカ GINZA SIX店』/酒屋併設バーを“はしご
リカ―ショップのテイスティングバーは、いわば酒屋の角打ち的存在。でも、ちょっとオシャレで、販売原価に近い価格で飲めるのも魅力です。ワインや日本酒を求めて試飲するのはもちろん、飲み会前に0次会的に利用することも! そんな使い勝手のよいテイスティングバーを東京・銀座で2軒はしごしてきました。
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『銀座君嶋屋』/美酒をサクっと、立ち飲みで
2013年オープンですが、銀座らしい風格を感じさせる看板。
1軒目に伺ったのは『銀座君嶋屋』。銀座1丁目にあって、JRなら有楽町駅か東京駅、地下鉄ならずばり銀座一丁目駅(有楽町線)が最寄りです。決して大きな店ではありませんが、首都高速道路の高架下を目指せば迷うことはありません。
東京駅方面から歩くとこんな感じ。茨城、高知、沖縄などのアンテナショップが密集したエリアです。
酒に興味のある方なら、“君嶋屋”の名前をご存じの方も多いでしょう。横浜・吉野町にある『横浜君嶋屋』が本店で、こちらの創業は明治25(1892)年。130年近くにわたって、目利きした日本酒・焼酎・ワインで飲食店や愛好家に支持されてきた老舗なのです。
ウインドウには銘酒がずらり。酒好きは絶対素通りできないはず。
向かって右手の入口をくぐると、手前側に日本酒や焼酎が並び、奥の方にワインセラーが設けられていました。その間に広がるのが今回お目当てのテイスティングバーで、スタンディングスタイル。お酒の小売りのレジを兼ねたカウンターで注文して支払いを済ませて、好きな場所で飲むというシステムです。
立ち飲みという形式からも、完全な角打ちスタイル。ちなみに酒販店のイメージが強い『横浜君嶋屋』ですが、じつは創業当時は横浜港や近隣で働く男衆が集まる「角打ち」をおもな商いとしていたとか。でも銀座店のバーは、カジュアルだけどスタイリッシュ。案内していただいた副店長の長曽我部尚利(ちょうそかべ・たかとし)さんの「女性おひとりのお客様も多いんです」の言葉に納得です。
右手に酒を出すカウンター。奥のガラス張りのあたりがバーコーナーですが、手前や片隅にも小さなテーブルがあり、外から見られずに利き酒できます。
40種類以上のアルコールがオンリスト
左にあるワインやビールが1枚の画像に収まらないほど、多種多彩なリスト。
予習した店のサイトには「スタンディングバーでは日本酒10種類以上をおたのしみいただけます。」と記されていたのですが、さてオーダーしようと黒板を見ると絶句! この日はざっと数えたところで、日本酒20、焼酎6、果実酒4、ワイン7、ビールとウイスキーなどで12――合わせて約50種類となります。
「さらに週末はスペシャルなものが。年末年始やゴールデンウイークあたりには、『十四代』などの超レアものも出る時があるんですよ」と、とても嬉しそうに長曽我部さん。このリーズナブルな有料試飲は、「気に入ったら、ぜひお買い上げいただきたい」というのが、おそらく店の本音でしょう。でも目をキラキラさせながら「次は何を飲んだらよい」と飲むことに没頭してアドバイスを求めてくるお客さんを、スタッフが熱烈歓迎している雰囲気が伝わってきます。
こちらが上の画像に収まらなかったワインリスト。
さて、システムを理解してリストも確認したので、最初の1杯。『君嶋屋』が直輸入しているピノ・ノワール100%、いわゆる“ブラン・ド・ノワール”のシャンパーニュ(1000円)をいただきました。黒ブドウ品種のみで醸したシャンパーニュですが、コクというよりキレのあるタイプで乾杯にぴったり。
