焼酎を製造法で分類すると? 「醪(もろみ)取り焼酎」と「粕(かす)取り焼酎」の違いとは?
焼酎は製造法によって、大きく単式蒸溜による「乙類焼酎」と連続式蒸溜による「甲類焼酎」に分類されますが、ほかにも製造法による分類があります。それが「醪(もろみ)取り焼酎」と「粕(かす)取り焼酎」です。 ここでは、両者の製造法や原料の違いなどを紹介します。
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焼酎の製造法と、その分類を知ろう!
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焼酎の製造法といえば「単式蒸溜」と「連続式蒸溜」
焼酎の製造法による分類として、まず思い浮かぶのが「単式蒸溜」と「連続式蒸溜」ではないでしょうか。
単式蒸溜は、古くから行われてきた焼酎の製造法です。一度の原料投入につき、一度だけ蒸溜を行うもので、この製造法で造られる焼酎を「単式蒸溜焼酎」もしくは「乙類焼酎(本格焼酎)」と呼びます。
一方、連続式焼酎は明治の終わりに海外から導入された製造法で、原料を連続的に投入しながら蒸溜します。この製造法で造られる焼酎を「連続式蒸溜焼酎」もしくは「甲類焼酎」と呼びます。
焼酎の製造法によるその他の分類
焼酎の製造法は、単式蒸溜と連続式蒸溜だけではありません。単式蒸溜のなかにも、一般的な「常圧蒸溜」と、蒸溜器内の気圧を下げて蒸溜する「減圧蒸溜」の2種類があります。
なお、「本格焼酎」は単式蒸溜焼酎(乙類焼酎)のうち、規定された原料を使用し、水以外の添加物を一切使用せずに造られた焼酎を指します。
ここまでは比較的知られていることでしょうが、ほかにも製造法による分類があります。それが「醪取り焼酎」と「粕取り焼酎」です。
焼酎の製造法による分類(1):「醪(もろみ)取り焼酎」とは?
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現在、ほとんどの焼酎が造られる製造法
焼酎は製造法によって「醪取り焼酎」と「粕取り焼酎」に分類されると説明しましたが、現在、国内で造られている焼酎のほとんどが「醪取り焼酎」です。
「醪取り焼酎」とは、その名のとおり、穀物を原料とする醪を蒸溜して造られる焼酎のこと。芋焼酎や米焼酎、麦焼酎など、醪を経て造られる焼酎は、すべて「醪取り焼酎」となります。
「醪取り焼酎」の製造法を知ろう
「醪取り焼酎」の製造法は、一般的に「焼酎の製造法」として知られているものです。
まずは麹と水、酵母を混ぜて発酵させ、一次醪を造ります。そこに主原料となる穀物(芋、米、麦など)を加えて混ぜ、時間をかけて発酵させることで二次醪が造られます。
二度にわたる発酵で得られた芳醇な醪を蒸溜し、アルコール分を抽出することで、「醪取り焼酎」が生まれるのです。
焼酎の製造法による分類(2):「粕(かす)取り焼酎」とは?
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「粕取り焼酎」と「醪取り焼酎」の違い
粕取り焼酎とは「酒粕(さけかす)焼酎」とも呼ばれるように、日本酒の製造工程で生まれる副産物、酒粕を原料とした焼酎です。「それでは芋焼酎や麦焼酎、米焼酎などと同じく、原料による分類では?」と思われるかもしれませんが、「粕取り焼酎」は原料だけでなく、製造法も異なります。
「粕取り焼酎」は、原料となる酒粕に通気性をよくするためのもみ殻を混ぜ、蒸籠(せいろ)で蒸溜して造られます。酒粕にはアルコール分が8%ほど残っていて、これを蒸溜によって抽出するわけです。
「醪取り焼酎」のように原料を発酵させて醪を造ってから蒸溜するのではなく、「粕取り焼酎」は原料そのものを蒸溜します。そこが製造法の違いです。
粕取り焼酎のもうひとつの製造法
先に説明した「粕取り焼酎」の製造法は、昔から伝統的に行われてきたもので「正調(せいちょう)粕取り焼酎」と呼ばれます。
これに対し、近年になって開発された新たな製造法が「吟醸(ぎんじょう)粕取り焼酎」です。これは、酒粕に水と酵母を加えて再発酵させ、醪を造ってから蒸溜するもので、「粕醪(かすもろみ)取り焼酎」とも呼ばれます。
酒粕を原料とするのは同じでも、醪から蒸溜するため、製造法の分類でいえば「醪取り焼酎」の一種といえるでしょう。
「粕取り焼酎」は、米から作られる酒粕を原料とし、蒸溜後の酒粕を米作りの肥料として活用するなど、古くから稲作と強く結びつき、広範囲で造られてきました。近年では「醪取り焼酎」が主流ですが、その製造法の違いを語りつつ、両者を飲み比べてみるのも一興では?