広島でおすすめの日本酒10選【山陽の地酒】

広島でおすすめの日本酒10選【山陽の地酒】
出典 : Thanya Jones / Shutterstock.com

広島県は中国地方で最大の面積をもち、穏やかな暖かさと厳しい寒さが共存する地域です。この気候の違いによって、造られる日本酒の味わいも地域ごとに異なり、それぞれ独自の醸造法が発展しています。今回は、広島で醸される日本酒の魅力をお伝えしましょう。

  • 更新日:

広島の変化に富む気候で造られる多彩な地酒

広島の変化に富む気候で造られる多彩な地酒

Tamotsu Ito / Shutterstock.com

広島は、県内に中国山地と瀬戸内海沿いの平野を合わせもち、暖かく過ごしやすい平野側と、冬には雪深くなる山地側で、気候にかなり変化があります。
日本酒造りには、その地の気候が色濃く反映されます。このため、異なる気候のもとで造られたお酒は、同じ手法であっても味わいに大きな差が出ます。こうした地域特性から、広島の地酒はとてもバラエティに富んでいて、さまざまなお酒をたのしむことができます。

また、広島県内には良質な酒造好適米を栽培している地域が南北にあり、「雄町」「八反」「山田錦」などが育てられています。もともと地域によってお酒の風味が異なることに加え、酒造好適米の個性も際立つことから、より多彩な味わいの日本酒ができあがるのです。

広島の酒ならではの深い旨味は「軟水醸造法」がカギ

広島の酒ならではの深い旨味は「軟水醸造法」がカギ

15June's /Shutterstock.com

広島で酒造りが栄えた理由のひとつに、独自の醸造法である「軟水醸造法」の開発が挙げられます。
日本有数の酒処である兵庫・灘で採れる硬水と違って、広島の水はミネラルの少ない軟水です。このため、かつては質の高い日本酒を造るのが難しいとされていました。しかし、明治時代、この地の醸造家である三浦仙三郎氏によって、軟水で日本酒の旨味を醸す「軟水醸造法」が確立されます。

「軟水醸造法」のポイントは大きく2つ。ひとつは、酵母による発酵を活発にするため、麹をしっかり育てて米の糖化を促進させること。もうひとつは、醪(もろみ)を低温に保って発酵に時間をかけること。これらによって軟水の弱点を克服するとともに、しっかりと育てた麹の恩恵によって、ふくよかな旨味をもつ日本酒に仕上がり、地域独自の味わいを生むことにも成功したのです。

広島の人気銘柄

広島の人気銘柄

Brent Hofacker / Shutterstock.com

広島の日本酒はとても表情が豊かで、蔵元や地域ごとに違った個性をたのしむことができます。ここからは、そのなかでもとくに人気を博している5銘柄を紹介しましょう。

“日本のウイスキーの父”の生家が醸す酒【竹鶴(たけつる)】

「竹鶴」を造る竹鶴酒造は、享保18年(1733年)に創業した老舗蔵。そして、日本が世界に誇るウイスキーブランド、ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝氏の生家でもあります。
竹鶴酒造の酒造りの特徴のひとつが、炭ろ過の工程を行わないこと。これは、醸したままのフレッシュな状態のお酒を提供したいとのこだわりからだとか。こうして造られる「竹鶴」は、どんな食材にもぴったり寄り添う相性のよい食中酒。自然な香りや旨味を存分に感じながら食事をたのしめます。

製造元:竹鶴酒造株式会社
公式フェイスブックはこちら

キリリとした辛味と適度な旨味をもつ【宝剣(寳劔)(ほうけん)】

「宝剣(寳劔)」は、同じ名をもつ蔵元、宝剣酒造の代表銘柄です。明治5年(1872年)創業という歴史をもつ宝剣酒造では、敷地内に野呂山の伏流水が湧き出る「宝剣名水」を擁し、その清冽な水によって品質の高いお酒を生み出しています。
酒造りを指揮する蔵元杜氏は、若くして「広島にこの人あり」と称される土井鉄也氏。土井氏は、甑(こしき)を使用して米を蒸し、新たな麹造りなどの挑戦を経て、「宝剣(寳劔)」をキリリとした辛味と適度な旨味をもったお酒に仕上げています。澄みきった味わいは、濃い料理にもぴったりです。

製造元:宝剣酒造株式会社
公式サイトはこちら

あくまで辛口にこだわる個性的なお酒【亀齢(きれい)】

「亀齢」を造る亀齢酒造は、多くの蔵元が軒を連ねる西条の地で、明治元年(1868年)から酒造りを続けています。主力銘柄である「亀齢」の名は、長寿である亀にちなみ、長く繁栄するようにとの願いを込めたものだとか。
蔵の近くには「万年亀井戸」と呼ばれる井戸があり、ここには竜王山の伏流水が湧き出ています。この清冽な水と良質な酒米で醸される「亀齢」は、西条地区では甘口が主流のなかで、キリリとした辛口にこだわり続けている個性的なお酒です。
なお、長野県の岡崎酒造でも「信州亀齢」という銘柄を造っています。両者に関係はありませんが、同じ名をもつお酒を飲みくらべてみるのもたのしいでしょう。

製造元:亀齢酒造株式会社
公式サイトはこちら

雨あがりの冴えた月のようにうつくしいお酒【雨後の月(うごのつき)】

「雨後の月」は、昭和29年(1954年)創業の蔵元、相原酒造が「うつくしい酒を醸したい」との思いで造り続ける日本酒です。「雨後の月」という名前は、作家・徳富蘆花の随筆に由来したもので、雨あがりの冴え冴えとした月が明るく照らす様子を、お酒に重ね合わせたものだとか。
清冽な野呂山の伏流水と質の高い酒米を使用し、大吟醸にこだわって醸すお酒は、じっくりと冷蔵熟成されたあとに市場に出荷されます。「雨後の月」は、フルーティで豊かな香りとふくよかな甘味が特徴で、とくに冷やで飲むのがおすすめ。数々の品評会でも入賞経験をもつ一本です。

