プレミアム焼酎とは? 「3M(スリーエム)」をはじめとしたプレミアム焼酎の魅力に迫る!
「プレミアム焼酎」とは、クオリティの高さで人気に火がつき、市場価格が高騰した焼酎の総称です。生産量が少なく、入手困難なことから「幻の焼酎」とも呼ばれることもあります。今回はプレミアム焼酎の魅力を、代表的な銘柄も含めて紹介します。
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プレミアム焼酎とは?
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「プレミアム焼酎」に明確な定義はありませんが 、一般的には確かな品質で人気を集めながらも、需要に供給が追いつかないことから市場価格が高騰した焼酎銘柄のことを指す場合が多く、 「幻の焼酎」と呼ばれることもあります。
「プレミアム焼酎」と普通の焼酎の価格
「プレミアム焼酎」という言葉が一般に浸透したきっかけは、2000年代前半の本格焼酎ブームでした。本格焼酎とは、伝統的な単式蒸溜で造られる「乙類焼酎」のなかでも、規定された原料のみを用いた焼酎のこと。芋や麦 、米 など原料由来の香りや風味がしっかりと感じ取れるため、爆発的なヒットとなりました。
なかでも品質の高さで人気に火がつき、入手困難となった本格焼酎は「プレミアム焼酎」と呼ばれ、おもにインターネットを介して高値で取り引きされるようになりました。
一般的な本格焼酎の価格は、720mlで800円から1,500円程度、1,800mlで1,200円から2,500円程度ですが、「プレミアム焼酎」はその倍以上で販売されることが多く、なかには1,800mlで万単位の価格がつく銘柄もあります。
プレミアム焼酎」はなぜ高級なのか?
「プレミアム焼酎」のように、720mlで3,000円以上、1,800mlで5,000円以上などの価格がつく焼酎を「高級焼酎」と呼ぶことがありますが、「プレミアム」という言葉には、「高級な(グレードの高い)」「上等の」という意味のほかに、「割増価格」という意味合いもあります。「プレミアム焼酎」が高級といわれる理由は、グレードの高さよりも、「割増価格」の比重が大きいという意見もあります。
「プレミアム焼酎」の多くは、厳選素材を使い、大量生産に向かない製法で手間暇をかけて造られるこだわりの本格焼酎。同じ蔵元が手掛けるレギュラー商品よりも高めの価格が設定されるのは当然のことですが、蔵元が設定した定価が1,800mlで4,000円(税込)を超える銘柄は多くありません。なかには一般的な本格焼酎と変わらない価格設定の「プレミアム焼酎」も存在します。
ところが、人気が高まるにつれて正規ルートでの入手が困難になると、市場価格は高騰。蔵元の希望小売価格をはるかに上回る高値で転売されるようになりました。
「プレミアム焼酎」の市場価格は、「希少価値を利用して儲けようと思う転売業者・転売ヤー」、蔵元様が想定する価格帯よりも高くても欲しいと思う人の心理がもたらしたプレミアム価格です。
おいしさで飲み手の心をつかんだのは間違いありませんが、プレミアムがついた価格で購入しても蔵元様は喜びません。転売業者や転売ヤーの懐を肥やすだけですし、品質が保証されない場合も。
蔵元様のなかには抽選などの条件はあっても直接販売をしていたり、正規販売店(特約店)を案内してくれるところもありますので、できるだけ正規ルートで適正価格で購入するようにしたいものです。
超人気の希少銘柄の入手ができなくても、これらの正規販売店では、ほかにも素晴らしい銘柄を教えてくれる場合がほとんど。焼酎のプロに相談してみることで、新たな銘柄との出会いが生まれるかもしれませんよ。
プレミアム焼酎の代表格「3M」とは?
