日本酒の造り方は複雑? 工程をわかりやすく解説します

日本酒の造り方は複雑? 工程をわかりやすく解説します
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日本酒の造り方に関する格言に、「一麹(いちこうじ)、二酛(にもと)、三造り(さんつくり)」というものがあります。これは、酒造りのポイントを示す言葉で、多くの蔵元で信条とされています。今回は、格言にも登場するような日本酒造りの工程をわかりやすく紹介します。

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日本酒の造り方・工程1:原料処理から酒母造り

日本酒の造り方・工程1:原料処理から酒母造り

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精米/洗米・浸漬(しんせき)/蒸米(むしまい)・放冷

日本酒造りは、原料処理からスタートします。原料処理には以下のようなプロセスがあります。

【精米】

玄米の外側部分に含まれるタンパク質や無機質などは、日本酒造りにおいて雑味を生み出す原因となります。そのため、始めに原料となる米から不要な部分を削り取る「精米」を行います。精米歩合(精米して残った米の割合)は酒の種類によって異なり、めざす酒に合わせて米を削っていきます。なお、精米後の米は熱を帯びているため、2~3週間冷暗所で保管して安定させる「枯らし」の工程が必要です。

【洗米・浸漬】

精米後は「洗米」を行い、米の糠(ぬか)や米くずを洗い流します。その後、米を水に浸して水分を吸収させる「浸漬」を行います。「浸漬」で適切な水分を吸収させられるかどうかが日本酒の品質を左右するといわれるほど、大切な工程です。

【蒸米・放冷】

米に水分を吸収させたら、「甑(こしき)」と呼ばれる大きなせいろや蒸米機を用いて米を蒸します。この「蒸米」によって米を殺菌するとともに、酵母の糖化作用を受けやすくすることができます。「蒸米」のあとには「放冷」の工程があり、蒸した米を麹(こうじ)用、酒母用、掛米用(醪造り用)の3つの用途に分け、それぞれの適温まで冷まします。

麹(こうじ)造り

原料処理が完了したら、日本酒造りの鍵となる「麹造り」に進みます。麹造りは、「製麹(せいきく)」とも呼ばれます。

麹造りの工程では、麹室(こうじむろ)という作業部屋で蒸米に麹菌の胞子を接種し、麹菌を繁殖させる作業を行います。格言の「一麹、二酛、三造り」にもあるように、麹は日本酒の味に大きな影響を与える大事な原料です。そのため、自家製の麹を造る蔵では、杜氏や蔵人が細心の注意を払って慎重な作業が進められています。

日本酒造りでもっとも重要な工程に位置づけられているのが、この麹造りなのです。

酒母(しゅぼ)造り

「酒母」とは、ブドウ糖からアルコールを作り出す酵母を大量に増殖させたもので、日本酒造りでは2番目に大事なものとされています。

酒母は、一般的に麹と水に酵母、乳酸菌、蒸米を加え、2週間~1か月程度で造られます。この工程において、醸造用の液体乳酸を添加して造られた酒母を「速醸(そくじょう)系酒母」、液体乳酸を添加せず蔵内に棲みつく乳酸菌を取り込ませて造られた酒母を「生酛系酒母」といいます。

なお、後者は一から乳酸菌を培養するため手間暇がかかりますが、この製法(生酛造り)で造られた日本酒には、深いコクが生まれるといわれています。


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日本酒の造り方・工程2:醪造りから上槽を経てろ過へ

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醪(もろみ)造り・仕込み

酒母造りを終えたあと、酒母と麹、蒸米、水をタンクに入れ、3週間~1か月ほどかけて発酵させていきます。発酵させたものを「醪」と呼び、この工程を「醪造り」といいます。

醪造りにあたっては、酒母のなかに麹、蒸米、水を3回に分けて投入し、発酵を進めていきます。3回に分ける理由は、タンクのなかでほかの微生物が繁殖して酵母の働きを妨げることを防ぐためで、この方法を「三段仕込み」といいます。

