「十四代(じゅうよんだい)」は日本酒の新時代を切り開いた芳醇旨口のお酒
「十四代」は、山形県村山市の高木(たかぎ)酒造が手掛ける日本酒銘柄です。今回は、高木酒造のプロフィール、「十四代」という銘柄名の由来、「十四代」が入手しづらい「幻の酒」となっている理由や購入方法、味わいの特徴、ラインナップなどを紹介します。
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「十四代」とはどんなお酒なのか、その特徴や魅力を知るうえで重要となるのが、造り手である高木酒造の酒造りに対する考え方です。まずは蔵元のプロフィールからみていきましょう。
「十四代」は山形の高木酒造が手掛ける日本酒
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日本酒「十四代」を造っている高木酒造を紹介します。
「十四代」を造る高木酒造とは
「十四代」は、山形県の中央部に位置する村山市の蔵元・高木酒造の日本酒ブランドです。最上川の流域にある村山市は、稲作や果樹栽培など農業が盛んな地域で、豪雪地帯としても知られています。
高木酒造は、今から400年以上前の元和(げんな)元年(1615年)に創業。「十四代」のほか地元用に「朝日鷹(あさひたか)」という銘柄も手掛けています。
また、先代当主・高木辰五郎(たつごろう)氏が中心となって「酒未来(さけみらい)」「龍(たつ)の落とし子」「羽州誉(うしゅうほまれ)」という3種の酒造好適米の育種に成功。原料米を自分たちで開発するという高木家代々の悲願を達成しています。
現在は、父・辰五郎氏の跡を継いだ高木顕統(あきつな)氏が15代目の当主を務めています。
顕統氏は、蔵の経営者が酒造りの責任者も兼ねる「蔵元杜氏(とうじ)」の先駆けとしても知られる存在で、平成6年(1994年)、20代の半ばで「十四代」を造り、世に送り出しました。
顕統氏の活躍や酒造りにかける姿勢に影響を受けた若い世代の蔵元杜氏も多く、全国でいくつもの銘酒が生まれています。
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「十四代」の名の由来は?
「十四代」という銘柄名は、もともと先代の14代当主・高木辰五郎氏が携わった古酒につけられていたものです。
顕統氏は、東京の百貨店で働いていたころからインパクトを感じていたというこの「十四代」という名前を、帰郷後、自らが醸した日本酒に改めて名づけたのです。
「十四代」が入手しづらいプレミアム日本酒になった理由
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日本酒「十四代」が手に入りにくくなっている理由と、正規の値段で購入する方法について迫ります。
「十四代」はなぜ「幻の酒」になった?
「十四代」が入手困難な「幻の酒」になった理由は、知名度が高く需要があるにもかかわらず、大幅な増産を行わないため、市場に出回る絶対数が少ないということが挙げられます。
なぜ生産量を増やさないのでしょう。それは蔵元が「納得のいく品質を求めて造り手も飲み手も幸せになること」を真摯にめざしているため。機械に頼らず人の五感によって味わいの違いを生み出すことを軸とする高木酒造の酒造りは手間も時間もかかり、量産には向かないのです。
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「十四代」を正規の値段で手に入れる方法は?
日本酒「十四代」は希少価値が高く、正規の値段の20倍以上の金額で販売されることもある商品です。
たとえば、看板商品のひとつ特別本醸造酒「十四代 本丸」1,800ミリリットルの定価は2,000円(税抜)ですが、正規ルートではない通販サイトなどでは50,000円前後で転売されることもあります。
転売品は入手しやすくても、よい状態で保管されているとは限らず、味わいが変わってしまっている可能性があります。また、高値をつける転売行為は、良質な日本酒をできるだけ金額を抑えて販売しようという蔵元の心意気に反するものです。
入荷する時期や本数が限られてくるとはいえ、できれば正規ルートで仕入れ、きちんと保管し、定価で販売している特約店から購入したいものです。
インターネットでの購入を考えているなら、元サッカー日本代表の中田英寿氏が代表取締役を務めるJAPAN CRAFT SAKE COMPANY運営のSakenomyもチェックしてみましょう。入荷している場合があります。
また、はせがわ酒店と青野商店では抽選販売も行っています。常時行っているとは限らないので、こちらもこまめにチェックしてみてくださいね。
Sakenomy
はせがわ酒店
青野商店
なお、購入前に味見をしてみたいという人には、山形の郷土料理を扱う飲食店も狙い目です。正規のルートで仕入れた「十四代」を入荷しているケースがあるので、おいしい料理と一緒に味わってみてはいかがでしょう。
「十四代」の魅力的な味わいとは
