千葉に行って飲んでみたい! おすすめの日本酒(地酒)【関東編】
千葉県の酒造りの歴史は、江戸時代にまで遡ります。伝統に重きをおく蔵元や、革新を続けて日本酒の可能性を広げる蔵元など、千葉県には個性豊かな蔵元が多く集まっています。その特徴や、代表的な蔵元、銘柄を紹介します。
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千葉の酒造りの歴史は江戸時代から
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千葉県の酒造りの歴史は江戸時代から始まっており、現在、千葉県内にある蔵元の約半数が、この時期に創業したとされています。なかでも歴史の古い蔵元は、利根川や江戸川の河岸に集まっており、水運を利用した江戸への流通が発達していたことを物語っています。
その後、時代が進むにつれて、水路や陸路が千葉の各地で整備されるにともなって、より広い地域で酒造りが行われるようになりました。
千葉県の日本酒造りがもっとも盛んだった明治時代には、蔵元の数も200を超えていましたが、時代の流れとともに減少していきます。
近年では「再び千葉県の日本酒造りを活性化させよう」とするプロジェクトが立ち上げられ、“関東の酒処”の復興に向けて、千葉県内約50の蔵元が奮闘中です。
千葉の推奨酒&酒技酒調にも注目
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千葉県の日本酒造りを再び活性化させるべく、近年、蔵元をはじめ、日本酒にかかわる多くの人がひとつになって取り組んでいます。
なかでも注目すべき取り組みが、千葉県の風土に合った県独自の酒造好適米「総の舞(ふさのまい)」の開発です。「総の舞」の誕生を受けて、千葉県では、県内産の原料を使用して醸造した清酒に「ちばの酒技酒調(しゅぎしゅちょう)」というシールを貼って販売しています。
また、「千葉県優良県産品推奨協議会」の審査会に合格した日本酒にも、県の推奨酒であることを示すシールを貼っています。
千葉の蔵元が、千葉の風土を活かし、千葉県産の原料で醸した“千葉の日本酒”を買い求める際は、店頭でこれらのシールを探してみましょう。
千葉の人気銘柄
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長い歴史がある千葉県の日本酒。そのなかでも近年、人気を集めている銘柄を紹介します。
名前のとおり人気も不動、長く愛され続ける酒【不動(ふどう)】
千葉県内でも指折りの歴史を誇る蔵元が、徳川綱吉の時代、元禄2年(1689年)創業の鍋店(なべだな)です。当初は成田山新勝寺の門前に蔵がありましたが、現在は香取郡神崎町に蔵を移しています。明治以来の代表銘柄「仁勇(じんゆう)」と並ぶ二枚看板である「不動」は、2004年に日本酒専門店向けとして開発したもの。ほのかな甘味と、スッキリした飲み口が魅力で、食事に合わせやすい食中酒としても人気の銘柄です。
製造元:鍋店株式会社
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伝統と革新のトップリーダー【甲子(きのえねまさむね)】
江戸時代中期の元禄年間(1688~1703)に創業した飯沼本家は、300年以上の歴史をもちながら、「ヒストリー以上に、フューチャーを語り、創造していきたい」をモットーに掲げる革新的な蔵元です。これからの時代に合った酒造りをめざし、蔵人にも若い人材を積極的に採用。酒瓶やラベルのデザインもオシャレで現代的なものが多く、プレゼントにも最適です。
代表銘柄である「甲子」は、伝統技法と最新技術を融合させた日本酒。豊富なラインナップのなかでも「酒コンテスト2017」のお値打ち熱燗部門で金賞を獲得した「純米甲子」は、千葉県産の酒米「五百万石」と地下水で造り上げたまさに千葉県の酒。しっかりとしたコクがあるのに、口当たりがまろやかで飲みやすいと評判を集めています。
製造元:株式会社飯沼本家
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名水の里が育むキレのある味わい【福祝(ふくいわい)】
平成の名水百選に選ばれるほどの名水で有名な、久留里に蔵を構える藤平酒造合資会社。兄弟3人で日本酒を仕込む、わずか300石の小さな蔵元です。少人数での仕込みですが、それだけに、ていねいな手作業にこだわっています。近年の全国新酒鑑評会では金賞7回、入賞2回の受賞歴をもつ実力派です。
原料処理や麹造りに力を注いでいて、米の旨味を活かした仕上がりとなっています。蔵元の将来的な目標は、自社での酒米栽培。今後の味わいの変化にも要注目の銘柄です。
製造元:藤平酒造合資会社
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飲んだ人の心に花を咲かせる1杯【梅一輪(うめいちりん)】
千葉県内でも、蔵元の数が多い地域のひとつが九十九里。なかでも九十九里を代表する蔵元のひとつが梅一輪酒造です。蔵元の名を冠した代表銘柄「梅一輪」は、地域の食文化を支える存在として親しまれています。
蔵元と銘柄の名は、松尾芭蕉の弟子である俳人・服部嵐雪の句「梅一輪 一輪ほどの 暖かさ」から命名されたもの。この句に詠われるように、「梅一輪」は飲んだ人が幸せを感じられるような酒をめざして、ていねいに仕込まれた日本酒です。
梅一輪酒造は、2017年に麹室を改装するなど、近代的な設備投資にも積極的。その挑戦が梅一輪をどのように進化させるか、全国の地酒ファンが注目しています。
製造元:梅一輪酒造株式会社