製造元:相原酒造株式会社
公式サイトはこちら

伝統を守り続ける少量生産のお酒【賀茂金秀(かもきんしゅう)】

「賀茂金秀」を造る金光酒造は、明治13年(1880年)の創業以降、伝統の酒造りにこだわる続ける蔵元です。かつては人員削減のため自動プラントを導入していましたが、のちに方針を転換。伝統的な手造りの手法に切り替え、その手法のもとに誕生した銘柄が「賀茂金秀」です。
そうした経緯から、「賀茂金秀」は出荷される本数は少ないものの、全国に多くの愛好家をもつ地酒となっています。口に含むと澄んだ吟醸香が鼻を抜け、豊かな旨味も味わえるお酒です。

製造元:金光酒造合資会社
公式サイトはこちら

広島のそのほかの注目銘柄

広島のそのほかの注目銘柄

kathayut kongmanee / Shutterstock.com

広島の日本酒は、全国的に見ても評価が高い銘柄がたくさんあります。なかでもおすすめの銘柄を紹介していきましょう。

お酒の概念を変えた「リンゴ酵母」で醸す【幻(まぼろし)】

「幻」は、明治4年(1871年)創業の蔵元、中尾醸造の主力銘柄で、これまでにない「リンゴ酵母」を使用した日本酒です。リンゴ酵母は、芳醇な吟醸香と酸味、そしてすぐれた発酵力をもちあわせた酵母で、4代目当主中尾清磨氏により発見されたものです。
皇室の新年御用酒にも選ばれたことのある「幻」の風味は、フルーティでコクが深く、しっかりした酸味が印象的。それでいてキレもよく、すっきりと飲めるお酒です。

製造元:中尾醸造株式会社
公式サイトはこちら

日本初の動力精米機を導入した蔵元で醸す【賀茂鶴(かもつる)】

「賀茂鶴」は、蔵元である賀茂鶴酒造の名を冠しているように、蔵を代表する銘柄です。
賀茂鶴酒造は、伝統の技術を今に受け継ぐ広島杜氏を擁し、熟練の技とこだわりのもとで酒造りを行っています。一方で、新しい技術の導入にも意欲的で、明治31年(1898年)に日本初の動力精米機を導入し、米を効率的に磨き上げるとともに、雑味を排除することにも成功しました。
こうした歴史をもつ賀茂鶴酒造の日本酒は、ふくらみのある旨味とキリッとした辛味が見事に共存した味わいが特徴。飲み飽きのしない、深みのある日本酒造りを追求し続けています。

製造元:賀茂鶴酒造株式会社
公式サイトはこちら

超軟水がもたらすまろやかな飲み口が魅力【醉心(すいしん)】

「醉心」の蔵元、醉心山根本店は、万延元年(1860年)創業の蔵元です。一時は20種に及ぶ銘柄を造り分けていましたが、明治の半ば、2代目当主が“辛口にして甘露”な広島らしい日本酒造りに統一しようと考えていたところ、夢枕に立った老人から「醉心」の名を告げられたことといわれています。
仕込み水に使用するには鷹の巣山の伏流水である超軟水。広島の酒造りの伝統である「軟水仕込み」によって、じっくりと穏やかに発酵させた、口当たりのまろやかな日本酒に仕上がっており、日本画家の巨匠・横山大観氏をして「ひとつの芸術」といわしめた銘酒です。

製造元:株式会社醉心山根本店
公式サイトはこちら

女性たちの内助の功をたたえた【千福(せんぷく)】

安政3年(1856年)に創業した三宅本店は、戦前には3万5千石という国内有数の規模をもつ蔵元でした。戦時中の空襲で大きな被害を受けましたが、それでも屈することなく酒造りを続けています。
代表銘柄である「千福」は、初代当主が母(フク)と妻(千登)の内助の功に対する感謝の気持ちを込め、二人の名前から1文字ずつとって名づけたもの。多くの人々に愛されるお酒でありたいという思いから、甘口から辛口までさまざまなタイプをラインナップ。海外展開にも積極的で、中国やフランスに販路を拡大しています。

製造元:株式会社三宅本店
公式サイトはこちら

幻の酒米「八反草」にこだわる【富久長(ふくちょう)】

「富久長」を醸す今田酒造本店は、瀬戸内海にほど近い安芸津の地に蔵を構えています。この地は広島杜氏の里といわれ、「軟水醸造法」を開発した三浦仙三郎氏ゆかりの地。「富久長」の銘は、酒造りに心血を注いだ三浦氏が名づけたものだとか。
「富久長」は、三浦氏が唱える「百試千改」のモットーを受け継ぎ、広島酒米のルーツとされながら、姿を消していた「八反草(はったんそう)」を復活させ、原料としています。“幻の米”の持ち味を活かしたまろやかな甘味と、適度な酸味が特徴です。

製造元:株式会社今田酒造本店
公式サイトはこちら

広島のお酒は、甘口から辛口、芳醇から淡麗まで好みに合わせてたのしむことができます。また、蔵ごとの特徴もその味わいに反映されているため、リピートしたくなる銘柄も多いでしょう。広島のお酒に魅了されたら、ぜひ長く味わってください。

広島県酒造組合

▼広島のお酒特集はこちら

おすすめ情報

関連情報

日本酒の基礎知識

日本ビール検定(びあけん)情報

イベント情報

おすすめ情報

Ranking ランキング

おすすめの記事