サーブしてくれたのは、長曽我部さん。隣のテープを貼ったグラスは目盛替わりだそう。
高貴な泡で喉が落ち着いたら、フードをチェック。ちょっとつまむのに適したメニューが数種類。スタンディングらしいリーズナブルな価格が嬉しいですね。いちばん人気を尋ねたら、
「どのお酒にも合わせやすいので、『チーズのみそ漬け』です」
ということで、迷わずオーダーです。
種類は多くないけれど、味わいの網羅性が高いフードメニュー。
ほんのりと味噌の香り。ちょうどよいポーションで300円。
続いては、やっぱり日本酒でしょう。20種類から何を選べばよいか迷ったのですが、長曽我部さんのおすすめで、『君嶋屋情熱シリーズ飲み比べ』に。岩手と神奈川、三重の地酒を3種合わせて650円で飲めてしまうというコスパのよさに感激です。
テイスティンググラスで3種。
グラスごとに丁寧な説明付き。
酒には欠かせない“和らぎ水”もいただけます。
右から「純米吟醸・五百万石」「特別純米・山田錦」「特別純米・美山錦」。精米歩合の違いや早生(わせ/五百万石・美山錦)と晩生(おくて/山田錦)を比較することができる組み合わせでした。
ちなみに秋の日本酒資格の試験シーズンになると、対策用のセットも登場。ちなみに筆者は一昨年の『SAKE DIPLOMA』挑戦の際に何度かお世話になりました。結果はもちろん合格です(笑)。
入って12~13名が限度の店内。さっと飲んで後から来た方に場所を譲るのが、クールな酒飲みの振る舞いです。ごちそうさまでした!
1時間以内で粋に切り上げましょう。
銀座君嶋屋
東京都中央区銀座1-2-1 紺屋ビル1F
TEL/03- 5159-6880
アクセス/東京メトロ「銀座一丁目」3番口から徒歩1分。
営業時間/10:30~20:00(月~土)、~19:00(日祝)
※テイスティングバーのラストオーダーは閉店30分前。
定休日/年始のみ
※新型コロナウイルス対策として、「席数を制限して営業中ですが、みなさまのご来店を心からお待ちしております」(長曽我部さん)。
※価格は取材時のもの(税込み)。
銀座君嶋屋の詳細はこちら
『ワインショップ・エノテカ GINZA SIX店』/優雅な時間が流れる
全国展開している『ワインショップ・エノテカ』の中でも、屈指の広さ。
銀座界隈を散策して、日本酒の酔いが落ち着いたら2軒目へ。目指すショップは、銀座6丁目。メインストリートである中央通り沿いにあります。
信号機のバックにある建物に入っています。
その建物とはずばり、3年前『松坂屋銀座店』の跡地に誕生した『GINZA SIX』。
訪れたのは、銀座エリア最大クラスの複合商業施設『GINZA SIX』の地下2階にある『ワインショップ・エノテカ GINZA SIX店』。ワイン好きに広く知られる『エノテカ』は、全国に数多くの店舗を有していますが、
「当店はいちばんの売り場面積。国内最大級の1600種類以上のワインを品揃え。限定蔵出しワインや、稀少ワイン、ビッグボトルのワインなどを扱っています」とスタッフの久田智志(ひさだ・さとし)さん。
バーに伺う前に売り場を案内していただきましたが、驚いたのがロゼワインの充実ぶりです。 “銀座でROSE(ロゼ)”を掲げ、ロゼワインの啓蒙に努めているとのこと。「銀ロゼ100」という文字が書かれた立て看板に目が留まりました。
こうして集めると、ピンクの色合いも濃淡さまざまなことがわかります。
ロゼコーナーの脇には、上品な桃色ベースの看板が。
「価格帯もお求めやすい1000円台から。地域のバリエーションも多彩で、常時100アイテムほど揃えるようにしているんですよ」
なるほど、それで“100”なんですね。
おすすめのスペイン・ロゼを手に久田智志さん。この笑顔はつい買ってしまいます!