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“自然醸造”が生み出す新時代の酒【木戸泉(きどいずみ)】
「木戸泉」で知られる木戸泉酒造は、明治12年(1879年)創業という歴史をもつ蔵元です。木戸泉酒造が大きな転換期を迎えたのは、高度成長期のただなかにある昭和31年(1956年)のこと。三代目当主の決断により、天然の乳酸菌を用いて高温で酒母を仕込む「高温山廃酛(モト)」仕込みに醸造法を転換し、以来、この手法を50年以上にわたって守り続けています。
さらに、昭和40年(1965年)には業界に先駆けて長期熟成酒を完成。昭和42年(1967年)には「添加物や農薬、化学肥料を一切使用しない日本酒を造りたい」との想いから、自然農法で育てた米だけを使用した“自然醸造酒”の製造をスタートさせるなど、数々の挑戦を成し遂げた蔵元として、常に地酒ファンの注目を集めています。
製造元:木戸泉酒造株式会社
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千葉のそのほかの注目銘柄
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千葉県には、まだまだ個性豊かな蔵元や銘柄があります。注目の銘柄をピックアップしてみました。
漁業の町が生んだ、海の幸と相性抜群の酒【鳴海(なるか)】
漁業が盛んな千葉県勝浦市に蔵を構える東灘(あずまなだ)醸造は、年間の製造量が200~300石と規模は小さめですが、幕末の慶応3年(1867年)の創業という歴史ある蔵元です。代表銘柄は、蔵元の名を冠した「東灘(あずまなだ)」ですが、近年、注目を集めているのが、できたての日本酒の味わいを活かした無ろ過の酒「鳴海」。約9割が地元で消費されるという地域に根ざした酒らしく、漁港・勝浦の海の幸と合うスッキリとした味わいに仕上がっています。
製造元:東灘醸造株式会社
国内外で高評価を得る実力派【腰古井(こしごい)】
「腰古井」を醸す吉野酒造は、「素材を大切にし、昔ながらの手法を自分たちで守り続ける」をモットーに、天保元年(1830年)の創業以来、真摯に日本酒造りと向き合い続ける蔵元です。
南部杜氏を迎え入れて行う酒造りの技術は、国内外での評価も高く、全国新酒鑑評会や「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」など、国内外の品評会で華々しい受賞歴を誇ります。
ほんのりとした米の甘味が感じられる「大吟醸腰古井」は、上品な芳香が口に広がり、その雑味のない味わいで日本酒好きをうならせます。2002年には全日空(ANA)国際線のファーストクラスで提供された実力のある酒です。
製造元:吉野酒造株式会社
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「自然酒」と評される自然の恵みを活かした酒【五人娘(ごにんむすめ)】
近年、地酒ファンだけでなく、オーガニックに関心の強い人からも注目を集めている蔵元が寺田本家です。その理由は、「自然酒」と称される代表銘柄「五人娘」に象徴される、自然の恵みを活かした酒造りにあります。
寺田本家の酒造りの姿勢は、生命力のある命を宿す「百薬の長」たる日本酒造り。その実現に向けて、100%純米造りはもちろん、仕込む酒米はすべて無農薬米、乳酸菌や酵母菌は無添加というこだわりよう。こうして生まれた「五人娘 純米酒」は、芳醇な米の香りと酸味の立つ味わいで、多くの日本酒好きをうならせる1本です。
製造元:株式会社寺田本家
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ほかの酒にはない新感覚の日本酒【AFS(アフス)】
高温山廃酛(モト)仕込みや長期熟成酒、自然醸造酒など、個性的な取り組みで知られる木戸泉酒造。その代表銘柄である「木戸泉」と並んで注目されているのが、個性的な味わいが魅力の「AFS(アフス)」です。
歴代の蔵人の頭文字を取って名づけられただけあって、AFSには木戸泉酒造がこれまで培ってきた技術が注ぎ込まれています。加えて、米と麹を一度に全量投入する“一段仕込み”など、新たな取り組みも導入。甘味と酸味が特徴的な、日本酒というより白ワインのような味わいで、飲む人に驚きと感動を与えます。
製造元:木戸泉酒造株式会社
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日本酒好きなら手に入れたい限定流通品【一喜(いっき)】
伝統を守りながらも革新的な酒造りを続ける、元禄期創業の老舗蔵、飯沼本家。その代表銘柄である「甲子(きのえねまさむね)」は広く流通し、多くの日本酒ファンを魅了していますが、飯沼本家を語るうえで忘れてはいけないのが「一喜」の存在です。
一喜は「1杯にいっぱいの喜びを込めて」という蔵人の思いを込めて醸される日本酒で、地酒専門店や一部の飲食店でのみ入手できる限定流通品。なかでも「一喜 純米吟醸生」は直汲みで瓶詰めされる、フレッシュさとシャープさを兼ね備えたさわやかな味わいです。日本酒好きであれば手に入れたい1本といえます。
製造元:株式会社飯沼本家
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江戸へと続く水運を利用することで発達した千葉県の日本酒は、時代の流れとともに革新と発達を遂げてきました。蔵元の思いがキラリと光る、個性豊かな千葉県の日本酒。飲みくらべをして、お気に入りの1本を見つけてください。
千葉県酒造組合