ツウも唸る!? ウイスキーをスポイトと水でたのしむ
よく「ウイスキーはストレートで飲むのがツウ 」などといわれますが、愛好家のなかには、ストレートウイスキーにスポイトで水を加えてたのしむ人もいます。ウイスキーに水を垂らすとどう変化するのでしょうか? 今回は数滴の水の効果を見ていきましょう。
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ウイスキーにスポイトで水を垂らすとどうなるの?
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「ワンドロップ」とも呼ばれるウイスキーのたのしみ方
ウイスキーにスポイトなどを使って1滴ずつ常温の水を垂らすたのしみ方を、「ワンドロップ」や「ワンドロップ水割り」と呼びます。
オーセンティックバーなどでウイスキーのストレートを注文すると、ウイスキーやチェイサーと一緒に、スポイトと少量の水が入った小さな容器が出てくることがありますが、これはスポイトで水を加えて「ワンドロップ」をたのしむためのものです。
スポイトで水を加えると、ウイスキーの味わいと香りが変化する
ストレートのウイスキーに、ほんの数滴の水をスポイトで垂らすとどうなるのでしょうか?
ウイスキーに数滴の水を加えると、隠れた香味が引き出されて、香りがより繊細に感じられるようになるといわれています。
スコッチなどのシングルモルトウイスキーは、ストレートで飲むものというイメージがありますが、少量の水を加えると、ウイスキーの奥に秘めた魅力を引き出すことができるのです。
なお、プロの世界では、加水することで香りが広がることを、「香りが開く」と表現します。
ウイスキーに加水するとおいしくなることは科学的にも証明されている!?
ウイスキーに水を加えることで風味が増し、おいしくなるということは、科学的に証明されています。
スウェーデンのリンネ大学が発表した論文によると、ウイスキーの香りのもととなる成分(グアイアコール)は、アルコール度数が59%以上になると液体全体に広がり、逆にそれ以下になると液体の上方に浮上する傾向があることがわかったそう。
つまり、ある程度までアルコール度数が下がると、ウイスキーの表面に香り成分が集まるので、より香りを感じやすくなるのです。
一般的にウイスキーは、アルコール度数が40~50%程度になるように加水調整されたうえで瓶詰めされますが、これにはウイスキーの風味を高める効果があります。さらに、グラスに注いだストレートウイスキーに数滴の水を加えることで、香りの成分に作用し、より風味が増しておいしく感じられるといわれています。
ウイスキーの水割りとは何が違うの?
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ウイスキーの「トワイスアップ」と「ワンドロップ」は何が違うの?
ウイスキーに水を加える飲み方のひとつに「トワイスアップ(トゥワイスアップ)」があります。こちらは、グラスに常温のウイスキーと常温の水を1:1の割合で注いで飲むたのしみ方です。
ウイスキーはアルコール度数が20%程度になると、香りや味の特徴を捉えやすくなるといわれていて、同量の水で割る「トワイスアップ」は、ウイスキーの性格を知るのに最適な飲み方と見なされています。そのため、スコッチの生産国スコットランドでは、プロのブレンダーがウイスキーの風味を的確に分析するために、よくこの飲み方を用います。
一方、「ワンドロップ」は、香りの特徴を詳しく知るためというよりも、水を落としたときにふわりと広がる、繊細な香りをたのしみたいときにおすすめです。「ワンドロップ」で使う水の量はたったの数滴ですが、1、2滴ほど加えるだけでわずかな化学変化が起こり、ウイスキーの香りが花開きます。そのため、香りを主役にして飲みたいときは、「水を1滴加えては飲む」を繰り返せば、香りの広がりをじっくりと堪能できるでしょう。
また、「ワンドロップ」の場合、水をほとんど加えないため、ウイスキーの味わいに、ほとんど影響しない点も魅力です。
「トワイスアップ」はウイスキーの香りを引き立てる飲み方【ウイスキー用語集】
トワイスアップ(トゥワイスアップ)はウイスキーの香りが沸き立つ飲み方
「ウイスキーの水割り」とスポイトを使った加水は何が違うの?
