日本酒文化の魅力!起源から世界への広がりまで解説
日本酒の起源や歴史、日本文化との関わり、そして世界での人気について詳しくご紹介します。米作りや酒蔵の歴史を学び、外国人に伝える際のポイントも解説します。
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日本酒の起源と日本酒文化
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日本酒の起源は稲作の伝来まで遡る
日本酒造りの起源については諸説あり、今から約2000年前の弥生時代の初めに伝来した稲作とともに始まったといわれる説や、約3000年前の縄文時代の終わりに始まったとする説などがあります。
なお、稲作が伝来する前の日本では、別の酒が飲まれていたようです。縄文時代の土器からヤマブドウの種が発見されていて、古代日本では果物や木の実を原料とした酒が造られていたと考えられています。
日本酒や酒造りに関する、現存する記録
酒造りに関する古い記録としては、3世紀ごろに書かれた「魏志倭人伝(ぎしわじんでん)」に、お葬式で弔問客が歌や舞とともに酒を飲む風習があったことが記されています。ただし、この酒の原料や種類については記載がなく詳細は不明です。
時代が下り、奈良時代に編纂された書物には日本酒に関する記述が多く登場します。現存する日本最古の歴史書といわれる「古事記(こじき)」(712年)には、大和時代の初期に百済(くだら)からの渡来人である「須須許理(すすこり)」が麹を使った酒造りを伝えたことが記されています。
また、「大隅国風土記(おおすみこくふどき)」(713年以降)には、「口噛みノ酒(くちかみのさけ)」について記載されています。これは巫女が口のなかで噛んだ米を吐き出し、唾液の作用で発酵させる酒だったのだとか。
それから、「播磨(はりま)風土記」(716年)では、雨に濡れてカビが生えた干し米を用いて酒を造ったという話が伝えられています。
※稲作の伝来や日本酒の起源については諸説あります。
日本酒は日本の文化や行事に欠かせない
日本酒は神話にも多く登場し、神様に捧げる特別な供物として古くから神事に用いられてきました。現在でも、お正月などに神社で「御神酒(おみき)」が振る舞われるなど、神事において大切な役割を果たしています。
お正月や祝賀会で酒樽の蓋を割る「鏡開き」や、神前式の結婚式で新郎新婦が盃を交わす「三々九度」といった儀式でも、日本酒は欠かせません。
また、神事に限らず花見や月見などで四季をたのしんだり、歓迎会や忘年会で親交を深めたりする際にも、日本酒は多くの人に好んで飲まれています。
日本酒文化を支える米作り
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日本酒造りは米作りや技術の発展とともに進化
稲作と同時に伝えられ、豊穣祈願などのために神に捧げられてきた酒は、稲作の定着や醸造技術の発展などとともに日本独自の進化を遂げていきます。順を追って見ていきましょう。
◇飛鳥時代
飛鳥時代末には大宝律令(701年)により「造酒司(さけのつかさ/みきのつかさ)」という役所が設けられ、朝廷による本格的な酒の製造が始まりました。
◇平安時代・鎌倉時代
庶民も日本酒を口にするようになります。鎌倉時代になると商人が酒造りを手掛け、酒は米と同等の経済価値を持つものとして流通するようになりました。
◇室町時代・安土桃山時代
酒造技術が大きく進化し、安土桃山時代には日本独自の清酒製造技術である「三段仕込み」などが生み出されました。「三段仕込み」とは、三段階に分けて仕込む手法です。
◇江戸時代
江戸時代になると、精米技術が進化。それまでの木臼に代わる石臼の導入や中国製の碓(からうす)の輸入、水車精米の登場など、精米技術の発展が日本酒の品質向上を大きくあと押ししました。
このように、酒造りは米作りとともに各地に広がり、醸造技術や精米技術の発展により次第に現在に伝わる姿へと進化していきました。米作りと神々への信仰とともに生まれ、時代の流れのなかで進化してきた日本酒は、日本人にとって特別なお酒であるといえるでしょう。
日本酒文化を支える米処
日本酒は全国各地で造られていますが、とくに質の高い米と日本酒を多く生み出し、日本酒文化を支える、米処であり酒処として全国に知られる地域がいくつかあります。ここでは上位3府県の特徴を紹介しましょう。
【兵庫】
兵庫県南部はかつて播磨国(はりまのくに)と呼ばれ、「播磨国風土記」に登場するなど古くから酒造りが行われていた地域です。室町時代には日本有数の酒処である灘五郷(なだごごう)が栄え、戦国時代末期には伊丹で質の高い清酒の製造技術が誕生しました。
兵庫県で製造される銘柄としては、灘で造られる「白鶴(はくつる)」「大関(おおぜき)」「剣菱(けんびし)」「菊正宗(きくまさむね)」などが有名です。日本酒生産量は日本一を誇ります。
【京都】
京都にも多くの蔵元があり、日本酒の生産量は兵庫に次いで全国2位となっています。とくに有名な地域である伏見では、弥生時代から米を用いた酒造りが行われていたといわれています。
有名な銘柄としては、伏見で造られる「月桂冠(げっけいかん)」「松竹梅(しょうちくばい)」「黄桜(きざくら)」などが挙げられます。
【新潟】
兵庫、京都に次いで全国3位の日本酒生産量を誇るのが、米処として有名な新潟です。新潟には90近い蔵元があり、蔵元数は全国1位となっています。
新潟で主流なのは、地元生まれの酒造好適米「五百万石(ごひゃくまんごく)」を用いた淡麗辛口の日本酒ですが、近年ではそれに限らず多様な味わいの日本酒が生み出されています。
参考:国税庁「清酒製造業の概況(平成30年度調査分)」
世界に広がる日本酒文化
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海外で日本酒人気が高まっている
近年、海外でも日本酒の人気が高まっています。日本酒造組合中央会の発表によると、2019年度の清酒輸出総額は約234億円となっていて、10年連続で過去最高を更新しています。
輸出国1位のアメリカ、2位の中国のほか、ドイツやイギリス、ブラジルなどへも輸出が増加し、日本酒の認知度が高まっていることが窺えます。
海外の人々が日本酒や日本文化に親しむ機会は、今後ますます増えていくと考えられます。
日本酒文化を外国の人に紹介するときは
海外出身の友人など、外国の人に日本酒文化を紹介することがあるかもしれません。日本酒にあまり馴染みがない海外の人に日本酒をすすめる際には、どのようなことを心掛ければよいのでしょうか。ポイントを2つ紹介します。
【出身国で飲まれるお酒や好みのお酒を考慮する】
一言で日本酒といっても、味わいはさまざまです。好みは人によって分かれるところですが、口当たりのさわやかなビールを好んで飲んでいる人には軽い口当たりの日本酒、フルボディのワインを好む人にはコクのある日本酒など、出身国で飲まれているお酒や日ごろ親しんでいるお酒を踏まえておすすめするとよいでしょう。
【食文化と併せて紹介する】
日本酒は日本の食文化と密接な関係にあり、和食との相性は抜群です。日本酒を和食と併せて紹介することで、海外の人により喜んでもらえることでしょう。また、近年はフレンチなど外国の料理と日本酒の相性のよさも注目されているため、和食以外との組み合わせをおすすめしてもよいかもしれません。
稲作とともに始まり、長い年月をかけて進化してきた日本酒は、日本文化において重要な役割を果たしています。また、海外への輸出量が増加するなか、日本酒や日本酒をめぐる文化に対する世界の関心はますます高まっていくと考えられます。海外出身の友人に日本酒文化の魅力を伝えられたら素敵ですね。