「本醸造酒」はどんなお酒?日本酒の分類とともに定義や魅力を紹介!
「本醸造酒」と表示されている日本酒を見たことはありませんか?「純米酒」や「吟醸酒」など、ほかの日本酒とどう違うのでしょうか。ここでは、本醸造酒の定義と魅力に迫ります。
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「本醸造酒」とは「醸造アルコール」を添加した日本酒
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「本醸造酒」とは、醸造アルコールを添加した「アル添酒」の一種
「本醸造酒」とは、日本酒のなかでも、製造過程で醸造アルコールを添加して造った「アル添酒(アルコール添加酒)」の一種で、精米歩合が70%以下のものを言います。
同様に醸造アルコールを添加して造る日本酒で、精米歩合が60%以下、あるいは特別な製法を用いて、とくに香りや色沢のよいものを「特別本醸造酒」と呼びます。
本醸造酒、特別本醸造酒とも、添加できる醸造アルコールは、原料となる白米の総重量の10%以下に定められています。
「本醸造酒」「特別本醸造酒」の対義語は「純米酒」
本醸造酒や特別本醸造酒などの「アル添酒」に対し、米と麹のみを原料として造った日本酒は「純米酒」と呼ばれます。
「純米酒」と「アル添酒」を比べると、「純」「添」という字面のイメージから、純米酒こそ本来の日本酒で、アル添酒に対してはネガティブな印象を持っている人もいるかもしれません。
しかし、じつは現在、市場で販売されている日本酒の多くは、製造過程で醸造アルコールを添加して仕上げていて、むしろ醸造アルコールを添加するほうが一般的だと言えるでしょう。
「本醸造酒」を含めた日本酒(清酒)の種類を一覧
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本醸造酒や純米酒だけでない、日本酒の種類
本醸造酒など醸造アルコールを添加した「アル添酒」と、醸造アルコールを添加せず米と麹だけで造る「純米酒」、日本酒は大きくこの2種類に分類されることがわかりました。
しかし、日本酒には、ほかにも「吟醸酒」「大吟醸酒」「普通酒」など、さまざまな種類があります。これらをまとめて理解できるよう、法律上の分類を一覧してみましょう。
本醸造酒は酒税法上の日本酒(清酒)の種類のひとつ
1989年に制定された「清酒の製法品質表示基準」では、原料や精米歩合など、日本酒(清酒)の造り方によって、以下の9種類に分類しています(下記説明は概略)。
このうち、「一般酒(または普通酒)」以外の8種類を総称して「特定名称酒」と呼びます。
◇精米歩合70%以上:一般酒(または普通酒)
◇精米歩合70%以下、醸造アルコールを添加:本醸造酒
◇精米歩合60%以下、醸造アルコールを添加:特別本醸造酒
◇精米歩合60%以下、醸造アルコール添加なし:特別純米酒
◇精米歩合60%以下、若干の醸造アルコールを添加:吟醸酒
◇精米歩合60%以下、醸造アルコール添加なし:純米吟醸酒
◇精米歩合50%以下、若干の醸造アルコールを添加:大吟醸酒
◇精米歩合50%以下、醸造アルコール添加なし:純米大吟醸酒
◇精米歩合の規定なし、醸造アルコール添加なし:純米酒
なお、精米歩合とは、原料の米の外側を削った(磨いた)あと、実際に酒造りに用いる部分が何%残っているかを示しています。
削った量が多いほど(精米歩合の数値が小さくなるほど)、「吟醸香」が引き立ち、雑味の少ないクリアな味わいなります。
一方で、米を磨きすぎない(精米歩合の数値が大きい)ほうが、米本来の味や香りが濃厚でおいしいという人もいて、一概に品質の良し悪しを判定する基準という訳ではありません。
「本醸造酒」に「醸造アルコール」を添加する理由とは?
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本醸造酒に添加される醸造アルコールとは?