アートを感じつつワインをたのしめるバー
エントランスでは、メドック格付け第1級がお出迎え。
お目当てのバーへ移動。ゴールドとブラックを基調にしたエレガントな空間に、心地よい緊張感があります。入口にディスプレイされているのは、メドック格付け第1級『シャトー・ムートン・ロスチャイルド』の歴代のボトルで、すべて6リットルの“アンぺリアル”。ちなみに同じサイズのボトルはシャンパーニュ地方では、“マチュザレム”と呼ばれています。
中はまさにムートン・ギャラリー。毎年著名アーティストが描くアートラベルや、バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドファミリーについての展示も。
バーは20席のほか、樽を利用したスタンディングスペースもあり、さまざまなシチュエーションで、ワインと向き合うことができます。取材時はふたりでチーズをつまみながらグラスを傾けるご夫婦、赤と白のグラスを並べながら日記をしたためているご老人…優雅なサロンのごとく、ゆったりとした時間が流れていました。
ラグジュアリーな空間。奥にはボックス席もあります。
「ワインはグラス550円~2200円で、常時15~16種類。約2週間ごとに入れ替えています。加えてその日のスペシャルも。ほかにビールやカクテル、ソフトドリンクもあるので、ワインやアルコールが苦手な方でもたのしんでいただけます」と久田さん。すべてカウンターで注文します。
取材時のラインアップ。価格の幅があるので、さっと飲みたい時、じっくり味わいたい時、どちらもOK。
この日のスペシャル。こちらはじっくりと味わいたいですね。
そろそろ喉が渇いてきたので、1杯目をオーダー。やっぱり泡です。この日のスパークリングリストから選んだのは、『エノテカ』と『札幌市円山動物園』という異色のコラボで生まれた、『シロクマ・ブリュット・マルヤマ・ズー』。瓶内二次発酵のカヴァですが、550円とリーズナブル。
ボトルはキュートですが、味わいはかなりドライ。『グリーンオリーブ』は550円。
喉が潤ったら、推しのロゼをチョイス。オンリストされていたアルゼンチンのマルベック種(550円)。マルベック種の赤ワインは重厚なタイプが多いので、色も味もしっかりと予想しましたが、チャーミングな桜色で、あと口にはほんのりとした甘さも。よい意味で裏切られました。
おつまみには「その日に使う分だけ切るんです」という、イタリア・パルマ産の『プロシュート』(660円)をいただきました。このほかにもとてもフードメニューが充実しています。
スタンディングコーナーに移動してみました。
最後はイタリアのネッビオーロ種100%のバルバレスコ(1650円)を。プロシュートが残ったからと言い訳して、奮発してしまいました。どこまでもなめらかでエレガント。余韻の長さをしっかりとたのしむことができて満足です。
ちなみにこのバーにはお得な利用法が。店舗で購入したワインは、1100円の抜栓料のみで持ち込めます。これだけでもリーズナブルなのに平日の19時までなら、その抜栓料もなんとタダに。0次会などにぜひ活用したいですね。
本日の締めは、“イタリアワインの女王”と称されるバルバレスコで。
ワインショップ・エノテカ GINZA SIX店
東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX B2F
TEL/03-6263-9802
アクセス/東京メトロ「銀座駅」A3出口から徒歩2分。
営業時間/10:30~20:30 (LO.フード19:30、ドリンク20:00)
※新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた緊急対応策として、当面の間、営業時間を変更。
定休日/不定
※営業時間・価格は取材時のもの(税込み)。
ワインショップ・エノテカ GINZA SIX店の詳細はこちら
陽光が差す開放的な『銀座君嶋屋』と、美術館でグラスを傾けているような『ワインショップ・エノテカ GINZA SIX店』。対照的なはしご酒をたのしむことができました。共通しているのは、とてもリーズナブルなところ。カフェの値段がお高めの銀座で、ひと休みできる穴場としてもチェックしておきたいですね。