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「プレミアム焼酎」のなかでもとりわけ入手困難な「3M(スリーエム)」について紹介します。
プレミアム焼酎「魔王」「村尾」「森伊蔵」を総称して「3M」
「プレミアム焼酎」と呼ばれる銘柄のなかでも、とくに有名な鹿児島産の芋焼酎「魔王」「村尾」「森伊蔵」の3銘柄は、その頭文字をとって「3M」と呼ばれています。
近代化・大量生産の時代に流されず、独自の技を磨き続ける3銘柄を紹介します。
魔王(まおう)
明治37年(1904年)創業の老舗、白玉醸造が造る「魔王」は、名前のインパクトはもちろん、その味も斬新な芋焼酎です。
洋酒を樽で熟成させる際、少しずつ中身が減っていくのを「天使の分け前」と呼ぶのは有名です。「魔王」という名前は、この天使をも誘惑する悪魔によってもたらされた特別な酒、という意味だとか。
名前の禍々しさとは対照的に、熟成酒ならではのまろやかですっきりした味わいは、芋焼酎を飲み慣れていない人でもおいしく飲めると評判です。
定価は1,800mlで3,000円程度(税抜)。
製造元:白玉醸造株式会社
公式サイトはありません
ちなみに「魔王」を造る白玉醸造の主力銘柄は「白玉の露」。とても芋焼酎らしい味わいの王道芋焼酎で定価は1,800mlで2,000円以下(税抜)とお値頃です。
村尾(むらお)
明治35年(1902年)創業の村尾酒造は、かの西鄕隆盛も訪れたという薩摩藩公の御茶屋敷跡近くで、伝統の「かめ壺仕込み」による焼酎造りを続けています。
同じ3Mの「魔王」は飲みやすさ、「森伊蔵」はバランス感が強みですが、「村尾」の持ち味は芋ならではの香ばしさにあります。甘味とまろやかさ、独得のドライ感などの複雑な味わいが、飲む人の心をつかんで離しません。
定価は1,800mlで2,650円(税込)。
製造元:村尾酒造合資会社
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森伊蔵(もりいぞう)
有限会社森伊蔵酒造サイト
明治18年(1885年)創業の小さな蔵元、森伊蔵酒造が、当主の父の名を冠した「森伊蔵」を生み出したのは、昭和63年(1988年)のこと。大手メーカーの焼酎に押されて経営難に陥るなか、「飲む人が直接、買いに来たくなるような焼酎を造ろう」との決意から生まれた、まろやかで上品な香りと味わいの逸品です。1996年にはフランスの故・シラク大統領が愛飲していると報じられたのを機に、全国区の人気銘柄となりました。
定価は1,800mlで2,860円(税込)。
製造元:有限会社森伊蔵酒造
公式サイトはこちら
「3M」以外のおすすめプレミアム焼酎
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「プレミアム焼酎」は、芋焼酎「3M」以外にも存在します。ここでは、その草分けとして知られる「伊佐美」と、「3M」に引けをとらない人気銘柄「佐藤」、ウイスキーのようなプレミアム麦焼酎「百年の孤独」を紹介します。
伊佐美(いさみ)
「伊佐美」は、焼酎発祥の地として知られる鹿児島県伊佐市の老舗、甲斐商店が明治32年(1899年)の創業以来大切に育んできた、蔵元唯一の銘柄にして「幻の焼酎」の草分け的存在です。
おいしさの秘密は、作り手が長年守り続けてきた独自の製法にあります。
焼酎の味を左右する麹造りは、伝統的な「麹蓋」による手造り。その種類も、白麹が一般的とされていた時代から、一貫して黒麹を使い続けてきました。
また、仕込みは昔ながらの「かめ仕込み」。原料芋の収穫期である9月~翌3月の間しか仕込みを行わないという徹底ぶりが、「伊佐美」の魅力を支え続けているのです。
製造元:合資会社甲斐商店
公式サイトはありません
百年の孤独(ひゃくねんのこどく)
株式会社黒木本店サイト
プレミアム焼酎「百年の孤独」の造り手である黒木本店は、明治18年(1885年)の創業以来、「焼酎一筋」を掲げてきた老舗蔵。昭和末期、焼酎を熟成させるという発想がなかった時代に、麦焼酎をウイスキーやブランデーのように樫樽で長期貯蔵・熟成させた「百年の孤独」は、全国の焼酎ファンの注目を集めました。