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「十四代」の味わいの特徴と、その誕生秘話をみていきましょう。
「十四代」の味わいの特徴
日本酒「十四代」の特徴は「芳醇旨口」。原料米に由来する香りと甘味が存分に感じられる、みずみずしい味わいにあります。
「十四代」ブランドの第1号となる「十四代 中取り純米」が発売されたのは、平成6年(1994年)のこと。当時は1980年代からブームとなっていたすっきりしたキレのある「淡麗辛口」が日本酒の味わいの主流でした。
そうしたなか、突如として登場した「芳醇旨口」の「十四代」は、その画期的な味わいで、日本酒の新たなトレンドの端緒を開いたのです。
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「十四代」の味わいが生まれたきっかけとは
「十四代」の「芳醇旨口」の味わいは、ある出合いから生まれました。
「十四代」の生みの親、高木顕統氏は、東京農業大学農学部醸造学科(現・応用生物科学部醸造科学科)を卒業後、東京の百貨店系スーパーで酒類のバイヤーとして働いていましたが、高木酒造の杜氏が高齢のため引退したことを受け、蔵に戻りました。
帰郷の決め手となったのは、現在は廃業した蔵元が造ったある日本酒との出合いでした。まろやかな米の甘味があふれるその味わいに衝撃を受けた顕統氏は、自身が無意識に求めていた味わいに気づき、自分の手でこうしたお酒を造りたいと、蔵に戻る決意を固めたといいます。
大学で醸造学を学んだといっても、酒造りの修業をしているわけではありません。しかし、失敗すれば蔵の経営が傾きます。
のしかかるプレッシャーのなか、完成後に入院するほど昼夜を問わない試行錯誤を繰り返して造り上げた顕統氏の「十四代」は、比類ない「芳醇旨口」の味わいで日本酒ファンを魅了したのです。
「十四代」のラインナップ紹介
日本酒「十四代」のラインナップのなかからおすすめの5酒を紹介します。いずれも貯蔵前に1回だけ火入れを行う生詰め酒で、5度前後の「雪冷え」で飲むのがおすすめ。和食によく合う要冷蔵の商品です。
十四代 本丸(ほんまる)
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清らかな果実味がたまらない「十四代」ブランドの代表酒。「手ごろな価格で高品質な日本酒」というコンセプトのもとに生まれた特別本醸造酒です。
1,800ミリリットル:2,000円(税込)
十四代 双虹(そうこう)
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兵庫県特A地区産の「山田錦」を精米歩合35パーセントで使用。もろみが入った酒袋から自然に落ちるしずくを斗瓶に入れて氷温貯蔵した透きとおる味わいの大吟醸酒。フレッシュでさわやかな品のよい香りと優しい甘味が特徴です。
720ミリリットル:11,000円(税抜)
十四代 龍月(りゅうげつ)
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兵庫県特A地区産「山田錦」を35パーセントまで磨いて醸した甘味、旨味があり、余韻がたのしめる純米大吟醸酒。1滴1滴しずくを集めた斗瓶囲いを氷温熟成させた限定品です。
720ミリリットル:11,000円(税抜)
十四代 龍(たつ)の落とし子 純米吟醸
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先代の蔵元当主・高木辰五郎氏が中心となって開発した酒造好適米「龍の落とし子」を精米歩合50パーセントで使用した、すっきりした味わいの純米吟醸酒。十四代のなかではややドライでシャープな後味が印象的。フレッシュ感のある酸味がよいアクセントとなっています。
1,800ミリリットル:3,500円(税抜)
十四代 七垂二十貫(しちたれにじっかん)
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酒造好適米「愛山」を35パーセントまで磨いて使用した香味豊かな純米大吟醸酒。やわらかくなめらかな風味とジューシーな酸味が口中に広がる逸品です。
「七垂二十貫」とは、蔵元に代々伝わる揚げふね(上槽)時の垂れ歩合(もろみ100リットルから得られた清酒のリットル数を表す歩合)と粕歩合(原料の白米重量に対する粕重量の割合)を尺貫法で表したもので、現代ではもろみを詰めた酒袋から落ちるしずくを1滴ずつ集めて造る雫酒(しずくざけ)の収量を意味しています。
「十四代」はラインナップが豊富なブランド。原料米や製法、醸造時期などが異なる数多くの日本酒商品に加えて、特殊単式蒸溜機を用いて低温で蒸溜したものを長期間貯蔵・熟成させた「十四代 秘蔵乙焼酎(ひぞうおつしょうちゅう)」といった本格焼酎もラインナップされています。いずれも希少価値が高い商品なので、特約店で見かけたら迷わず手に入れ、その味わいをたのしんでみてくださいね。
製造元:高木酒造株式会社
公式サイトはありません