本醸造酒などに用いられる醸造アルコールとは、サトウキビやトウモロコシなどを発酵させて蒸溜精製した食用のアルコールのこと。「ホワイトリカー」と呼ばれることもある「甲類焼酎」と同様に、連続式蒸溜で造られ、無味無臭の高純度なアルコールです。
醸造アルコールを添加した酒造りは江戸時代から
醸造アルコールを添加した日本酒造りは、戦中・戦後の米不足を補うために行われたという印象が強く、今も「低級酒」のイメージが残っているようですが、もともとは江戸時代から行われてきました。当時は現在の乙類焼酎のようなもので、「柱焼酎」と呼ばれていました。
そもそも、醸造アルコールは、アルコール度数を上げることで雑菌の繁殖を防ぐため、つまりは防腐剤として用いられてきました。結果として、日本酒の香りがよくなり、味わいが軽やかで後口もスッキリする効果があることから、保存技術が高まった現在でも醸造アルコールを用いた酒造りが続けられています。
「本醸造酒」の魅力に迫る
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本醸造酒と純米酒には、それぞれ異なる魅力が
本醸造酒(アル添酒)は、米の旨味が濃厚な純米酒に比べ、淡麗でさらりとしたものが多いのが特徴です。特別本醸造酒の場合、米をさらに磨いているため、スッキリとした雑味のない味わいになる傾向があります。
もちろん、蔵元や銘柄によって味わいは異なりますが、全般的な傾向としては、味のバランスがよくて、クセの少ない、初心者にも飲みやすいのが本醸造酒の魅力と言えるでしょう。
本醸造酒と純米酒には、それぞれ異なる魅力が
本醸造酒(アル添酒)は、昨今の純米酒ブームに押されがちな印象もありますが、本醸造酒ならではの味わいに根強いファンもいます。ほとんどの蔵元では、純米酒と本醸造酒を造り分け、それぞれ異なる魅力を持った商品として提供しています。
スッキリした本醸造酒の味わいは、食事の邪魔をしないため、食中酒としても人気が高いものが多いようです。本醸造酒の魅力を知るには、料理とともに味わうのもよいかもしれませんね。
「本醸造酒」をたのしむなら、この銘柄
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本醸造酒の魅力が詰まった人気の銘柄を紹介
本醸造酒は、全国各地のさまざまな蔵元で造られていますが、なかでも「これぞ本醸造酒!」と日本酒ファンが支持する、人気の銘柄をいくつか紹介しましょう。
【黒松剣菱(くろまつけんびし):剣菱酒造(兵庫)】
「灘五郷」と呼ばれる兵庫の酒処を代表する蔵元のひとつ、剣菱酒造が造る本醸造酒。口に含むと、濃厚な香りとピリリとしたアルコールの刺激が感じられる、骨太な辛口の酒です。
【特別本醸造 八海山(はっかいさん):八海山酒造(新潟)】
新潟県の米処・魚沼の地酒として知られる「八海山」の特別本醸造酒。やわらかな口当たりと淡麗な味わいが魅力の、バランスの取れた日本酒で、燗をつけたときほのかに麹が香るのも特徴です。
【正雪(しょうせつ) 特別本醸造:神沢川(かんざわがわ)酒造場(静岡)】
豊富な魚介類に合う淡麗辛口の日本酒が多い静岡の地酒のなかでも、フルーティーな香りとキレのよさで知られるのが「正雪」。バランスのよい飲み口で、飽きの来ない食中酒として人気を集めています。
【麒麟山(きりんざん)伝統辛口:麒麟山酒造(新潟)】
伝統的な辛口の日本酒を貫きつつも、爽快でスッキリとした味わいを特徴とする「麒麟山」の定番酒。地元産米を原料に、最新の設備と蔵人が一体となって醸した、地元で愛される燗映えする一本です。通称「伝辛(でんから)」。
本醸造酒は、原料米の旨味と、醸造アルコールによるスッキリした飲み口を、バランスよく融合させた、蔵元の技術とセンスが光る日本酒。純米酒党の人も、シーンによっては本醸造酒ならではの味わいを試してみてはいかがでしょうか?