三段仕込みは一般的に4日間かけて行われ、1日目を初添(はつぞえ)、2日目を踊り、3日目を仲添(なかぞえ)、4日目を留添(とめぞえ)という流れで進められます。

なお、必ずしも三段階で行われるわけではなく、蔵によっては「四段仕込み」や「五段仕込み」などが採られている場合もあります。


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上槽(じょうそう)

できあがった醪を搾って酒粕と日本酒に分けることを「上槽」といいます。自動圧搾機を用いて一気に搾る方法のほか、袋に入れた醪を「槽(ふね)」と呼ばれる容器に入れて圧力をかけて搾る「槽しぼり」や、袋に入れた醪を吊して、自然に滴り落ちる酒を集める「袋吊り(雫しぼり)」のような伝統的な手法もあります。

「上槽」後の酒にはタンパク質などの固形物が浮いているため、タンクのなかでしばらく放置し、これらを沈殿させる「澱(おり)引き」を行います。

ろ過

酒のなかの細かい澱を完全に取り除くため、「ろ過」を行います。ろ過の工程では、ろ過機を使用するほか、活性炭素を使用することもあります。ろ過には、澱を取り除くだけでなく、液体についている色を抜いたり、異臭を取り除いたりする効果もあります。

なお、ろ過は必ずしも行われるわけではなく、ろ過を行っていない「無ろ過」の状態の日本酒も販売されています。無ろ過の日本酒には多少のにごりがありますが、お酒本来の旨味やコクが感じられるという魅力があります。


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日本酒の造り方・工程3:火入れから瓶詰め、完成へ

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火入れ

「火入れ」の工程では、ろ過した酒を約65度まで加熱します。火入れを行うことで、酒内の酵母の働きを止めて品質を安定させるとともに、製造工程で繁殖した火落ち菌などを死滅させて腐敗を防ぐことができます。

一般的な日本酒では、通常、ろ過をしたあとと瓶詰め前の2回のタイミングで火入れが行われますが、以下のように、火入れを行わないものや1回火入れの日本酒もあります。

◇生酒(なまざけ)
火入れを一度も行わずに出荷されるお酒
◇生貯蔵酒(なまちょぞうしゅ)
ろ過後の火入れを省き、瓶詰め前に1回火入れを行うお酒
◇生詰酒(なまづめしゅ)
ろ過後に1回火入れを行い、瓶詰め前の火入れを省いたお酒

このような生酒系のお酒は、火入れをしていない分、変質しやすいというデメリットがありますが、独自のフレッシュな味わいをたのしむことができます。


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「生酒」の魅力は、火入れをしないことによるフレッシュな味わい

貯蔵/調合/割水(割り水)/瓶詰め

火入れされた日本酒はタンクのなかで「貯蔵」されます。適切な温度管理のもと、適切な期間貯蔵することで、熟成が進みまろやかな味わいの酒質になります。

多くの場合、タンクに貯蔵された日本酒は、出荷前に「調合」されます。調合とは、タンクごとの香りや風味の違いをなくし、品質を一定にするために、職人がテイスティングをしながら調整することを指します。

調合によって酒質が整えられたあとは、「割水」が行われます。割水とは、アルコール度数を調整するために、日本酒に仕込み水を加える作業のこと。なお、割水を行わずに出荷される日本酒を「原酒」といいます。原酒はアルコール度数が高く濃厚な味わいが特徴です。

一般的な日本酒は、割水を行い、2回目の火入れを終えると、瓶詰め工程へと移ります。そうして、瓶やパックなどに詰められた日本酒が、全国に流通することになります。


日本酒本来の味が生きている原酒を味わってみよう

日本酒の造り方は複雑で、完成までにはたくさんの工程を経る必要があります。「生酛造り」や「無ろ過」「生酒」「原酒」など、造りによって日本酒の種類もさまざまあるので、日本酒造りの工程とともにどのようなお酒かを覚えておくと日本酒選びに役立ちそうですね。

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