アルコール度数は40度とやや高めですが、樫樽由来のオークやシガーの香り、ココナッツや香ばしい麦の風味など、幾重にも重なる香味を堪能するなら、やはりストレートやロックがおすすめ。水割りなら複雑な風味とともに穀物の甘味が、お湯割りなら丸みのある味わいがたのしめます。
黒木本店の本格焼酎には、「㐂六(きろく)」「中々(なかなか)」「橘(たちばな)」「野うさぎの走り」「爆弾ハナタレ」など、他にも人気の商品がいくつもあります。
株式会社黒木本店
公式サイトはこちら
十四代(じゅうよんだい)
幻の日本酒にして芳醇旨口の代表格「十四代」の蔵元が手掛ける、山形県生まれの米焼酎シリーズ。日本酒よりもさらに入手困難なことで知られています。
「十四代 秘蔵(ひぞう) 乙焼酎」は、米の旨味とフルーティーな味わいで人気の逸品。すっきりとした飲み口と味のバランスが絶妙です。
「十四代 乙焼酎 隼(はやぶさ)」は、米を吟味し低温で醸造。蒸溜後は長期貯蔵・熟成した、日本酒のような味わいの1本です。
とくにレアなのが、「十四代 蘭引(らんびき)酒 鬼兜(おにかぶと)」。一度熟成したあとホワイトオーク樽で再度熟成した、ウイスキーのようなコクを持つ熟成純米焼酎です。
製造元:高木酒造株式会社
公式サイトはありません
プレミアム焼酎の選び方
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「プレミアム焼酎」はおいしさに定評があるといっても、万人向けに造られているわけではありません。ここでは、好みに合った銘柄選びのポイントを紹介します。
原料で選ぶ
「プレミアム焼酎」の多くは、旨味や甘味、香りを絶妙に引き出しているため、
芋焼酎好きは芋焼酎、麦焼酎好きは麦焼酎を、米焼酎好きは米焼酎を選ぶのが基本。原料の品種や製法によっても味わいは変わりますが、まずは芋焼酎や麦焼酎、米焼酎などの種類で絞り込み、好みに合った銘柄を選んでみてはいかがでしょうか。
酒造で選ぶ
「プレミアム焼酎」のおいしさは、焼酎造りに対する蔵元の情熱や強いこだわりに根ざしています。お気に入りの焼酎銘柄がある人は、その造り手が手掛ける他の商品を探してみるのも一手です。
ここで紹介した銘柄以外にもおいしい焼酎はたくさんあるので、とっておきの1本を探してみてください。
プレミアム焼酎の入手方法
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「プレミアム焼酎」の造り手たちは、希少価値を狙って生産量を制限しているわけではありません。品質へのこだわりから、あえて量を追うことなく、少量品質を続けている焼酎蔵がほとんどです。
そんな造り手の想いに応えるなら、異常なまでに高騰したプレミアム価格ではなく、できるかぎり正規ルートで定価購入したいものですよね。
入手方法は銘柄によって異なりますが、「魔王」の場合は「株式会社白乃さと」に電話をかけて注文書を取り寄せ、必要事項を記載することで定価購入することができます。(電話応対時間は
月曜日~金曜日、午前9時~午前10時の1時間。すぐに購入できる訳ではありません、時間はかかります)
「村尾」の場合は、「株式会社武岡酒店」が毎月行う抽選にハガキで申し込み、当選すれば酒店推奨商品1品と一緒に購入可能です。
「森伊蔵」の場合は、蔵元が行う抽選に電話で参加できます。
いずれも半年以上待たなければならなかったり、抽選になかなか当選しなかったりとハードルは高めですが、チャレンジする価値はありそうです。
「村尾」と「森伊蔵」については、それぞれANAの国際便、JALの国際便で入手できる可能性も。販売開始時期や路線、購入方法などは、ANA 機内誌「ANA SKY SHOP」やJAL 機内販売カタログ誌「JAL SHOP」のデジタル版でチェック可能です。
「プレミアム焼酎」のすべてが入手困難なわけではありません。「3M」以外の「プレミアム焼酎」は百貨店やスーパーマーケット、小売店などで定価販売されることもあるので、機会があったらぜひ味わってみてください。
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