「ウイスキーの水割り」とは、氷を入れたグラスにウイスキー1に対して冷やした水を2~2.5くらいの割合で加えて飲む、日本独特のたのしみ方です。多めの水で割るので、アルコールの刺激的な香りやピート香などの独特の香りが和らぎ、飲みやすくなるといわれています。そのため、どちらかというと、香りを抑えて飲みたいときに向いているといえるでしょう。
一方、「ワンドロップ水割り」とも呼ばれる「ワンドロップ」は、ほんの少しの水を加えることで香りを引き出す飲み方です。こちらは、香りを抑えるというよりも、しっかりたのしみたいときに役立ちます。
このように、同じ「水割り」という名がついていても、真逆の目的でたのしまれているのです。
ウイスキーの水割りのポイントは「水」「氷」「濃さ」にある!
「ワンドロップ」にはスポイトがないとダメ?
ストレートウイスキーにスポイトで数滴の水を加え、味や香りの変化をたのしむワンドロップ。「実際に試してみたい! 」と思っても、スポイトがなければ挑戦できないのでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。スポイトがない場合は小さなスプーンでも代用できます。
ただし、ウイスキーの銘柄によっては、1滴単位で味わいが変化するものもあります。一度に大量の水を加えてしまわないよう、慎重に少しずつ水を加えて、風味の違いをたのしみましょう。
ウイスキーとスポイトを用意して、実際に水を垂らしてみよう
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ウイスキーの「ワンドロップ」を作ってみよう
実際に、ウイスキーの「ワンドロップ」を試してみましょう。用意するものは以下の4つだけです。
◇好きなグラス(テイスティンググラスがおすすめ)
◇常温のウイスキー
◇スポイト(なければ小さなスプーンでも可)
◇常温の水(ミネラルウォーターがおすすめ)
作り方はかんたんです。常温のウイスキーを少量グラスに注ぎ、スポイトで常温のミネラルウォーターを1滴ずつ加えて飲みます。水を加えたときに生じる変化をたのしむため、ステア(軽くかき混ぜること)はしません。
自分好みの味わいを探すことも、ワンドロップ水割りのたのしみ方のひとつ。1滴加えるごとに、水を加える前のストレートウイスキーとの風味の違いを、確かめながら飲むとよいでしょう。
ウイスキーにスポイトで加える水の条件
ウイスキーに加える水は、ウイスキーを造るときに使用する「仕込み水」を用いるのがベストです。
とはいえ、現実的には入手が難しいので、ウイスキーの産地で採取された天然水(ミネラルウォーター)か、仕込み水に近い硬度の天然水(ミネラルウォーター)を使用するとよいでしょう。
なお、一般的には、ウイスキーになじみやすく本来の味を損ねにくい軟水の天然水(ミネラルウォーター)がよいといわれています。
ウイスキーの「ワンドロップ」をたのしむときのグラスの条件
「ワンドロップ」をたのしむときのグラスは、以下のようなタイプがおすすめです。
【香りをたのしむのに適したグラス】
テイスティンググラスのようなチューリップ型のグラスは、香りを逃がしにくい構造になっているので、加水による香りの変化をいっそう堪能できます。
【模様のない透明なグラス】
ウイスキーと水が混ざり合う様子を眺めるのもたのしみのひとつ。模様のない透明なグラスは、ゆらゆらとした液体の動きをじっくり観察するのに向いています。
【持ち手(ステム)のあるグラス】
ウイスキーは温めすぎるとアルコールが揮発してしまいます。グラスを持つ手のぬくもりでウイスキーが温まらないように、持ち手のついたグラスを選ぶとよいでしょう。
シンプルながら奥が深いウイスキーの「ワンドロップ」。好きなウイスキーにスポイトなどで1滴ずつ水を加え、ゆっくりと変化をたのしみながら、好みの味わいを探してみてはいかがでしょう。